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本編
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今日もティアナを迎えに学園に向かう。学園に向かう道すがらガーランドは昨日のこと、朝のことを思い出していた。
「…結局、お菓子貰えなかったな」
まあ、でもよくよく考えてみると自然なことかもしれない。カレンやロイは普段から身の回りの世話をするし、来たその日だって、荷物の整理や食事の用意もしていた。学友たちだって話は幾分聞いている限り、普段から世話になっているんだろう。自分がしたことといえば―――。
「稽古?いや、あんなものは普段の訓練程の価値もないだろうしな…」
改めて、ティアナのことをもう少し気にかけようと思いながらガーランドは学園へ向かった。
学園に着くと、ティアナの姿はまだ見えない。きっと、授業が続いているのだろう。授業か懐かしいなと思っていると声をかけられた。
「あっ、あのガーランド様ですか?」
「そうだが?」
見ると、見知らぬ女生徒が立っている。俺が世話になったことのある家の令嬢でもなさそうだ。
「やっぱり。ほら言った通りだったでしょ。この方がティアナ様の婚約者の方よ」
「本当に?まあ、よいものを見てしまいましたわ」
何やら小声で友人の女生徒としゃべっている様だがあまり聞き取れない。ただ、悪意を感じないところを見るとティアナの学園での評判はいいらしい。話に聞く限りではこの学園は高位貴族が多くて、下位貴族の令嬢は肩身が狭いと噂で聞いたことがあった。そこから考えると、俺も好意的にとらえられている感じだ。
「ティアナ様は本日最後の授業担当の方が時間を越える方ですので、もうしばらくお待ちください」
「あ、ああ。どうもありがとうございます」
俺は令嬢に向かって騎士の礼をする。貴族向けに正式な礼があるらしいのだが、そういうのは王宮騎士の仕事なので
俺は知らない。かといってせっかく教えてくれた彼女たちに申し訳ないので、知りうる限りの対応を取る。
「お礼は不要ですわ。それよりも…ティアナ様はやや抜けたところがおありなので、道中よろしくお願いします」
「そうですわ。学園内はともかく、外に居られるときはなかなか目が行き届きませんの」
「はっ。私も騎士の端くれ。必ずお守りいたしますので!」
彼女たちはティアナと仲の良いものなのだろう。しかも、立ち振る舞いから伯爵家以上かと思われる。学園においても隙を見せぬその所作に感嘆しながら、返答する。
「う~ん、困りましたわね。うわさはうわさだと思っておりましたのに」
「ちょっと、攻めにくいですわね。そこら辺に掃いて捨てる程いる男どもと一緒くたにはできませんわ」
「様子見と会の方には言いましょう。サーラ様にもそのように伝えましょう」
「いいことですが、残念ですわね。とりあえず、調査の方はこちらに任せてもらいましょうか」
またもや、2人は話し始めていた。先ほどより小声だが、何か気になることでもあったのだろうか?
「どうかしましたか?」
「あっ、いえ。申し訳ありません。そういうことですので、今しばらくお待ちいただければ来られますので」
「それでは失礼いたします」
すぐに何もありませんという顔であいさつをされ帰られた。見ると、家紋の入った馬車に乗る姿が見えた。やはり名のある家のようだ。それから、10分ほど待つとティアナの姿が見えた。因みにその待ち時間の間は校門の横にいたのだが、女生徒たちが帰るときにしきりに横目で見られた。他家の従者たちも待っているものはいるのだが、そのような目で見られていないところを見ると騎士が珍しいのだろうか?だが、夜会などでも騎士は常駐しているし、そういう訳でもないはずだが。
「お、お待たせしました、ガーランド様」
「いや、今日の最後の講師は話の長い方なのだろう?気にしなくてもいい。それより走ってきたようだが大丈夫か?」
「だ、大丈夫ですが、少々お待ちを」
彼女ははぁ~と深呼吸をして息を整える。その姿もきれいな動作だと思った。
「もう大丈夫です。それより、どうして話の長い方だと知っておられるのです?」
「先ほど、待っている間に2人の女生徒から話しかけられた。ティアナがその講師の授業で捕まっているとな」
「あら、そうだったんですか。お名前は?」
「そういえば聞きそびれてしまったな。おそらく伯爵家以上だとは思うが、馬車が迎えに来ていたぐらいだしな」
俺は簡単な特徴と、家紋をうろ覚えながらも伝える。騎士といっても世話にならない貴族が殆どの身の上としては、ほぼ覚えていない。
「あっ、ではなんとなくわかります。1つ年上の方なのですが、以前からも街に一人で出歩かないようにと、注意を受けたことがあるんです。お二人とも伯爵家の方で、私やサーラともたまに話をするのですが、ちょっと心配症のようで…」
「そうか、上級生だったとはな。ティアナは交流が多いのだな」
「どうでしょう?サーラに比べればまだまだです。彼女は気づいたら別の学年の方とお話してますよ」
ほんとに交流の幅が広いんですと友人を誇らしげに語るティアナの顔は輝いて見えた。
「でも、あのお二人は注意はしてくださいますけど、街へ出向くのは怒らない良い方なんです。入学時などは『供も付けずに街歩きをするなんて、何をしているのですかはしたない!』と別の方に苦言を言われたこともあったのですが、その時なども話をつけていただいて助かってます」
ティアナは無邪気に話をつけるといっているが、その後はその女生徒から嫌味を言われることがないといっていた当たり、手段を問わず話をつけたのだろう。騎士学校でさえそういう話はあったのだが、こういうところではもっと多いのかもしれない。一先ずはティアナがかわいがられていることに安堵した。
