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第1部 2章 辺境の町メルキス
異世界の食卓
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コンコン
「は~い」
「失礼いたします」
3人で話をしているとドアがノックされ、メイドさんが入ってきた。
「お待たせいたしました。夕食の準備が整いましたので、ご案内いたします」
「そうか。ミツキ、準備ができたようだ。行こうか」
「はい」
クウィードさんを先頭にぞろぞろと部屋を出ていく。一番後ろは私だと思ったら、さっきのメイドさんも付いて来ていた。
「失礼します」
「ああ、入れ」
そこから、邸を歩いて大きい扉の前に着くとクウィードさんが声をかける。返事を聞いてから中に入ると、いかにもなところに入っていった。
「ようこそミツキ殿。私は現副騎士団長のゴーティスだ。残念ながら父上は体調がすぐれないため、今日はご一緒できないがぜひ料理を楽しんでいってくれ」
「お招きいただき、ありがとうございます」
私は失礼のないように挨拶をして頭を下げる。
「ミツキ殿、そなたは父上の招いた客。どうか邸にいる間は身分を気にせずゆっくりして欲しい。とりあえず、かけてくれたまえ」
「はい」
クウィードさんのお父さんの言葉を合図に、食堂にいるメイドさんが椅子を引いてくれたので、そこに腰かける。
「そうだ。食事に移る前に紹介しておこう。この邸にいる間と、新居での生活が落ち着くまでミツキ殿の世話を務めるライラだ」
「よろしくお願いいたします」
さっき私について来たメイドさんが挨拶をしてくれる。うう~ん、でもなんだか悪いなぁ。
「ミツキ、遠慮することはない。うちの都合で連れ出したんだ。俺たちも護衛といっても戦うこと以外はそれなりだからな。家の中のことはライラに任せるといい」
「それなら、よろしくお願いします」
私が挨拶をすると、頭を下げて返事をしてくれるライラさん。綺麗なこげ茶色の髪をしたロングの女性だ。仕草も綺麗だし、本当に私付きなんかでいいのかなって思ってしまうぐらいだ。
「さあ、では紹介も終わったことだし、食事に移ろうか」
そうして、私の初めての異世界ご飯の時間が始まった。
「えっと、外側から使うので合ってますか?」
「ええ、合ってるわ」
初めての異世界ご飯の予定はその辺の食堂での食事を考えていたのに、まさかのコース料理でちょっと緊張する。社会人生活をしていたから、何度かコース料理を食べた記憶はあるけど、本当に形式にこだわった場所では初めてだ。
「えーっと、スープは手前から奥で…」
「…」
「どうかしましたか?」
出されていく料理を食べていると周囲からの視線に気が付いた。何か間違ってるのかな?
「いや、ミツキは村で生活していたと聞いたが、中々様になっているな」
「あはは、その辺にあった本の受け売りだけですよ」
「それにしては綺麗だぞ。私も騎士の家に生まれたが、こういうことは中々身に付けるのは大変だった」
「へ~、アルテラさんもそうだったんですね。意外です」
「まあ、確かに俺よりは遅かったな」
「むっ、そこまで遅くはなかっただろう」
「2人とも相変わらずだな。どうだ、ミツキ殿、うちの食事は?」
「とても美味しいです!ただ、町に来て初めての食事がこういう形とは想像してませんでしたけど」
「それはそうだろうな。だが、それだけマナーが出来ているならいっそのこと、通いで覚えるか?」
「ええっ!?どこで使うんですか?」
別に目立った生活をする予定もないし、要らないと思うけど…。
「どこでということもないが、将来どこかで役に立つかもしれんぞ?この先どうするかは考えているのか?」
「う~ん。今のところはせっかく街にも来ましたし、1年ぐらいはゆっくりしたいですね。それからは旅行とかしてみたいです」
せっかく異世界に来たんだから、色んな景色を楽しみたいというのが人の性。時間もあることだし、長居もできないという事情も含めてそういうことは前から考えていた。
「なんだ。ずっと町にはいないのか?」
私の言葉に意外そうに答えるゴーティス様。
「村から出てきて今はなんでも新鮮ですけど、やっぱりもっと外の世界を見てみたいです」
「あら、ミツキさんは好奇心旺盛なのですね」
「あっ、えっと…」
「お前、まだ自己紹介をしていないんじゃないか?」
「あら、そうでしたわね。私はゴーティスの妻のランダです。よろしくね、お嬢さん」
「お嬢さんだなんて。ミツキです、よろしくお願いします」
この方がクウィードさんのお母さんか。綺麗な所作だなぁ。
「ミツキさんね。ミツキさんは村ではどのような生活をしてらしたのかしら?」
「あっ、えっと、それがほとんど修行ばかりで、普通のことはしてこなかったんです」
「修行?お家が厳しかったのかしら?」
「多分。いつも杖とか魔法の練習ばかりで、残りの時間は本を読んで過ごしてました」
何十年も洞窟で修業する日々でしたとは言えないので、ちょっとエッセンスを加えながら質問に答える。
「まあ、それじゃあ、女性らしいことは何も?」
「はい。一応簡単な化粧とかは自分でやってみたりはしたんですけど…」
まあ、それも前世の事だと考えればもう百年以上前のことだ。この世界的にどんな感じなのかは分からないし、正直見られることもなかったから自信は全くない。
「それだけ忙しいのにきちんと女性としての身だしなみも頑張っていたなんて素晴らしいわ。ライラ、ミツキさんにきちんと教えて差し上げなさい」
「承知しました」
