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2人の王子 情と欲
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あれから数日が経った。いよいよ、問題の解決に近づいてきた。
「報告を」
「はっ!調査の結果、アルター侯爵が指示を出していたのが、ギュシュテン伯爵でした」
「ギュシュテン伯爵か…急先鋒でも貴族派というほどでもない人物だったな」
「確かにそうでした。しかし、身分についての野心は高かったようで、書面で地位を約束させていたようです」
思い切ったことをしたものだ。最もそれも無駄に終わったわけだが。
「では早々に主だった貴族を集めて排除をしてしまうか」
「御意。すでに宰相殿には話を通しておりますので、後はいつやるかですね」
「うむ。早急に事態を収拾しなければな。それと、エディン嬢に関してはどうだ?」
「そちらに関しては闇ギルドを通して、間接的に連絡を取っていたようです。本人は王族の仲間入りができるということで深く考えなかったようです」
「まあ、それは予想通りというか…。しかし、ことは国を揺るがしかねない事態だ。処分は免れんだろう」
「それに関してはクレヒルト殿下の意向が入ると思いますが、いかがなさいますか?」
「仕方ないだろう。本人もろとも多少窮屈になると思うが、自分で選んだ道だ」
「知らないこととは言えですか?」
「王族であるならそれこそ罪だ。有象無象の好奇の目を常に受けているのだからな」
「では、処分の方もその通りに…。しかし、陛下のご威光は?」
「陛下はそれも含めての報告は初めてだろう。そこまで気が回らんはずだ」
「では、当日はそのように…」
宰相との調整のためシリウスが出て行く。まあ、早ければ明後日にでも集まれるだろう。その後はしばらくは忙しくなるかもしれないが、ようやく安定した動きができるようになる。
ーーーーー
それから2日が経ち、いよいよ今日はアルター侯爵一派を断罪するときが来た。
「本日は、よくぞ集まってくれた!」
「陛下、ご機嫌麗しく。して、本日はどのような用件でしょうか?」
「うむ。わが国において不穏な動きをしているものが判明したのでな。皆にも報告をと思ってな」
「不穏な動きですか?」
「そうだ。諸君らの中から反乱分子が出たことが判明した!」
一気に陛下の言葉で会場がざわつく。貴族派も王族派も程度の差はあれど、反乱分子という極めて強い表現に驚いている様だ。
「ここにその証拠となる書状がある」
陛下の言葉とともに宰相殿が書状を皆に見せる。
「こ、これは!アルター侯爵が…」
「確かに、この新体制図にはアルター侯爵が最上位に位置している」
「な、何を!これは何かの間違いです陛下」
「これを見つけたのは私とそこにいる息子ですが、それでも証拠として疑いますか?」
「シ、シウス男爵…それにシリウス殿」
「我が家系がこの国においてどのような役割を担っているか、知らぬ侯爵ではないでしょう?」
「そういうことだ。もはや言い逃れはできんぞ!」
「くっ。せ、せめて我が家には慈悲を…」
「ならぬ!貴様の計が成っていれば我ら一族が死に絶えたのは明らかだ。その血を持って償うがいい!」
「うぅ…」
正面には国一番の影、そばにもその息子がいるとなれば、さしもの侯爵も身動きが取れずその場で取り押さえられた。
「他にもこの新体制図に載っているものについては、関連性を確認し相応の処罰を行う!特にギュシュテン伯爵!」
「は、はっ!」
「そなたについては現時点で判明しておる。罪を免れると思うなよ」
「御意…」
がくりと肩を落としギュシュテン伯爵も衛兵によって確保される。
「現時点で判明している他の貴族についてもここで処分を行う!レスター頼んだぞ」
「はっ!では、まず…」
新体制図を基に貴族派の主だったものを呼んでいく。この場にはいないものもいるが、その者についてはすでに使いを出しているので、対応済みだ。
「最後にトールマン子爵とその娘、エディン嬢だ」
「は、はっ!」
「えっ!私が何で?」
