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第1部 2章 辺境の町メルキス
ミツキとガイエル
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「どれ、思い出話のひとつもしたい。済まんがみんな席を外してくれんか?」
「このような出自の分からぬものと一人に?」
「ゴーティス、失礼だぞ。わしの恩人の孫であるということを忘れるな」
「も、申し訳ございません」
「アルテラもご苦労だったな。さあ」
「では、失礼いたします。おじい様」
そう言って、まずはクウィードさんとアルテラさんが退室する。そうか、クウィードさんって誰かに似てるとは思っていたけど、ガイエルに似てたんだ。
「父上、何かあればお呼びください」
「ああ」
「貴方!」
「お前も来るんだ。父上のことは理解しているだろう?」
「…分かりました」
クウィードさんのお父さんもお母さんもなんとか納得して出て行ってくれた。でも、ちょっと不安。そして、2人っきりになると、しばし沈黙が訪れる。その沈黙を破ったのはガイエルだった。
「済まなかったな」
「なんに対して?」
わざと私はぶっきらぼうに返す。こんなになるまで呼んでくれないのにも怒っているし、長年放っておかれたことにも私は怒っているのだ。
「どれもだ。君の考えていそうなことは良く解る」
「じゃあ、どうして私を呼んでくれなかったの?ずっと待ってたのに」
「怖くなったんだ」
そう言いながら窓の外に目をやるガイエル。その姿は年を経ても昔のままだった。
「怖く?」
「ああ。妻も貰って俺も騎士団の中で立場を確立した。家族も生まれてどんどん守るものが増えていく。そんな中でお前を街に連れて行ったとしよう。それでもし、その正体がばれたらと思うとな」
「それならそう言ってくれればいいのに。私だって物分かりが悪い訳じゃないよ。言ってくれたら、ちょっと常識だけ学んで他の町に行くよ?」
「そうか、そうだな。あの時から私は何も成長できなかったらしい。そんなことも思い浮かばず、どうしたらお前の正体がばれずに生活させられるかばかり考えていた」
再び黙って考え込むガイエル。その表情からはずっと私のことを気にかけていたことがうかがえた。
「私のことはちゃんと覚えてたんだね」
「もちろんだ。ゴホッ!」
「だ、大丈夫?」
「ああ、問題ない。それより話の続きだ。魔物に詳しい幼馴染のやつにも色々相談した。だが、いつも返ってくるのはそんな危険なことをするぐらいなら、忘れてしまえだった。忘れることはできなかったが、俺も妻や子どものことを考えるとどうしても会いに行けなかった。実際に子どもが生まれてからは余計にな」
「それがあの子なの?」
「いや、最初に生まれたのは女の子だったよ。本当にかわいかったものだ…」
そういうガイエルの瞳は本当にやさしい目をしていた。それまでの表情とは少し違って、親になったんだなぁと感じる。
「でも、一言ぐらいあっても良かったんじゃない?」
「そうだな。だけど、お前に会いに行ったら絶対に連れてきてしまうと分っていた。それぐらいお前は楽しみにしていたからな」
「うっ」
実際、町行きの話が出てすぐに支度をした手前、何も言えなかった。もしかしたら、ダメと言われたら勝手に向かったかもしれない。
「そう気に病むな。お前が町に行くのは本来お前の自由だったのだ。それが俺の一言であの何もない場所に縛り付けてしまった。本当に済まなかった」
そう言って、ガイエルが頭を下げる。
「いいよ、別に。私だってその間、暇してたから色々やってたし。ほら、これ見て!」
私はさっきギルドでもらった冒険者カードをガイエルに見せる。
「これは…」
「どう?約束した通り、ちゃんと人間になって見せてるよ?まあ、寿命とかは無理だろうけどね」
「ふっ、わしからすると羨ましい限りだ。しかし、思ったより弱いのだな」
「ははは、流石に擬態してるのに元の強さって訳にはいかないよ。それにちょっと触ってもらってるしね」