「…結局、お菓子貰えなかったな」
まあ、でもよくよく考えてみると自然なことかもしれない。カレンやロイは普段から身の回りの世話をするし、来たその日だって、荷物の整理や食事の用意もしていた。学友たちだって話は幾分聞いている限り、普段から世話になっているんだろう。自分がしたことといえば―――。
「稽古?いや、あんなものは普段の訓練程の価値もないだろうしな…」
改めて、ティアナのことをもう少し気にかけようと思いながらガーランドは学園へ向かった。
学園に着くと、ティアナの姿はまだ見えない。きっと、授業が続いているのだろう。授業か懐かしいなと思っていると声をかけられた。
「あっ、あのガーランド様ですか?」
「そうだが?」
見ると、見知らぬ女生徒が立っている。俺が世話になったことのある家の令嬢でもなさそうだ。
「やっぱり。ほら言った通りだったでしょ。この方がティアナ様の婚約者の方よ」
「本当に?まあ、よいものを見てしまいましたわ」
何やら小声で友人の女生徒としゃべっている様だがあまり聞き取れない。ただ、悪意を感じないところを見るとティアナの学園での評判はいいらしい。話に聞く限りではこの学園は高位貴族が多くて、下位貴族の令嬢は肩身が狭いと噂で聞いたことがあった。そこから考えると、俺も好意的にとらえられている感じだ。
「ティアナ様は本日最後の授業担当の方が時間を越える方ですので、もうしばらくお待ちください」
「あ、ああ。どうもありがとうございます」
俺は令嬢に向かって騎士の礼をする。貴族向けに正式な礼があるらしいのだが、そういうのは王宮騎士の仕事なので
俺は知らない。かといってせっかく教えてくれた彼女たちに申し訳ないので、知りうる限りの対応を取る。
「お礼は不要ですわ。それよりも…ティアナ様はやや抜けたところがおありなので、道中よろしくお願いします」
「そうですわ。学園内はともかく、外に居られるときはなかなか目が行き届きませんの」
「はっ。私も騎士の端くれ。必ずお守りいたしますので!」
彼女たちはティアナと仲の良いものなのだろう。しかも、立ち振る舞いから伯爵家以上かと思われる。学園においても隙を見せぬその所作に感嘆しながら、返答する。
「う~ん、困りましたわね。うわさはうわさだと思っておりましたのに」
「ちょっと、攻めにくいですわね。そこら辺に掃いて捨てる程いる男どもと一緒くたにはできませんわ」
「様子見と会の方には言いましょう。サーラ様にもそのように伝えましょう」
「いいことですが、残念ですわね。とりあえず、調査の方はこちらに任せてもらいましょうか」
またもや、2人は話し始めていた。先ほどより小声だが、何か気になることでもあったのだろうか?
「どうかしましたか?」
「あっ、いえ。申し訳ありません。そういうことですので、今しばらくお待ちいただければ来られますので」
「それでは失礼いたします」
すぐに何もありませんという顔であいさつをされ帰られた。見ると、家紋の入った馬車に乗る姿が見えた。やはり名のある家のようだ。それから、10分ほど待つとティアナの姿が見えた。因みにその待ち時間の間は校門の横にいたのだが、女生徒たちが帰るときにしきりに横目で見られた。他家の従者たちも待っているものはいるのだが、そのような目で見られていないところを見ると騎士が珍しいのだろうか?だが、夜会などでも騎士は常駐しているし、そういう訳でもないはずだが。
「お、お待たせしました、ガーランド様」
「いや、今日の最後の講師は話の長い方なのだろう?気にしなくてもいい。それより走ってきたようだが大丈夫か?」
「だ、大丈夫ですが、少々お待ちを」
彼女ははぁ~と深呼吸をして息を整える。その姿もきれいな動作だと思った。
「もう大丈夫です。それより、どうして話の長い方だと知っておられるのです?」
「先ほど、待っている間に2人の女生徒から話しかけられた。ティアナがその講師の授業で捕まっているとな」
「あら、そうだったんですか。お名前は?」
「そういえば聞きそびれてしまったな。おそらく伯爵家以上だとは思うが、馬車が迎えに来ていたぐらいだしな」
俺は簡単な特徴と、家紋をうろ覚えながらも伝える。騎士といっても世話にならない貴族が殆どの身の上としては、ほぼ覚えていない。
「あっ、ではなんとなくわかります。1つ年上の方なのですが、以前からも街に一人で出歩かないようにと、注意を受けたことがあるんです。お二人とも伯爵家の方で、私やサーラともたまに話をするのですが、ちょっと心配症のようで…」
「そうか、上級生だったとはな。ティアナは交流が多いのだな」
「どうでしょう?サーラに比べればまだまだです。彼女は気づいたら別の学年の方とお話してますよ」
ほんとに交流の幅が広いんですと友人を誇らしげに語るティアナの顔は輝いて見えた。
「でも、あのお二人は注意はしてくださいますけど、街へ出向くのは怒らない良い方なんです。入学時などは『供も付けずに街歩きをするなんて、何をしているのですかはしたない!』と別の方に苦言を言われたこともあったのですが、その時なども話をつけていただいて助かってます」
ティアナは無邪気に話をつけるといっているが、その後はその女生徒から嫌味を言われることがないといっていた当たり、手段を問わず話をつけたのだろう。騎士学校でさえそういう話はあったのだが、こういうところではもっと多いのかもしれない。一先ずはティアナがかわいがられていることに安堵した。
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