28 / 30
第28話 台詞の甘さは砂糖じゃ測れない
十月上旬の夜。風見荘の共同キッチンは、夜になると音が増える。包丁がまな板を叩く乾いたリズム、鍋の底をこする木べらのくぐもった音。冷蔵庫のドアが開くたび、ひんやりした白い息が一瞬だけ床に落ちる。
姫蘭が、壁の当番表をはがしていた。紙の角が少しだけ曲がり、セロテープの跡が木の壁に残る。そこへ新しい紙を貼り、太いマーカーで区切り線を引く。線を引く手元が迷わない。引き終えると、彼女は振り返って言った。
「洗い物の人、まず水を出す。次にスポンジ。次に洗剤。順番を変えると、なぜか泡だけが増える」
「泡だけ増える日、ある」
朋行が頷きながら、ボウルの中で生クリームを泡立てた。泡が増えるのは得意分野らしい。
心咲はキッチンの端で、メモ帳を開いていた。今日の校正の赤字が、まだ指先に残っている。紙の上に短い一行を書いて、ペン先を止める。
――今、安心している。少しだけ、照れている。
書いてから顔を上げると、廊下の向こうで風鈴が鳴った。屋上の手すりにぶつかる音が、海からの風を連れてくる。誰かが帰ってきた音ではない。風だけが先に着く音だ。
玄関の鍵が回り、靴が揃う気配がした。約束の時間より、まだ十分もある。
「おかえり」
心咲が声をかけると、翔琉が廊下の影から顔を出した。手にはコンビニの袋。中身のペットボトルがぶつかって、軽い音を立てる。
「氷、足りる?」
「さっき梨加子が作ってた」
姫蘭が言う。梨加子はシンクの前で、何も言わずに皿をすすいでいた。水切りかごに皿が置かれるたび、陶器が小さく鳴る。聞こえないふりをして、ちゃんと聞こえる音。
翔琉は袋をそっと置き、足を引きずらないように歩いた。椅子に座る前に、床を見て、足の向きをそろえる。整骨院で患者の足を触る手が、今は自分の足に遠慮しているみたいだった。
「痛み、どう?」
心咲が尋ねる。翔琉はすぐ答えず、口を開きかけて閉じた。代わりに、靴下の先を指でつまみ、少しだけ笑う。
「さっきよりは、遠い。……でも、走ると近い」
「遠いのは良い兆候」
姫蘭が頷いた。彼女はコップに水を注いで、翔琉の前に置く。氷が当たって、カラン、と鳴った。会話の合図みたいに。
朋行が、オーブンの前で背伸びをした。
「今日の献立、残り物のフルコース。前菜は、冷蔵庫の隅で泣いてたトマト。主菜は、昨日のカレーの生まれ変わり。デザートは、失敗ノートから救出したクッキー」
「失敗ノートって、まだ増えてるの?」
心咲が聞くと、朋行は胸ポケットから小さなノートを取り出して見せた。角が丸くなるほど使い込まれている。
「増える。増えるけど、直す場所が見える。だから増える」
姫蘭は当番表の下に、小さなカードを並べ始めた。『話す』『聞く』『水を飲む』と書かれている。最後の一枚だけ、赤いペンで『休む』。
「今日は、これも入れとく。翔琉は、格好つけて立ちっぱなしになりそうだから」
「立ちっぱなし、ばれてる?」
翔琉が苦笑いした。
夕飯が並ぶころ、窓の外は真っ暗になった。換気扇の音に混じって、遠くの波が低く唸る。心咲の前には、トマトのマリネと、カレーを薄くのばしたスープと、焼き直したパン。皿の隅に、朋行が勝手に添えたミントが青い。
「ミント、どこから」
「屋上の鉢。姫蘭が増やしてた」
「増やしてない。勝手に増えた」
姫蘭は平然と言う。風見荘は、勝手に増えるものが多い。噂も、風も、そして今は、笑いも。
梨加子が、箸を置いた。いつもなら何か一言刺さるのに、今日は刺さらない。代わりに、彼女は皿の縁を親指でなぞってから、ぽつりと言った。
