1 / 30
第1話 親玉消失と、完璧な帳簿
しおりを挟む
ルナ・グランデ公国の都は、白い大理石の回廊が続き、噴水の水面だけが青く揺れている。
噴水の水音はいつもと同じ速さで、都はいつも通りに見える。だからこそ、机の上の帳簿の空白だけが、鐘みたいに耳へ鳴った。
整備局監査官ヴァランは、机の上の帳簿を指先で撫で、背表紙の角を正した。整っているものは呼吸を楽にする。けれど今日だけは、帳簿が喉に引っ掛かった。
「……ない」
声が自分の耳に返ってくるまでが長かった。噴水の水音が、いつもより遠い。帳簿の紙が指先に貼りつくのに、掌だけが冷えていく。
失くしたのは石か、記録か。あるいは――都を回すために彼女が積み上げてきた「当たり前」か。ヴァランは息を整え、次に取る手順を心の中で並べた。
貸出記録。聖塔から文化祭「ルナ・フェスタ」に貸し出される品の一覧。その中に、月虹を散らす親玉ムーンジェイドが、あるはずだった。
昨夜、ヴァランは祭の準備責任者に指名された。ルナ・フェスタまで三十日。親玉が欠ければ、都の象徴が欠ける。
彼女は羽根ペンを置き、引き出しから小さな紙束を取り出した。今日の持ち物表だ。
「封蝋印、監査印、予備の監査印、筆記具二本、替え芯、針金……」
口に出して確認しながら、肩掛け鞄へ収める。紙束の最後に「感情は持ち込まない」と書いてあるのを見て、目を細めた。
扉がノックされる。
「監査官ヴァラン。聖塔の貸出室へ、至急だそうです」
部下の声がいつもより高い。ヴァランは「承知」と返し、廊下へ出た。
聖塔へ向かう通路は、月灯りで色を変える石が敷かれている。青、銀――そして、ふっと桃色に見えた気がした。
彼女は視線を上げ、聖塔の門をくぐった。
――そこで、道が塞がっていた。
黒い外套。肩に月紋の銀糸。影のように静かに立つ男が、回廊の中央にいる。護衛官シェルヴィ。
彼は礼もなく、ただ一歩、前へ出た。
「通して」
ヴァランが言うと、彼は短く返した。
「危ない」
「危ないのは、あなたの説明の少なさよ」
ヴァランは横から抜けようとする。だがシェルヴィは同じ角度で体をずらし、道を譲らない。
「私は整備局監査官。聖塔の貸出記録室に用がある。あなたは護衛官。職務が違う」
シェルヴィは視線をほんの少し下げ、ヴァランの鞄を見た。
「留め具」
「何?」
「外れてる」
ヴァランが鞄を見下ろした瞬間、留め具が外れ、紙束がひらひらと舞い出た。
「感情は持ち込まない」
「監査印、予備の監査印」
「靴裏の砂は落とす」
紙がシェルヴィの足元へ落ちる。彼は拾う。拾い方が丁寧すぎて、腹が立つ。
「返して」
シェルヴィは紙束を戻した。けれど最後の一枚だけ、彼の指に引っ掛かった。ヴァランが伸ばした手と、彼の指が触れた。
触れた瞬間、胸の奥で別の音が鳴った。
――夜。白い回廊。砕けた月の石。誰かの手を振りほどく自分。
息が止まる。
「監査官?」
シェルヴィの声が、耳の奥まで落ちてくる。ヴァランは手を引っ込めた。指先が熱い。
「……今、何かしました?」
「してない」
即答だった。彼は嘘をつくとき、瞬きが増える。だが今は増えない。
「なら、なぜ通さないの」
「今、貸出室に人がいる」
「誰?」
シェルヴィは口を開きかけ、奥の扉を顎で示した。扉の前に、見慣れない男が二人。片方は修繕師の道具袋、片方は上層街の書記が使う革手袋。
ヴァランの背筋が伸びる。
「……あなた、ずっとここで見張っていたの」
「うん」
短い返事が重い。
ヴァランは胸の内ポケットの紙束を押さえた。持ち物表の余白には、彼女の癖で小さく時刻が並んでいる。だが今朝だけ、その時刻が少しずつずれて見える。彼女はそれをごまかすように、シェルヴィへ言った。
「次から返事を『うん』だけで済ませないで。報告書に書けない」
「書ける」
「どう書くのよ」
「『うん』」
真面目な顔で言うから、腹が立つのに、笑いが喉まで上がった。
