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リバースストーリー
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今日はいよいよパーティー当日だ。王都にいる貴族が一堂に会して私の快気祝いを行うこととなっている。最近は婚約者変更のうわさも流れている中でのことなので、そわそわしている貴族もいる。全く馬鹿な奴らだ。カノン以外に誰が私を支えてきてくれたと思っているのだ。
「宰相閣下、手配の方は任せました」
「はい、クレヒルト殿下。すでに近衛を人知れず配置させております。これで退路を絶てるでしょう」
「流石だ。ようやくこれで彼女も報われる」
「クレヒルトやけにうれしそうだな」
「兄上、ご無沙汰しております」
「何やら最近は忙しそうにしていたようだが大丈夫か?」
「はい。私にとっては初めてのパーティーですので、何分準備に忙しく…」
「そう気を張らなくとも大丈夫だ。いきなり何か言ってくるものなどいないさ」
「しかし、王族として最低限の振る舞いは必要です」
「確かにそうだな。立派な考えになってくれてうれしいよ」
「ありがとうございます兄上」
あまり、2人にばかり構っているのも良くないと思い、その場を離れる。カノンはまだ登城していないのか?
「ああ、クレヒルト殿下。この度は快復されたということで、大変めでたいですな。このアルターも心配しておったのですぞ」
「…そうか、それは大変心配をかけた。今後は心配をかけないように侯爵には配慮する」
「それと…婚約についてはどうですか?うちの娘やエディン子爵令嬢も推薦させてもらっているのですが…」
「それは知っているが、何年も前から大々的に発表こそされていないが、カノンが私の婚約者だろう?」
「何をおっしゃいます。彼女は王子の病気を治すための婚約者です。成果がないまま婚約者にするには値しませんよ」
「だが、その為の過程でもかなりの薬を作ったといわれているが?」
「それこそ誰か研究所の物を使って作らせただけでしょう。特に薬学研究所は個人にて発表をすることが少ないですからな。いくらでもでっちあげられるのです」
「ふむ、研究所の成果か。一度どのような報告書があるか見てみたいものだ」
「では、我が家でまとめたものをお渡ししますよ。領地でも独自に研究をしておりますから」
「それは助かる」
侯爵とも話はここまで、話している間はイラつきを抑えるのが精いっぱいだった。私に対して彼女の功績の成果を発言するとは。
「あら、クレヒルト殿下。ごきげんよう」
「ああ、先ほど君の御父上とは話をさせてもらったよ。それでは私はまだあいさつ回りが残っているので…」
「あっ、殿下…」
やれやれ、何が悲しくてアルター侯爵の娘と話をしなければならないのか。大体、彼女は遠縁の子爵家に行くはずだろう。戸惑った様子もなく本心から今回の新しい縁談に賛成しているのだろう。
「さて、侯爵令嬢が来るという事はそろそろか…」
会場入りする人間の姿を眺めていると、他の人よりも少し低い背の女性が見える。
「あれだね。周辺は頼む」
「はっ!」
今日のために父上から借りた影を動員して、カノンと会えるように人を動かす。こうすれば自然に私がカノンを探して見つけたという寸法だ。
「やあ、カノン。久しぶりだね。今日は一段ときれいだよ」
「そ、そんなクレヒルト殿下。いつ着てもドレスなど着なれないもので…」
「ふふっ、確かに私に会いに来るときも研究所の服だからね。だけど、その初々しさが良いんだよ。実際に私は君のドレス姿を見るのは初めてだしね」
本当にカノンと来たら、皆より少し小さいこともあるから一見かわいらしいが、よく見ると美人の片りんも見える。きっと数年後には美女になっているだろう。
「喜んでいただけてありがとうございます。リーナやアーニャに頑張ってもらった甲斐がありましたわ」
「使用人もこれだけいい素材を着飾れるのだ。力も入るというものだろう」
「そうだといいのですが…何分、研究ばかりでこのような場などなれないもので」
「それは私も同様だ。だが、今後は君と…」
「あら!クレヒルト様!!ようやく見つけましたわ!」
「…あっ、ああ」
