6 / 61
第六章「釧路市 〜霧の泉と湿原の祈り〜」
しおりを挟む
釧路湿原は、その朝も霧に包まれていた。見渡す限りの葦原の上に、白い靄がふわりと広がり、空と地面の境界を溶かしていた。細岡展望台の木道には、湿った木の匂いが立ち込めている。結大は手すりに手を置き、その深い呼吸を胸いっぱいに吸い込んだ。
「……静かだな」
横に立つ萌花がうなずく。「けど、静かすぎる。“霧の泉”から、水音がしないの。……やっぱり、ただの天候のせいじゃないよ」
朝五時、まだ観光客の足音も届かない時間帯だった。彼らがここへ来たのは、昨晩、炉端焼き屋で働く裕太郎からの知らせがあったからだ。釧路湿原の中心、“霧の泉”が干上がっている——それは、ただ事ではなかった。
「湿原は生き物だからな。水がなくなれば、まず音が消える。生き物たちが黙る。……それが、始まりなんだろう」
結大は、規則正しく整えられた木道をゆっくりと歩きながら、かすかに濡れた靴底の音を聞いた。だがその音に、呼応するような鳥の声も、風のざわめきもなかった。まるで、誰かが息を止めたまま待っているような、そんな緊張が空気に満ちていた。
「ここが、“シマフクロウのカムイ”の棲む地なんだよね」
萌花が声を潜めて言うと、結大は頷いた。「そう。湿原の神。風と霧、そして水を守る……けど、それはもう何十年も前の話になってた。伝承って、忘れられていくからな」
「でも、わたし、忘れたくないって思ったの。神様って、昔の人が“誰かが見ててくれる”って信じた証拠だよね」
その言葉には、誰かを信じる強さと、同時に自分の弱さを認める優しさがあった。結大はそれにうなずいたものの、どこか言葉が続かなかった。
細岡展望台の先、“霧の泉”へ続く小道の入口に、すでにひとりの人影が立っていた。
「……来たか」
振り返ったのは、裕太郎だった。整った制服の上に黒い防寒ベストを重ね、手には手書きの地図を持っている。彼の表情にはいつもの柔和さがなかった。そこには、何かに対する確信と、それを仲間に伝えようとする覚悟が見えた。
「やっぱり、枯れてたんだな」
結大の問いに、裕太郎はゆっくりと地図を差し出した。「今朝、夜明けと同時に現場へ入った。湿原の中心部、“霧の泉”の水位がゼロ。周囲の草も土も、まるで火を通したみたいに硬く乾いてる」
「それで、誰か……いや、“何か”がいた?」
「いた。というより、感じた。空気が沈んで、音が抜けた感じ。まるで、湿原そのものが声を失ったみたいだった」
そのとき、木道の奥から駆けてくる音がした。細い体に大きなザックを背負いながら、知香が走ってきた。息を切らしながらも、手にはなにかが挟まったノートを握っている。
「遅れてごめん!……でも、これ見て。阿寒湖の祭りで手に入れた資料。『湿原讃歌』って曲の、古い譜面……と、それに添えられてた古文」
萌花がそれを受け取り、目を通した。「この旋律……途中に“沈黙の節”って書かれてる。普通の讃歌じゃない。“音が消える場所でしか奏でられない音”って……」
「それが“霧の泉”を呼び戻す鍵かもしれない」
知香はそう言いながら、ザックからもう一枚の紙を取り出した。「それと、祭りの神輿の下に掘られてた模様と同じ図が、霧の泉の底にあるらしい。誰も気づかなかったけど、干上がって初めて出てきた」
「偶然、とは思えないな」
結大が静かに言った。その瞳は、湿原の彼方に沈む白い霧の壁を見つめていた。
「神が、試してるのかもしれない。“誰かが声を届けること”を、待ってるのかもな」
彼らはそのまま、霧の泉へと向かった。空は相変わらず重たく、空気は冷えているのに、湿度の感覚だけが不自然に低かった。湿原の地面が、まるで冬の岩盤のように硬くなっている。
泉の跡地に着いたとき、四人は言葉を失った。
そこにあったのは、乾いたクレーターのような窪み。そしてその中心に彫られた、翼を広げた梟の紋様。まるで“シマフクロウのカムイ”が羽ばたこうとして、時間ごと封印されたかのようだった。
「……ここで、唄うの?」
萌花がそっと口にした。知香が頷く。「“沈黙の節”は、音のない音。……つまり、“心の声”で奏でる。歌じゃない、祈りの形」
「それができるのは、お前しかいない」結大が言った。「お前が、ずっと“誰かに届いてほしい”って思ってきたこと、それが今、答えになるんだ」
萌花は息を吸った。そして、目を閉じ、胸の奥にある旋律を探った。
そのとき、風が、わずかに動いた。
湿原に広がる白霧の向こうで、萌花の小さな唇が震えながら動いた。声を出さずに、ただ心の奥で繰り返す旋律。それは言葉にならない“節”だった。音にならぬ音。けれど、風はそれを確かに聴いた。
「……聞こえる……」
萌花のすぐそばで、知香がぽつりと呟いた。彼女の足元には、干上がってひび割れた泉の底が広がり、その中心にある梟の紋様が、ほんのわずかに光を帯び始めていた。
結大はそれを見つめながら、どこかで深く納得していた。湿原という場所は、声を張り上げるよりも、黙って祈る方がずっと多くのことを伝えられる。ここは、騒ぎ立てるにはあまりにも静かで、あまりにも大きすぎる場所だった。
「いいぞ……続けろ」
裕太郎が低く言った。彼の視線は泉の紋様ではなく、さらにその奥。湿原の向こうからわずかに広がる水面に注がれていた。そこに、ほんのわずかだが湿り気が戻り始めている。
萌花の“沈黙の節”は、目には見えず、耳にも聞こえず、だが確かに、空気に溶けていった。彼女の心が震えるたび、霧がわずかに揺れる。
知香が歩み寄り、萌花の手をとった。
「私も……一緒に奏でる」
彼女の指が空気をなぞり、湿原讃歌の旋律をなぞるように腕を広げる。まるで風を迎える翼のようだった。
その瞬間、湿原の霧がゆっくりと引きはじめた。まるで誰かの囁きが、霧の中の眠る者に届いたように。
「見て……!」
裕太郎が指をさした。泉の底に刻まれた梟の紋様が、完全に浮かび上がっていた。輪郭は光を帯び、そこからゆっくりと水が滲み出してきている。
「水が……」
結大がその場に膝をつき、手のひらで水を受けた。冷たく、そしてどこか懐かしい感触。それは昔、幼いころ祖父とこの場所を訪れたときに感じた、水の記憶そのものだった。
「戻ってきたんだ、“霧の泉”が……!」
だがその喜びの中で、空が暗くなった。湿原の奥、枯れかけた柳の間から、巨大な影が姿を現す。
その姿は、巨大なフクロウだった。
シマフクロウのカムイ。
だがそれは、神の姿ではなかった。まだ荒れた影のまま、霧を纏い、翼を広げ、四人を睨みつけている。怒っているのではない。迷っているようだった。
「……違う。これは、“完全に戻ってない”んだ」
結大が立ち上がる。「俺たちの力じゃ、届かなかったのかもしれない。でも……」
「いや、違う」裕太郎がゆっくりと前へ出る。「届いた。けど、カムイが求めてるのは“共鳴”だ。湿原は、人と神の間にある場所なんだ。誰か一人じゃ足りない」
「なら、四人で……」
萌花、知香、裕太郎、そして結大が、泉の周囲に輪を作る。そして同時に目を閉じ、心を合わせる。
「……湿原が、悲しみを背負わないように」
「風が、怒りに変わらないように」
「水が、言葉を失わないように」
「神が、孤独で凍えないように」
四人の声が交錯したとき、泉の水が一気に湧き出した。
翼を広げたシマフクロウのカムイが、空高く舞い上がる。霧を割るように、夜の帳が引かれていき、月が、星が、湿原に光を落とした。
そのままカムイは、静かに旋回しながら泉の上に降り立ち、その爪先に一粒の光を落とした。
それは宝玉だった。霧のように白く、光を帯び、中心に羽根の文様が刻まれていた。
萌花がその石を拾い上げ、掌に包む。
「これは……」
「釧路市の輝」
結大がゆっくりと頷いた。
そのとき、彼らの背後から聞こえてきたのは——湿原讃歌。
遠く、朝霧の中から聞こえてくるその旋律は、誰が唄っているのかさえわからなかった。けれど確かに、“湿原が唄っている”と、全員がそう思った。
港では、漁火が再び灯り、阿寒湖の水面には再びマリモが揺れていた。