ヴァランは修繕師の袋と革手袋の位置関係を頭の中で並べ替えた。貸出記録が消えた。親玉の項目がない。今必要なのは、感情ではなく手順だ。
「シェルヴィ。私が中へ入る。あなたは扉の右。私は左。逃げ道を切る」
彼は頷いた。動きは正確だ。
二人は同時に歩いた。石畳の色が青から銀へ変わる。四つの靴音が、扉の前で止まる。
扉の隙間から、紙をめくる音。封蝋を剥がす爪の音。
ヴァランは扉を押し開けた。
「監査官だ。手を止めなさい」
机の上に貸出記録の写しが広げられ、親玉の項目だけが切り取られたように空いている。その空白が目に刺さった。
革手袋の男が上層街の笑い方で言う。
「監査官殿。点検です。聖塔の書類は古い。祭に向けて――」
「点検なら整備局に申請がある。申請番号を言いなさい」
男の笑みが薄くなる。修繕師の方が一歩引き、袋を抱える手が微かに震える。
ヴァランはその震えを見た。
「親玉ムーンジェイドの貸出記録から、項目が消えた。あなたが消したの?」
返事が遅れた。遅れの間に、シェルヴィが室内へ滑り込み、扉の内側へ背をつけた。逃げ道が消える。
革手袋の男の視線が月紋へ吸い寄せられ、苛立ちを隠すために笑い直した。
「箱だけです。石など、初めから――」
その瞬間、シェルヴィが壁の木箱の蓋を開けた。中には空の外箱。親玉の外箱だ。封印札が剥がされ、糊の跡が新しい。
彼は箱を掲げ、ヴァランへ見せた。
「これ」
ヴァランの喉が冷える。石そのものはない。
「嘘。封印札の糊が新しい」
自分でも驚く。数ではなく匂いで判断した。糊の匂いが、まだ立っている。
修繕師が小さく言った。
「……違うんです。盗んだんじゃない」
「なら、どこへ移した。誰の指示だ」
修繕師は答えない。革手袋の男が机の端を叩く。
「都のためだと言ったら?」
その言葉で、ヴァランの視界の端が白く滲んだ。
――都の灯りが落ちる。止めなければ。急げ。誰かの手が伸びる。振りほどく。振りほどいた手の温度。
ヴァランは唇を噛み、現実へ戻った。
「都のためなら、なおさら整備局へ申請が必要。都は段取りで回る」
言い切ったところで、シェルヴィが短く言った。
「無理するな」
ヴァランは彼を睨んだ。護衛官が監査官の心配など、順序が逆だ。
だがシェルヴィは言葉を増やさない。代わりに、彼女の鞄の留め具を迷わず留めた。金具がカチリと鳴り、奇妙なほど心が落ち着く。
修繕師が震える声で言った。
「……地下です。聖塔の、地下の装置へ」
ヴァランの背筋が、氷で撫でられたように冷えた。地下の装置――都の灯りを支える古い仕組み。
「……誰が、そうしろと言った」
修繕師は目を伏せたまま、涙を一滴落とす。
ヴァランは深く息を吸い、吐いた。
「シェルヴィ。地下へ行く。今すぐ」
「一緒」
短い。けれど頼もしい。
ヴァランは頷いた。
「遅れたら、私が怒る」
「怒っていい」
その返事で、ヴァランはふっと息を漏らした。笑いになり損ねた息だ。
廊下へ出ると、ヴァランは自分の紙束の表紙を見た。そこには「留め具、確認」と確かに書いてある。彼女は眉を寄せ、紙束の端を指で強く押した。
「私は、確認したはずなのに」
シェルヴィが歩調を落とし、落ちていた一枚をいつの間にか持っているのを見せた。そこには余白があり、彼の筆跡で小さく一行だけ足されていた。
『留め具は、他人が留める場合もある』
ヴァランは思わず足を止めた。そんな項目、表には存在しない。存在しないはずのことが、今朝から増えている。
月灯りが回廊の石を金に染めた。二人は同時に歩き出す。帳簿の空白を埋めるために。
噴水の水音はいつもと同じ速さで、都はいつも通りに見える。だからこそ、机の上の帳簿の空白だけが、鐘みたいに耳へ鳴った。
整備局監査官ヴァランは、机の上の帳簿を指先で撫で、背表紙の角を正した。整っているものは呼吸を楽にする。けれど今日だけは、帳簿が喉に引っ掛かった。
「……ない」