何でかい声を王宮で出しているのだ。私の部屋に来るときは周りに人がいないからと思っていたが、どうやら違うらしい。こんなのを協力者に選ぶとはアルター侯爵も落ちたものだ。
「こちらの方は?」
「あなたがカノンですね!殿下の婚約者でありながら役に立たない薬ばかり作っているていう!」
「だ、誰がそんな…」
「知っていますの!私、殿下のご病気を治して差し上げたんですのよ!」
「あ、あれはみんなが…」
「ふんっ!なんですの?言い訳は結構ですわ!」
「うう…」
カノンは普段から親から高圧的に迫られているせいで、こういう手合いが大の苦手だ。いつもは仕方ないとあきらめている様だが、さすがに今回の『魔力病』治療薬は研究所の成果という事もあり必死に食いつこうとしている。
「落ち着くのだエディン嬢。そのようなことは噂程度のことだ。そもそも、このような場で大声で話すなどみっともない!」
「ク、クレヒルト殿下…。仕方ありません。しかし、今の言葉覚えておきなさい!」
づかづかと我が物顔で会場へと歩いていくエディン。
「こ、これはクレヒルト殿下。娘がとんだ失礼を」
「トールマン子爵だな。分かっているのならもっと早くに手を打っておけ。学園ではどうなのだ?」
「そ、それは…」
「いや、いい。これ以上何か起こさぬように見張っていろ」
「は、はっ」
全く、これ以上ストレスを与えないでくれ。それ以降は特に何もなく入場は済んでいった。
「それではこれよりクレヒルト殿下の快復を祝うパーティーを開催いたします。一同、礼!」
衛士が宣言すると、会場である広間の扉が開かれ父上が王妃を伴って入場する。そして、中央奥に設けられた座席に座る。
「一同、面を上げよ」
ザッ
父上の声を合図に貴族たちが顔を上げ、騎士たちは忠義の礼を取る。
「この度は我が息子クレヒルトの快復祝いによくぞ集まった。さすが、我が王国の貴族たちである。また、今日ここに来られぬものからも、祝いの品が届いておる。これまで、大病を患い政務に関わることのできなかった息子にこれだけの参加をしてくれようとは王国の未来は安泰だ。ぜひ、今日のパーティーを楽しんでくれ」
「はっ、ありがたき幸せです。我ら一同、変わりなく忠誠を誓います!」
宰相閣下がそういうと諸侯も頷き、場は和やかな雰囲気につつまれる。それを合図として、王国楽団が演奏を始め各々がパートナーと手を取り合いダンスを始めたり、食事を始めたりしている。最も、会場の中心でダンスを踊れるのは、今踊っている父上と母上だけだが。
「クレヒルト殿下、踊られないのですか?」
「カノン。さすがにまだ病み上がりの病人だからね。今日はこうして食事のみさ」
「そうですよね。申し訳ありません」
「いいや、それに初めてのダンスは君と踊りたいからね。君の知り合いに聞いたらダンスが踊れないんだって?」
「お恥ずかしながら、今まで薬ばかり作っていたもので」
「私も寝てばかりだったし、これから二人で練習を始めよう。それなら、問題ないだろう?」
「で、ですが、その殿下は…」
うん?何かカノンが言い淀んでいる様だ。そういえば、アーニャが何か悩みがあるらしいと言っていたな。ここはひとつ男を見せてみよう。
「おい!少し席を外す。誰も入って来させるな」
「はっ!」
バルコニーに行くと見せかけて、すっとその奥に入っていく。ここは会場から死角になりやすく簡単には見つからないだろう。
「さあ、悩みがあるんだろう?言ってみると言い」
「…で、殿下の新しい婚約者はどなたですの!」
「宰相閣下、手配の方は任せました」
「はい、クレヒルト殿下。すでに近衛を人知れず配置させております。これで退路を絶てるでしょう」
「流石だ。ようやくこれで彼女も報われる」
「クレヒルトやけにうれしそうだな」
「兄上、ご無沙汰しております」
「何やら最近は忙しそうにしていたようだが大丈夫か?」
「はい。私にとっては初めてのパーティーですので、何分準備に忙しく…」
「そう気を張らなくとも大丈夫だ。いきなり何か言ってくるものなどいないさ」
「しかし、王族として最低限の振る舞いは必要です」
「確かにそうだな。立派な考えになってくれてうれしいよ」
「ありがとうございます兄上」
あまり、2人にばかり構っているのも良くないと思い、その場を離れる。カノンはまだ登城していないのか?
