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2人の王子 情と欲
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陛下から委任状を頂いて数日、部屋にクレヒルトが訪れた。
「どうした?珍しいな」
「どうしたもありません!エディンのことはどうなっているのです!」
「エディン?ああ、処分保留のままだったな。しかし、なぜここへ?」
「父上に聞いたのです。聞けば、兄上が今後の政務を取り仕切るというではありませんか。一体どうなっているのです?」
どうもこうも、エディン嬢などはもはや放っておいても問題のない人物だ。処分についても正直、追放刑か初段化という違いぐらいだろう。態勢を整えるのに問題ないからすっかり忘れていたな。
「お前はどうしたいのだ?もちろん無罪放免という訳にはいかんが」
「当然、彼女の復帰を望みます」
「それは無理だ。仮にも貴族の令嬢たるものが、国の重要機密に手を出したのだ。本来であれば即刻処刑されているところなのだぞ」
「分かっています!しかし、どうにかなりませんか?」
「以前にも言った通り、どんなに緩めたとしても一生監視付きで、過ごす以外にはないな」
「で、では、その任を私に命じてください。必ず任務を全う致します」
「いいのか?罪人に付き添うということは、もはや王族としては活動できないぞ?」
「構いません!なんとしてでもエディンを救いたいのです!」
何とも滑稽なことだ。相手はただ権力の象徴としてクレヒルトを見て、またその思いにすがって除名嘆願をしているだけだというのに。
「…お前がそこまで言うのならわかった」
「兄上!」
「移送するのにも準備がいるからお前も用意をしろ。無論、大荷物は持って行けない。鞄一つにまとめるのだ」
「はいっ!」
元気よく飛び出していくクレヒルト。今が幸せの絶頂期といったところか。
「どうなさるのですかレスター殿下?」
「決まっている。王宮奥の特別収容房を使う。陛下たちには悟られるなよ」
「良いのですか?仮にも王族ですよ」
「本人が王族としての務めを果たさぬといったのだ。ならば、こちらもそれに応えるまでだ」
「期限は?」
「私に第2子が無事生まれるまでだ。それ以降は王族の血も不要だろう」
最悪、2子とも女でも構わない。魔導王国では女王も珍しくはない。魔導王国出身の王妃存命の内はどうとでもなるだろう。
「かしこまりました」
これで厄介な問題はすべて解決した。この先は安定した運営が出来るだろう。
-----
「陛下!こちらでしたか。お疲れでしょう、そろそろ休まれては?」
「ああ、カノンか。わかった休憩にしよう」
「エレンディア様もお待ちですよ」
「あいつもいるのか…」
「また、そんなことを言って…。フェン様もご一緒ですよ」
「フェンもいるのか。賑やかそうだな」
「はい。では行きましょう!」
庭に出るとすでにそこにはエレンディアとフェンがいた。エレンディアの胸元には生まれて10か月のシアもいる。
「お待ちしておりました陛下」
「ちちうえ~」
「うむ、元気だったか?」
政務で王宮を離れることもあり、フェンとは10日ぶりぐらいだ。
「はい!」
和やかな時間が過ぎていく。当初はカノンさえいれば良いと思っていたが、最近ではエレンディアも丸くなってきて、邪魔と思うことが少なくなった。まあそれも、政務を肩代わりしてくれ代わりに地方への視察をこなしてくれる面もあるが。
「さあ、お茶にいたしましょう」
カノンがお茶を入れてくれる。
「ん?このお茶は…」
「分かりましたか。相変わらずレスター様の舌には感服です」
まあ、幼い頃より毒に慣らしているせいで、想定と違うものがあればすぐに分かってしまうだけなのだがな。
「ほとんど味を損なうことなく栄養も取れる新作の薬です」
「また、新しいものを作ったのか?通りで最近見なかったわけだ」
「それほど打ち込んでいませんよ。ほんの4日程度です」
ま、それぐらいなら構わないか…。以前は目を話すとすぐに2週間ほど帰らなかったからな。心配させまいと周囲にも報告済みというのには参った。
「そういえば以前作った瓶の件だが、生産に入ったぞ」
「本当ですか?これでもっと安く薬が作れますね」
