3 / 56
本編
3
しおりを挟む
そして、ガーランド騎士爵家に俺は帰ってきた。
「それでそのまま帰ってこられたのですか?」
「仕方ないだろうカレン。相手は子爵だ。面と向かって嫌ですなんて言おうものなら、首が飛ぶ。そうなればロイやカレンも出ていかないといけない」
「そうですが、ガーランド様は嫌ではないですか?」
「顔は見たことはあるが、実際に話したことはないからわからんな。あいつにからかわれるのだけは確実だが」
そう思うと友人のカイラスの顔を思い浮かべる。暇さえあれば構ってきて、昨日もそういえばお前には婚約の話はないのかと言ってきたな。まさか、現実になるとは。
「なんにせよ、我が家に新しく人が増えることになる。2人とも手配は任せる」
「では、お部屋は空いている旦那様の横にしておきます」
「ロイ」
主をからかうとはなんて執事だと思いながら抗議する。しかし、奥からカレンの声が聞こえる。今任せると言われましたよねなどといっている。しょうがない使用人たちだ。
「そういえばいつ頃来られるので?」
「4日後だということだ。向こうの方は大丈夫なのだろうか?」
「あちらは子爵家ですので使用人も多く、すぐにでも用意できるでしょう。それにお話を聞く限りではあまり荷物も多くないかもしれません」
「家としてはその方が助かるが…」
この家も他の騎士爵から見れば豪華な方だ。別の家での護衛中に賊の討伐をした褒賞としていただいた。やや敷地も広く維持費もその分多くかかるが、広い中庭で鍛錬も行えるのでそこそこ気に入っている。窮屈だと言わなければいいが…。
「はあ~~」
「また、ため息ついてどうしたのティアナ」
そう友人のサーラが話しかけてくる。彼女は私と同じ子爵家で、12の時に早々に伯爵家との婚姻が決まり、週末ごとに足しげく婚約者の元に通っている。
「聞いてよサーラ。お父様ったら早とちりして婚約話をまとめてきたのよ」
「えらく急な話しね。あなた、これまで縁談の類は受けてないって言ってたじゃない」
「それがサーラにこの前話した、間者を捕まえた騎士の方の名前が聞きたいって言ったら、勘違いしたらしくて私のいないうちに話を進めてたの」
「受ける気なのティアナは?」
「それがもう書類まで提出してて今更撤回できないし、お母様にもこれが最初で最後よと念入りに説明されたわ」
一晩かけてねと付け加えておく。
「それはご愁傷様。ところでお相手の方はなんていう方なの?」
「ガーランド=レイノルって騎士爵の方なの」
「はあっ!?あなたの家、結構歴史ある子爵家よね。あなた長女でしょ?」
「まあ、そこは気にしていないわ。むしろ私の性格だと逆に変に気を使わなくていいかも」
「それにしてもよ。私も家や彼のところの夜会で様々な方の名前を耳にするけれど、聞いたことがないわね」
「なんでも王宮警備隊の方なんだって。でも、捕らえる時のあの身のこなし…きっとすごい騎士様よ!」
目を輝かせて語るティアナには悪いが、そりゃあ王宮警備隊だって王宮勤めなのだから実力はあるだろう。でも、彼女の家の家格からいえば最低でも王宮騎士団の所属であるべきだと思うのだが。ここまで、キラキラな目でいる友人にそれを言うのははばかられた。というか案外この子も乗り気なのではないのだろうか?そして私はのちにこの子の見る目が正しかったと知ることになる。
「それじゃあね~」
「また、来週会いましょう」
私はサーラと別れ家に向かう。伯爵家や侯爵家ともなれば馬車で移動するらしいが、我が家には不要だ。何より清貧の精神に反するため、丁重に入学時に父には断りを入れた。
「ただいま帰りました~」
「お嬢様お帰りなさいませ。あと、口調はもう少し自重ください」
「固いこと言いっこなしよリラ。それより本当に明日には向こうに行くの?」
「はい。私どもも、もう少し待ってはと言ったのですが、お二人ともこれを逃す手はないと頑なでして。ですが、すべてお嬢様を心配してのことですので」
「わかってるわ。実際に学園の中でもかなりの子が婚約してるわけだしね。でも、私が婚約したなんて知ったらみんな大慌てなんじゃないかしら?」
「確かに。万年縁談とは程遠いお嬢様が急に色恋に走ったとお噂になるでしょうね」
「そこは普段から令嬢として頑張った成果ですって言ってくれないの?」
「御冗談を。幼少から庭・街問わず追いかけてきた私たちからすれば口が裂けても申せません」
リラは子爵家にきて12年になる現在22歳の侍女だ。私を子供のころから知っているので割と容赦がない。マナーの講習も彼女から受けたこともあり、なかなか頭が上がらない一人だ。
「でも、みんなとはあんまり会えなくなっちゃうね…」
「そうですね。そういう意味ではちょっとつまらないかもしれませんね」
「どういう意味よ~」
そう言いつつも私もリラもちょっと元気のないやり取りになる。いつでも帰ってきていいと父は言うけれど、向こうの方にも迷惑はかけられないし、そうそう帰ることもなくなってしまうだろう。私はじっくり家を見まわし、使用人たちとあいさつを交わしながらその日を迎えたのだった。
「それでそのまま帰ってこられたのですか?」
「仕方ないだろうカレン。相手は子爵だ。面と向かって嫌ですなんて言おうものなら、首が飛ぶ。そうなればロイやカレンも出ていかないといけない」
「そうですが、ガーランド様は嫌ではないですか?」
「顔は見たことはあるが、実際に話したことはないからわからんな。あいつにからかわれるのだけは確実だが」
そう思うと友人のカイラスの顔を思い浮かべる。暇さえあれば構ってきて、昨日もそういえばお前には婚約の話はないのかと言ってきたな。まさか、現実になるとは。
