騎士爵とおてんば令嬢【完結済】

弓立歩

文字の大きさ
25 / 56
本編

25

しおりを挟む
王宮に着くといつものように簡単に着替えを済ませ、詰所で今日の予定を確認する。今日は西側の見回りで、アルスとペアだ。俺の方ではあまり覚えていないがどうやらカイラスが言うには後輩らしい。腕もそこそこで期待の持てる隊員だ。

「先輩おはようございます」

「ああ、だがいつも言っているように同じ隊員だ」

「いやいや、先輩と並んで呼ばれるなんて無理です!」

どうも、こいつはカイラスとの練習風景を見ていたようで、俺の実力のほども知っているらしい。やりにくい相手だ。こんな後輩に見られていたとはまだまだだったなと思っていると一つ話題が思い浮かんだ。

「アルス、お前は婚約者はいないのか?」

「どうしたんですか先輩。急にそんなこと聞いて。まあ、王宮警備隊見習いみたいな現状じゃあ無理っすね」

「いや実はな…」

恥ずかしさをこらえながらも、今日朝にあった出来事を話す。

「…先輩愛されてるっすよそれは」

「そうなんだろうか。俺も学生時代は他の生徒が付き合っているところを見たりしたが、女の方は恥ずかしがったりしていた記憶があるんだが…」

「でも、腕組みたいとか何か言われたんじゃないんっすよね」

「ああ、話をしていただけだが急にな。びっくりはしたんだがそのまま自然に話をされたから言えなかった」

「じゃあ、無意識なんじゃないんすか?」

「だが、そういうことを無意識にできるものなのか?」

相手にそれも異性に触れる行為に関して無意識にするなら、経験豊富なら可能かもしれないけれどティアナはそんな子ではないし。

「う~ん、じゃあ前からやってみたいということが、話に集中してて勝手に出たとか?」

「自信なさげだな」

「これでも先輩たちの次ぐらいには剣振ってた俺に聞くのがダメなんすよ。カイラス先輩に言わないんすか?」

「あいつに言ってどうなると思う?」

「絶対、面白おかしく言ってくるっすね…」

「それにな、あいつはティアナと1度会ったことがあるからな。会ったことのないお前にヒントをもらっても、会ったことのあるあいつに答えをもらいたくはない」

この先輩はいったいどうしてしまったんだろう。強くともちょっと面倒ごとが嫌いな先輩だったはずなのに。今はただの4歳年下の婚約者に翻弄される男の子のようだ。

「ま、まあそうっすよね。でも、いいじゃないっすか?そうやって距離を向こうからつめてくれるってことは好意を持たれているってことじゃないっすか。誰か俺にも紹介してくれないっすか?」

「む、そういっても相手は子爵令嬢だからな。お前、子爵令嬢とか紹介されて大丈夫か?」

「やっぱいいっす。絶対ろくな目にあわないっす」

話を聞いていて勘違いしそうになったが、王都でも有名な貴族学園に通ってるのだ。男爵家の次女、三女ならともかく高位貴族にも知り合いがいるだろう。自分のような小物騎士には夢のまた夢だ。

「それに、さすがにお金が続かないっすね」

「ティアナは別に必要ないといっていたが、どうなんだ?」

「普通はもっとドレスとか使用人とか欲しがるらしいっすよ。王宮騎士のゴードンさんが愚痴ってました」

「ああ、あの人は男爵家の長女と結婚したんだったな」

「領地も持ってた人らしくて、結婚後もちょくちょく夜会に出てるらしいっすね」

「まあ、その心配はないだろうな。ティアナはお茶会は苦手らしいから。うちに来てからは婚約者が騎士爵だから出る必要はないって、断るそうだ。いい理由ができたといっていた」

「先輩、ますます逃しちゃダメっすよ。先輩に並ぶ為にいるような人じゃないっすか。来月の騎士戦も頑張ってほしいっす」

「あれは投票制だろう?さすがに選ばれないさ」

「わかんないっすよ。今までは隊長が自己評価で上から選んでいたっすから、強制参加の人もいたそうっすから」

「まあ、出ることになったらほどほどには戦うさ。さすがに1合打ち合って終わりましたじゃ、子爵にも申し訳が立たないからな」

「またそんなこと言って。婚約者の人もかわいそうっすよ。せっかく騎士戦に出た相手がすぐに負けるなんて」

「きっとティアナならわかってくれるさ」

「かっこいいとこ見せれるっすよ?」

「……別にそこで見せる必要はないだろう。機会があったらでいいさ」

そんなことを話しながら今日の業務も終了になった。後は彼女を迎えに行くだけだ。はやる気持ちを抑えきれず俺はアルスのつぶやきは届かなかった。

「悩むぐらいには、可能性があると…メモっとくっすか」


しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

捨てられ侯爵令嬢ですが、逃亡先で息子と幸せに過ごしていますので、邪魔しないでください。

蒼月柚希
恋愛
公爵様の呪いは解かれました。 これで、貴方も私も自由です。 ……だから、もういいですよね? 私も、自由にして……。 5年後。 私は、ある事情から生まれ育った祖国を離れ、 親切な冒険者パーティーと、その地を治める辺境伯様のご家族に守られながら、 今日も幸せに子育てをしています。 だから貴方も勝手に、お幸せになってくださいね。 私のことは忘れて……。 これは、お互いの思いがこじれ、離れ離れになってしまった一組の夫婦の物語。 はたして、夫婦は無事に、離婚を回避することができるのか?

離婚が決まった日に惚れ薬を飲んでしまった旦那様

しあ
恋愛
片想いしていた彼と結婚をして幸せになれると思っていたけど、旦那様は女性嫌いで私とも話そうとしない。 会うのはパーティーに参加する時くらい。 そんな日々が3年続き、この生活に耐えられなくなって離婚を切り出す。そうすれば、考える素振りすらせず離婚届にサインをされる。 悲しくて泣きそうになったその日の夜、旦那に珍しく部屋に呼ばれる。 お茶をしようと言われ、無言の時間を過ごしていると、旦那様が急に倒れられる。 目を覚ませば私の事を愛していると言ってきてーーー。 旦那様は一体どうなってしまったの?

ストーカー婚約者でしたが、転生者だったので経歴を身綺麗にしておく

犬野きらり
恋愛
リディア・ガルドニ(14)、本日誕生日で転生者として気付きました。私がつい先程までやっていた行動…それは、自分の婚約者に対して重い愛ではなく、ストーカー行為。 「絶対駄目ーー」 と前世の私が気づかせてくれ、そもそも何故こんな男にこだわっていたのかと目が覚めました。 何の物語かも乙女ゲームの中の人になったのかもわかりませんが、私の黒歴史は証拠隠滅、慰謝料ガッポリ、新たな出会い新たな人生に進みます。 募集 婿入り希望者 対象外は、嫡男、後継者、王族 目指せハッピーエンド(?)!! 全23話で完結です。 この作品を気に留めて下さりありがとうございます。感謝を込めて、その後(直後)2話追加しました。25話になりました。

一途な皇帝は心を閉ざした令嬢を望む

浅海 景
恋愛
幼い頃からの婚約者であった王太子より婚約解消を告げられたシャーロット。傷心の最中に心無い言葉を聞き、信じていたものが全て偽りだったと思い込み、絶望のあまり心を閉ざしてしまう。そんな中、帝国から皇帝との縁談がもたらされ、侯爵令嬢としての責任を果たすべく承諾する。 「もう誰も信じない。私はただ責務を果たすだけ」 一方、皇帝はシャーロットを愛していると告げると、言葉通りに溺愛してきてシャーロットの心を揺らす。 傷つくことに怯えて心を閉ざす令嬢と一途に想い続ける青年皇帝の物語

傷物令嬢は騎士に夢をみるのを諦めました

みん
恋愛
伯爵家の長女シルフィーは、5歳の時に魔力暴走を起こし、その時の記憶を失ってしまっていた。そして、そのせいで魔力も殆ど無くなってしまい、その時についてしまった傷痕が体に残ってしまった。その為、領地に済む祖父母と叔母と一緒に療養を兼ねてそのまま領地で過ごす事にしたのだが…。 ゆるっと設定なので、温かい気持ちで読んでもらえると幸いです。

身代わりの公爵家の花嫁は翌日から溺愛される。~初日を挽回し、溺愛させてくれ!~

湯川仁美
恋愛
姉の身代わりに公爵夫人になった。 「貴様と寝食を共にする気はない!俺に呼ばれるまでは、俺の前に姿を見せるな。声を聞かせるな」 夫と初対面の日、家族から男癖の悪い醜悪女と流され。 公爵である夫とから啖呵を切られたが。 翌日には誤解だと気づいた公爵は花嫁に好意を持ち、挽回活動を開始。 地獄の番人こと閻魔大王(善悪を判断する審判)と異名をもつ公爵は、影でプレゼントを贈り。話しかけるが、謝れない。 「愛しの妻。大切な妻。可愛い妻」とは言えない。 一度、言った言葉を撤回するのは難しい。 そして妻は普通の令嬢とは違い、媚びず、ビクビク怯えもせず普通に接してくれる。 徐々に距離を詰めていきましょう。 全力で真摯に接し、謝罪を行い、ラブラブに到着するコメディ。 第二章から口説きまくり。 第四章で完結です。 第五章に番外編を追加しました。

【完結】うちの悪役令嬢はヒロインよりも愛らしい

らんか
恋愛
前世の記憶を思い出した今なら分かる。  ヒロインだからって、簡単に王子様を手に入れていいの?  婚約者である悪役令嬢は、幼い頃から王子妃になる為に、厳しい淑女教育を受けて、頑張ってきたのに。  そりゃ、高圧的な態度を取る悪役令嬢も悪いけど、断罪するほどの事はしていないでしょ。  しかも、孤独な悪役令嬢である彼女を誰も助けようとしない。    だから私は悪役令嬢の味方なると決めた。  ゲームのあらすじ無視ちゃいますが、問題ないよね?

【完結】転生したら悪役継母でした

入魚ひえん@発売中◆巻き戻り冤罪令嬢◆
恋愛
聖女を優先する夫に避けられていたアルージュ。 その夜、夫が初めて寝室にやってきて命じたのは「聖女の隠し子を匿え」という理不尽なものだった。 しかも隠し子は、夫と同じ髪の色。 絶望するアルージュはよろめいて鏡にぶつかり、前世に読んだウェブ小説の悪妻に転生していることを思い出す。 記憶を取り戻すと、七年間も苦しんだ夫への愛は綺麗さっぱり消えた。 夫に奪われていたもの、不正の事実を着々と精算していく。 ◆愛されない悪妻が前世を思い出して転身したら、可愛い継子や最強の旦那様ができて、転生前の知識でスイーツやグルメ、家電を再現していく、異世界転生ファンタジー!◆ *旧題:転生したら悪妻でした

処理中です...