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「ほら、お嬢様キュッとしますから、お腹引っ込めて」
「ぐぇ」
「言葉が汚いです」
「でも…」
クルクル
コルセットを巻かれ、髪もきれいに結わえられる。いったんまとめられた後でふわりと髪が広がるようにセットされた。
「ねえ。ジェシカも研究所の所長程度がここまでする必要ないと思うわよね?」
「え、まあ確かに…」
「ジェシカ!何を騙されているのです。お嬢様は貴族ですよ。駄目に決まっていますわ!」
「そ、そうでした。申し訳ありません。お嬢様、別にパーティーではありませんが、練習と思ってあきらめてください」
「ジェシカにならわかってもらえると思ったのに…」
「そうやって私のいない間にはパーティーをサボっていらしたのですね。通りで伯爵家主催のパーティーにもあまり出てこないと思いました。これまではどう言い訳していたのですか?」
「…主催者はお父様だし、私も婚約者はいるし仕事で疲れたな~って」
「確かにパーティー自体は多くがお嬢様の休みの日でしたね。旦那様からすれば娘はちょっと疲れて欠席ですと説明しやすく、お嬢様はパーティーに出たくない。ある意味どちらも思い通りだったわけですね」
「まあ、あの方はコネを作るためだけに開いていましたので、変に出てこられない方が都合良く思われたかもしれませんが、これからはきちんとなさいませ」
マナーも少しずつ頑張ると思った手前、観念した私は今後も必要ならばドレス姿になることを了承したのだった。
「準備もできましたし、まずはフィスト様に見てもらいましょうか」
「えっ、変に思われないかなぁ…」
「この姿を見て変だというやつはいません」
「みんなはよくそう言ってくれるけど、おしゃれとかしてこなかったし」
「その分は私たちが代わりにやりますので、さあ広間へ」
案内された広間にはすでにフィスト様が準備を終えて座られていた。騎士服でもないし領主としての服装なのかな?勇気を振り絞って声をかけてみる。
「あ、あの…フィスト様、変ではないでしょうか?」
「え、ああ。カノン…か」
どうしよう。誰か判らないぐらい変な格好なのかな?
「やっぱりどこかおかしいですか?」
幅の広い袖を振りながらおかしくないか尋ねる。
「お、おかしくはない。むしろ、似合っている。普段はかわいいと思っていたが…そうだな。その姿のカノンはとてもきれいだ」
ボフッ
「き、綺麗ですか…」
きれいだなんていくら何でも言いすぎだ。だって、そんなこと一度も言われたことないもの。可愛いとは言われたことはあるけど…。それだって私が研究所に11歳に入って数年間だけだし。あわわわ、きっと今の私の顔は赤くなっているだろう。
「アーニャ、任せたわ」
「は?」
恥ずかしいので後の進行をアーニャに丸投げして彼女の後ろに隠れる。彼女ならきっとわかるはずだ。
「カノン、どうしたんだ?」
「お嬢様はきれいと私が知っている限り言われたことがないので、恥ずかしいのです。いくらでも言ってあげるといいですよ」
「アーニャ…」
「隠れていないできちんとお礼を言わないといけません。マナーですよ」
「はっ!そうよね。まだお礼を言ってない。フィスト様、お褒めいただきありがとうございます」
淑女の礼をしながら返事を返す。きっと、顔は赤いままだろうけど礼儀は大事だもの。
「…いや。思ったことを言っただけだ。それより時間も近いから行こうか」
「はい!」
私はフィスト様から差し出された手を掴み一緒に研究所へ歩いていく。そして研究所で私を待っていたのは…。
「「「カノン様!お久しぶりです」」」
前の、研究所の人たちだった。
「みんなどうして!?」
「事情があって来られんもんもいるが、皆お嬢様の味方じゃよ」
「おじいちゃん所長まで!体が悪くなってやめたはずじゃあ…」
「お嬢様の体調管理に気をつけよと進言したら首になってしまってのう。お嬢様が気にすると思って言えなかったんじゃ。今後はわしが特別顧問になるから心配せんでええぞ」
「特別顧問?」
「そうだ。元研究所の人たちと話をしたのだが、カノンは公式の場が苦手なのだろう?今後は貴族や商人とも取引の話があるだろうから、その交渉役にと思ってな。『特別』と付けているのはそうやって相手に自分は重要視されていると思わせるために相談して考えた。どうだろうか」