「なんにせよ、我が家に新しく人が増えることになる。2人とも手配は任せる」
「では、お部屋は空いている旦那様の横にしておきます」
「ロイ」
主をからかうとはなんて執事だと思いながら抗議する。しかし、奥からカレンの声が聞こえる。今任せると言われましたよねなどといっている。しょうがない使用人たちだ。
「そういえばいつ頃来られるので?」
「4日後だということだ。向こうの方は大丈夫なのだろうか?」
「あちらは子爵家ですので使用人も多く、すぐにでも用意できるでしょう。それにお話を聞く限りではあまり荷物も多くないかもしれません」
「家としてはその方が助かるが…」
この家も他の騎士爵から見れば豪華な方だ。別の家での護衛中に賊の討伐をした褒賞としていただいた。やや敷地も広く維持費もその分多くかかるが、広い中庭で鍛錬も行えるのでそこそこ気に入っている。窮屈だと言わなければいいが…。
「はあ~~」
「また、ため息ついてどうしたのティアナ」
そう友人のサーラが話しかけてくる。彼女は私と同じ子爵家で、12の時に早々に伯爵家との婚姻が決まり、週末ごとに足しげく婚約者の元に通っている。
「聞いてよサーラ。お父様ったら早とちりして婚約話をまとめてきたのよ」
「えらく急な話しね。あなた、これまで縁談の類は受けてないって言ってたじゃない」
「それがサーラにこの前話した、間者を捕まえた騎士の方の名前が聞きたいって言ったら、勘違いしたらしくて私のいないうちに話を進めてたの」
「受ける気なのティアナは?」
「それがもう書類まで提出してて今更撤回できないし、お母様にもこれが最初で最後よと念入りに説明されたわ」
一晩かけてねと付け加えておく。
「それはご愁傷様。ところでお相手の方はなんていう方なの?」
「ガーランド=レイノルって騎士爵の方なの」
「はあっ!?あなたの家、結構歴史ある子爵家よね。あなた長女でしょ?」
「まあ、そこは気にしていないわ。むしろ私の性格だと逆に変に気を使わなくていいかも」
「それにしてもよ。私も家や彼のところの夜会で様々な方の名前を耳にするけれど、聞いたことがないわね」
「なんでも王宮警備隊の方なんだって。でも、捕らえる時のあの身のこなし…きっとすごい騎士様よ!」
目を輝かせて語るティアナには悪いが、そりゃあ王宮警備隊だって王宮勤めなのだから実力はあるだろう。でも、彼女の家の家格からいえば最低でも王宮騎士団の所属であるべきだと思うのだが。ここまで、キラキラな目でいる友人にそれを言うのははばかられた。というか案外この子も乗り気なのではないのだろうか?そして私はのちにこの子の見る目が正しかったと知ることになる。
「それじゃあね~」
「また、来週会いましょう」
私はサーラと別れ家に向かう。伯爵家や侯爵家ともなれば馬車で移動するらしいが、我が家には不要だ。何より清貧の精神に反するため、丁重に入学時に父には断りを入れた。
「ただいま帰りました~」
「お嬢様お帰りなさいませ。あと、口調はもう少し自重ください」
「固いこと言いっこなしよリラ。それより本当に明日には向こうに行くの?」
「はい。私どもも、もう少し待ってはと言ったのですが、お二人ともこれを逃す手はないと頑なでして。ですが、すべてお嬢様を心配してのことですので」
「わかってるわ。実際に学園の中でもかなりの子が婚約してるわけだしね。でも、私が婚約したなんて知ったらみんな大慌てなんじゃないかしら?」
「確かに。万年縁談とは程遠いお嬢様が急に色恋に走ったとお噂になるでしょうね」
「そこは普段から令嬢として頑張った成果ですって言ってくれないの?」
「御冗談を。幼少から庭・街問わず追いかけてきた私たちからすれば口が裂けても申せません」
リラは子爵家にきて12年になる現在22歳の侍女だ。私を子供のころから知っているので割と容赦がない。マナーの講習も彼女から受けたこともあり、なかなか頭が上がらない一人だ。
「でも、みんなとはあんまり会えなくなっちゃうね…」
「そうですね。そういう意味ではちょっとつまらないかもしれませんね」
「どういう意味よ~」
そう言いつつも私もリラもちょっと元気のないやり取りになる。いつでも帰ってきていいと父は言うけれど、向こうの方にも迷惑はかけられないし、そうそう帰ることもなくなってしまうだろう。私はじっくり家を見まわし、使用人たちとあいさつを交わしながらその日を迎えたのだった。
0
あなたにおすすめの小説
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
冷徹団長の「ここにいろ」は、騎士団公認の“抱きしめ命令”です
星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー全16話+後日談5話⭐︎
王都最硬派、規律と責任の塊――騎士団長ヴァルド・アークライトは、夜の見回り中に路地で“落とし物”を拾った。
……いや、拾ったのは魔物の卵ではなく、道端で寝ていた少女だった。しかも目覚めた彼女は満面の笑みで「落とし物です!拾ってくださってありがとうございます!」と言い張り、団長の屋敷を“保護施設”だと勘違いして、掃除・料理・当番表作りに騎士の悩み相談まで勝手に開始。
追い出せば泣く、士気は落ちる、そして何より――ヴァルド自身の休息が、彼女の存在に依存し始めていく。
無表情のまま「危ないから、ここにいろ」と命令し続ける団長に、周囲はざわつく。「それ、溺愛ですよ」
騎士団内ではついに“団長語翻訳係”まで誕生し、命令が全部“愛の保護”に変換されていく甘々溺愛コメディ!
嫌われたと思って離れたのに
ラム猫
恋愛
私は、婚約者のカイルに嫌われたと思った。冷たくそっけなく、近づくたびに避けられる日々。
距離を置くことを選び、留学の準備も進めて心を落ち着かせようとするけれど——。
【完結】断りに行ったら、お見合い相手がドストライクだったので、やっぱり結婚します!
櫻野くるみ
恋愛
ソフィーは結婚しないと決めていた。
女だからって、家を守るとか冗談じゃないわ。
私は自立して、商会を立ち上げるんだから!!
しかし断りきれずに、仕方なく行ったお見合いで、好みど真ん中の男性が現れ・・・?
勢いで、「私と結婚して下さい!」と、逆プロポーズをしてしまったが、どうやらお相手も結婚しない主義らしい。
ソフィーも、この人と結婚はしたいけど、外で仕事をする夢も捨てきれない。
果たして悩める乙女は、いいとこ取りの人生を送ることは出来るのか。
完結しました。
余命僅かな大富豪を看取って、円満に未亡人になるはずでした
ぜんだ 夕里
恋愛
傾きかけた家を救うため、私が結んだのはあまりにも不謹慎な契約――余命いくばくもない大富豪の辺境伯様と結婚し、彼の最期を穏やかに看取ることで莫大な遺産を相続する、というものだった。
しかし、人の死を利用して富を得るなど不正義!
そう考えた私が立てたのは、前代未聞の計画。
「そうだ、遺産が残らないくらい贅沢の限りを尽くしてもらえば、すべて丸く収まるじゃない!」
お好きになさって下さい、私は一切気にしませんわ
Kouei
恋愛
婚約者のクレマンド様は、いつも私との約束を破ってばかり。
理由は決まって『従妹ライラ様との用事』
誕生日会にすら来なかった彼に、私はついに告げた。
「どうぞ、私以外のご令嬢をエスコートするなり、お出かけするなり、関係を持つなり、お好きになさって下さい。私は一切気にしませんわ」
二人の想いは、重なり合えるのだろうか ……
※他のサイトにも公開しています。
【完結】ひとつだけ、ご褒美いただけますか?――没落令嬢、氷の王子にお願いしたら溺愛されました。
猫屋敷むぎ
恋愛
没落伯爵家の娘の私、ノエル・カスティーユにとっては少し眩しすぎる学院の舞踏会で――
私の願いは一瞬にして踏みにじられました。
母が苦労して買ってくれた唯一の白いドレスは赤ワインに染められ、
婚約者ジルベールは私を見下ろしてこう言ったのです。
「君は、僕に恥をかかせたいのかい?」
まさか――あの優しい彼が?
そんなはずはない。そう信じていた私に、現実は冷たく突きつけられました。
子爵令嬢カトリーヌの冷笑と取り巻きの嘲笑。
でも、私には、味方など誰もいませんでした。
ただ一人、“氷の王子”カスパル殿下だけが。
白いハンカチを差し出し――その瞬間、止まっていた時間が静かに動き出したのです。
「……ひとつだけ、ご褒美いただけますか?」
やがて、勇気を振り絞って願った、小さな言葉。
それは、水底に沈んでいた私の人生をすくい上げ、
冷たい王子の心をそっと溶かしていく――最初の奇跡でした。
没落令嬢ノエルと、孤独な氷の王子カスパル。
これは、そんなじれじれなふたりが“本当の幸せを掴むまで”のお話です。
※全10話+番外編・約2.5万字の短編。一気読みもどうぞ
※わんこが繋ぐ恋物語です
※因果応報ざまぁ。最後は甘く、後味スッキリ
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる