あの校庭の花は、全部知っている。

乾為天女

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第19章「教室に残された古いノート」

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 文化祭の熱気も去った月曜日、3年C組教室。
「……なあ、教卓の下に何かある」
「なにそれ!?先生の弁当!?忘れ物!?呪物!?」
「そんなテンションで“呪物”って言うなよ!?」
 哲哉が教卓下から取り出したのは、ボロボロの黒いノート。
「わ、めっちゃ古い……これ、昭和感ある!」
「しかも、“記憶の花”ってタイトル書いてあるんだけど!?」
「え、嘘でしょ!?完全に俺たちの劇と同じ名前なんだけど!!?」
「つまりこれは――」
「前世の俺が書いたもの……!」
「違うよ!!急に輪廻の話持ち込むな!!」
 悠里がノートを開く。中には、達筆かつ読みやすい文字でこう書かれていた。

『未来へと、君たちの声が続くように』
『この学校には、言葉を写す花が咲く。忘れられたものが、咲いたときにだけ思い出される。』
『このノートを見つけた君たちへ。おかえりなさい。そして、ありがとう。』

「えっ……なにこれ、めっちゃ感動系じゃない?」
「誰?誰が書いたの!?精霊!?歴代生徒!?花本人!?」
「花が手記残してたら筆記具どうしてんの!?根っこに万年筆差さってるの!?」
「でもこれ、“ずっと前から見てた”って口ぶりだよな……」
 菜緒がそっと言う。
「じゃあ……私たちの“物語”って、最初から予定されてたの?」
「まさかの“花主導脚本”説、再浮上……!」
「しかもノートの最後のページに、“君たちの声は、きっと誰かの春になる”って書いてある……」
「ポエムの完成度高っ!誰だよもう……!」
「俺だ」
「ちがうよ!」

 さらにノートの中には、いくつか“落書きのようなメモ”もあった。
『校庭、4月になるとまた花咲く(たぶん)』


『2年の理科準備室、やっぱりこわい』


『チュロスは最強(異論なし)』


『ラップで意思疎通試したが、花の反応は曖昧』


「うわあああああ!!同族いたあああああ!!」
「過去にも“YOで花と話そうとした人間”いたのかよ!!」
「俺、歴史上の珍事件に巻き込まれてた!?」
 拓毅がノートを閉じながら言う。
「……このノート、これまでに“花と向き合った誰か”が、代々書き残していったんだな」
「つまり、“記憶のリレー”ってことか」
「うお、うまいこと言うな!」
「そのフレーズでチュロス売れそう」
「無理だよ!」

 そして。
 その日、佐々木から一通の手紙が届いた。
『ごめん、急なんだけど――
   来週、転校することになりました。』
「えっ!?まって!?急展開!?」
「え、異世界に!?また!?YO経由!?現実!?どっち!?」
 続く文面は、淡々としていて、でもどこか優しかった。
『みんなと過ごした時間、どれも宝物です。
   花の記憶の中で、私はちゃんと自分を見つけられた気がします。
   だから、きっとどこに行っても、大丈夫』
『あと、YOはちょっとクセになるので、転校先で気をつけます』
「最後の行が台無しだよ!!!」
「感動をYOで締めるなああああ!!」

 放課後。
 全員で、教室の黒板にこう書いた。
『さよなら、佐々木』
『また春に、花の前で』
『咲けYO。』
「だから最後のそれいらないんだってば!!」
 でも――
 その日はもう、誰もそれを消さなかった。
 次章、いよいよ最終回。
「また、春がきたら」
  卒業と、新しい物語のはじまりを描きます。ラストも、もちろん笑って泣いてコメディです。お楽しみに!
【章終】
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