声が自分の耳に返ってくるまでが長かった。噴水の水音が、いつもより遠い。帳簿の紙が指先に貼りつくのに、掌だけが冷えていく。
失くしたのは石か、記録か。あるいは――都を回すために彼女が積み上げてきた「当たり前」か。ヴァランは息を整え、次に取る手順を心の中で並べた。
貸出記録。聖塔から文化祭「ルナ・フェスタ」に貸し出される品の一覧。その中に、月虹を散らす親玉ムーンジェイドが、あるはずだった。
昨夜、ヴァランは祭の準備責任者に指名された。ルナ・フェスタまで三十日。親玉が欠ければ、都の象徴が欠ける。
彼女は羽根ペンを置き、引き出しから小さな紙束を取り出した。今日の持ち物表だ。
「封蝋印、監査印、予備の監査印、筆記具二本、替え芯、針金……」
口に出して確認しながら、肩掛け鞄へ収める。紙束の最後に「感情は持ち込まない」と書いてあるのを見て、目を細めた。
扉がノックされる。
「監査官ヴァラン。聖塔の貸出室へ、至急だそうです」
部下の声がいつもより高い。ヴァランは「承知」と返し、廊下へ出た。
聖塔へ向かう通路は、月灯りで色を変える石が敷かれている。青、銀――そして、ふっと桃色に見えた気がした。
彼女は視線を上げ、聖塔の門をくぐった。
――そこで、道が塞がっていた。
黒い外套。肩に月紋の銀糸。影のように静かに立つ男が、回廊の中央にいる。護衛官シェルヴィ。
彼は礼もなく、ただ一歩、前へ出た。
「通して」
ヴァランが言うと、彼は短く返した。
「危ない」
「危ないのは、あなたの説明の少なさよ」
ヴァランは横から抜けようとする。だがシェルヴィは同じ角度で体をずらし、道を譲らない。
「私は整備局監査官。聖塔の貸出記録室に用がある。あなたは護衛官。職務が違う」
シェルヴィは視線をほんの少し下げ、ヴァランの鞄を見た。
「留め具」
「何?」
「外れてる」
ヴァランが鞄を見下ろした瞬間、留め具が外れ、紙束がひらひらと舞い出た。
「感情は持ち込まない」
「監査印、予備の監査印」
「靴裏の砂は落とす」
紙がシェルヴィの足元へ落ちる。彼は拾う。拾い方が丁寧すぎて、腹が立つ。
「返して」
シェルヴィは紙束を戻した。けれど最後の一枚だけ、彼の指に引っ掛かった。ヴァランが伸ばした手と、彼の指が触れた。
触れた瞬間、胸の奥で別の音が鳴った。
――夜。白い回廊。砕けた月の石。誰かの手を振りほどく自分。
息が止まる。
「監査官?」
シェルヴィの声が、耳の奥まで落ちてくる。ヴァランは手を引っ込めた。指先が熱い。
「……今、何かしました?」
「してない」
即答だった。彼は嘘をつくとき、瞬きが増える。だが今は増えない。
「なら、なぜ通さないの」
「今、貸出室に人がいる」
「誰?」
シェルヴィは口を開きかけ、奥の扉を顎で示した。扉の前に、見慣れない男が二人。片方は修繕師の道具袋、片方は上層街の書記が使う革手袋。
ヴァランの背筋が伸びる。
「……あなた、ずっとここで見張っていたの」
「うん」
短い返事が重い。
ヴァランは胸の内ポケットの紙束を押さえた。持ち物表の余白には、彼女の癖で小さく時刻が並んでいる。だが今朝だけ、その時刻が少しずつずれて見える。彼女はそれをごまかすように、シェルヴィへ言った。
「次から返事を『うん』だけで済ませないで。報告書に書けない」
「書ける」
「どう書くのよ」
「『うん』」
真面目な顔で言うから、腹が立つのに、笑いが喉まで上がった。
ヴァランは修繕師の袋と革手袋の位置関係を頭の中で並べ替えた。貸出記録が消えた。親玉の項目がない。今必要なのは、感情ではなく手順だ。
「シェルヴィ。私が中へ入る。あなたは扉の右。私は左。逃げ道を切る」
彼は頷いた。動きは正確だ。
二人は同時に歩いた。石畳の色が青から銀へ変わる。四つの靴音が、扉の前で止まる。
扉の隙間から、紙をめくる音。封蝋を剥がす爪の音。
ヴァランは扉を押し開けた。
「監査官だ。手を止めなさい」
