この人以外ありえない

鳳雛

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6. 面倒じゃない

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「糸(いと)ちゃんのわからず屋!
脚切って監禁しちゃうんだから!!」

休日の昼間。
リビングで依(より)と口論になった。
その発端は、私が外出したいって言ったこと。
ただそれだけ。
言っておくけど、私は依のことを本心で面倒だと思ったことは一度もない。

「依ちゃん、やっぱり一緒に外に行こうよ」
「絶対いや!前にも言ったでしょ?いろんな人に糸ちゃんを見られたくないの!」
「誰も私のことなんか見ないって―――」
ザクッ
「った…」
膝にカッターナイフを刺してきた。
刃物を常備するな。
「次変なこと言ったら包丁刺すからね」
「・・・」
「ね、糸ちゃん?」
「外行きたい」
グサッ
「ぐっ…!」
本当に包丁で刺してきた。
「なんでそんなこと言うの?外に出る必要ある?
買い物はネットで済ませばいいし、運動もゲームも家でできるんだよ?
それなのに外に行きたいだなんて、よっぽどの理由があるんだろうね…」
依が血の付いた包丁をゆっくりと私の口に当ててくる。
「脚だけじゃなく、口の自由も奪っちゃうよ?」
「・・・」
依がこんなにキレるなんて・・・想像の範囲内だ。
口はさすがに痛いし、一回黙らせよう。

チュッ

「んっ?!//」
依にキスして顔を見ると、案の定真っ赤だった。
「なっ//・・・なぁに?
糸ちゃんって、殺されそうになるといっつもそうやってアタシのこと犯そうとしてくるけど」
いや犯そうとはしてない。
ていうか『殺されそうになると』って…
「でも!今日は絶対に屈しないんだから!!」
「はぁ…いいの?私の口を使えなくしちゃって」
「え?っふ、んむぅ…!!//」
深く、長く口づける。
「ぁ…いろ、ひゃ…んぁあっ…///」
しつこく舌を絡めて、呼吸する隙も与えてやらない。
カラン
依の手から包丁が離れて床に落ちた。
包丁を握る力もなくなるほど気持ちいいみたい。
思うように息ができなくて苦しそうだけど、卑猥な喘ぎとか膝をすり合わせる態度とか、
私の首に絡められた腕とか、
どう見ても依は快感に浸ってる。
なーにが「絶対に屈しない」だよ。

「っはぁ!はぁ、はぁ…」
口を離すと、依は私にもたれかかって荒く呼吸した。
…いつも口先と暴力だけのこいつの自由を、私が奪ってしまえば…
依を見下ろしながらそんなことを考えてしまったが、
私に監禁の趣味はない。
もちろん、監禁される趣味もない。
「依、もう一度聞くね。
私の口を使えなくしちゃっていいの?」
「っ…!」
トロンととろけた目で私を見つめてくる。
その口は言いたいことを我慢している。
「…まぁいっか。
あのね、依ちゃん。私も前までは仕事以外で外に出る必要はないって思ってたんだ」
「アタシは仕事でも糸ちゃんを外に出したくない」
無視しよう。
「依ちゃんがそばにいれば他に何もいらない、それは今でも変わらない。
でも、だからこそ、依ちゃんと一緒にいろんな景色を見て感じたいんだ。
海に行って潮風を浴びたり、動物園や水族館に行って動物と戯れたり」
「・・・」
また我慢してる。
本当はお前も行きたいんだろ?
最初からバレバレなんだよ。
「ね、依ちゃん。絶対楽しいよ。」
「・・・」
「外に行っても、私たちはいつも一緒なんだから。
周りなんか気にしないで、行ってみようよ」
「・・・ぅ」
「ん?」
「う、ん。わかった…」
やっと素直になった。
依はここまで追い詰めないと本当のことを言ってくれないんだから。

客観的に見たら、なんて面倒な女なんだと思う。
恋人なのに傷つけてくるし、こっちから歩み寄らないと殺されてしまう。
でも、私にとっては全然面倒なんかじゃない。

「じゃあ今度の休日に出かけようね」
「?、今からは出かけないの?」
依が不思議そうに聞いてくる。
素で言ってるのか?
本当にこいつは…
「私の膝に注目。どう見ても歩ける脚じゃないよね?」
「あ」
依に刺された血まみれの脚を見せる。
今は立つのがやっとだけど、明日には良くなってるかな。

それと…
「自分の脚にも注目してみな?」
「?…ぁ//」
床にへたり込んでいる依の脚は、股から溢れ出た液体にまみれている。
「今日は依が歩けなくなるまで動くんだよ?」
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