「ああ、クレヒルト殿下。この度は快復されたということで、大変めでたいですな。このアルターも心配しておったのですぞ」
「…そうか、それは大変心配をかけた。今後は心配をかけないように侯爵には配慮する」
「それと…婚約についてはどうですか?うちの娘やエディン子爵令嬢も推薦させてもらっているのですが…」
「それは知っているが、何年も前から大々的に発表こそされていないが、カノンが私の婚約者だろう?」
「何をおっしゃいます。彼女は王子の病気を治すための婚約者です。成果がないまま婚約者にするには値しませんよ」
「だが、その為の過程でもかなりの薬を作ったといわれているが?」
「それこそ誰か研究所の物を使って作らせただけでしょう。特に薬学研究所は個人にて発表をすることが少ないですからな。いくらでもでっちあげられるのです」
「ふむ、研究所の成果か。一度どのような報告書があるか見てみたいものだ」
「では、我が家でまとめたものをお渡ししますよ。領地でも独自に研究をしておりますから」
「それは助かる」
侯爵とも話はここまで、話している間はイラつきを抑えるのが精いっぱいだった。私に対して彼女の功績の成果を発言するとは。
「あら、クレヒルト殿下。ごきげんよう」
「ああ、先ほど君の御父上とは話をさせてもらったよ。それでは私はまだあいさつ回りが残っているので…」
「あっ、殿下…」
やれやれ、何が悲しくてアルター侯爵の娘と話をしなければならないのか。大体、彼女は遠縁の子爵家に行くはずだろう。戸惑った様子もなく本心から今回の新しい縁談に賛成しているのだろう。
「さて、侯爵令嬢が来るという事はそろそろか…」
会場入りする人間の姿を眺めていると、他の人よりも少し低い背の女性が見える。
「あれだね。周辺は頼む」
「はっ!」
今日のために父上から借りた影を動員して、カノンと会えるように人を動かす。こうすれば自然に私がカノンを探して見つけたという寸法だ。
「やあ、カノン。久しぶりだね。今日は一段ときれいだよ」
「そ、そんなクレヒルト殿下。いつ着てもドレスなど着なれないもので…」
「ふふっ、確かに私に会いに来るときも研究所の服だからね。だけど、その初々しさが良いんだよ。実際に私は君のドレス姿を見るのは初めてだしね」
本当にカノンと来たら、皆より少し小さいこともあるから一見かわいらしいが、よく見ると美人の片りんも見える。きっと数年後には美女になっているだろう。
「喜んでいただけてありがとうございます。リーナやアーニャに頑張ってもらった甲斐がありましたわ」
「使用人もこれだけいい素材を着飾れるのだ。力も入るというものだろう」
「そうだといいのですが…何分、研究ばかりでこのような場などなれないもので」
「それは私も同様だ。だが、今後は君と…」
「あら!クレヒルト様!!ようやく見つけましたわ!」
「…あっ、ああ」
何でかい声を王宮で出しているのだ。私の部屋に来るときは周りに人がいないからと思っていたが、どうやら違うらしい。こんなのを協力者に選ぶとはアルター侯爵も落ちたものだ。
「こちらの方は?」
「あなたがカノンですね!殿下の婚約者でありながら役に立たない薬ばかり作っているていう!」
「だ、誰がそんな…」
「知っていますの!私、殿下のご病気を治して差し上げたんですのよ!」
「あ、あれはみんなが…」
「ふんっ!なんですの?言い訳は結構ですわ!」
「うう…」
カノンは普段から親から高圧的に迫られているせいで、こういう手合いが大の苦手だ。いつもは仕方ないとあきらめている様だが、さすがに今回の『魔力病』治療薬は研究所の成果という事もあり必死に食いつこうとしている。
「落ち着くのだエディン嬢。そのようなことは噂程度のことだ。そもそも、このような場で大声で話すなどみっともない!」
「ク、クレヒルト殿下…。仕方ありません。しかし、今の言葉覚えておきなさい!」
づかづかと我が物顔で会場へと歩いていくエディン。
「こ、これはクレヒルト殿下。娘がとんだ失礼を」
「トールマン子爵だな。分かっているのならもっと早くに手を打っておけ。学園ではどうなのだ?」
「そ、それは…」
「いや、いい。これ以上何か起こさぬように見張っていろ」
「は、はっ」
全く、これ以上ストレスを与えないでくれ。それ以降は特に何もなく入場は済んでいった。
「それではこれよりクレヒルト殿下の快復を祝うパーティーを開催いたします。一同、礼!」
衛士が宣言すると、会場である広間の扉が開かれ父上が王妃を伴って入場する。そして、中央奥に設けられた座席に座る。
「一同、面を上げよ」
ザッ
父上の声を合図に貴族たちが顔を上げ、騎士たちは忠義の礼を取る。
「この度は我が息子クレヒルトの快復祝いによくぞ集まった。さすが、我が王国の貴族たちである。また、今日ここに来られぬものからも、祝いの品が届いておる。これまで、大病を患い政務に関わることのできなかった息子にこれだけの参加をしてくれようとは王国の未来は安泰だ。ぜひ、今日のパーティーを楽しんでくれ」
「はっ、ありがたき幸せです。我ら一同、変わりなく忠誠を誓います!」
宰相閣下がそういうと諸侯も頷き、場は和やかな雰囲気につつまれる。それを合図として、王国楽団が演奏を始め各々がパートナーと手を取り合いダンスを始めたり、食事を始めたりしている。最も、会場の中心でダンスを踊れるのは、今踊っている父上と母上だけだが。
「クレヒルト殿下、踊られないのですか?」
「カノン。さすがにまだ病み上がりの病人だからね。今日はこうして食事のみさ」
「そうですよね。申し訳ありません」
「いいや、それに初めてのダンスは君と踊りたいからね。君の知り合いに聞いたらダンスが踊れないんだって?」
「お恥ずかしながら、今まで薬ばかり作っていたもので」
「私も寝てばかりだったし、これから二人で練習を始めよう。それなら、問題ないだろう?」
「で、ですが、その殿下は…」
うん?何かカノンが言い淀んでいる様だ。そういえば、アーニャが何か悩みがあるらしいと言っていたな。ここはひとつ男を見せてみよう。
「おい!少し席を外す。誰も入って来させるな」
「はっ!」
バルコニーに行くと見せかけて、すっとその奥に入っていく。ここは会場から死角になりやすく簡単には見つからないだろう。
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