「フィスト様…ありがとうございます!!」
私は涙を流しながらフィスト様にぎゅっと抱きつく。
「お、おい…」
「もう会えないと思っていたみんなや、おじいちゃん所長まで…うれじいでずぅ~」
グスッグスッ
「ああ、ほら涙を拭いて。せっかくのきれいな顔が台無しだ」
「ほんとにきれいですか?」
「本当だ。これまで見てきた中で一番だ」
「う、うわぁ~~ん」
褒められたうれしさやみんなに会えたうれしさで心がいっぱいになり、私はみんなの前でしばらく泣き続けた。
「うぅ、うっ。そ、それで皆さんはどうしてここに?」
「あの後、私たちも予算に成果が見合っていないと言われましてね。チームも多くが解散しました。そこを拾ってくれたのが、グルーエル様とフィスト様です。グルーエル様のところは薬草の知識に長けたものを欲しがっておられて、フィスト様のところには新しい研究所の人間が欲しいとのことで、雇ってもらえるようになったんです。後ろの彼らが、グルーエル様のところの研究員です。私たちとも合同でチームを組んで、ゆくゆくはカノン様とも組むのでよろしくお願いします」
「「お願いします!」」
私は再会の喜びで、前の方しか見えていなかったが、確かに後ろにも10人程度いる。前の研究所も30人前後で、こっちに来たのが男性12人、女性8人でグルーエル様の研究員が10人だから前と一緒のような規模だな。ちなみに女性の研究者が多いのは理由があって、花形の研究職の賃金が魔導研究所では薬学研究所の倍だからだ。
当然そっちに人が殺到する分、薬学研究所は倍率が低いから女性でも入りやすい。それに魔法の才能という事ではなくて知識の積み重ねなので、貴族子女でも教育が受けられればチャンスがあるので、そういう比率なのだ。なお、倍の賃金は通常所員であって、上まで行くとその差は4倍。宰相閣下が格差を埋めようと頑張っていた気がするけど、『才能による成果の魔導研究所こそ至高』という貴族の意見に押されて実現できなかったらしい。
「そういえば侯爵くんは来てないんだね?」
「彼はさすがに次男でも侯爵家の人間ですよ。またも、他国に人が逃げたと分かったら大ごとです。彼の家は2代前に王女が降嫁された家ですし」
「カノン、その侯爵くんというのは?」
「フィスト様、彼はすごいんですよ!同い年なんですけど、学園も飛び級で卒業して研究成果も多いんです。特に改良薬なんか、半分は彼が作ってるんです!」
研究所の期待のホープなんですよ、エッヘンと胸を反らして得意げに説明する。
「それならや…彼が来なくてさびしくはないのか?」
「…ちょっとだけ。でも、ここにはフィスト様たちがいますし、侯爵くんもきっと元気にやってますよ!」
「これからはもう少し、邸にいるようにする」
「何か言いました?」
良く聞こえなかったな。
「さて、お披露目も終わり、お嬢様は化粧を落とさないと。フィスト様もご用事があるのでは?」
「そうだった!カノン済まないが出かける」
「行ってらっしゃいませ!」
フィスト様を見送り私も着替えのために邸に戻ろうとするが、どうも研究員たちの視線が気になる。
「どうかしました?」
「いえ、なんだか夫婦のやり取りみたいだったもので…」
「夫婦…そっ、そんなことありません。夫婦だなんて」
カアッ
私は迷惑ばかりかけているのに、みんなのことだってこの国の研究員の人より優先してくださって。
「カノンお嬢様。貴女は今までずっと研究ばっかりだったじゃろう?難しく考えなくても良い、彼がいないと寂しいと思うじゃろう?」
「えっ、はい…」
「彼も国内を回ってばかりで知り合いも少なく、きっとお前と同じ思いじゃろう。だから、できるだけそばにいてあげなさい。それが恩返しの一つでもある」
「そうでしょうか?」
「うむ。おじいちゃん所長は嘘はつかんぞ」
「…そうですよね。分かりました!研究もやりますけどフィスト様が寂しくないようにも頑張ります!」
「おうおう、さすがはわしらのお嬢様じゃ。さあ、着替えてわしらに指示を出しておくれ」
すぐにみんなと屋敷に戻ると動きやすい服装に着替えて戻る。ここからは研究所の所長として頑張らないと!
「所長か…私が本当に所長でいいんですか?」
「何を言っているんですか、カノン様以外には適任者はいませんよ。子爵としても所長としても出なければいけない時は大老さまが特別顧問として出てくださいますから、観念してください」
「それならしょうがないか」
「お嬢様、通常貴族が特別な役職をもらう時は『光栄ですわ。謹んで受けさせていただきます』ですよ。国王陛下に無理ですなんていったらいけませんからね!」
「流石に私でもそこまでは言わないよ。みんなありがとね」
そこからは実務に入って、チーム分けをしていった。まずは優先される『魔力病』治療薬の生産。これはまだ機密情報だからここで作るしかない。前の研究員を筆頭に一旦、22人を3組に分けて最終工程近くのものを大量に作らせる。その先までいかなければ粉末の状態を維持できるため、保存性が良いのだ。
残り8人のうち2人で私の持ってきた成果や、研究員たちの成果、さらにグルーエル様の研究員の成果を突き合わせて同様の研究が無いか精査する。その後はお互いの研究成果を学び、新たなテーマを模索する。
残りの6人はグルーエル様から頂いた『美容と健康改善薬』を王家向けに生産する。まずは側使えで試し、効果があり副作用もなければ王家の方が、その後は高位貴族専用品になるか高級品として売られるかという事のようだ。そういうことはよくわからないからおじいちゃん所長に丸投げしよう。
「そうそう、お嬢様はこの爺に投げておけばよいのですじゃ」
こんな所長ならやってもいいかもとその気になる私だった。
「ぐぇ」
「言葉が汚いです」
「でも…」
クルクル
コルセットを巻かれ、髪もきれいに結わえられる。いったんまとめられた後でふわりと髪が広がるようにセットされた。
「ねえ。ジェシカも研究所の所長程度がここまでする必要ないと思うわよね?」
「え、まあ確かに…」
「ジェシカ!何を騙されているのです。お嬢様は貴族ですよ。駄目に決まっていますわ!」
「そ、そうでした。申し訳ありません。お嬢様、別にパーティーではありませんが、練習と思ってあきらめてください」
「ジェシカにならわかってもらえると思ったのに…」
「そうやって私のいない間にはパーティーをサボっていらしたのですね。通りで伯爵家主催のパーティーにもあまり出てこないと思いました。これまではどう言い訳していたのですか?」
「…主催者はお父様だし、私も婚約者はいるし仕事で疲れたな~って」
「確かにパーティー自体は多くがお嬢様の休みの日でしたね。旦那様からすれば娘はちょっと疲れて欠席ですと説明しやすく、お嬢様はパーティーに出たくない。ある意味どちらも思い通りだったわけですね」
「まあ、あの方はコネを作るためだけに開いていましたので、変に出てこられない方が都合良く思われたかもしれませんが、これからはきちんとなさいませ」
マナーも少しずつ頑張ると思った手前、観念した私は今後も必要ならばドレス姿になることを了承したのだった。
「準備もできましたし、まずはフィスト様に見てもらいましょうか」
「えっ、変に思われないかなぁ…」
「この姿を見て変だというやつはいません」
「みんなはよくそう言ってくれるけど、おしゃれとかしてこなかったし」
「その分は私たちが代わりにやりますので、さあ広間へ」
案内された広間にはすでにフィスト様が準備を終えて座られていた。騎士服でもないし領主としての服装なのかな?勇気を振り絞って声をかけてみる。
「あ、あの…フィスト様、変ではないでしょうか?」
「え、ああ。カノン…か」
どうしよう。誰か判らないぐらい変な格好なのかな?
