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第一章:崇拝と神託
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1. 茜色の夢
茜色に染まる空――その光景は、いつも夢の中で始まる。
真紀は深い霧の中に立ち尽くしていた。どこか遠くで、鳥の鳴き声が聞こえる。霧の向こうから現れるのは、翼を広げた一羽の鳥。金色に輝くその姿にはどこか威圧感があり、ただの鳥ではないことは明らかだった。
「光あれ――」
誰かの声が響く。低く、けれど優しい。それは真紀に何かを伝えようとしていた。しかし、言葉はいつもここで途切れる。
その瞬間、足元の地面が崩れ始めた。真紀は息を呑んだが、声が出ない。崖の向こうには、闇しかない。落ちる――。
「うわっ!」
真紀はベッドの中で跳ね起きた。額には汗がにじんでいる。心臓が早鐘を打つように鳴り、現実に戻ったことを確認するのに数秒かかった。カーテンの隙間から差し込む光が、時計の針を照らしている。
午前4時52分。
「また、あの夢……」
ベッド脇のテーブルにあるノートを手に取り、真紀は鉛筆を走らせる。「光あれ」と「鳥」。それに、茜色の空。そして――鍵穴。
「なんで、夢の中に鍵穴なんて出てくるのよ……」
ノートには過去数週間分の同じ夢の記録があった。微妙に違うものの、いつも茜色の空と鳥、そして「光あれ」という声が響く。気味が悪いが、夢に意味があるとも思えない。ただの疲れかストレスだろう。
けれど、心の片隅でその夢はただの偶然ではないという確信があった。
2. 文化祭の準備
「真紀、そっちのテーブルお願い!」
クラスのリーダー的存在である蒼大が、真紀に声をかけた。文化祭の準備が佳境に入り、教室は装飾の材料や机でごった返している。蒼大は明るくて社交的で、いつもみんなの中心にいる人間だ。
「分かった、やるよ」
真紀は肩をすくめて指示されたテーブルを運び始めた。クラスのテーマは「異世界レストラン」で、教室全体を西洋の古城風に飾りつけるというものだ。テーブルコーディネーターとして装飾を任されている真紀は、嫌でも目立つ立場になってしまった。
「手伝おうか?」
蒼大が隣に立ち、笑いかけてきた。その笑顔はまるで太陽のように明るい。心臓が少し跳ねる。
「あんた、手伝いなんてできるわけ? ただの邪魔でしょ」
「失礼だなあ。でも力仕事なら任せろって」
蒼大はそう言って、真紀が運ぼうとしていたテーブルを軽々と持ち上げた。頼りになる、と言いたいところだが、悔しいので言わない。
「ありがとう……でも調子に乗らないでよね」
「真紀って素直じゃないよな」
蒼大のからかうような口調に真紀は軽く睨みを返したが、心の中で笑いがこぼれそうになる。蒼大の明るさに触れていると、少しだけ気が楽になる。あの夢のことも、一瞬忘れることができるからだ。
3. 古い石板
「蒼大、こっちの倉庫にまだ材料ある?」
「ちょっと待って、確認するわ」
文化祭の準備のため、真紀と蒼大は校舎の地下倉庫を訪れた。地下室は普段使われておらず、薄暗い光が漂い、空気もひんやりとしている。電気をつけると、古い木材や教具、ホコリにまみれた段ボール箱が積まれていた。
「うわ、めちゃくちゃ埃っぽい……」
真紀は鼻を押さえながら奥に進んだ。蒼大は無邪気にガラクタを物色している。
「なあ、これ見てくれよ」
蒼大が木箱の下から引っ張り出してきたのは、古びた石板だった。灰色の表面には奇妙な模様と、何かの文字が刻まれている。どこかで見たことがある――。
「……これ、鍵穴?」
真紀は息を呑んだ。石板の中心には、はっきりと“鍵穴”の形が彫られていた。
「なんだこれ、文化財か?」
蒼大が興味深そうに石板を撫でる。真紀の頭の中で、あの夢がフラッシュバックする。茜色の空、鳥、鍵穴――。
「蒼大、これ、学校のものなのかな?」
「分かんねえ。でも、面白いじゃん。文化祭の展示に使おうぜ!」
「バカ言わないで。勝手に持ち出したら怒られるよ」
しかし、石板には不思議な引力があった。目が離せない。彫られた模様はまるで何かの暗号のように見える。真紀は無意識に石板に手を触れた。
その瞬間、背後から風が吹き抜けたような気がした。
「……誰か、いた?」
「え? 何言ってんの」
蒼大がキョロキョロと辺りを見回したが、地下室には二人きりだ。気のせいだろうか。けれど真紀は、確かに誰かの気配を感じたのだ。
4. 謎の始まり
石板を見つけたその日から、真紀の悪夢はさらに鮮明になった。崩れる地面、低い声、そして鳥の姿。
「光あれ――」
真紀は再び夢の中でその言葉を聞き、目を覚ます。ペンを取り、ノートに書き記す。
「これは偶然なんかじゃない」
夢と現実、そして謎の石板。すべてが繋がっている――そう感じずにはいられなかった。
茜色に染まる空――その光景は、いつも夢の中で始まる。
真紀は深い霧の中に立ち尽くしていた。どこか遠くで、鳥の鳴き声が聞こえる。霧の向こうから現れるのは、翼を広げた一羽の鳥。金色に輝くその姿にはどこか威圧感があり、ただの鳥ではないことは明らかだった。
「光あれ――」
誰かの声が響く。低く、けれど優しい。それは真紀に何かを伝えようとしていた。しかし、言葉はいつもここで途切れる。
その瞬間、足元の地面が崩れ始めた。真紀は息を呑んだが、声が出ない。崖の向こうには、闇しかない。落ちる――。
「うわっ!」
真紀はベッドの中で跳ね起きた。額には汗がにじんでいる。心臓が早鐘を打つように鳴り、現実に戻ったことを確認するのに数秒かかった。カーテンの隙間から差し込む光が、時計の針を照らしている。
午前4時52分。
「また、あの夢……」
ベッド脇のテーブルにあるノートを手に取り、真紀は鉛筆を走らせる。「光あれ」と「鳥」。それに、茜色の空。そして――鍵穴。
「なんで、夢の中に鍵穴なんて出てくるのよ……」
ノートには過去数週間分の同じ夢の記録があった。微妙に違うものの、いつも茜色の空と鳥、そして「光あれ」という声が響く。気味が悪いが、夢に意味があるとも思えない。ただの疲れかストレスだろう。
けれど、心の片隅でその夢はただの偶然ではないという確信があった。
2. 文化祭の準備
「真紀、そっちのテーブルお願い!」
クラスのリーダー的存在である蒼大が、真紀に声をかけた。文化祭の準備が佳境に入り、教室は装飾の材料や机でごった返している。蒼大は明るくて社交的で、いつもみんなの中心にいる人間だ。
「分かった、やるよ」
真紀は肩をすくめて指示されたテーブルを運び始めた。クラスのテーマは「異世界レストラン」で、教室全体を西洋の古城風に飾りつけるというものだ。テーブルコーディネーターとして装飾を任されている真紀は、嫌でも目立つ立場になってしまった。
「手伝おうか?」
蒼大が隣に立ち、笑いかけてきた。その笑顔はまるで太陽のように明るい。心臓が少し跳ねる。
「あんた、手伝いなんてできるわけ? ただの邪魔でしょ」
「失礼だなあ。でも力仕事なら任せろって」
蒼大はそう言って、真紀が運ぼうとしていたテーブルを軽々と持ち上げた。頼りになる、と言いたいところだが、悔しいので言わない。
「ありがとう……でも調子に乗らないでよね」
「真紀って素直じゃないよな」
蒼大のからかうような口調に真紀は軽く睨みを返したが、心の中で笑いがこぼれそうになる。蒼大の明るさに触れていると、少しだけ気が楽になる。あの夢のことも、一瞬忘れることができるからだ。
3. 古い石板
「蒼大、こっちの倉庫にまだ材料ある?」
「ちょっと待って、確認するわ」
文化祭の準備のため、真紀と蒼大は校舎の地下倉庫を訪れた。地下室は普段使われておらず、薄暗い光が漂い、空気もひんやりとしている。電気をつけると、古い木材や教具、ホコリにまみれた段ボール箱が積まれていた。
「うわ、めちゃくちゃ埃っぽい……」
真紀は鼻を押さえながら奥に進んだ。蒼大は無邪気にガラクタを物色している。
「なあ、これ見てくれよ」
蒼大が木箱の下から引っ張り出してきたのは、古びた石板だった。灰色の表面には奇妙な模様と、何かの文字が刻まれている。どこかで見たことがある――。
「……これ、鍵穴?」
真紀は息を呑んだ。石板の中心には、はっきりと“鍵穴”の形が彫られていた。
「なんだこれ、文化財か?」
蒼大が興味深そうに石板を撫でる。真紀の頭の中で、あの夢がフラッシュバックする。茜色の空、鳥、鍵穴――。
「蒼大、これ、学校のものなのかな?」
「分かんねえ。でも、面白いじゃん。文化祭の展示に使おうぜ!」
「バカ言わないで。勝手に持ち出したら怒られるよ」
しかし、石板には不思議な引力があった。目が離せない。彫られた模様はまるで何かの暗号のように見える。真紀は無意識に石板に手を触れた。
その瞬間、背後から風が吹き抜けたような気がした。
「……誰か、いた?」
「え? 何言ってんの」
蒼大がキョロキョロと辺りを見回したが、地下室には二人きりだ。気のせいだろうか。けれど真紀は、確かに誰かの気配を感じたのだ。
4. 謎の始まり
石板を見つけたその日から、真紀の悪夢はさらに鮮明になった。崩れる地面、低い声、そして鳥の姿。
「光あれ――」
真紀は再び夢の中でその言葉を聞き、目を覚ます。ペンを取り、ノートに書き記す。
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