僕のこと、好きでしょ?~拐った人は、良い人でした~

toranon

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公爵家での生活1

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 翌朝目を覚ますと、見慣れない部屋だった。ああ、昨日の事は、夢じゃなかったんだ…。身体を起こすと、溜め息が出た。

「おはようございます、アルフォンス様。眠れましたか?」

 マーサがすぐ来て、温かいタオルを渡してくれた。

「おはよう。疲れてたから良く寝られたよ。」

 顔をタオルで拭いてる間に、マーサは朝食をテーブルに並べた。椅子に座り、タオルを渡した。
 パンとスープ、卵とソーセージを焼いたもの、フルーツの入ったサラダ。それと、ミルクたっぷりのカフェオレを入れてくれた。

「本日は、食事の後、医師の診察があります。午前中は、屋敷の中をご案内いたします。午後は、図書室で読書をしては、いかがでしょうか?」
「うん。診察って、これだね。」

 あいつに付けられた、腕のアザを見た。

「今日は勉強しなくて良いの?」
「急な事で、まだ家庭教師が決まっていないのです。ですから、決まるまでは身体を休めながら、読書をしたり、屋敷の事を覚えるのがよろしいかと思います。」
「そっか、分かった。」

 朝食を食べ終わると、マーサが医師を連れて来た。優しい雰囲気の男の人で、僕の顔を見て微笑んだ。

「初めまして、坊っちゃま。ゴートと申します。この屋敷の専属医師をしております。どうぞよろしくお願いいたします。」

 僕に深くお辞儀をして、鞄から聴診器を取り出した。

「では、健康状態を確認した後、腕の治療をさせていただきます。」

 ゴートは、骨格や筋肉の付き具合、下まぶたの裏や歯等を確認して、血圧と脈を測った。食事、運動、生活習慣の質問をして、書類に記入した。そして、腕のアザを見ると、

「これは痛むでしょう…。これ程だと数日残るかと。マーサ、湿布を用意しますから、朝晩で張り替えてください。では、湿布を張りますね。」

 アザに緑色のクリームを薄く塗り、四角い布を当て、包帯を巻き付けた。薬草の香りと、スーッとする感じがある。

「身体は健康ですね。私はいつも医務室におりますから、何かあれば呼んでください。」
「分かった、ありがとう。」

 マーサに付いて、屋敷の見学に出た。まずは、今居る2階から。僕の部屋と、あいつの部屋。それぞれの付き人の部屋と衣装用、荷物用の部屋がある。
 僕の部屋は西の端で、隣がマーサの部屋。あいつの部屋は、東の端だから会わずに済む。
 3階は、お客様用で、客室がたくさんと、専用の調理場があった。
 1階は、執務室、応接室、ホール、食堂、厨房、使用人それぞれの部屋、使用人用の食堂、医務室がある。
 僕の部屋だけでも、今まで住んでいた家より大きい。敷地も合わせると、とんでもない広さで、迷ってしまったら自力で戻れない自信がある。

「あれ?図書室は無かったよね?」
「図書室は、屋敷の隣にある建物になります。そろそろお昼ですが、部屋に運びますか?」

 1人で食べるのは、ちょっと寂しい。

「えっと、屋敷で働いてる人達はどこで食べてるの?」
「使用人用の食堂ですよ。良ければ、そちらで召し上がりますか?」
「うん、そうする!」

 マーサに付いて、使用人用の食堂に入ると、20人ほどが話しながら、食事をしていた。テーブルがたくさん並んでいて、100人ぐらい余裕で座れそうだ。

「アルフォンス様、こちらです。」

 トレーを取ると、カウンターへ行く。横に移動しながら、肉と野菜の乗った皿、スープ、パン、クッキーを1つずつトレーに乗せた。
 近くのテーブルに座ると、マーサも向かいの席に座ってくれた。

「いただきます。」

 今日は屋敷を動き回って、お腹が空いていたから、たくさん食べられた。マーサも一緒に食べてくれたし、話も出来て楽しかった。 メニューは日替わりで、皆同じものを食べる。デザートも毎食付くらしい。

「マーサ。僕ご飯を1人で食べるのは嫌なんだ。これからは、ここで食べても良いかな?」
「大丈夫ですよ。そのかわり、食事の出来る時間は決まっているので、気をつけてくださいね。」
「うん、ありがとう!」

 クッキーは食べずにハンカチに包み、上着のポケットに入れた。

「では、図書室へ参りましょう。」

 食堂の奥にある扉を開けると、目の前に別の建物があった。屋敷の半分ぐらいだけど、それでも充分大きい。

「うわ~、すごい!」
 
 図書室の中は、柱が無い開けた造りだ。壁には、本がビッシリ詰まった本棚が並んでいる。天窓から光が入るから、すごく明るい。
 公爵家なだけあって、膨大な本の量だ。一生のうちに、全て読む事は出来ないないだろう。

「ここにある本は、全てお読みいただけます。部屋へ持ち出しも出来ますよ。お持ちしますから、言ってくださいね。」
「分かった。じゃあ今日は、何か面白い話の本が読みたいかな。」
「それでしたら、冒険のお話はどうでしょう。」

 ジャンルでエリア分けされていて、本棚に別の色テープが貼ってある。小説のエリアで、冒険ものの本を10冊取り出した。
 窓際にあるテーブルに持って行き、座って1冊手に取った。
 内容は、男の子が冒険に出て、仲間を増やしていく。強くなって魔物をたくさん倒し、世界が平和になった、という話で。読みやすい。成人になったら、冒険者になって色んな国に行くのも、楽しそうかな。
 しばらくボーっと、窓から見える庭を眺めていた。

「旦那様、お探しの本はこちらです。」

 奴と誰か、2人の話し声が聞こえた。こっちに来なければ良いなと思ったのに。

「おや、坊っちゃま。」

 男がスタスタと歩いて、僕の前に立った。

「ご挨拶が遅れまして、失礼いたしました。執事のセバスです。何かありましたら、すぐ対処いたしますので、遠慮無くおっしゃってください。」

 セバスは胸に手を当て、軽くお辞儀をした。

「よろしくね、セバス。それじゃあ」
「セバス行くぞ。」

 さっそくお願いしようとしたら、あいつが僕を睨んで、横を通り過ぎた。セバスは、僕に微笑んで、あいつに付いて、図書室から出て行った。
 あいつに会うなんて、楽しい気分が台無しになった。
 そういえば、公爵家について聞いて聞いて無かったな。

「マーサ、公爵家について教えて。」
「はい。他の方は亡くなられたので、現在この公爵家は、旦那様とアルフォンス様のみです。王族の血を継いでおりますので、国にとっても重要な役割を担っています。旦那様は現在28歳で、ご結婚は1度も無く、お子様もアルフォンス様だけです。」
「そうなんだ。」

 僕に王族の血が入ってるなんて、不思議だ。あいつ結婚出来ないなんて、よっぽど問題あるのかな?
 そんなに長く居るつもりないから、まぁいいか。
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