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本編
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「どうだった、俺の試合は?」
気付いたらカイラスが戻ってきていた。正直、話をしていたせいでほとんど見ていない。
「ああ、いつも通りだな」
適当に返事を返しておく。
「…見てなかっただろ?」
「勝てる試合を見ても仕方ないだろう?」
相手には悪いが、技量差が大きい。警備隊でも中間の強さと騎士団上位では彼の方がかわいそうなほどだ。
「次は我らが第1騎士団副団長殿だな」
第1騎士団副団長カール。寡黙ではあるものの団長をしっかり支え、団員からの支持も篤い。訓練には参加することこそ少ないもののかなりの実力者らしい。
「そういえばシェイクだっけ?あいつは今度騎士団に昇格するらしいな」
「ああ、次年度からだそうだ。いい機会になるといいがな」
審判の声で試合が開始される。シェイクは割と型に忠実な剣士だ。割と豪快な警備隊において、あそこまで実践的に型を使う騎士は少ない。どこかしら自分の動きやすいように歪んでくるものだが―。
先手必勝とばかりにシェイクが切りかかる。しかし、カール副団長はそれをいとも簡単に避ける。しかも、避けた後からはシェイクと似た型だ。王国流といえど何派かに分かれており、そうそう同じ型がかち合うことはない。
「副団長の悪い癖だな」
「癖?」
「相手の型を真似てその隙をついて倒す。心理的にも厄介なんだよ。大抵、第1騎士団に入ったやつはそれをされてしばらく落ち込むんだ」
立ち上がれなければ、他の団に転属願を出すか最悪やめちまうんだよ。とはカイラスの言。確かに、これまで鍛え上げてきた型で倒されるというのは気分がいいものではないな。
「だが、初めて戦う相手に真似されたぐらいで動揺しては、騎士団は務まらん」
「ガイザル団長の言う通りですが、あれはきついんですよ…」
きっと、カイラスも以前にされたのだろう。こいつの場合は目標があったためすぐに立ち直ったとは思うが。
「みて、シェイクの型が崩れてきてるわ」
「同じ型で分が悪いから、普段使わない苦手な型で戦おうとしたら終わりだ」
カイラスの言った通り、カール副団長はすぐさま自分の本来の型に戻し、一気に接近して勝負を決めた。そして、試合場から戻ってくる。
「副団長あいつに何言って別れたんです?」
「腕はそこそこいいから、もっと自分の型に自信を持てと」
「壊しかけた本人が言ってもね」
「やっと私の出番か」
「一応、俺とガーランドの後輩何でよろしくお願いしますよ」
「そうか、ならそうしよう」
そういって出ていくギルバート殿の姿を全員が見送る。まさに威風堂々とした剣豪の姿がそこにあった。
「団長が勘違いしてないといいですがね…」
「何か言いましたカール副団長」
「いいえ」
場内からは大きい歓声が上がる。幾度となく優勝を勝ち取ってきた剣豪ギルバート。その戦いが見られることに人々は歓喜しているのだ。しかし、反対にアルスはとても委縮している。こんな環境が初めてだから仕方ない。
「アルスの奴、しょうがないとはいえあれじゃあな」
「ああ、何とかしてやりたいが…」
その時ギルバート殿が何やらアルスに話しかけた。何度か会話をするとアルスの構えが様になってくる。
「どうやら、調子は戻ったみたいだな」
「ああ」
そういいながらも俺はギルバート殿の剣に集中する。偉大な剣豪ギルバートの剣が間近で見られるのだ。
早速動いたのはアルスの方だ。剣を水平に構えて突きを繰り出す。堂に入った業だが、剣豪はどう対応するのか?
「はあっ!」
剣を一閃したギルバート殿はそのままアルスを吹き飛ばす。控室にいるみんなは当然という顔をしているが、初めて戦いを見る俺と、アルスはびっくりしている。剣豪ギルバートといえば素晴らしい技の冴えだと聞いている。それがここまで剛剣も使いこなせるとは…。
アルスから再び戦意が失われつつある。まずいと思った俺はとっさに叫ぶ。
「アルス!!」
剣を抜き縦に構えて見せる。これは俺とカイラスとアルスの誓い。戦いにおいていかなる時もあきらめぬという意思。
「うおおおぉぉ!」
己を奮い立たすように叫んだアルスは一気に距離を詰めようとして、視界の外から剣を受ける。完全に動きを見切ったギルバート殿が先に動いていたのだ。勝負はあっけなく終わり、会場は歓声に包まれる。そして、主役のギルバート殿が戻ってくる。
「不肖の後輩がお世話になりました」
「なに、緊張していたようだがなかなか見どころがありそうだ。私が威圧しても剣を振るえるのだからな」
「団長…」
「うむ、カイラスが手加減無用で頼むといったのでな」
どうやらカイラスのよろしくを全力でと変換していたらしい。まあ、運ばれていくアルスには確かに得難い経験ではあるだろう。戦場ではどうしても敵わない相手と戦う状況もあるだろうしな。
「始め!」
1回戦最後の試合が始まる。しかし、騎士団との技量の差は埋めがたく、あえなく敗北してしまった。
「これで、お前だけが2回戦進出だな。プレッシャーがかかるな?」