「やっぱりどこかおかしいですか?」
幅の広い袖を振りながらおかしくないか尋ねる。
「お、おかしくはない。むしろ、似合っている。普段はかわいいと思っていたが…そうだな。その姿のカノンはとてもきれいだ」
ボフッ
「き、綺麗ですか…」
きれいだなんていくら何でも言いすぎだ。だって、そんなこと一度も言われたことないもの。可愛いとは言われたことはあるけど…。それだって私が研究所に11歳に入って数年間だけだし。あわわわ、きっと今の私の顔は赤くなっているだろう。
「アーニャ、任せたわ」
「は?」
恥ずかしいので後の進行をアーニャに丸投げして彼女の後ろに隠れる。彼女ならきっとわかるはずだ。
「カノン、どうしたんだ?」
「お嬢様はきれいと私が知っている限り言われたことがないので、恥ずかしいのです。いくらでも言ってあげるといいですよ」
「アーニャ…」
「隠れていないできちんとお礼を言わないといけません。マナーですよ」
「はっ!そうよね。まだお礼を言ってない。フィスト様、お褒めいただきありがとうございます」
淑女の礼をしながら返事を返す。きっと、顔は赤いままだろうけど礼儀は大事だもの。
「…いや。思ったことを言っただけだ。それより時間も近いから行こうか」
「はい!」
私はフィスト様から差し出された手を掴み一緒に研究所へ歩いていく。そして研究所で私を待っていたのは…。
「「「カノン様!お久しぶりです」」」
前の、研究所の人たちだった。
「みんなどうして!?」
「事情があって来られんもんもいるが、皆お嬢様の味方じゃよ」
「おじいちゃん所長まで!体が悪くなってやめたはずじゃあ…」
「お嬢様の体調管理に気をつけよと進言したら首になってしまってのう。お嬢様が気にすると思って言えなかったんじゃ。今後はわしが特別顧問になるから心配せんでええぞ」
「特別顧問?」
「そうだ。元研究所の人たちと話をしたのだが、カノンは公式の場が苦手なのだろう?今後は貴族や商人とも取引の話があるだろうから、その交渉役にと思ってな。『特別』と付けているのはそうやって相手に自分は重要視されていると思わせるために相談して考えた。どうだろうか」
「フィスト様…ありがとうございます!!」
私は涙を流しながらフィスト様にぎゅっと抱きつく。
「お、おい…」
「もう会えないと思っていたみんなや、おじいちゃん所長まで…うれじいでずぅ~」
グスッグスッ
「ああ、ほら涙を拭いて。せっかくのきれいな顔が台無しだ」
「ほんとにきれいですか?」
「本当だ。これまで見てきた中で一番だ」
「う、うわぁ~~ん」
褒められたうれしさやみんなに会えたうれしさで心がいっぱいになり、私はみんなの前でしばらく泣き続けた。
「うぅ、うっ。そ、それで皆さんはどうしてここに?」
「あの後、私たちも予算に成果が見合っていないと言われましてね。チームも多くが解散しました。そこを拾ってくれたのが、グルーエル様とフィスト様です。グルーエル様のところは薬草の知識に長けたものを欲しがっておられて、フィスト様のところには新しい研究所の人間が欲しいとのことで、雇ってもらえるようになったんです。後ろの彼らが、グルーエル様のところの研究員です。私たちとも合同でチームを組んで、ゆくゆくはカノン様とも組むのでよろしくお願いします」
「「お願いします!」」
私は再会の喜びで、前の方しか見えていなかったが、確かに後ろにも10人程度いる。前の研究所も30人前後で、こっちに来たのが男性12人、女性8人でグルーエル様の研究員が10人だから前と一緒のような規模だな。ちなみに女性の研究者が多いのは理由があって、花形の研究職の賃金が魔導研究所では薬学研究所の倍だからだ。
当然そっちに人が殺到する分、薬学研究所は倍率が低いから女性でも入りやすい。それに魔法の才能という事ではなくて知識の積み重ねなので、貴族子女でも教育が受けられればチャンスがあるので、そういう比率なのだ。なお、倍の賃金は通常所員であって、上まで行くとその差は4倍。宰相閣下が格差を埋めようと頑張っていた気がするけど、『才能による成果の魔導研究所こそ至高』という貴族の意見に押されて実現できなかったらしい。