「……この前の、言い方。悪かった」
シンクから落ちる水滴が、一拍遅れて鳴った。誰も急がない。姫蘭がカードをそっと動かし、『話す』を梨加子の前へ置く。
「理由も、言える?」
梨加子は息を吸い、吐いた。
「怖かった。石がなくなって、誰かが黙ってるのが、もっと怖かった」
心咲はメモ帳に手を伸ばしかけ、やめた。今は、目で受け取る順番だ。翔琉が、コップを持ち上げて言った。
「怖いって言ってくれて、助かる」
梨加子はうつむいたまま、頷いた。謝るのが上手な人はいない。上手じゃなくても、言葉が落ちる場所があれば、拾える。
食器が片づき、床が乾くころ、朋行はクッキーの皿をテーブルの真ん中へ置いた。焼き色がまちまちで、形も少し崩れている。でも甘い匂いはちゃんとする。
「味見会、第二部。今日は、台詞も味見する」
「台詞?」
心咲が首をかしげると、朋行が翔琉の肩を軽く叩いた。
「この人、言いたいことがあるらしい。ほら、言ってみ」
翔琉の耳が、少し赤くなった。彼は水筒のふたを開け、閉め、また開けた。開閉の音が、心臓の代わりに鳴っているみたいだった。
姫蘭が、カードを並べ替える。『話す』を翔琉へ、『聞く』を心咲へ。『水を飲む』を二人の間に置いて、最後に『休む』をテーブルの端へ寄せた。
「まず、短く。次に、理由。最後に、相手の返事を待つ。順番ね」
翔琉は深呼吸した。整骨院の制服のときと同じように、背筋を立てる。けれど言葉は、思った方向に蹴れない。
「えっと……俺、心咲と……その……」
朋行がすかさず口を挟む。
「今のは砂糖入れすぎの生地。甘い以前に、粉が足りない」
「例え、分かるようで分からない」
「台詞の甘さは砂糖で調整できないぞ」
朋行が言い切ると、姫蘭が吹き出した。梨加子も、ほんの少しだけ口元を押さえた。
心咲は笑いながら、メモ帳を開いた。笑いの波が引く前に、一行書く。
――今、胸があたたかい。逃げたくない。
書き終えて顔を上げると、翔琉がこちらを見ていた。笑われたことを恥ずかしがる目ではなく、まだ投げる前のボールを握っている目だ。
「……もう一回」
翔琉が言う。朋行はクッキーを一枚口に放り込み、うなずいた。姫蘭はカードを動かさない。梨加子は皿を洗う手を止めず、でも耳は止めた。
翔琉は、言葉を先に渡すように、短く蹴った。
「心咲が、好きだ」
空気が一瞬、静かになった。換気扇の音まで遠くなる。心咲はすぐ返事をしなかった。ペンを持ち、紙に一行書いた。ページの角が少し湿る。
――今、嬉しい。怖い。どちらも本当。
顔を上げると、翔琉は動かない。返事を急がせるような目でもない。待っているだけだ。順番を守っている。
「……その言い方、いい」
心咲が言うと、朋行が両手を上げた。
「ほら! 粉、足りてた!」
「今のは、砂糖控えめの素焼き」
姫蘭が真面目に評するので、笑いが戻った。
翔琉は肩の力を抜き、息を吐いた。
「本番は、堤防で言う」
「堤防、寒いよ」
心咲が言うと、翔琉はテーブルの上の水筒を見て、袋の中からもう一本のペットボトルを出した。
「温かいのも買う。……先に渡しとく」
それはサッカーの話ではなく、生活の話だった。心咲の胸の奥で、赤い花の石が小さく熱を持った気がした。
片づけが終わり、みんながそれぞれの部屋へ散っていく。長い木の廊下を歩く足音が、順番に遠ざかる。最後にキッチンの灯りを消したのは姫蘭で、消える前に彼女は当番表の端に小さく書き足した。
『迷ったら、水を飲む』
それだけで、風見荘は少しだけ強くなる。
心咲は屋上へ出た。手すりの冷たさが指先に吸い付く。風鈴が鳴り、髪がほどける。巾着の中の石を指で確かめ、メモ帳を開く。
