光あれー蒼大と真紀ー

乾為天女

文字の大きさ
7 / 11

第七章:崇拝と神託

しおりを挟む
 1. 石板の間
 重い音とともに扉が閉まった。真紀と蒼大は薄暗い部屋に取り残された。懐中電灯の光が照らす先には、無数の石板が整然と並び、その中央には燐光を放つフェニックスの彫刻が鎮座していた。
「……ここはなんだろう」
 真紀の声は震えていたが、目は彫刻に釘付けになっていた。石板の一枚一枚には古い文字や模様が刻まれ、その意味は分からないが、どこかしら統一感がある。
「崇拝と神託、だろうな」
 蒼大が低く呟いた。
「どういう意味?」
「“崇拝”は何かを祀ること。そして“神託”は神の言葉を受けること……つまり、ここは何かを封印するための場所だろう」
 蒼大の言葉に、真紀は息を飲んだ。確かに、あの「影」は目覚めかけていた。もしこの場所が封印の中心だとすれば、今までの謎が少しずつ繋がってくる。

 2. 中央の石板
「これ、読める?」
 真紀は中央の祭壇に近づき、石板に刻まれた模様を指でなぞった。そこには、見覚えのある記号と文字が並んでいた。

「光あれ――フェニックスを封じし者よ、崇拝の鍵を捧げよ」

「……崇拝の鍵?」
 蒼大が眉をひそめた。
「崇拝の鍵って、何のこと?」
「たぶん、何かを“捧げる”必要があるんだ」
 真紀は心の中で思い当たるものを探した。今までのヒント――音楽室の「強弱」、黄金の鍵、そして石板に彫られたフェニックスの姿。
「待って。石板に彫られたフェニックス、何かを示してるかも」
 真紀は周囲に散らばる石板に目を凝らした。それらはランダムに見えて、よく見るといくつかが“光”を示すように配置されている。
「ほら、これ。石板の模様が光を反射するみたい」
 蒼大が石板に懐中電灯を当てると、模様が光を帯びて繋がり始めた。フェニックスの彫刻を中心に、光の道が広がる。
「模様が……繋がっていく?」
 真紀の声が震えた。
「何かを示してる。崇拝の“形”だ」

 3. 光と音の儀式
 光の道が示したのは、部屋の四隅に配置された石板の上だった。それぞれには、音楽室の音符と同じ記号が彫られている。
 C(ド)、E(ミ)、G(ソ)、F(ファ)
「これだ、強弱の音階だ」
 蒼大が立ち上がり、それぞれの石板の前に立った。
「真紀、今までと同じ順番で、光を当てるんだ」
 真紀は頷き、懐中電灯の光を強弱に合わせて石板に当てた。

 C(ド)――弱い光
 E(ミ)――強い光
 G(ソ)――強い光
 F(ファ)――弱い光

 石板が光を受けるたび、低い振動音が部屋中に響いた。そして、フェニックスの彫刻が淡い光を放ち始める。
「やった……!」
 蒼大が喜びかけたその瞬間――

 4. 壊れゆく封印
 ゴゴゴゴ……!
 部屋が揺れ始めた。壁に刻まれた模様が、まるで封印が解けるかのように光り、床に大きな亀裂が走る。
「これ、まずいんじゃない?!」
 真紀は叫び、蒼大を見た。光を帯びたフェニックスの彫刻が、まるで目を覚ましたかのように輝きを増している。
「やべぇ……! 封印が壊れる!」
 蒼大が走り寄り、彫刻を止めようとするが、彫刻の台座はすでに動き始めていた。
「光あれ――」
 低い声が再び響く。その声はこれまでの夢と同じ、真紀の耳に焼き付いた言葉だった。
「何か、止める方法を……!」
 真紀はノートを取り出し、今までのヒントを急いで見直した。
「崇拝の鍵を捧げよ」
「崇拝の鍵って、まさか――!」
 真紀は胸元に手を当てた。そこには、ペリドットの指輪が輝いている。
「この指輪……これが鍵なのかも」

 5. 最後の鍵
「真紀、それを捧げるんだ!」
 蒼大の声に押され、真紀はペリドットの指輪をフェニックスの彫刻の前に置いた。指輪が光を反射し、彫刻の中央へと吸い込まれる。
 カチッ――
 音が響き、部屋の揺れが止まった。フェニックスの光が収まり、部屋は静寂に包まれる。
「止まった……?」
 蒼大が呟く。真紀は膝をつき、息を整えた。
「崇拝の鍵……これで封印が戻ったの?」
 だが、その瞬間、壁にひび割れが走り、新たな模様が浮かび上がった。

「封印は再び壊れん――真の鍵を捧げよ」

 真紀と蒼大は顔を見合わせた。
「……まだ終わってない」
 真紀は呟いた。今までのすべては序章にすぎず、真の謎がここから始まるのだと。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

「『お前に書く手紙などない』と言った婚約者へ、私は7年間手紙を書き続けた——ただし、届け先は別の人でした」

歩人
ファンタジー
辺境伯令嬢リゼットは、婚約者に7年間手紙を書き続けた。返事は一度もなかった。 「お前に書く手紙などない。顔も覚えていない」——婚約破棄。しかしリゼットは 泣かなかった。手紙の本当の届け先は、最初から別にあったから。前世の情報分析 能力で辺境の異変を読み解き、暗号として織り込んだ7年分の手紙。それを受け取り 続けていたのは第一王子。リゼットは誰にも知られず、王国を守っていた。 婚約破棄の翌朝、王子からの手紙が届く。「7年間、ありがとう。迎えに行く」

「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある

柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった 王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。 リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。 「わかりました。あなたには、がっかりです」 微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

さようなら婚約者

あんど もあ
ファンタジー
アンジュは、五年間虐げられた婚約者から婚約破棄を告げられる。翌日、カバン一つを持って五年住んだ婚約者の家を去るアンジュ。一方、婚約者は…。

思いを込めてあなたに贈る

あんど もあ
ファンタジー
ファナの母が亡くなった二ヶ月後に、父は新しい妻とその妻との間に生まれた赤ん坊を家に連れて来た。義母は、お前はもうこの家の後継者では無いと母から受け継いだ家宝のネックレスを奪うが、そのネックレスは……。

つまらない妃と呼ばれた日

柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。 舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。 さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。 リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。 ――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。

【完結短編】ある公爵令嬢の結婚前日

のま
ファンタジー
クラリスはもうすぐ結婚式を控えた公爵令嬢。 ある日から人生が変わっていったことを思い出しながら自宅での最後のお茶会を楽しむ。

遺産は一円も渡さない 〜強欲な夫と義実家に捨てられた私、真の相続人と手を組み全てを奪い返す~ (全10話)

スカッと文庫
恋愛
「お前の価値なんて、その遺産くらいしかないんだよ」 唯一の肉親だった祖父を亡くした夜、夫の健一と義母から放たれたのは、あまりにも無慈悲な言葉だった。 四十九日も待たず、祖父が遺した1億2000万円の遺産をアテに贅沢三昧を目論む夫。だが、彼には隠し通している「裏切り」があった――。 絶望の淵に立たされた由美の前に現れたのは、亡き祖父が差し向けた若き凄腕弁護士・蓮。 「おじい様は、すべてお見通しでしたよ」 明かされる衝撃の遺言内容。そして、強欲な夫たちを地獄へ叩き落とすための「相続条件」とは? 虐げられてきた妻による、一発逆転の遺産争奪&復讐劇がいま幕を開ける!

処理中です...