自由の宿エルファリア 栄光を求めて

乾為天女

文字の大きさ
119 / 146
【第二十四話:分岐する道──旧友との軋轢と新たな合流】

シーン3:領主の専属契約と“自由”の価値

しおりを挟む
 エルフリアの食堂に戻った一行は、準備のリストを作りながら、山岳地帯への冒険計画を練っていた。しかし、頭の片隅にはどうしても領主直轄の専属契約が引っかかっていた。
 将臣が「なぁ、結局専属の話、どうすんだ?」とぽつりと漏らすと、ロイドが「山岳地帯の依頼を受けた以上、そっちが優先じゃねぇか?」と返した。しかし、エリナが「でも、もし領主が直轄で動けと言ってきたら、断れないかもしれないわ」と不安を口にする。
「確かに、専属契約ってことは、領地のために最優先で動けって話だろ? じゃあ、山岳地帯の仕事と重なったらどうなるんだ?」と朗雄が問いかけると、基一が「その場合、当然ながら領主命令が優先されるでしょうね」と冷静に答えた。
 銀次が「じゃあ、せっかくでかい依頼を受けても、途中で帰れって言われたらどうするんだ?」と心配し、孝征が「それは困りますね。報酬がパーになったら、元も子もないですし」とうなだれた。
「俺は正直、領主の下で働くのは気が進まねぇ」と将臣が率直に言うと、エリナが「でも、安定は魅力よ。冒険者としての自由と引き換えに、生活基盤がしっかりするわけだから」と冷静に考えた。
 岡村が「ただ、俺たちがエルフリアを拠点にしている以上、領地の守りを優先しなければならないのも理解できる」と真面目に話すと、ロイドが「確かに、俺たちが封印遺跡を守った責任もあるしな」と同意する。
 そこに、先ほどの騎士団の使者が再び現れた。「すみません、先ほどの件について、領主が追加でお話があるそうです」と頭を下げると、岡村が「領主が直接会うってことか?」と聞き返す。
「はい。お忙しい中、わざわざエルフリアまで来られるとのことです」と使者が答え、将臣が「マジかよ、わざわざ俺たちに会いに来るのか」と驚いた。
「それだけ期待されてるってことかもしれないけど、気が重いわね」とエリナがため息をつくと、ロイドが「まぁ、面と向かって断るのも難しそうだな」と肩をすくめた。
 基一が「でも、せっかくの機会ですから、こちらの意見もしっかり伝えましょう」と提案し、銀次が「領主って、どんな奴なんだ? 俺たち、直接会ったことないよな」と不安げに尋ねる。
「以前、任務で少しだけ見たことがあるけど、冷静で落ち着いた人だった」とエリナが言うと、将臣が「そうか、威圧感とかないならまだマシか」と少し安心した。
「とにかく、領主に会ってから考えよう。無理に押し付けられるようなら、その場で断るしかない」と岡村がまとめ、デュークが「確かに、まずは向こうの話を聞かないと判断できないな」と頷いた。
 その後、女将が「お前たち、領主に会うなら身なりをちゃんとしときな。冒険者だからって、だらしない姿じゃ失礼だよ」と叱りつけ、将臣が「へいへい、分かってますって」と返事をした。
 夕方になり、宿の入り口から騎士団の者が「領主がお見えになりました!」と声を上げた。騎士団の数名が整列し、その中を静かに歩いてきたのは、威圧感こそないがどこか芯の強さを感じさせる男性、領主アルトリウスだった。
「初めまして、私はこの領地を治めるアルトリウスです。冒険者の皆さん、日々の活動に感謝しております」と穏やかな声で挨拶する。岡村が「こちらこそ、わざわざお越しいただきありがとうございます」と丁寧に頭を下げた。
「実は、遺跡での封印作業に関して、皆さんの活躍を高く評価しております。それで、正式に直轄の冒険者部隊として迎えたいと考えているのです」とアルトリウスが話し出した。
 ロイドが「専属契約ということは、やはり領地のために優先的に動く必要があるということですか?」と尋ねると、アルトリウスが「はい。ただし、冒険者としての活動を完全に制限するつもりはありません。必要に応じて、各地への遠征や探索にも従事してもらいます」と答えた。
「それって、要するにどこにでも呼び出されるってことか?」と将臣が警戒すると、アルトリウスが「無理に拘束するつもりはありません。ただし、領地が危険に晒された時には、必ず戻ってきてもらう必要があります」と正直に伝えた。
「でも、それだと山岳地帯の護衛任務が途中で中断になる可能性もありますね」と基一が指摘すると、アルトリウスが「確かにその通りです。ですから、選択の自由は皆さんに委ねたい」と真剣な表情で言った。
 岡村が「自由に活動できる余地があるのなら、一度考えさせてください」と慎重に返答し、アルトリウスが「もちろんです。皆さんの意志を尊重します」と微笑んだ。
 アルトリウスが去った後、将臣が「意外と悪い奴じゃなかったな」と少し安堵し、ロイドが「でも、やっぱり自由が減るのは間違いない」とため息をついた。
 エリナが「どうするべきか、本当に悩むわね」と肩を落とし、岡村が「俺たちにとって一番大事なのは何か、それをもう一度考え直さないといけないな」と真剣に言った。
 こうして、専属契約という選択肢が具体的になったことで、彼らの心はさらに揺れ動く。冒険者としての自由を取るか、責任を取るか──その決断を迫られながら、夜は静かに更けていった。シーン3[終]
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双

四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。 「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。 教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。 友達もなく、未来への希望もない。 そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。 突如として芽生えた“成長システム”。 努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。 筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。 昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。 「なんであいつが……?」 「昨日まで笑いものだったはずだろ!」 周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。 陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。 だが、これはただのサクセスストーリーではない。 嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。 陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。 「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」 かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。 最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。 物語は、まだ始まったばかりだ。

断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます

山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。 でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。 それを証明すれば断罪回避できるはず。 幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。 チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。 処刑5秒前だから、今すぐに!

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

靴屋の娘と三人のお兄様

こじまき
恋愛
靴屋の看板娘だったデイジーは、母親の再婚によってホークボロー伯爵令嬢になった。ホークボロー伯爵家の三兄弟、長男でいかにも堅物な軍人のアレン、次男でほとんど喋らない魔法使いのイーライ、三男でチャラい画家のカラバスはいずれ劣らぬキラッキラのイケメン揃い。平民出身のにわか伯爵令嬢とお兄様たちとのひとつ屋根の下生活。何も起こらないはずがない!? ※小説家になろうにも投稿しています。

処理中です...