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牽制、そして決戦へ
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「痛っ……んんっ、はぁ……っ!」
太ももに歯を立てると、ジュワッと鮮血が口内へと浸食してくる。
シスリルは痛みから苦痛の表情を浮かばせるが、
「あ、んっ……」
徐々に声色は高く、そして表情にも柔らかさが戻ってきた。
「痛くないか、シスリル?」
「だ、大丈夫、ですわっ……でも、身体が変で……熱い、ですわ」
血を吸い、俺の血を流しこむと、下ろした腰がびくんびくんと浮き上がる。
太ももに齧り付く俺に、シスリルは熱のこもった視線を向けてくる。
おそらく俺の血が体内に流れると、身体中を焦がすような熱に犯されるのだろう。俺自身も、シスリルの血が喉を通るとそう感じる。
「もっと、吸わせてもらうぞ」
「あ、ダメ、ですわ……っ! ん、ああんっ!」
豊満な胸が震えるように、シスリルの身体が先程より大きく揺れた。
この俺とシスリルを襲う熱は不快感ではない。おそらくシスリルも同じ感覚だろう。
それどころかもっと吸いたいと思う。
そして目の前の女を喰らいたいと、吸血鬼の本能が俺に囁く。
だが、
「これでいいだろう」
俺は太ももから唇を離す。
「え……?」
真っ赤に染めたシスリルの顔は、どことなく悲しそうに見えた。
「なんだ、もっと俺の血を味わいたかったのか?」
「わたくしが、血を……?」
「血を吸いながら、俺の血を体内に流した。それが眷属にする方法だそうだ」
はあ、はあ、と息を荒くさせたシスリルが、自分の太ももに付いた眷属の紋章を見る。
「では、先程の熱は……」
「おそらくお互いの血が混じったことで起きたんだろう。立てるか?」
「あっ、はい」
出した手をシスリルが掴み、引き寄せる。
だが全身にまだ力が上手く入らないのか、もたれかかるように俺に倒れた。
「す、すみません!」
「どうして謝る。これぐらい気にするな。それに……」
「あんっ!」
不意に胸を揉む。
レイナよりも大きさのある胸は、指に力を入れるとぐにゅありと形を変える。そしてシスリルは恥じらうように、熱を持った吐息を漏らす。
「全身が熱に犯されて、お前もまだ満足していないんじゃないか?」
「そ、そんなっ、んんっ!」
言葉では否定しようとするが、身体は無防備のまま、俺の手を許していた。いや、欲しがるように求めているようだった。
「おそらく吸血鬼の血がそうさせているのだろう。これから、俺に血を捧げるたびにこういう気分になるのだろうな?」
「こう、いう……あ、あの」
求めるように、シスリルは俺をジッと見つめる。
「続きは全て終わってからにしよう」
「えっ、あ、はい……」
あからさまに残念そうにするシスリル。
俺自身も中途半端なお預け状態といった感覚だが、これ以上この身体を味わっていたら、本来の目的を忘れてしまいそうだ。
俺たちは部屋を出る。
「レイナの時と同様、今は実感がないだろうが、いざ魔力を使ってみたら変化がわかるはずだ」
「そうなのですね」
「ただ無理はするな。前までと感覚が異なり、いつも以上の魔力を無自覚で使い続けたら、いつもより早く魔力切れを起こす可能性があるからな」
シスリルはコクリと頷く。
その表情は先程までとは違った意味で緊張しているようだった。
「大丈夫か?」
「はい。ただ、もしもこの力を以てしてもお爺様を救い出せなかったらと考えたら、不安で……」
「不安になる必要はない。俺がいるんだから、絶対に救い出してやる」
そう伝えると、シスリルは笑顔を浮かべた。
「頼りにしております、ユクス様」
「様か……そう呼ばれるのも悪くないな」
レイナには「ユクス」と呼ばれる。まあ、それも信頼されている感覚があっていいが。
様を付けられると、
「主従関係を意識させられるな?」
「そ、そう、ですわね。ですがわたくしは、その……ユクス様の女ですから。この呼び方が嫌でなければ、このように呼ばせてくださいませ」
「ああ、構わない」
「良かったですわ」
そんな話をしていると、屋敷の外へ到着した。
「やっと出てきた。君たちが遅いから、彼女がずっと不機嫌で大変だったよ」
「なっ、このネコ、嘘ばっかり!」
どうやらレイナの機嫌は戻ったようだ。
「それで、どうだったわけ……? ちゃんと、あの、したの?」
腕を組み、どこかツンとした表情で俺に問いかけると、隣に立つシスリルが、
「ええ、それはたっぷりと血を吸われました。それに身体も、蹂躙されてしまって……」
「蹂躙!?」
目を見開いて驚くレイナと、俺を親の仇と言わんばかりに睨んでくる用心棒たち。
「別にそこまで──」
「体中ガクガク震えたわたくしを、ユクス様は笑みを浮かべながら更に責め立てたのです」
「鬼畜!」
「「「お嬢様に何をしたこの鬼畜!」」」
「おい、俺はそこまでしていないんだが?」
誇張が入っていると抗議しようとしたが、
「ふふっ、わたくし、ユクス様の女になるのでしたら一番の女がいいのです。他の眷属である女性への牽制ぐらい、お許しくださいませ?」
シスリルは笑顔を浮かべながら小声で言う。
まあ、そういうことならいいだろう。俺は咳ばらいをする。
「それより、そろそろ向かうとするか」
俺の言葉に、緩んでいた空気が一気に張りつめる。
「ユクス、学園を囲うように展開された幻影遮断の魔術は今もあるから、おそらく連中はまだ学園内にいるだろうね」
「リトには見えるのか?」
「まあね、この姿のお陰さ。だけど中に何人いるかとか、そういったことはわからないんだ」
「入ってみてから、ということか。リトも付いて来るのか?」
ネコの姿をしたリトはそう言うと、俺の肩に飛び乗る。
「ああ、一応ね。ただ僕を戦力として数えないでくれよ? 僕は戦う術を持っていないからね。その代わりに人の気配は察知できるから、もしも人質がいるのなら、気付かれずに救ってみせるよ」
「なるほど、すまないな」
「いいさ。前に言ったろ? 僕は君に恩を売っているだけさ」
そう言うと、ネコの姿をしたリトは俺の肩の上で丸まった。
どうやら移動は俺の肩で休みたいのだろう。俺はレイナたちに視線を向ける。
「それじゃあ、行くぞ」
レイナとシスリル、そして用心棒の九名。
学園で誰が待ち受けているかわからないが、俺たちは学園へと向かった。
太ももに歯を立てると、ジュワッと鮮血が口内へと浸食してくる。
シスリルは痛みから苦痛の表情を浮かばせるが、
「あ、んっ……」
徐々に声色は高く、そして表情にも柔らかさが戻ってきた。
「痛くないか、シスリル?」
「だ、大丈夫、ですわっ……でも、身体が変で……熱い、ですわ」
血を吸い、俺の血を流しこむと、下ろした腰がびくんびくんと浮き上がる。
太ももに齧り付く俺に、シスリルは熱のこもった視線を向けてくる。
おそらく俺の血が体内に流れると、身体中を焦がすような熱に犯されるのだろう。俺自身も、シスリルの血が喉を通るとそう感じる。
「もっと、吸わせてもらうぞ」
「あ、ダメ、ですわ……っ! ん、ああんっ!」
豊満な胸が震えるように、シスリルの身体が先程より大きく揺れた。
この俺とシスリルを襲う熱は不快感ではない。おそらくシスリルも同じ感覚だろう。
それどころかもっと吸いたいと思う。
そして目の前の女を喰らいたいと、吸血鬼の本能が俺に囁く。
だが、
「これでいいだろう」
俺は太ももから唇を離す。
「え……?」
真っ赤に染めたシスリルの顔は、どことなく悲しそうに見えた。
「なんだ、もっと俺の血を味わいたかったのか?」
「わたくしが、血を……?」
「血を吸いながら、俺の血を体内に流した。それが眷属にする方法だそうだ」
はあ、はあ、と息を荒くさせたシスリルが、自分の太ももに付いた眷属の紋章を見る。
「では、先程の熱は……」
「おそらくお互いの血が混じったことで起きたんだろう。立てるか?」
「あっ、はい」
出した手をシスリルが掴み、引き寄せる。
だが全身にまだ力が上手く入らないのか、もたれかかるように俺に倒れた。
「す、すみません!」
「どうして謝る。これぐらい気にするな。それに……」
「あんっ!」
不意に胸を揉む。
レイナよりも大きさのある胸は、指に力を入れるとぐにゅありと形を変える。そしてシスリルは恥じらうように、熱を持った吐息を漏らす。
「全身が熱に犯されて、お前もまだ満足していないんじゃないか?」
「そ、そんなっ、んんっ!」
言葉では否定しようとするが、身体は無防備のまま、俺の手を許していた。いや、欲しがるように求めているようだった。
「おそらく吸血鬼の血がそうさせているのだろう。これから、俺に血を捧げるたびにこういう気分になるのだろうな?」
「こう、いう……あ、あの」
求めるように、シスリルは俺をジッと見つめる。
「続きは全て終わってからにしよう」
「えっ、あ、はい……」
あからさまに残念そうにするシスリル。
俺自身も中途半端なお預け状態といった感覚だが、これ以上この身体を味わっていたら、本来の目的を忘れてしまいそうだ。
俺たちは部屋を出る。
「レイナの時と同様、今は実感がないだろうが、いざ魔力を使ってみたら変化がわかるはずだ」
「そうなのですね」
「ただ無理はするな。前までと感覚が異なり、いつも以上の魔力を無自覚で使い続けたら、いつもより早く魔力切れを起こす可能性があるからな」
シスリルはコクリと頷く。
その表情は先程までとは違った意味で緊張しているようだった。
「大丈夫か?」
「はい。ただ、もしもこの力を以てしてもお爺様を救い出せなかったらと考えたら、不安で……」
「不安になる必要はない。俺がいるんだから、絶対に救い出してやる」
そう伝えると、シスリルは笑顔を浮かべた。
「頼りにしております、ユクス様」
「様か……そう呼ばれるのも悪くないな」
レイナには「ユクス」と呼ばれる。まあ、それも信頼されている感覚があっていいが。
様を付けられると、
「主従関係を意識させられるな?」
「そ、そう、ですわね。ですがわたくしは、その……ユクス様の女ですから。この呼び方が嫌でなければ、このように呼ばせてくださいませ」
「ああ、構わない」
「良かったですわ」
そんな話をしていると、屋敷の外へ到着した。
「やっと出てきた。君たちが遅いから、彼女がずっと不機嫌で大変だったよ」
「なっ、このネコ、嘘ばっかり!」
どうやらレイナの機嫌は戻ったようだ。
「それで、どうだったわけ……? ちゃんと、あの、したの?」
腕を組み、どこかツンとした表情で俺に問いかけると、隣に立つシスリルが、
「ええ、それはたっぷりと血を吸われました。それに身体も、蹂躙されてしまって……」
「蹂躙!?」
目を見開いて驚くレイナと、俺を親の仇と言わんばかりに睨んでくる用心棒たち。
「別にそこまで──」
「体中ガクガク震えたわたくしを、ユクス様は笑みを浮かべながら更に責め立てたのです」
「鬼畜!」
「「「お嬢様に何をしたこの鬼畜!」」」
「おい、俺はそこまでしていないんだが?」
誇張が入っていると抗議しようとしたが、
「ふふっ、わたくし、ユクス様の女になるのでしたら一番の女がいいのです。他の眷属である女性への牽制ぐらい、お許しくださいませ?」
シスリルは笑顔を浮かべながら小声で言う。
まあ、そういうことならいいだろう。俺は咳ばらいをする。
「それより、そろそろ向かうとするか」
俺の言葉に、緩んでいた空気が一気に張りつめる。
「ユクス、学園を囲うように展開された幻影遮断の魔術は今もあるから、おそらく連中はまだ学園内にいるだろうね」
「リトには見えるのか?」
「まあね、この姿のお陰さ。だけど中に何人いるかとか、そういったことはわからないんだ」
「入ってみてから、ということか。リトも付いて来るのか?」
ネコの姿をしたリトはそう言うと、俺の肩に飛び乗る。
「ああ、一応ね。ただ僕を戦力として数えないでくれよ? 僕は戦う術を持っていないからね。その代わりに人の気配は察知できるから、もしも人質がいるのなら、気付かれずに救ってみせるよ」
「なるほど、すまないな」
「いいさ。前に言ったろ? 僕は君に恩を売っているだけさ」
そう言うと、ネコの姿をしたリトは俺の肩の上で丸まった。
どうやら移動は俺の肩で休みたいのだろう。俺はレイナたちに視線を向ける。
「それじゃあ、行くぞ」
レイナとシスリル、そして用心棒の九名。
学園で誰が待ち受けているかわからないが、俺たちは学園へと向かった。
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