そうおどけて見せる。実際のパラメータも気になるけどね。
「そうか。まあ、お前の事ならおかしくはないな」
「ちょっと、ひどいよ!」
「ふっ、まるで時が戻ったみたいだ」
「そうだね」
「だが、現実にはあれから30年の時が流れ、時代は変わってしまった」
「そういえば、なんで私を呼んだの?今の話を聞いてる限りだと、呼びたくなかったんだよね?」
30年も経ってるとは思わなかったけど、それだけの間悩みながら呼ばなかったのに、どういう心境の変化が起きたのか気になった。
「お前も分かっているだろう?わしはもう長くない。せめてもの罪滅ぼしのようなものだ。今お前を連れて来てもし正体がばれたとしても、今のわしならそうそう騒ぎにならんだろうしな」
「みんなに大事にされているみたいだったけど?」
「それとは別問題だ。こんな死にかけの老いぼれが連れて来たものの騒ぎなど、知れたものだろう」
「じゃあ、今までずっと待っててくれたんだ。私を呼べる時を」
そんなことを言っても、もし私の正体がばれれば無事では済まないだろう。自分が寿命を迎えるこのタイミングならってずっと考えてくれてたんだ。
「俺なりにだがな。生きているうちは任せろ。わしが手は尽くしてやる」
「いいよ、別に。体調も悪いんでしょ?ゆっくりしてて」
「…本当に済まない」
「えっ!?ど、どうしたの…」
窓に向けていた顔をこちらに向けたガイエルは、大粒の涙を流していた。
「俺はこんなやつを今まで騙すように…」
「もういいってば。クウィードさんのお陰で色々知ることができたし、さっきも言ったけど私も時間を余らせてはいなかったしさ」
私はたまらなくなってガイエルのベッドまで行って、抱きしめる。今のガイエルにはこうすることが大事だと思ったから。
「落ち着いた?」
「ああ。無様な姿を見せたな」
「いいよ、もう。それを言ったら出会った時にもう見てるし」
「ははは、そうだな。あの頃の俺と言ったら…」
その後はお互いの今までのことを話した。といっても私の場合は修行していただけなので、基本はガイエルの事ばかりだったが。
「このような出自の分からぬものと一人に?」
「ゴーティス、失礼だぞ。わしの恩人の孫であるということを忘れるな」
「も、申し訳ございません」
「アルテラもご苦労だったな。さあ」
「では、失礼いたします。おじい様」
そう言って、まずはクウィードさんとアルテラさんが退室する。そうか、クウィードさんって誰かに似てるとは思っていたけど、ガイエルに似てたんだ。
「父上、何かあればお呼びください」
「ああ」
「貴方!」
「お前も来るんだ。父上のことは理解しているだろう?」
「…分かりました」
クウィードさんのお父さんもお母さんもなんとか納得して出て行ってくれた。でも、ちょっと不安。そして、2人っきりになると、しばし沈黙が訪れる。その沈黙を破ったのはガイエルだった。
「済まなかったな」
「なんに対して?」
わざと私はぶっきらぼうに返す。こんなになるまで呼んでくれないのにも怒っているし、長年放っておかれたことにも私は怒っているのだ。
「どれもだ。君の考えていそうなことは良く解る」
「じゃあ、どうして私を呼んでくれなかったの?ずっと待ってたのに」
「怖くなったんだ」
そう言いながら窓の外に目をやるガイエル。その姿は年を経ても昔のままだった。
「怖く?」
「ああ。妻も貰って俺も騎士団の中で立場を確立した。家族も生まれてどんどん守るものが増えていく。そんな中でお前を街に連れて行ったとしよう。それでもし、その正体がばれたらと思うとな」
「それならそう言ってくれればいいのに。私だって物分かりが悪い訳じゃないよ。言ってくれたら、ちょっと常識だけ学んで他の町に行くよ?」
「そうか、そうだな。あの時から私は何も成長できなかったらしい。そんなことも思い浮かばず、どうしたらお前の正体がばれずに生活させられるかばかり考えていた」
再び黙って考え込むガイエル。その表情からはずっと私のことを気にかけていたことがうかがえた。
「私のことはちゃんと覚えてたんだね」
「もちろんだ。ゴホッ!」
「だ、大丈夫?」
「ああ、問題ない。それより話の続きだ。魔物に詳しい幼馴染のやつにも色々相談した。だが、いつも返ってくるのはそんな危険なことをするぐらいなら、忘れてしまえだった。忘れることはできなかったが、俺も妻や子どものことを考えるとどうしても会いに行けなかった。実際に子どもが生まれてからは余計にな」
「それがあの子なの?」
「いや、最初に生まれたのは女の子だったよ。本当にかわいかったものだ…」
そういうガイエルの瞳は本当にやさしい目をしていた。それまでの表情とは少し違って、親になったんだなぁと感じる。
「でも、一言ぐらいあっても良かったんじゃない?」
「そうだな。だけど、お前に会いに行ったら絶対に連れてきてしまうと分っていた。それぐらいお前は楽しみにしていたからな」
「うっ」
実際、町行きの話が出てすぐに支度をした手前、何も言えなかった。もしかしたら、ダメと言われたら勝手に向かったかもしれない。
「そう気に病むな。お前が町に行くのは本来お前の自由だったのだ。それが俺の一言であの何もない場所に縛り付けてしまった。本当に済まなかった」
そう言って、ガイエルが頭を下げる。
「いいよ、別に。私だってその間、暇してたから色々やってたし。ほら、これ見て!」
私はさっきギルドでもらった冒険者カードをガイエルに見せる。
「これは…」
「どう?約束した通り、ちゃんと人間になって見せてるよ?まあ、寿命とかは無理だろうけどね」
「ふっ、わしからすると羨ましい限りだ。しかし、思ったより弱いのだな」
「ははは、流石に擬態してるのに元の強さって訳にはいかないよ。それにちょっと触ってもらってるしね」
そうおどけて見せる。実際のパラメータも気になるけどね。
「そうか。まあ、お前の事ならおかしくはないな」
「ちょっと、ひどいよ!」
「ふっ、まるで時が戻ったみたいだ」
「そうだね」
「だが、現実にはあれから30年の時が流れ、時代は変わってしまった」
「そういえば、なんで私を呼んだの?今の話を聞いてる限りだと、呼びたくなかったんだよね?」
30年も経ってるとは思わなかったけど、それだけの間悩みながら呼ばなかったのに、どういう心境の変化が起きたのか気になった。
「お前も分かっているだろう?わしはもう長くない。せめてもの罪滅ぼしのようなものだ。今お前を連れて来てもし正体がばれたとしても、今のわしならそうそう騒ぎにならんだろうしな」
「みんなに大事にされているみたいだったけど?」
「それとは別問題だ。こんな死にかけの老いぼれが連れて来たものの騒ぎなど、知れたものだろう」
「じゃあ、今までずっと待っててくれたんだ。私を呼べる時を」
そんなことを言っても、もし私の正体がばれれば無事では済まないだろう。自分が寿命を迎えるこのタイミングならってずっと考えてくれてたんだ。
「俺なりにだがな。生きているうちは任せろ。わしが手は尽くしてやる」
「いいよ、別に。体調も悪いんでしょ?ゆっくりしてて」
「…本当に済まない」
「えっ!?ど、どうしたの…」
窓に向けていた顔をこちらに向けたガイエルは、大粒の涙を流していた。
「俺はこんなやつを今まで騙すように…」
「もういいってば。クウィードさんのお陰で色々知ることができたし、さっきも言ったけど私も時間を余らせてはいなかったしさ」
私はたまらなくなってガイエルのベッドまで行って、抱きしめる。今のガイエルにはこうすることが大事だと思ったから。
「落ち着いた?」
「ああ。無様な姿を見せたな」
「いいよ、もう。それを言ったら出会った時にもう見てるし」
「ははは、そうだな。あの頃の俺と言ったら…」
その後はお互いの今までのことを話した。といっても私の場合は修行していただけなので、基本はガイエルの事ばかりだったが。
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