その後も和やかに食事の時間は過ぎていき、部屋に戻ることになった。食事も最初こそ緊張したものの、クウィードさんやアルテラさんが話しかけてくれたからか、途中からは料理の味を楽しむことができた。
「は~い」
「失礼いたします」
3人で話をしているとドアがノックされ、メイドさんが入ってきた。
「お待たせいたしました。夕食の準備が整いましたので、ご案内いたします」
「そうか。ミツキ、準備ができたようだ。行こうか」
「はい」
クウィードさんを先頭にぞろぞろと部屋を出ていく。一番後ろは私だと思ったら、さっきのメイドさんも付いて来ていた。
「失礼します」
「ああ、入れ」
そこから、邸を歩いて大きい扉の前に着くとクウィードさんが声をかける。返事を聞いてから中に入ると、いかにもなところに入っていった。
「ようこそミツキ殿。私は現副騎士団長のゴーティスだ。残念ながら父上は体調がすぐれないため、今日はご一緒できないがぜひ料理を楽しんでいってくれ」
「お招きいただき、ありがとうございます」
私は失礼のないように挨拶をして頭を下げる。
「ミツキ殿、そなたは父上の招いた客。どうか邸にいる間は身分を気にせずゆっくりして欲しい。とりあえず、かけてくれたまえ」
「はい」
クウィードさんのお父さんの言葉を合図に、食堂にいるメイドさんが椅子を引いてくれたので、そこに腰かける。
「そうだ。食事に移る前に紹介しておこう。この邸にいる間と、新居での生活が落ち着くまでミツキ殿の世話を務めるライラだ」
「よろしくお願いいたします」
さっき私について来たメイドさんが挨拶をしてくれる。うう~ん、でもなんだか悪いなぁ。
「ミツキ、遠慮することはない。うちの都合で連れ出したんだ。俺たちも護衛といっても戦うこと以外はそれなりだからな。家の中のことはライラに任せるといい」
「それなら、よろしくお願いします」
私が挨拶をすると、頭を下げて返事をしてくれるライラさん。綺麗なこげ茶色の髪をしたロングの女性だ。仕草も綺麗だし、本当に私付きなんかでいいのかなって思ってしまうぐらいだ。
「さあ、では紹介も終わったことだし、食事に移ろうか」
そうして、私の初めての異世界ご飯の時間が始まった。
「えっと、外側から使うので合ってますか?」
「ええ、合ってるわ」
初めての異世界ご飯の予定はその辺の食堂での食事を考えていたのに、まさかのコース料理でちょっと緊張する。社会人生活をしていたから、何度かコース料理を食べた記憶はあるけど、本当に形式にこだわった場所では初めてだ。
「えーっと、スープは手前から奥で…」
「…」
「どうかしましたか?」
出されていく料理を食べていると周囲からの視線に気が付いた。何か間違ってるのかな?
「いや、ミツキは村で生活していたと聞いたが、中々様になっているな」
「あはは、その辺にあった本の受け売りだけですよ」
「それにしては綺麗だぞ。私も騎士の家に生まれたが、こういうことは中々身に付けるのは大変だった」
「へ~、アルテラさんもそうだったんですね。意外です」
「まあ、確かに俺よりは遅かったな」
「むっ、そこまで遅くはなかっただろう」
「2人とも相変わらずだな。どうだ、ミツキ殿、うちの食事は?」
「とても美味しいです!ただ、町に来て初めての食事がこういう形とは想像してませんでしたけど」
「それはそうだろうな。だが、それだけマナーが出来ているならいっそのこと、通いで覚えるか?」
「ええっ!?どこで使うんですか?」
別に目立った生活をする予定もないし、要らないと思うけど…。
「どこでということもないが、将来どこかで役に立つかもしれんぞ?この先どうするかは考えているのか?」
「う~ん。今のところはせっかく街にも来ましたし、1年ぐらいはゆっくりしたいですね。それからは旅行とかしてみたいです」
せっかく異世界に来たんだから、色んな景色を楽しみたいというのが人の性。時間もあることだし、長居もできないという事情も含めてそういうことは前から考えていた。
「なんだ。ずっと町にはいないのか?」
私の言葉に意外そうに答えるゴーティス様。
「村から出てきて今はなんでも新鮮ですけど、やっぱりもっと外の世界を見てみたいです」
「あら、ミツキさんは好奇心旺盛なのですね」
「あっ、えっと…」
「お前、まだ自己紹介をしていないんじゃないか?」
「あら、そうでしたわね。私はゴーティスの妻のランダです。よろしくね、お嬢さん」
「お嬢さんだなんて。ミツキです、よろしくお願いします」
この方がクウィードさんのお母さんか。綺麗な所作だなぁ。
「ミツキさんね。ミツキさんは村ではどのような生活をしてらしたのかしら?」
「あっ、えっと、それがほとんど修行ばかりで、普通のことはしてこなかったんです」
「修行?お家が厳しかったのかしら?」
「多分。いつも杖とか魔法の練習ばかりで、残りの時間は本を読んで過ごしてました」
何十年も洞窟で修業する日々でしたとは言えないので、ちょっとエッセンスを加えながら質問に答える。
「まあ、それじゃあ、女性らしいことは何も?」
「はい。一応簡単な化粧とかは自分でやってみたりはしたんですけど…」
まあ、それも前世の事だと考えればもう百年以上前のことだ。この世界的にどんな感じなのかは分からないし、正直見られることもなかったから自信は全くない。
「それだけ忙しいのにきちんと女性としての身だしなみも頑張っていたなんて素晴らしいわ。ライラ、ミツキさんにきちんと教えて差し上げなさい」
「承知しました」
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