机の上に貸出記録の写しが広げられ、親玉の項目だけが切り取られたように空いている。その空白が目に刺さった。
革手袋の男が上層街の笑い方で言う。
「監査官殿。点検です。聖塔の書類は古い。祭に向けて――」
「点検なら整備局に申請がある。申請番号を言いなさい」
男の笑みが薄くなる。修繕師の方が一歩引き、袋を抱える手が微かに震える。
ヴァランはその震えを見た。
「親玉ムーンジェイドの貸出記録から、項目が消えた。あなたが消したの?」
返事が遅れた。遅れの間に、シェルヴィが室内へ滑り込み、扉の内側へ背をつけた。逃げ道が消える。
革手袋の男の視線が月紋へ吸い寄せられ、苛立ちを隠すために笑い直した。
「箱だけです。石など、初めから――」
その瞬間、シェルヴィが壁の木箱の蓋を開けた。中には空の外箱。親玉の外箱だ。封印札が剥がされ、糊の跡が新しい。
彼は箱を掲げ、ヴァランへ見せた。
「これ」
ヴァランの喉が冷える。石そのものはない。
「嘘。封印札の糊が新しい」
自分でも驚く。数ではなく匂いで判断した。糊の匂いが、まだ立っている。
修繕師が小さく言った。
「……違うんです。盗んだんじゃない」
「なら、どこへ移した。誰の指示だ」
修繕師は答えない。革手袋の男が机の端を叩く。
「都のためだと言ったら?」
その言葉で、ヴァランの視界の端が白く滲んだ。
――都の灯りが落ちる。止めなければ。急げ。誰かの手が伸びる。振りほどく。振りほどいた手の温度。
ヴァランは唇を噛み、現実へ戻った。
「都のためなら、なおさら整備局へ申請が必要。都は段取りで回る」
言い切ったところで、シェルヴィが短く言った。
「無理するな」
ヴァランは彼を睨んだ。護衛官が監査官の心配など、順序が逆だ。
だがシェルヴィは言葉を増やさない。代わりに、彼女の鞄の留め具を迷わず留めた。金具がカチリと鳴り、奇妙なほど心が落ち着く。
修繕師が震える声で言った。
「……地下です。聖塔の、地下の装置へ」
ヴァランの背筋が、氷で撫でられたように冷えた。地下の装置――都の灯りを支える古い仕組み。
「……誰が、そうしろと言った」
修繕師は目を伏せたまま、涙を一滴落とす。
ヴァランは深く息を吸い、吐いた。
「シェルヴィ。地下へ行く。今すぐ」
「一緒」
短い。けれど頼もしい。
ヴァランは頷いた。
「遅れたら、私が怒る」
「怒っていい」
その返事で、ヴァランはふっと息を漏らした。笑いになり損ねた息だ。
廊下へ出ると、ヴァランは自分の紙束の表紙を見た。そこには「留め具、確認」と確かに書いてある。彼女は眉を寄せ、紙束の端を指で強く押した。
「私は、確認したはずなのに」
シェルヴィが歩調を落とし、落ちていた一枚をいつの間にか持っているのを見せた。そこには余白があり、彼の筆跡で小さく一行だけ足されていた。
『留め具は、他人が留める場合もある』
ヴァランは思わず足を止めた。そんな項目、表には存在しない。存在しないはずのことが、今朝から増えている。
月灯りが回廊の石を金に染めた。二人は同時に歩き出す。帳簿の空白を埋めるために。
0
あなたにおすすめの小説
目覚めたら公爵夫人でしたが夫に冷遇されているようです
MIRICO
恋愛
フィオナは没落寸前のブルイエ家の長女。体調が悪く早めに眠ったら、目が覚めた時、夫のいる公爵夫人セレスティーヌになっていた。
しかし、夫のクラウディオは、妻に冷たく視線を合わせようともしない。
フィオナはセレスティーヌの体を乗っ取ったことをクラウディオに気付かれまいと会う回数を減らし、セレスティーヌの体に入ってしまった原因を探そうとするが、原因が分からぬままセレスティーヌの姉の子がやってきて世話をすることに。
クラウディオはいつもと違う様子のセレスティーヌが気になり始めて……。
ざまあ系ではありません。恋愛中心でもないです。事件中心軽く恋愛くらいです。
番外編は暗い話がありますので、苦手な方はお気を付けください。
ご感想ありがとうございます!!