――言葉は、疑いより先に渡せる。
書いた瞬間、階下の窓が一つ開いて、朋行の声が上がった。
「心咲ー! 砂糖の袋、勝手に減ってたら怒られるから、明日一緒に買いに行くぞー!」
「了解。順番、守ってね!」
返事をして、心咲は笑った。風の冷たさの中に、夕飯の匂いがまだ残っている。ここでなら、怖いと言っていい。ここでなら、好きだと言われても、ちゃんと受け取れる。
姫蘭が、壁の当番表をはがしていた。紙の角が少しだけ曲がり、セロテープの跡が木の壁に残る。そこへ新しい紙を貼り、太いマーカーで区切り線を引く。線を引く手元が迷わない。引き終えると、彼女は振り返って言った。
「洗い物の人、まず水を出す。次にスポンジ。次に洗剤。順番を変えると、なぜか泡だけが増える」
「泡だけ増える日、ある」
朋行が頷きながら、ボウルの中で生クリームを泡立てた。泡が増えるのは得意分野らしい。
心咲はキッチンの端で、メモ帳を開いていた。今日の校正の赤字が、まだ指先に残っている。紙の上に短い一行を書いて、ペン先を止める。
――今、安心している。少しだけ、照れている。
書いてから顔を上げると、廊下の向こうで風鈴が鳴った。屋上の手すりにぶつかる音が、海からの風を連れてくる。誰かが帰ってきた音ではない。風だけが先に着く音だ。
玄関の鍵が回り、靴が揃う気配がした。約束の時間より、まだ十分もある。
「おかえり」
心咲が声をかけると、翔琉が廊下の影から顔を出した。手にはコンビニの袋。中身のペットボトルがぶつかって、軽い音を立てる。
「氷、足りる?」
「さっき梨加子が作ってた」
姫蘭が言う。梨加子はシンクの前で、何も言わずに皿をすすいでいた。水切りかごに皿が置かれるたび、陶器が小さく鳴る。聞こえないふりをして、ちゃんと聞こえる音。
翔琉は袋をそっと置き、足を引きずらないように歩いた。椅子に座る前に、床を見て、足の向きをそろえる。整骨院で患者の足を触る手が、今は自分の足に遠慮しているみたいだった。
「痛み、どう?」
心咲が尋ねる。翔琉はすぐ答えず、口を開きかけて閉じた。代わりに、靴下の先を指でつまみ、少しだけ笑う。
「さっきよりは、遠い。……でも、走ると近い」
「遠いのは良い兆候」
姫蘭が頷いた。彼女はコップに水を注いで、翔琉の前に置く。氷が当たって、カラン、と鳴った。会話の合図みたいに。
朋行が、オーブンの前で背伸びをした。
「今日の献立、残り物のフルコース。前菜は、冷蔵庫の隅で泣いてたトマト。主菜は、昨日のカレーの生まれ変わり。デザートは、失敗ノートから救出したクッキー」
「失敗ノートって、まだ増えてるの?」
心咲が聞くと、朋行は胸ポケットから小さなノートを取り出して見せた。角が丸くなるほど使い込まれている。
「増える。増えるけど、直す場所が見える。だから増える」
姫蘭は当番表の下に、小さなカードを並べ始めた。『話す』『聞く』『水を飲む』と書かれている。最後の一枚だけ、赤いペンで『休む』。
「今日は、これも入れとく。翔琉は、格好つけて立ちっぱなしになりそうだから」
「立ちっぱなし、ばれてる?」
翔琉が苦笑いした。
夕飯が並ぶころ、窓の外は真っ暗になった。換気扇の音に混じって、遠くの波が低く唸る。心咲の前には、トマトのマリネと、カレーを薄くのばしたスープと、焼き直したパン。皿の隅に、朋行が勝手に添えたミントが青い。
「ミント、どこから」
「屋上の鉢。姫蘭が増やしてた」
「増やしてない。勝手に増えた」
姫蘭は平然と言う。風見荘は、勝手に増えるものが多い。噂も、風も、そして今は、笑いも。