「そういえば侯爵くんは来てないんだね?」
「彼はさすがに次男でも侯爵家の人間ですよ。またも、他国に人が逃げたと分かったら大ごとです。彼の家は2代前に王女が降嫁された家ですし」
「カノン、その侯爵くんというのは?」
「フィスト様、彼はすごいんですよ!同い年なんですけど、学園も飛び級で卒業して研究成果も多いんです。特に改良薬なんか、半分は彼が作ってるんです!」
研究所の期待のホープなんですよ、エッヘンと胸を反らして得意げに説明する。
「それならや…彼が来なくてさびしくはないのか?」
「…ちょっとだけ。でも、ここにはフィスト様たちがいますし、侯爵くんもきっと元気にやってますよ!」
「これからはもう少し、邸にいるようにする」
「何か言いました?」
良く聞こえなかったな。
「さて、お披露目も終わり、お嬢様は化粧を落とさないと。フィスト様もご用事があるのでは?」
「そうだった!カノン済まないが出かける」
「行ってらっしゃいませ!」
フィスト様を見送り私も着替えのために邸に戻ろうとするが、どうも研究員たちの視線が気になる。
「どうかしました?」
「いえ、なんだか夫婦のやり取りみたいだったもので…」
「夫婦…そっ、そんなことありません。夫婦だなんて」
カアッ
私は迷惑ばかりかけているのに、みんなのことだってこの国の研究員の人より優先してくださって。
「カノンお嬢様。貴女は今までずっと研究ばっかりだったじゃろう?難しく考えなくても良い、彼がいないと寂しいと思うじゃろう?」
「えっ、はい…」
「彼も国内を回ってばかりで知り合いも少なく、きっとお前と同じ思いじゃろう。だから、できるだけそばにいてあげなさい。それが恩返しの一つでもある」
「そうでしょうか?」
「うむ。おじいちゃん所長は嘘はつかんぞ」
「…そうですよね。分かりました!研究もやりますけどフィスト様が寂しくないようにも頑張ります!」
「おうおう、さすがはわしらのお嬢様じゃ。さあ、着替えてわしらに指示を出しておくれ」
すぐにみんなと屋敷に戻ると動きやすい服装に着替えて戻る。ここからは研究所の所長として頑張らないと!
「所長か…私が本当に所長でいいんですか?」
「何を言っているんですか、カノン様以外には適任者はいませんよ。子爵としても所長としても出なければいけない時は大老さまが特別顧問として出てくださいますから、観念してください」
「それならしょうがないか」
「お嬢様、通常貴族が特別な役職をもらう時は『光栄ですわ。謹んで受けさせていただきます』ですよ。国王陛下に無理ですなんていったらいけませんからね!」
「流石に私でもそこまでは言わないよ。みんなありがとね」
そこからは実務に入って、チーム分けをしていった。まずは優先される『魔力病』治療薬の生産。これはまだ機密情報だからここで作るしかない。前の研究員を筆頭に一旦、22人を3組に分けて最終工程近くのものを大量に作らせる。その先までいかなければ粉末の状態を維持できるため、保存性が良いのだ。
残り8人のうち2人で私の持ってきた成果や、研究員たちの成果、さらにグルーエル様の研究員の成果を突き合わせて同様の研究が無いか精査する。その後はお互いの研究成果を学び、新たなテーマを模索する。
残りの6人はグルーエル様から頂いた『美容と健康改善薬』を王家向けに生産する。まずは側使えで試し、効果があり副作用もなければ王家の方が、その後は高位貴族専用品になるか高級品として売られるかという事のようだ。そういうことはよくわからないからおじいちゃん所長に丸投げしよう。
「そうそう、お嬢様はこの爺に投げておけばよいのですじゃ」
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