騎士爵とおてんば令嬢【完結済】

弓立歩

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本編

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そして、ガーランド騎士爵家に俺は帰ってきた。

「それでそのまま帰ってこられたのですか?」

「仕方ないだろうカレン。相手は子爵だ。面と向かって嫌ですなんて言おうものなら、首が飛ぶ。そうなればロイやカレンも出ていかないといけない」

「そうですが、ガーランド様は嫌ではないですか?」

「顔は見たことはあるが、実際に話したことはないからわからんな。あいつにからかわれるのだけは確実だが」

そう思うと友人のカイラスの顔を思い浮かべる。暇さえあれば構ってきて、昨日もそういえばお前には婚約の話はないのかと言ってきたな。まさか、現実になるとは。

「なんにせよ、我が家に新しく人が増えることになる。2人とも手配は任せる」

「では、お部屋は空いている旦那様の横にしておきます」

「ロイ」

主をからかうとはなんて執事だと思いながら抗議する。しかし、奥からカレンの声が聞こえる。今任せると言われましたよねなどといっている。しょうがない使用人たちだ。

「そういえばいつ頃来られるので?」

「4日後だということだ。向こうの方は大丈夫なのだろうか?」

「あちらは子爵家ですので使用人も多く、すぐにでも用意できるでしょう。それにお話を聞く限りではあまり荷物も多くないかもしれません」

「家としてはその方が助かるが…」

この家も他の騎士爵から見れば豪華な方だ。別の家での護衛中に賊の討伐をした褒賞としていただいた。やや敷地も広く維持費もその分多くかかるが、広い中庭で鍛錬も行えるのでそこそこ気に入っている。窮屈だと言わなければいいが…。




「はあ~~」

「また、ため息ついてどうしたのティアナ」

そう友人のサーラが話しかけてくる。彼女は私と同じ子爵家で、12の時に早々に伯爵家との婚姻が決まり、週末ごとに足しげく婚約者の元に通っている。

「聞いてよサーラ。お父様ったら早とちりして婚約話をまとめてきたのよ」

「えらく急な話しね。あなた、これまで縁談の類は受けてないって言ってたじゃない」

「それがサーラにこの前話した、間者を捕まえた騎士の方の名前が聞きたいって言ったら、勘違いしたらしくて私のいないうちに話を進めてたの」

「受ける気なのティアナは?」

「それがもう書類まで提出してて今更撤回できないし、お母様にもこれが最初で最後よと念入りに説明されたわ」

一晩かけてねと付け加えておく。

「それはご愁傷様。ところでお相手の方はなんていう方なの?」

「ガーランド=レイノルって騎士爵の方なの」

「はあっ!?あなたの家、結構歴史ある子爵家よね。あなた長女でしょ?」

「まあ、そこは気にしていないわ。むしろ私の性格だと逆に変に気を使わなくていいかも」

「それにしてもよ。私も家や彼のところの夜会で様々な方の名前を耳にするけれど、聞いたことがないわね」

「なんでも王宮警備隊の方なんだって。でも、捕らえる時のあの身のこなし…きっとすごい騎士様よ!」

目を輝かせて語るティアナには悪いが、そりゃあ王宮警備隊だって王宮勤めなのだから実力はあるだろう。でも、彼女の家の家格からいえば最低でも王宮騎士団の所属であるべきだと思うのだが。ここまで、キラキラな目でいる友人にそれを言うのははばかられた。というか案外この子も乗り気なのではないのだろうか?そして私はのちにこの子の見る目が正しかったと知ることになる。

「それじゃあね~」

「また、来週会いましょう」

私はサーラと別れ家に向かう。伯爵家や侯爵家ともなれば馬車で移動するらしいが、我が家には不要だ。何より清貧の精神に反するため、丁重に入学時に父には断りを入れた。

「ただいま帰りました~」

「お嬢様お帰りなさいませ。あと、口調はもう少し自重ください」

「固いこと言いっこなしよリラ。それより本当に明日には向こうに行くの?」

「はい。私どもも、もう少し待ってはと言ったのですが、お二人ともこれを逃す手はないと頑なでして。ですが、すべてお嬢様を心配してのことですので」

「わかってるわ。実際に学園の中でもかなりの子が婚約してるわけだしね。でも、私が婚約したなんて知ったらみんな大慌てなんじゃないかしら?」

「確かに。万年縁談とは程遠いお嬢様が急に色恋に走ったとお噂になるでしょうね」

「そこは普段から令嬢として頑張った成果ですって言ってくれないの?」

「御冗談を。幼少から庭・街問わず追いかけてきた私たちからすれば口が裂けても申せません」

リラは子爵家にきて12年になる現在22歳の侍女だ。私を子供のころから知っているので割と容赦がない。マナーの講習も彼女から受けたこともあり、なかなか頭が上がらない一人だ。

「でも、みんなとはあんまり会えなくなっちゃうね…」

「そうですね。そういう意味ではちょっとつまらないかもしれませんね」

「どういう意味よ~」

そう言いつつも私もリラもちょっと元気のないやり取りになる。いつでも帰ってきていいと父は言うけれど、向こうの方にも迷惑はかけられないし、そうそう帰ることもなくなってしまうだろう。私はじっくり家を見まわし、使用人たちとあいさつを交わしながらその日を迎えたのだった。

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