梨加子が、箸を置いた。いつもなら何か一言刺さるのに、今日は刺さらない。代わりに、彼女は皿の縁を親指でなぞってから、ぽつりと言った。
「……この前の、言い方。悪かった」
シンクから落ちる水滴が、一拍遅れて鳴った。誰も急がない。姫蘭がカードをそっと動かし、『話す』を梨加子の前へ置く。
「理由も、言える?」
梨加子は息を吸い、吐いた。
「怖かった。石がなくなって、誰かが黙ってるのが、もっと怖かった」
心咲はメモ帳に手を伸ばしかけ、やめた。今は、目で受け取る順番だ。翔琉が、コップを持ち上げて言った。
「怖いって言ってくれて、助かる」
梨加子はうつむいたまま、頷いた。謝るのが上手な人はいない。上手じゃなくても、言葉が落ちる場所があれば、拾える。
食器が片づき、床が乾くころ、朋行はクッキーの皿をテーブルの真ん中へ置いた。焼き色がまちまちで、形も少し崩れている。でも甘い匂いはちゃんとする。
「味見会、第二部。今日は、台詞も味見する」
「台詞?」
心咲が首をかしげると、朋行が翔琉の肩を軽く叩いた。
「この人、言いたいことがあるらしい。ほら、言ってみ」
翔琉の耳が、少し赤くなった。彼は水筒のふたを開け、閉め、また開けた。開閉の音が、心臓の代わりに鳴っているみたいだった。
姫蘭が、カードを並べ替える。『話す』を翔琉へ、『聞く』を心咲へ。『水を飲む』を二人の間に置いて、最後に『休む』をテーブルの端へ寄せた。
「まず、短く。次に、理由。最後に、相手の返事を待つ。順番ね」
翔琉は深呼吸した。整骨院の制服のときと同じように、背筋を立てる。けれど言葉は、思った方向に蹴れない。
「えっと……俺、心咲と……その……」
朋行がすかさず口を挟む。
「今のは砂糖入れすぎの生地。甘い以前に、粉が足りない」
「例え、分かるようで分からない」
「台詞の甘さは砂糖で調整できないぞ」
朋行が言い切ると、姫蘭が吹き出した。梨加子も、ほんの少しだけ口元を押さえた。
心咲は笑いながら、メモ帳を開いた。笑いの波が引く前に、一行書く。
――今、胸があたたかい。逃げたくない。
書き終えて顔を上げると、翔琉がこちらを見ていた。笑われたことを恥ずかしがる目ではなく、まだ投げる前のボールを握っている目だ。
「……もう一回」
翔琉が言う。朋行はクッキーを一枚口に放り込み、うなずいた。姫蘭はカードを動かさない。梨加子は皿を洗う手を止めず、でも耳は止めた。
翔琉は、言葉を先に渡すように、短く蹴った。
「心咲が、好きだ」
空気が一瞬、静かになった。換気扇の音まで遠くなる。心咲はすぐ返事をしなかった。ペンを持ち、紙に一行書いた。ページの角が少し湿る。
――今、嬉しい。怖い。どちらも本当。
顔を上げると、翔琉は動かない。返事を急がせるような目でもない。待っているだけだ。順番を守っている。
「……その言い方、いい」
心咲が言うと、朋行が両手を上げた。
「ほら! 粉、足りてた!」
「今のは、砂糖控えめの素焼き」
姫蘭が真面目に評するので、笑いが戻った。
翔琉は肩の力を抜き、息を吐いた。
「本番は、堤防で言う」
「堤防、寒いよ」
心咲が言うと、翔琉はテーブルの上の水筒を見て、袋の中からもう一本のペットボトルを出した。
「温かいのも買う。……先に渡しとく」
それはサッカーの話ではなく、生活の話だった。心咲の胸の奥で、赤い花の石が小さく熱を持った気がした。
片づけが終わり、みんながそれぞれの部屋へ散っていく。長い木の廊下を歩く足音が、順番に遠ざかる。最後にキッチンの灯りを消したのは姫蘭で、消える前に彼女は当番表の端に小さく書き足した。
『迷ったら、水を飲む』
それだけで、風見荘は少しだけ強くなる。
心咲は屋上へ出た。手すりの冷たさが指先に吸い付く。風鈴が鳴り、髪がほどける。巾着の中の石を指で確かめ、メモ帳を開く。
――言葉は、疑いより先に渡せる。
書いた瞬間、階下の窓が一つ開いて、朋行の声が上がった。
「心咲ー! 砂糖の袋、勝手に減ってたら怒られるから、明日一緒に買いに行くぞー!」
「了解。順番、守ってね!」
返事をして、心咲は笑った。風の冷たさの中に、夕飯の匂いがまだ残っている。ここでなら、怖いと言っていい。ここでなら、好きだと言われても、ちゃんと受け取れる。
あなたにおすすめの小説
課長と私のほのぼの婚
藤谷 郁
恋愛
冬美が結婚したのは十も離れた年上男性。
舘林陽一35歳。
仕事はできるが、ちょっと変わった人と噂される彼は他部署の課長さん。
ひょんなことから交際が始まり、5か月後の秋、気がつけば夫婦になっていた。
※他サイトにも投稿。
※一部写真は写真ACさまよりお借りしています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
幼馴染の許嫁
山見月あいまゆ
恋愛
私にとって世界一かっこいい男の子は、同い年で幼馴染の高校1年、朝霧 連(あさぎり れん)だ。
彼は、私の許嫁だ。
___あの日までは
その日、私は連に私の手作りのお弁当を届けに行く時だった
連を見つけたとき、連は私が知らない女の子と一緒だった
連はモテるからいつも、周りに女の子がいるのは慣れいてたがもやもやした気持ちになった
女の子は、薄い緑色の髪、ピンク色の瞳、ピンクのフリルのついたワンピース
誰が見ても、愛らしいと思う子だった。
それに比べて、自分は濃い藍色の髪に、水色の瞳、目には大きな黒色の眼鏡
どうみても、女の子よりも女子力が低そうな黄土色の入ったお洋服
どちらが可愛いかなんて100人中100人が女の子のほうが、かわいいというだろう
「こっちを見ている人がいるよ、知り合い?」
可愛い声で連に私のことを聞いているのが聞こえる
「ああ、あれが例の許嫁、氷瀬 美鈴(こおりせ みすず)だ。」
例のってことは、前から私のことを話していたのか。
それだけでも、ショックだった。
その時、連はよしっと覚悟を決めた顔をした
「美鈴、許嫁をやめてくれないか。」
頭を殴られた感覚だった。
いや、それ以上だったかもしれない。
「結婚や恋愛は、好きな子としたいんだ。」
受け入れたくない。
けど、これが連の本心なんだ。
受け入れるしかない
一つだけ、わかったことがある
私は、連に
「許嫁、やめますっ」
選ばれなかったんだ…
八つ当たりの感覚で連に向かって、そして女の子に向かって言った。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
「君はいらない」と捨てられた夜、天敵の冷徹社長に「なら、俺が貰う」と拾われました。――手を出さない約束でしたが、彼の理性が限界のようです
葉山 乃愛
恋愛
【婚約破棄から始まる、不器用なライオン(冷徹社長)の猛烈な求愛!】
「俺の妻になるなら覚悟しろ。……もう、指一本逃がすつもりはない」
★あらすじ★
「美月は完璧すぎて、可愛げがないんだよ」
28歳の誕生日。
一流ホテルのウエディングプランナーである相沢美月(あいざわ みつき)は、婚約者の裏切りにより、結婚目前ですべてを失った。
雨の降る路地裏。
ヒールも折れ、心も折れてうずくまっていた美月の前に現れたのは、かつての高校時代の天敵であり、現在は勤務先の冷徹な社長 一条蓮(いちじょう れん)だった。