カノンが先日作ったのは薬ではなくそれを入れる瓶だ。密封性に優れこれまで2週間ほどしか持たなかった薬の期限を、ふた月ほどまで伸ばした。原料の入手性を上げた生産方法とともに、我が国から今までよりさらに安く薬を輸出できるようになるだろう。
「で、この栄養剤はどのぐらいかかるんだ?」
「それが…」
カノンが耳打ちしてきた金額は以前の魔力回復薬並みの高額だった。
「そんなにかかるのか?」
「まだ、作成から栄養価の減少を抑えることが出来ず、作ってから3時間以内でないと効果が大幅に落ちてしまうんです」
「そんなものを研究しても仕方ないだろう?価格も栄養も他の物で十分補えるだろう?」
「陛下の所為ですわ。ろくに休みも取らず、あっちへ視察、今度は政務。外出と引きこもりの繰り返しでしょう。そうやって、いつも忙しそうにされているので、心配してお作りになったのですよ」
「エレンディア様…」
「そうだったのか、心配をかけてすまないな。だが、これでもう大丈夫だな。今日はゆっくりするとしよう」
「じゃあ、遊ぼう父上」
「そうだな」
フェンたちのと過ごす時間も多く、結局あまりカノンと話すことが出来なかったが、有意義な休みとなった。
コンコン
「入れ」
「お邪魔いたします」
「エレンディアか…わざわざ来るとは珍しいな」
「あの話本当ですか?」
「ケインの件か?」
「ええ。折角、カノン様との第1子ですのに生まれて2年で養子に出すなど…。てっきり後継者になさるのではないかと思っておりました」
「あいつがいると、カノンが自由に動けんからな。それに、ケインをエレステン伯爵家に入れればメリットもある。現に養子入りを条件に、カノンがあの家にいたころの薬の権利をくれるというのだからな」
「くれるのではなく差し出すのでしょう?」
「何も得ずに王家と争って、敗れるよりは賢明な判断だろう?親と違って、カノンの弟もそこそこ賢いようだ」
「しかし、貴族たちが心配です。一昨年のクレヒルト様の病死といい、昨年のエレステン前伯爵の急死といいタイミングが良すぎですわ」
「そればかりは仕方がない。クレヒルトは無用になった、前伯爵はたかだか王族の子を産んだぐらいで大きく出て来られてはな。自身の価値を勘違いするものはこの国には不要だ」
折角、カノンの研究成果を元手に世界中の大国と優位に渡り合っているところにケチがついてはならない。この国はさらに発展する余地も下地も出来つつあるのだ。
「まあ、それが聞けただけでも良しとしましょう。それでは…」
エレンディアも出て行き、部屋で1人過ごす。
「即位してはや7年か…。いや、まだだ。これからもっと国を大きくする!」
カノンを手に入れ、国も富ませた。俺にはもっと多くのことが成せる筈だ。
グレンデル王国レスター王。のちにグレンデル大帝と追尊され大グレンデル帝国を建国するフェン皇帝の父親である。国の改革を推し進め、わずか19年の治世で、収入を大幅に増やしのちの帝国化の礎を作った。3男2女をもうけ40台の若さで国王から退き、公の場に出ることはなかった。しかし、その後も数多くの政策・外交に関与したと言われる。
ここまで読んでくださり、ありがとうございます。全く話が浮かばない中、何とか書きましたがこういうキャラを描くのは難しいです。今後、文章訂正以外で更新することはないと思いますが、続けて読んでいただいた方、新たに読まれた方ありがとうございました。
「どうした?珍しいな」
「どうしたもありません!エディンのことはどうなっているのです!」
「エディン?ああ、処分保留のままだったな。しかし、なぜここへ?」
「父上に聞いたのです。聞けば、兄上が今後の政務を取り仕切るというではありませんか。一体どうなっているのです?」
どうもこうも、エディン嬢などはもはや放っておいても問題のない人物だ。処分についても正直、追放刑か初段化という違いぐらいだろう。態勢を整えるのに問題ないからすっかり忘れていたな。
「お前はどうしたいのだ?もちろん無罪放免という訳にはいかんが」
「当然、彼女の復帰を望みます」
「それは無理だ。仮にも貴族の令嬢たるものが、国の重要機密に手を出したのだ。本来であれば即刻処刑されているところなのだぞ」
「分かっています!しかし、どうにかなりませんか?」
「以前にも言った通り、どんなに緩めたとしても一生監視付きで、過ごす以外にはないな」
「で、では、その任を私に命じてください。必ず任務を全う致します」
「いいのか?罪人に付き添うということは、もはや王族としては活動できないぞ?」
「構いません!なんとしてでもエディンを救いたいのです!」
何とも滑稽なことだ。相手はただ権力の象徴としてクレヒルトを見て、またその思いにすがって除名嘆願をしているだけだというのに。
「…お前がそこまで言うのならわかった」
「兄上!」
「移送するのにも準備がいるからお前も用意をしろ。無論、大荷物は持って行けない。鞄一つにまとめるのだ」
「はいっ!」
元気よく飛び出していくクレヒルト。今が幸せの絶頂期といったところか。
「どうなさるのですかレスター殿下?」
「決まっている。王宮奥の特別収容房を使う。陛下たちには悟られるなよ」
「良いのですか?仮にも王族ですよ」
「本人が王族としての務めを果たさぬといったのだ。ならば、こちらもそれに応えるまでだ」
「期限は?」
「私に第2子が無事生まれるまでだ。それ以降は王族の血も不要だろう」
最悪、2子とも女でも構わない。魔導王国では女王も珍しくはない。魔導王国出身の王妃存命の内はどうとでもなるだろう。
「かしこまりました」
これで厄介な問題はすべて解決した。この先は安定した運営が出来るだろう。
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「陛下!こちらでしたか。お疲れでしょう、そろそろ休まれては?」
「ああ、カノンか。わかった休憩にしよう」
「エレンディア様もお待ちですよ」
「あいつもいるのか…」
「また、そんなことを言って…。フェン様もご一緒ですよ」
「フェンもいるのか。賑やかそうだな」
「はい。では行きましょう!」
庭に出るとすでにそこにはエレンディアとフェンがいた。エレンディアの胸元には生まれて10か月のシアもいる。
「お待ちしておりました陛下」
「ちちうえ~」
「うむ、元気だったか?」
政務で王宮を離れることもあり、フェンとは10日ぶりぐらいだ。
「はい!」
和やかな時間が過ぎていく。当初はカノンさえいれば良いと思っていたが、最近ではエレンディアも丸くなってきて、邪魔と思うことが少なくなった。まあそれも、政務を肩代わりしてくれ代わりに地方への視察をこなしてくれる面もあるが。
「さあ、お茶にいたしましょう」
カノンがお茶を入れてくれる。
「ん?このお茶は…」
「分かりましたか。相変わらずレスター様の舌には感服です」
まあ、幼い頃より毒に慣らしているせいで、想定と違うものがあればすぐに分かってしまうだけなのだがな。
「ほとんど味を損なうことなく栄養も取れる新作の薬です」
「また、新しいものを作ったのか?通りで最近見なかったわけだ」
「それほど打ち込んでいませんよ。ほんの4日程度です」
ま、それぐらいなら構わないか…。以前は目を話すとすぐに2週間ほど帰らなかったからな。心配させまいと周囲にも報告済みというのには参った。
「そういえば以前作った瓶の件だが、生産に入ったぞ」
「本当ですか?これでもっと安く薬が作れますね」
カノンが先日作ったのは薬ではなくそれを入れる瓶だ。密封性に優れこれまで2週間ほどしか持たなかった薬の期限を、ふた月ほどまで伸ばした。原料の入手性を上げた生産方法とともに、我が国から今までよりさらに安く薬を輸出できるようになるだろう。
「で、この栄養剤はどのぐらいかかるんだ?」
「それが…」
カノンが耳打ちしてきた金額は以前の魔力回復薬並みの高額だった。
「そんなにかかるのか?」
「まだ、作成から栄養価の減少を抑えることが出来ず、作ってから3時間以内でないと効果が大幅に落ちてしまうんです」
「そんなものを研究しても仕方ないだろう?価格も栄養も他の物で十分補えるだろう?」
「陛下の所為ですわ。ろくに休みも取らず、あっちへ視察、今度は政務。外出と引きこもりの繰り返しでしょう。そうやって、いつも忙しそうにされているので、心配してお作りになったのですよ」
「エレンディア様…」
「そうだったのか、心配をかけてすまないな。だが、これでもう大丈夫だな。今日はゆっくりするとしよう」
「じゃあ、遊ぼう父上」
「そうだな」
フェンたちのと過ごす時間も多く、結局あまりカノンと話すことが出来なかったが、有意義な休みとなった。
コンコン
「入れ」
「お邪魔いたします」
「エレンディアか…わざわざ来るとは珍しいな」
「あの話本当ですか?」
「ケインの件か?」
「ええ。折角、カノン様との第1子ですのに生まれて2年で養子に出すなど…。てっきり後継者になさるのではないかと思っておりました」
「あいつがいると、カノンが自由に動けんからな。それに、ケインをエレステン伯爵家に入れればメリットもある。現に養子入りを条件に、カノンがあの家にいたころの薬の権利をくれるというのだからな」
「くれるのではなく差し出すのでしょう?」
「何も得ずに王家と争って、敗れるよりは賢明な判断だろう?親と違って、カノンの弟もそこそこ賢いようだ」
「しかし、貴族たちが心配です。一昨年のクレヒルト様の病死といい、昨年のエレステン前伯爵の急死といいタイミングが良すぎですわ」
「そればかりは仕方がない。クレヒルトは無用になった、前伯爵はたかだか王族の子を産んだぐらいで大きく出て来られてはな。自身の価値を勘違いするものはこの国には不要だ」
折角、カノンの研究成果を元手に世界中の大国と優位に渡り合っているところにケチがついてはならない。この国はさらに発展する余地も下地も出来つつあるのだ。
「まあ、それが聞けただけでも良しとしましょう。それでは…」
エレンディアも出て行き、部屋で1人過ごす。
「即位してはや7年か…。いや、まだだ。これからもっと国を大きくする!」
カノンを手に入れ、国も富ませた。俺にはもっと多くのことが成せる筈だ。
グレンデル王国レスター王。のちにグレンデル大帝と追尊され大グレンデル帝国を建国するフェン皇帝の父親である。国の改革を推し進め、わずか19年の治世で、収入を大幅に増やしのちの帝国化の礎を作った。3男2女をもうけ40台の若さで国王から退き、公の場に出ることはなかった。しかし、その後も数多くの政策・外交に関与したと言われる。
ここまで読んでくださり、ありがとうございます。全く話が浮かばない中、何とか書きましたがこういうキャラを描くのは難しいです。今後、文章訂正以外で更新することはないと思いますが、続けて読んでいただいた方、新たに読まれた方ありがとうございました。
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私は社交界デビューすることは叶わず、そのまま治療することになった。
たまに調子がいい日もあるが、社交界に出席する予定の日には決まって体調を崩した。医者は緊張して体調を崩してしまうのだろうといった。
でも最近はグレン様が会いに来ると約束してくれた日にも必ず体調を崩すようになってしまった。それでも以前はグレン様が心配して、私の部屋で1時間ほど話をしてくれていたのに、最近はグレン様を姉が玄関で出迎え、2人で私の部屋に来て、挨拶だけして、2人でお茶をするからと消えていくようになった。
でもそれも私の体調のせい。私が体調さえ崩さなければ……
今では月の半分はベットで過ごさなければいけないほどになってしまった。
でもある日婚約者の裏切りに気づいてしまう。
私は耐えられなかった。
もうすべてに………
病が治る見込みだってないのに。
なんて滑稽なのだろう。
もういや……
誰からも愛されないのも
誰からも必要とされないのも
治らない病の為にずっとベッドで寝ていなければいけないのも。
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私は死ぬ場所を探していたのかもしれない。家よりも少しでも幸せを感じて死にたいと。
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---------------------------------------------
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今度は政務と外に出たり
今度は誰々と外に出たり
今度は政務として外に出たり
※誰々には名前を入れる。どっちか?
指摘有難うございます
ちょっとだけ表現を変えてみました。どうでしょうか?