「別にそんなことはないさ。ただ、やれるところまではやるよ」
そう言って次の戦いを注視する。もし勝てば次に当たるであろう猛将ガイザル。彼の剛剣への対抗策を考えるために―――。
気付いたらカイラスが戻ってきていた。正直、話をしていたせいでほとんど見ていない。
「ああ、いつも通りだな」
適当に返事を返しておく。
「…見てなかっただろ?」
「勝てる試合を見ても仕方ないだろう?」
相手には悪いが、技量差が大きい。警備隊でも中間の強さと騎士団上位では彼の方がかわいそうなほどだ。
「次は我らが第1騎士団副団長殿だな」
第1騎士団副団長カール。寡黙ではあるものの団長をしっかり支え、団員からの支持も篤い。訓練には参加することこそ少ないもののかなりの実力者らしい。
「そういえばシェイクだっけ?あいつは今度騎士団に昇格するらしいな」
「ああ、次年度からだそうだ。いい機会になるといいがな」
審判の声で試合が開始される。シェイクは割と型に忠実な剣士だ。割と豪快な警備隊において、あそこまで実践的に型を使う騎士は少ない。どこかしら自分の動きやすいように歪んでくるものだが―。
先手必勝とばかりにシェイクが切りかかる。しかし、カール副団長はそれをいとも簡単に避ける。しかも、避けた後からはシェイクと似た型だ。王国流といえど何派かに分かれており、そうそう同じ型がかち合うことはない。
「副団長の悪い癖だな」
「癖?」
「相手の型を真似てその隙をついて倒す。心理的にも厄介なんだよ。大抵、第1騎士団に入ったやつはそれをされてしばらく落ち込むんだ」
立ち上がれなければ、他の団に転属願を出すか最悪やめちまうんだよ。とはカイラスの言。確かに、これまで鍛え上げてきた型で倒されるというのは気分がいいものではないな。
「だが、初めて戦う相手に真似されたぐらいで動揺しては、騎士団は務まらん」
「ガイザル団長の言う通りですが、あれはきついんですよ…」
きっと、カイラスも以前にされたのだろう。こいつの場合は目標があったためすぐに立ち直ったとは思うが。
「みて、シェイクの型が崩れてきてるわ」
「同じ型で分が悪いから、普段使わない苦手な型で戦おうとしたら終わりだ」
カイラスの言った通り、カール副団長はすぐさま自分の本来の型に戻し、一気に接近して勝負を決めた。そして、試合場から戻ってくる。
「副団長あいつに何言って別れたんです?」
「腕はそこそこいいから、もっと自分の型に自信を持てと」
「壊しかけた本人が言ってもね」
「やっと私の出番か」
「一応、俺とガーランドの後輩何でよろしくお願いしますよ」
「そうか、ならそうしよう」
そういって出ていくギルバート殿の姿を全員が見送る。まさに威風堂々とした剣豪の姿がそこにあった。
「団長が勘違いしてないといいですがね…」
「何か言いましたカール副団長」
「いいえ」
場内からは大きい歓声が上がる。幾度となく優勝を勝ち取ってきた剣豪ギルバート。その戦いが見られることに人々は歓喜しているのだ。しかし、反対にアルスはとても委縮している。こんな環境が初めてだから仕方ない。
「アルスの奴、しょうがないとはいえあれじゃあな」
「ああ、何とかしてやりたいが…」
その時ギルバート殿が何やらアルスに話しかけた。何度か会話をするとアルスの構えが様になってくる。
「どうやら、調子は戻ったみたいだな」
「ああ」
そういいながらも俺はギルバート殿の剣に集中する。偉大な剣豪ギルバートの剣が間近で見られるのだ。
早速動いたのはアルスの方だ。剣を水平に構えて突きを繰り出す。堂に入った業だが、剣豪はどう対応するのか?
「はあっ!」
剣を一閃したギルバート殿はそのままアルスを吹き飛ばす。控室にいるみんなは当然という顔をしているが、初めて戦いを見る俺と、アルスはびっくりしている。剣豪ギルバートといえば素晴らしい技の冴えだと聞いている。それがここまで剛剣も使いこなせるとは…。
アルスから再び戦意が失われつつある。まずいと思った俺はとっさに叫ぶ。
「アルス!!」
剣を抜き縦に構えて見せる。これは俺とカイラスとアルスの誓い。戦いにおいていかなる時もあきらめぬという意思。
「うおおおぉぉ!」
己を奮い立たすように叫んだアルスは一気に距離を詰めようとして、視界の外から剣を受ける。完全に動きを見切ったギルバート殿が先に動いていたのだ。勝負はあっけなく終わり、会場は歓声に包まれる。そして、主役のギルバート殿が戻ってくる。
「不肖の後輩がお世話になりました」
「なに、緊張していたようだがなかなか見どころがありそうだ。私が威圧しても剣を振るえるのだからな」
「団長…」
「うむ、カイラスが手加減無用で頼むといったのでな」
どうやらカイラスのよろしくを全力でと変換していたらしい。まあ、運ばれていくアルスには確かに得難い経験ではあるだろう。戦場ではどうしても敵わない相手と戦う状況もあるだろうしな。
「始め!」
1回戦最後の試合が始まる。しかし、騎士団との技量の差は埋めがたく、あえなく敗北してしまった。
「これで、お前だけが2回戦進出だな。プレッシャーがかかるな?」
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