「捨て猫以下だな」
そう憎まれ口を叩きながらも、彼は泥だらけの美月を躊躇なく抱き上げ、最高級ペントハウスへと連れ帰る。
そして、彼が突きつけたのは、あまりにも強引な提案だった。
「住む場所がないなら、俺の家に来い。その代わり――俺の『婚約者』役を演じろ」
利害の一致した契約関係。
条件は「お互いに干渉しないこと」、そして「決して手を出さないこと」。
……のはずだったのに。
「髪、濡れたままだと風邪を引く」
「あんな男のために泣くな。顔が台無しだ」
同居生活で見えてきたのは、冷徹な仮面の下に隠された、不器用すぎるほどの優しさと独占欲。
美月が作った手料理を誰よりも美味しそうに食べ、元婚約者が復縁を迫ってくれば「俺の女に触れるな」と徹底的に排除する。
天敵だったはずの彼に守られ、凍っていた美月の心は次第に溶かされていく。
しかし、ある雷雨の夜。
美月が不用意に彼に触れた瞬間、一条の理性のタガが外れてしまい――。
「……手を出さない約束? 撤回だ」
「そんな無防備な顔で見つめて、何もしないでいられるほど、俺は聖人君子じゃない」
10年越しの片思いをこじらせたハイスペック社長 × 仕事熱心で恋愛に臆病なプランナー。
契約から始まった二人の関係が、本物の愛(溺愛)に変わるまで。
元婚約者への痛快な「ざまぁ」も収録した、極上の大人のシンデレラストーリー!
【登場人物】
◆相沢 美月(28)
ホテルの敏腕ウエディングプランナー。真面目でお人好しな性格が災いし、「つまらない女」と婚約破棄される。実は家事万能で、酔うと少しだけ甘えん坊になる(本人は無自覚)。
◆一条 蓮(28)
ホテルグループの社長。美貌と才覚を併せ持つが、他人に興味を示さないため「氷の貴公子」と呼ばれる。実は高校時代から美月を一途に想い続けており、彼女のこととなると冷静さを失う。
俺様上司に今宵も激しく求められる。
藤白ましろ
恋愛
鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。
蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。
ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。
「おまえの顔、えっろい」
神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。
――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。
**2026.01.02start~2026.01.17end**
◆エブリスタ様にも掲載。人気沸騰中です!
https://estar.jp/novels/26513389
愛を知った私は、もう二度と跪きません
阿里
恋愛
泥だらけのドレス、冷え切った食事、終わりのない書類仕事。
家族のために尽くしてきたエカテリーナに返されたのは、あまりにも残酷な追放宣告だった。
「呪われた男にでも喰われてこい」
そう笑って送り出した彼らは知らなかった。辺境伯ゼノスが、誰よりも強く、美しく、そして執着心が強い男だということを。
彼の手によって「価値ある女」へと生まれ変わったエカテリーナ。
その輝きに目が眩み、後悔して這いつくばる元家族たち。
「エカテリーナ様、どうかお助けを!」
かつて私を虐げた人たちの悲鳴を聞きながら、私は最愛の夫の腕の中で、静かに微笑む。