朽網島サバイバル:高校生8人、寄生植物に侵された孤島からの脱出劇

乾為天女

文字の大きさ
10 / 26

第10話「実験棟A-7」

しおりを挟む
 8月3日、午前11時30分。
  地下の通気口から侵入した3人――駈、瑛美、悠は、旧研究施設の「実験棟A-7」に足を踏み入れていた。
 暗がりの中で、埃まみれの映写装置が、異様な存在感を放っていた。
  機械のそばに置かれたラベルには、鉛筆書きでこう記されている。
 《1945年8月5日撮影/寄生植物“K-藤”/感染進行経過記録》
 「再生、するよ」
  瑛美がスイッチを押すと、プロジェクターの内部がガチャンと音を立てて回転を始めた。スクリーン代わりに、コンクリート壁に光が滲む。
 そして――始まった。

 映像は、白黒で、ブレが激しかった。だが、その“記録”は否応なく、三人の脳裏に焼きついた。
 画面の中では、白衣の男が誰かにインタビューされている。
 【実験主任:宮崎進。感染段階は三期。K-藤、宿主依存型。中枢寄生、確認】
 彼の背後には、鉄格子の中に収容された男――いや、“元・人間”がいた。
 全身に蔓のようなものが巻きつき、目は虚ろ、皮膚の半分は変色している。それでも、彼は喉から何かを絞り出そうとしていた。
 「……たすけて……」
 「やめて!!」
  瑛美が思わず叫び、映像を止めようとした。だが、手は途中で止まる。駈がその手を掴んでいた。
 「……最後まで、見る」
 次の場面では、感染の経過がグラフとともに示されていた。
  感染経路は、傷口または吸引。胞子は体内に入ると血管を通じて中枢神経に侵入、最終的には“宿主の意識”を保ったまま共生フェーズに至る。
 つまり――
 「……思考は残る。体は乗っ取られても、心は消えない」
  悠が震えた声で呟いた。
 映像は、突然終わった。
 最後のフレームには、赤いマジックでこう書きなぐられていた。
 《これを見た者は、島を封鎖せよ。生かして帰すな》

 「……あり得ない」
  施設を出るなり、一平が叫んだ。
 「それ、嘘だろ!? 作り物だって言ってくれよ! そんなの、生きたまま“取り込まれる”って……」
 瑛美は何も言わず、目を伏せた。
 「なぁ駈、お前は、あれが現実だって本気で信じてんのかよ!?」
 駈は静かにうなずいた。「あれがフィクションなら、誠人の体に“あんな変化”は起きない」
 乙葉が冷静に口を開いた。「じゃあ、質問を変える。“私たちは、感染していない”って証明できる?」
 誰も、答えられなかった。
 「……ここからは、行動を分けるわけにはいかない」
  悠が提案した。「情報の共有と、監視体制の強化。誠人の容体も含めて、これからは“自分たち自身”を疑う必要がある」
 「つまり、仲間の中に、もう……」
 一平の言葉は最後まで続かなかった。
 そのとき。
  遠くで「パーンッ!」と、乾いた破裂音が響いた。
 「今の、爆発音……!?」
 駈は反射的に振り向いた。「……南側だ。誰かが、弾薬庫を使った?」
 「行かなきゃ」乙葉が即座に走り出す。
 もう一つの“崩壊”が、始まりかけていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

14歳で定年ってマジ!? 世界を変えた少年漫画家、再起のノート

谷川 雅
児童書・童話
この世界、子どもがエリート。 “スーパーチャイルド制度”によって、能力のピークは12歳。 そして14歳で、まさかの《定年》。 6歳の星野幸弘は、将来の夢「世界を笑顔にする漫画家」を目指して全力疾走する。 だけど、定年まで残された時間はわずか8年……! ――そして14歳。夢は叶わぬまま、制度に押し流されるように“退場”を迎える。 だが、そんな幸弘の前に現れたのは、 「まちがえた人間」のノートが集まる、不思議な図書室だった。 これは、間違えたままじゃ終われなかった少年たちの“再スタート”の物語。 描けなかった物語の“つづき”は、きっと君の手の中にある。

まぼろしのミッドナイトスクール

木野もくば
児童書・童話
深夜0時ちょうどに突然あらわれる不思議な学校。そこには、不思議な先生と生徒たちがいました。飼い猫との最後に後悔がある青年……。深い森の中で道に迷う少女……。人間に恋をした水の神さま……。それぞれの道に迷い、そして誰かと誰かの想いがつながったとき、暗闇の空に光る星くずの方から学校のチャイムが鳴り響いてくるのでした。

生贄姫の末路 【完結】

松林ナオ
児童書・童話
水の豊かな国の王様と魔物は、はるか昔にある契約を交わしました。 それは、姫を生贄に捧げる代わりに国へ繁栄をもたらすというものです。 水の豊かな国には双子のお姫様がいます。 ひとりは金色の髪をもつ、活発で愛らしい金のお姫様。 もうひとりは銀色の髪をもつ、表情が乏しく物静かな銀のお姫様。 王様が生贄に選んだのは、銀のお姫様でした。

パンティージャムジャムおじさん

KOU/Vami
児童書・童話
夜の街に、歌いながら歩く奇妙なおじさんが現れる。 口癖は「パラダイス~☆♪♡」――名乗る名は「パンティージャムジャムおじさん」。 子供たちは笑いながら彼の後についていき、歌を真似し、踊り、列は少しずつ長くなる。 そして翌朝、街は初めて気づく。昨夜の歌が、ただの遊びではなかったことに。

はじめて言葉を話した青年

藤本夏実
絵本
言葉はどうやってうまれたかを考えたことはありますか?言葉の起源を考え、人との交わり方を気にしながら、書きました。はじめて言葉を話しだしたら、こんな感じかなと思います。

きたいの悪女は処刑されました

トネリコ
児童書・童話
 悪女は処刑されました。  国は益々栄えました。  おめでとう。おめでとう。  おしまい。

傷ついている君へ

辻堂安古市
絵本
今、傷ついている君へ 僕は何ができるだろうか

処理中です...