エディン嬢は今回は重大な報告があるということで子爵に連れて来てもらった。本人の豪華なドレスを見るに、王族との婚約発表とでも思っていたのだろう。
「お前たちにはアルター侯爵との関連が疑われている。少なくともエディン嬢については調べも付いている」
「そ、そんな!私はアルター侯爵とは繋がりがありません!」
「なるほど、ではこいつは知っているか?」
「あ、あんたは!」
袖口から一人の男を連れ出す。こいつは闇ギルドの一員でギュシュテン伯爵からの命令をエディン嬢に伝えていた男だ。
「どうやら顔見知りのようだな。こいつがギュシュテン伯爵を通じて、アルター侯爵からの命令をお前に伝えていたのだ」
「そんな男知りません!大体、何を指示したと…」
「魔力病の治療薬といえばわかるだろう?」
「ま、魔力病の治療薬…。やはり、クレヒルト殿下の病は…」
「噂では研究が最終段階だと言われていたが、本当に完成していたのか?」
「そうだ!ここに居る諸君には実際に治療が確認できるまで伏せることとなったが、今この時から魔力病は脅威ではなくなったのだ!」
「おおっ!それでは息子も…」
「うむ。だがまずはエディン嬢の件だ。そなたは研究所から完成したばかりの薬を盗み、クレヒルトに与えたな?」
「そ、それは、あ、愛の力ですわ!」
「まだ白を切るのか?どうせ、完治したか分からないため、念のために多めに確保していたのだろう。貴様の部屋から薬学研究所の瓶が確認されている!」
「なっ!勝手に…」
「子爵も了承済みだ。今回の件に関しては関与していないという証明のためにな」
「お、お父様!」
「すまんが、エディン。これも、土地を…民を守るためなのだ」
「あ、兄上!先ほどの言葉は誠ですか!」
「クレヒルト、聞いていたのか…。残念ながら事実だ。エディン嬢は国の重大研究成果を盗み出し、個人の利益のために動いた大罪人だ」
「し、しかしそれは私を思ってのこと…」
予想通りではあるが、ここで正気に戻ってもらいたいところではあったな。是非も無しか…。
「そ、そうですわ!私は愛のために多少間違った手段に訴えてしまったのです」
「うむ、結果として私の病は治ったのだし、処分というのは…」
「それでは示しがつかん。それに、彼女が協力していたのは我らの命を狙っていたのだぞ?」
「ですが…」
「ではこうしよう。彼女の罪を減刑し、代わりにお前の監視下に置くのだ。もっとも、罪人であることは変わらぬから待遇に関してはいままで通りとは行かないが」
「ほ、本当ですか?」
「無論、陛下のお許しがあればこそだ」
「ち、父上!どうでしょうか!」
期待を込めて陛下にすがるクレヒルト。堕ちたものだ。陛下とて流石に自らの命を狙う連中に与していたものを許す気はないだろうに。しかし、愛する息子の願いと思って、どうするべきか考えあぐねているようだ。
「しかしだな、仮にも王族の命を狙った一味なのだぞ?」
「本人はあずかり知らぬところではありませんか!」
「だが、レスターの言うように何もなかったようにはできん」
結局、もめにもめた末に今日のところは処分保留となった。とはいっても、家に帰すようなことにはならなかったが。
「まあ、おおむね予想通りだったな」
「お疲れさまでした殿下」
「ああ、シリウスたちの調査のお陰だ。して、陛下は?」
「先ほどのエディン嬢の処理などで頭を悩まされております。もっとも、貴族派の勢いが大幅に弱まったので、その点は明るいようですが…」
その後、陛下からは1通の書類が届いた。内容はというと。
『此度の働き見事であった。即位にはまだ早いが、これだけの成果をあげられれば我が国も安泰だろう。貴族派も勢力が弱まった今、私が直接政務をとる必要もなくなった。これからはお前がわしの代わりにこの国を治めるのだ。何か問題があった時は存分に頼るがよい』
「なんですかこれは?」
「事実上の委任状だな。どうやら、自分で答えを出す気がなくなったらしい」
アルター侯爵たちの処刑など、主だった処分を行った後にこれを寄越すとは、相変わらず自分勝手な方だ。
「だが、これで実質運営は私と宰相殿に任されるわけだ。まずは戴冠式の日を早められるよう手配をしろ」
「はっ!」
こうして、グレンデル王国は新たな体制、新たな時代へと舵を切って行った。
「報告を」
「はっ!調査の結果、アルター侯爵が指示を出していたのが、ギュシュテン伯爵でした」
「ギュシュテン伯爵か…急先鋒でも貴族派というほどでもない人物だったな」
「確かにそうでした。しかし、身分についての野心は高かったようで、書面で地位を約束させていたようです」
思い切ったことをしたものだ。最もそれも無駄に終わったわけだが。
「では早々に主だった貴族を集めて排除をしてしまうか」
「御意。すでに宰相殿には話を通しておりますので、後はいつやるかですね」
「うむ。早急に事態を収拾しなければな。それと、エディン嬢に関してはどうだ?」
「そちらに関しては闇ギルドを通して、間接的に連絡を取っていたようです。本人は王族の仲間入りができるということで深く考えなかったようです」
「まあ、それは予想通りというか…。しかし、ことは国を揺るがしかねない事態だ。処分は免れんだろう」
「それに関してはクレヒルト殿下の意向が入ると思いますが、いかがなさいますか?」
「仕方ないだろう。本人もろとも多少窮屈になると思うが、自分で選んだ道だ」
「知らないこととは言えですか?」
「王族であるならそれこそ罪だ。有象無象の好奇の目を常に受けているのだからな」
「では、処分の方もその通りに…。しかし、陛下のご威光は?」
「陛下はそれも含めての報告は初めてだろう。そこまで気が回らんはずだ」
「では、当日はそのように…」
宰相との調整のためシリウスが出て行く。まあ、早ければ明後日にでも集まれるだろう。その後はしばらくは忙しくなるかもしれないが、ようやく安定した動きができるようになる。
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それから2日が経ち、いよいよ今日はアルター侯爵一派を断罪するときが来た。
「本日は、よくぞ集まってくれた!」
「陛下、ご機嫌麗しく。して、本日はどのような用件でしょうか?」
「うむ。わが国において不穏な動きをしているものが判明したのでな。皆にも報告をと思ってな」
「不穏な動きですか?」
「そうだ。諸君らの中から反乱分子が出たことが判明した!」
一気に陛下の言葉で会場がざわつく。貴族派も王族派も程度の差はあれど、反乱分子という極めて強い表現に驚いている様だ。
「ここにその証拠となる書状がある」
陛下の言葉とともに宰相殿が書状を皆に見せる。
「こ、これは!アルター侯爵が…」
「確かに、この新体制図にはアルター侯爵が最上位に位置している」
「な、何を!これは何かの間違いです陛下」
「これを見つけたのは私とそこにいる息子ですが、それでも証拠として疑いますか?」
「シ、シウス男爵…それにシリウス殿」
「我が家系がこの国においてどのような役割を担っているか、知らぬ侯爵ではないでしょう?」
「そういうことだ。もはや言い逃れはできんぞ!」
「くっ。せ、せめて我が家には慈悲を…」
「ならぬ!貴様の計が成っていれば我ら一族が死に絶えたのは明らかだ。その血を持って償うがいい!」
「うぅ…」
正面には国一番の影、そばにもその息子がいるとなれば、さしもの侯爵も身動きが取れずその場で取り押さえられた。
「他にもこの新体制図に載っているものについては、関連性を確認し相応の処罰を行う!特にギュシュテン伯爵!」
「は、はっ!」
「そなたについては現時点で判明しておる。罪を免れると思うなよ」
「御意…」
がくりと肩を落としギュシュテン伯爵も衛兵によって確保される。
「現時点で判明している他の貴族についてもここで処分を行う!レスター頼んだぞ」
「はっ!では、まず…」
新体制図を基に貴族派の主だったものを呼んでいく。この場にはいないものもいるが、その者についてはすでに使いを出しているので、対応済みだ。
「最後にトールマン子爵とその娘、エディン嬢だ」
「は、はっ!」
「えっ!私が何で?」
エディン嬢は今回は重大な報告があるということで子爵に連れて来てもらった。本人の豪華なドレスを見るに、王族との婚約発表とでも思っていたのだろう。
「お前たちにはアルター侯爵との関連が疑われている。少なくともエディン嬢については調べも付いている」
「そ、そんな!私はアルター侯爵とは繋がりがありません!」
「なるほど、ではこいつは知っているか?」
「あ、あんたは!」
袖口から一人の男を連れ出す。こいつは闇ギルドの一員でギュシュテン伯爵からの命令をエディン嬢に伝えていた男だ。
「どうやら顔見知りのようだな。こいつがギュシュテン伯爵を通じて、アルター侯爵からの命令をお前に伝えていたのだ」
「そんな男知りません!大体、何を指示したと…」
「魔力病の治療薬といえばわかるだろう?」
「ま、魔力病の治療薬…。やはり、クレヒルト殿下の病は…」
「噂では研究が最終段階だと言われていたが、本当に完成していたのか?」
「そうだ!ここに居る諸君には実際に治療が確認できるまで伏せることとなったが、今この時から魔力病は脅威ではなくなったのだ!」
「おおっ!それでは息子も…」
「うむ。だがまずはエディン嬢の件だ。そなたは研究所から完成したばかりの薬を盗み、クレヒルトに与えたな?」
「そ、それは、あ、愛の力ですわ!」
「まだ白を切るのか?どうせ、完治したか分からないため、念のために多めに確保していたのだろう。貴様の部屋から薬学研究所の瓶が確認されている!」
「なっ!勝手に…」
「子爵も了承済みだ。今回の件に関しては関与していないという証明のためにな」
「お、お父様!」
「すまんが、エディン。これも、土地を…民を守るためなのだ」
「あ、兄上!先ほどの言葉は誠ですか!」
「クレヒルト、聞いていたのか…。残念ながら事実だ。エディン嬢は国の重大研究成果を盗み出し、個人の利益のために動いた大罪人だ」
「し、しかしそれは私を思ってのこと…」
予想通りではあるが、ここで正気に戻ってもらいたいところではあったな。是非も無しか…。
「そ、そうですわ!私は愛のために多少間違った手段に訴えてしまったのです」
「うむ、結果として私の病は治ったのだし、処分というのは…」
「それでは示しがつかん。それに、彼女が協力していたのは我らの命を狙っていたのだぞ?」
「ですが…」
「ではこうしよう。彼女の罪を減刑し、代わりにお前の監視下に置くのだ。もっとも、罪人であることは変わらぬから待遇に関してはいままで通りとは行かないが」
「ほ、本当ですか?」
「無論、陛下のお許しがあればこそだ」
「ち、父上!どうでしょうか!」
期待を込めて陛下にすがるクレヒルト。堕ちたものだ。陛下とて流石に自らの命を狙う連中に与していたものを許す気はないだろうに。しかし、愛する息子の願いと思って、どうするべきか考えあぐねているようだ。
「しかしだな、仮にも王族の命を狙った一味なのだぞ?」
「本人はあずかり知らぬところではありませんか!」
「だが、レスターの言うように何もなかったようにはできん」
結局、もめにもめた末に今日のところは処分保留となった。とはいっても、家に帰すようなことにはならなかったが。
「まあ、おおむね予想通りだったな」
「お疲れさまでした殿下」
「ああ、シリウスたちの調査のお陰だ。して、陛下は?」
「先ほどのエディン嬢の処理などで頭を悩まされております。もっとも、貴族派の勢いが大幅に弱まったので、その点は明るいようですが…」
その後、陛下からは1通の書類が届いた。内容はというと。
『此度の働き見事であった。即位にはまだ早いが、これだけの成果をあげられれば我が国も安泰だろう。貴族派も勢力が弱まった今、私が直接政務をとる必要もなくなった。これからはお前がわしの代わりにこの国を治めるのだ。何か問題があった時は存分に頼るがよい』
「なんですかこれは?」
「事実上の委任状だな。どうやら、自分で答えを出す気がなくなったらしい」
アルター侯爵たちの処刑など、主だった処分を行った後にこれを寄越すとは、相変わらず自分勝手な方だ。
「だが、これで実質運営は私と宰相殿に任されるわけだ。まずは戴冠式の日を早められるよう手配をしろ」
「はっ!」
こうして、グレンデル王国は新たな体制、新たな時代へと舵を切って行った。
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