夜が明ける頃、釧路湿原には、静かな命の気配が満ちていた。
(終)
【アイテム:釧路市の輝】入手
「……静かだな」
横に立つ萌花がうなずく。「けど、静かすぎる。“霧の泉”から、水音がしないの。……やっぱり、ただの天候のせいじゃないよ」
朝五時、まだ観光客の足音も届かない時間帯だった。彼らがここへ来たのは、昨晩、炉端焼き屋で働く裕太郎からの知らせがあったからだ。釧路湿原の中心、“霧の泉”が干上がっている——それは、ただ事ではなかった。
「湿原は生き物だからな。水がなくなれば、まず音が消える。生き物たちが黙る。……それが、始まりなんだろう」
結大は、規則正しく整えられた木道をゆっくりと歩きながら、かすかに濡れた靴底の音を聞いた。だがその音に、呼応するような鳥の声も、風のざわめきもなかった。まるで、誰かが息を止めたまま待っているような、そんな緊張が空気に満ちていた。
「ここが、“シマフクロウのカムイ”の棲む地なんだよね」
萌花が声を潜めて言うと、結大は頷いた。「そう。湿原の神。風と霧、そして水を守る……けど、それはもう何十年も前の話になってた。伝承って、忘れられていくからな」
「でも、わたし、忘れたくないって思ったの。神様って、昔の人が“誰かが見ててくれる”って信じた証拠だよね」
その言葉には、誰かを信じる強さと、同時に自分の弱さを認める優しさがあった。結大はそれにうなずいたものの、どこか言葉が続かなかった。
細岡展望台の先、“霧の泉”へ続く小道の入口に、すでにひとりの人影が立っていた。
「……来たか」
振り返ったのは、裕太郎だった。整った制服の上に黒い防寒ベストを重ね、手には手書きの地図を持っている。彼の表情にはいつもの柔和さがなかった。そこには、何かに対する確信と、それを仲間に伝えようとする覚悟が見えた。
「やっぱり、枯れてたんだな」
結大の問いに、裕太郎はゆっくりと地図を差し出した。「今朝、夜明けと同時に現場へ入った。湿原の中心部、“霧の泉”の水位がゼロ。周囲の草も土も、まるで火を通したみたいに硬く乾いてる」
「それで、誰か……いや、“何か”がいた?」
「いた。というより、感じた。空気が沈んで、音が抜けた感じ。まるで、湿原そのものが声を失ったみたいだった」
そのとき、木道の奥から駆けてくる音がした。細い体に大きなザックを背負いながら、知香が走ってきた。息を切らしながらも、手にはなにかが挟まったノートを握っている。
「遅れてごめん!……でも、これ見て。阿寒湖の祭りで手に入れた資料。『湿原讃歌』って曲の、古い譜面……と、それに添えられてた古文」
萌花がそれを受け取り、目を通した。「この旋律……途中に“沈黙の節”って書かれてる。普通の讃歌じゃない。“音が消える場所でしか奏でられない音”って……」
「それが“霧の泉”を呼び戻す鍵かもしれない」
知香はそう言いながら、ザックからもう一枚の紙を取り出した。「それと、祭りの神輿の下に掘られてた模様と同じ図が、霧の泉の底にあるらしい。誰も気づかなかったけど、干上がって初めて出てきた」
「偶然、とは思えないな」
結大が静かに言った。その瞳は、湿原の彼方に沈む白い霧の壁を見つめていた。
「神が、試してるのかもしれない。“誰かが声を届けること”を、待ってるのかもな」
彼らはそのまま、霧の泉へと向かった。空は相変わらず重たく、空気は冷えているのに、湿度の感覚だけが不自然に低かった。湿原の地面が、まるで冬の岩盤のように硬くなっている。
泉の跡地に着いたとき、四人は言葉を失った。
そこにあったのは、乾いたクレーターのような窪み。そしてその中心に彫られた、翼を広げた梟の紋様。まるで“シマフクロウのカムイ”が羽ばたこうとして、時間ごと封印されたかのようだった。
「……ここで、唄うの?」
萌花がそっと口にした。知香が頷く。「“沈黙の節”は、音のない音。……つまり、“心の声”で奏でる。歌じゃない、祈りの形」
「それができるのは、お前しかいない」結大が言った。「お前が、ずっと“誰かに届いてほしい”って思ってきたこと、それが今、答えになるんだ」
萌花は息を吸った。そして、目を閉じ、胸の奥にある旋律を探った。
そのとき、風が、わずかに動いた。
湿原に広がる白霧の向こうで、萌花の小さな唇が震えながら動いた。声を出さずに、ただ心の奥で繰り返す旋律。それは言葉にならない“節”だった。音にならぬ音。けれど、風はそれを確かに聴いた。
「……聞こえる……」
萌花のすぐそばで、知香がぽつりと呟いた。彼女の足元には、干上がってひび割れた泉の底が広がり、その中心にある梟の紋様が、ほんのわずかに光を帯び始めていた。
結大はそれを見つめながら、どこかで深く納得していた。湿原という場所は、声を張り上げるよりも、黙って祈る方がずっと多くのことを伝えられる。ここは、騒ぎ立てるにはあまりにも静かで、あまりにも大きすぎる場所だった。
「いいぞ……続けろ」
裕太郎が低く言った。彼の視線は泉の紋様ではなく、さらにその奥。湿原の向こうからわずかに広がる水面に注がれていた。そこに、ほんのわずかだが湿り気が戻り始めている。
萌花の“沈黙の節”は、目には見えず、耳にも聞こえず、だが確かに、空気に溶けていった。彼女の心が震えるたび、霧がわずかに揺れる。
知香が歩み寄り、萌花の手をとった。
「私も……一緒に奏でる」
彼女の指が空気をなぞり、湿原讃歌の旋律をなぞるように腕を広げる。まるで風を迎える翼のようだった。
その瞬間、湿原の霧がゆっくりと引きはじめた。まるで誰かの囁きが、霧の中の眠る者に届いたように。
「見て……!」
裕太郎が指をさした。泉の底に刻まれた梟の紋様が、完全に浮かび上がっていた。輪郭は光を帯び、そこからゆっくりと水が滲み出してきている。
「水が……」
結大がその場に膝をつき、手のひらで水を受けた。冷たく、そしてどこか懐かしい感触。それは昔、幼いころ祖父とこの場所を訪れたときに感じた、水の記憶そのものだった。
「戻ってきたんだ、“霧の泉”が……!」
だがその喜びの中で、空が暗くなった。湿原の奥、枯れかけた柳の間から、巨大な影が姿を現す。
その姿は、巨大なフクロウだった。
シマフクロウのカムイ。
だがそれは、神の姿ではなかった。まだ荒れた影のまま、霧を纏い、翼を広げ、四人を睨みつけている。怒っているのではない。迷っているようだった。
「……違う。これは、“完全に戻ってない”んだ」
結大が立ち上がる。「俺たちの力じゃ、届かなかったのかもしれない。でも……」
「いや、違う」裕太郎がゆっくりと前へ出る。「届いた。けど、カムイが求めてるのは“共鳴”だ。湿原は、人と神の間にある場所なんだ。誰か一人じゃ足りない」
「なら、四人で……」
萌花、知香、裕太郎、そして結大が、泉の周囲に輪を作る。そして同時に目を閉じ、心を合わせる。
「……湿原が、悲しみを背負わないように」
「風が、怒りに変わらないように」
「水が、言葉を失わないように」
「神が、孤独で凍えないように」
四人の声が交錯したとき、泉の水が一気に湧き出した。
翼を広げたシマフクロウのカムイが、空高く舞い上がる。霧を割るように、夜の帳が引かれていき、月が、星が、湿原に光を落とした。
そのままカムイは、静かに旋回しながら泉の上に降り立ち、その爪先に一粒の光を落とした。
それは宝玉だった。霧のように白く、光を帯び、中心に羽根の文様が刻まれていた。
萌花がその石を拾い上げ、掌に包む。
「これは……」
「釧路市の輝」
結大がゆっくりと頷いた。
そのとき、彼らの背後から聞こえてきたのは——湿原讃歌。
遠く、朝霧の中から聞こえてくるその旋律は、誰が唄っているのかさえわからなかった。けれど確かに、“湿原が唄っている”と、全員がそう思った。
港では、漁火が再び灯り、阿寒湖の水面には再びマリモが揺れていた。
夜が明ける頃、釧路湿原には、静かな命の気配が満ちていた。
(終)
【アイテム:釧路市の輝】入手
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる