騎士爵とおてんば令嬢【完結済】

弓立歩

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「おっ、戻ったか」

「ああ、それじゃあまた後でな」

「そう願っているよ」

カイラスと簡単に話してすぐに会場に向かう。会場に入るとすぐにガイザル殿もやってきた。

「先に言っておくがディーネと戦った時のような小細工は通用せんぞ」

きっと、穂先を狙った一撃のことだろう。

「ええ、きちんと剛剣を受け止めて見せますよ」

「ふん、その自信がどこまで持つかな」

とはいうものの完全に真っ向から受け止めることではない。そんなことをすれば最悪剣が折れるだろう。だが、避けてばかりではいられない。もし、この勝負に勝てたとすれば次はカイラスかギルバート殿だ。しかし、ギルバート殿であればこの剛剣を止めて勝ってきたという事だ。俺が止めることもできなければ勝算はないだろう。

「それでは第3回戦。準決勝1試合目を始めます」

その審判員の声とともに俺とガイザル殿に殺気が浮かぶ。相手は剛剣だが、後れを取るわけにはいかない。2騎士団副団長との試合を見るに、副団長の彼と俺との力の差はあまりない。後は技が決め手になるだろう。

「様子見か?そんな余裕があるとはな」

ブゥン

剣を振ったというだけでこの音だ。よくよく我が軍はこれまでこの男と戦場で肩を並べる存在でよかったと思う。

「はぁ!」

力任せの一撃を斜めに避け体に突きを繰り出す。しかし、避けようとはせず力任せに剣を戻して突きとの間に剣を割り込ませる。

ギィン

金属音がなるが、一切向こうは微動だにしない。まるで要塞だと思う。

「ふん、小手先の技術では一撃たりとも入れられんぞ」

「その様ですね。ではっ!」

剣を振りかぶり今度はこちらが力の剣を振るう。最も力比べではこちらが劣っているので簡単に受けられてしまう。それでも2撃、3撃と切り結ぶ。確かに、力では押されるもののその振り方で押し切られることなく何度も剣を合わせる。

「ほう、ここまで打ち合えるとはな。ギルバート以外では久しぶりだ」

「お褒め頂いて恐縮です」

その言葉を皮切りに俺はこれまで使っていた王国流から帝国流に変える。剣もわずかながら沈ませるようにして突きや中段への攻撃に力を加える。

「ぬう。帝国流とは…。ここまでの使い手がいたとはな。だがこれでどうだ!」

ガイザル殿は剣を後ろに引き一気に剣を突き出す。

「は、はやっ…」

何とか体をひねり回避できたが流石に今のは危なかった。剛剣という事で力に目がいっていたが、ここまで剣速も出せるとはさすがだ。

「むっ。当てることはできると思ったが…」

「そう簡単には。こちらとしても負けられないもので」

そう言いながらわずかに後ろに目を向ける。試合の最中だがわずかに彼女の声が聞こえる。そして、いま彼女は俺の背にいる。これが戦場だと思えばどうして簡単に負けられようか。



試合が始まった。みんなは歓声を上げているが私はそんな気になれないでいた。2人から漂う殺気を見ればわかる。あんな気配を向けられれば私みたいな半端な強さのものはきっと立っていられないだろう。

「どうかしたのティアナ?応援しないと」

「え、ええそうね」

でも、心は分かっている。頑張ってなんていえないと。だって立っているだけでもつらいはずだ。そう思うと素直に声が出せない。

「ティアナ。不安なのも心配なのも分かるわ。でも、今の私たちには私たちの、ガーランド様にはガーランド様の戦いがあると思わない?」

不意にサーラにそう言われた。確かにここで私がしょげてしまっていてそんな姿が目に移ってしまったら、彼はどう思うだろうか?婚約者にすら信じられないと思ってしまうのでは?ならば私にできることはたった一つ。いかなる歓声がガイザル様を応援しても、誰もがあきらめたとしても私だけは決してあきらめずに応援し続けよう…。

「旦那様―――、頑張ってください!」



「ふん、さっきの小娘か。戦場でぜいたくなことだ」

「百も承知です。戦場であってもなくとも。ですが、そんな彼女が応援してくれる以上はいかなる相手であろうと負けるわけにはいきません」

そう言い返すと俺は今までの構えを解き防御に長けた構えをする。ガイザル殿もきっとこの構えを見たことがあるだろう戦場で。

「俺の剣を受け止めようとでもいうのか?面白い…いざ勝負!!」

ガイザルが剣を構え力をためる。俺もそれに合わせるように呼吸を整える。勝負は一瞬で着く。初動で受け止められなければ剣ごと叩き切られる可能性もある。だが、それでも負けるわけにはいかない。

はぁーはぁーはぁー

フゥーーーーー

2人の呼吸音がする。最初は大きな歓声に包まれていた会場も今は静かだ。あまたの観衆が俺とガイザルのただの一瞬に向けて息をひそめている。一撃で決まるような勝負ではない。しかし、最初の一撃で全てが決まる。

ピクッ

一瞬剣先が動く。来るっ!

「はああああぁぁぁぁぁーーーー」

「うおおおぉぉぉーー」

一瞬で大上段に構えられた剣が振り下ろされる。俺は斜めに剣を構え、手・腕・肩それぞれの部分とそして足腰に至るまで全身でその一撃を受け止める。例えりょ力で劣っているとしても全身でなら必ず1撃は耐えられる。

キィィィィーーン

響き渡った音で決着はつかなかった。ガイザルの一撃により足が一部会場に埋まるものの、その一撃は止まっていた。

「なんとっ!やるな、だが」

一瞬驚いたガイザルだったが次の瞬間には身を反転させ逆側へと剣を水平に繰り出す。俺はその想定されていた動きに合わせて剣をもってその一撃に対応する。そして――――。

「剣を落とした?いや…」

その剣を正直に合わせればしびれるほどの衝撃がきて、先ほど受け止めた一撃と合わせ腕が硬直するのは判っていた。それを防ぐため一撃を受け止めると剣を手放し肉薄する。

「せあっ!!」

帝国流でもない王国流でもない、必ず戦場から帰るとの中で編み出した戦法。本来使うべきでもないが負けられない、いや勝たねばならぬのならこうするより他に今の俺に勝機はない。全力の掌底を叩き込む。

「ぬぐっ…」

さしもの剛剣も想定外のことに対処しきれず運よく、息が詰まったようだ。すぐさま剣を拾い体勢を立て直す前に畳みかける。

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