誤字脱字等もお知らせくださりありがとうございます。順次修正させていただきます。
小説家になろう様に掲載済みです。
拾った年上侯爵が甘え上手すぎて、よしよししてたら婚約することになりました
星乃和花
恋愛
⭐︎火木土21:00更新ー本編8話・後日談8話⭐︎
王都の市場で花屋をしているリナは、ある朝――
路地裏で倒れている“美形の年上男性”を拾ってしまう。
熱で弱っているだけ……のはずが、彼はなぜか距離が近い。
「行かないで」「撫でて」「君がいると回復する」
甘えが上手すぎるうえに、褒め方までずるい。
よしよし看病してあげていたら、いつの間にか毎日市場に現れるようになり、
気づけば花屋は貴族の面会所(?)になっていて――
しかも彼の正体は、王都を支える侯爵家の当主だった!?
「君は国のために必要だ(※僕が倒れるから)」
年上当主の“甘え策略”に、花屋の心臓は今日ももたない。
ほのぼの王都日常コメディ×甘やかし捕獲ラブ、開幕です。
なんども濡れ衣で責められるので、いい加減諦めて崖から身を投げてみた
下菊みこと
恋愛
悪役令嬢の最後の抵抗は吉と出るか凶と出るか。
ご都合主義のハッピーエンドのSSです。
でも周りは全くハッピーじゃないです。
小説家になろう様でも投稿しています。
見捨ててくれてありがとうございます。あとはご勝手に。
有賀冬馬
恋愛
「君のような女は俺の格を下げる」――そう言って、侯爵家嫡男の婚約者は、わたしを社交界で公然と捨てた。
選んだのは、華やかで高慢な伯爵令嬢。
涙に暮れるわたしを慰めてくれたのは、王国最強の騎士団副団長だった。
彼に守られ、真実の愛を知ったとき、地味で陰気だったわたしは、もういなかった。
やがて、彼は新妻の悪行によって失脚。復縁を求めて縋りつく元婚約者に、わたしは冷たく告げる。
6年前の私へ~その6年は無駄になる~
夏見颯一
恋愛
モルディス侯爵家に嫁いだウィニアは帰ってこない夫・フォレートを待っていた。6年も経ってからようやく帰ってきたフォレートは、妻と子供を連れていた。
テンプレものです。テンプレから脱却はしておりません。
夫の妹に財産を勝手に使われているらしいので、第三王子に全財産を寄付してみた
今川幸乃
恋愛
ローザン公爵家の跡継ぎオリバーの元に嫁いだレイラは若くして父が死んだため、実家の財産をすでにある程度相続していた。
レイラとオリバーは穏やかな新婚生活を送っていたが、なぜかオリバーは妹のエミリーが欲しがるものを何でも買ってあげている。
不審に思ったレイラが調べてみると、何とオリバーはレイラの財産を勝手に売り払ってそのお金でエミリーの欲しいものを買っていた。
レイラは実家を継いだ兄に相談し、自分に敵対する者には容赦しない”冷血王子”と恐れられるクルス第三王子に全財産を寄付することにする。
それでもオリバーはレイラの財産でエミリーに物を買い与え続けたが、自分に寄付された財産を勝手に売り払われたクルスは激怒し……
※短め
元恋人が届けた、断りたい縁談
待鳥園子
恋愛
シュトルム辺境伯の末娘ソフィに隣国の帝国第二皇子から届けられた『縁談』の使者は、なんと元恋人のジョサイアだった。
手紙ひとつで別れることになったソフィは、素直になれずジョサイアから逃げ回る。
「私に届けなければ、彼は帝国に帰ることが出来ない」
そう思いようやく書状を受け取ろうと決意したソフィに、ジョサイアは何かを言い掛けて!?
十八歳で必ず死ぬ令嬢ですが、今日もまた目を覚ましました【完結】
藤原遊
恋愛
十八歳で、私はいつも死ぬ。
そしてなぜか、また目を覚ましてしまう。
記憶を抱えたまま、幼い頃に――。
どれほど愛されても、どれほど誰かを愛しても、
結末は変わらない。
何度生きても、十八歳のその日が、私の最後になる。
それでも私は今日も微笑む。
過去を知るのは、私だけ。
もう一度、大切な人たちと過ごすために。
もう一度、恋をするために。
「どうせ死ぬのなら、あなたにまた、恋をしたいの」
十一度目の人生。
これは、記憶を繰り返す令嬢が紡ぐ、優しくて、少しだけ残酷な物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる