11 / 103
第1章 売身都市
11話 その体は
しおりを挟む
「いやはや、代りの服がすぐに見つかってよかったよ。それにしても、ゴーヴァン程の腕でも武器は持っておきたいものなのだね」
買ったばかりの剣を腰に下げるオレを見て、女は不思議そうに聞いてくる。
今度はどこかへ連れて行かれないよう、オレがマントの首元を掴んで歩いている。
「当然だろ、素手と武器持ちとじゃ全然違えんだ。そんなことより」
今までとは違う小ざっぱり年経服に着替えた女を見て、疑問を口にする。
「腹、刺されたんだよな?」
「刺されたね、この辺りを」
「なんで何ともねえんだよ。血も出ねえとか、ありえねえだろ。あれか、やっぱり魔術師か何かか?」
「いやいや、魔術の心得なんてないさね。そうだね、私の体のことを少し話しておこうかね。一度家へ戻ろうか」
そう言うと女はオレが目を覚ました家の方へ向かって、足を進めていく。
歩きながら特に会話はなく、時折マントのフードに手をかけ、深くかぶり直す以外に女は特別何もしていなかった。
女の家に戻って中に入る頃は日も傾きかけて来ていたからか、布をかけられ窓が閉じられた家の中はすでに暗くなっていた。
「ちょっと待っておくれさね」
女はテーブルの上に置かれたランプに日を灯すと、部屋に一つしか無い明り取り用の窓のそばに立つ。
窓は分厚い布をかけられているせいで、夕暮れの明かりすら入ってこない。
「じゃあ、よく見ていて欲しい」
女は片手の手袋を外し、わずかに窓にかかった布をずらす。
女の手が夕日に照らされた瞬間、日に照らされた手の甲からふわりと粉のようなものが舞い、女は苦痛の表情を浮かべる。
「な、何だその粉?」
「触って、見るといいよ。別に毒ではないからね」
恐る恐る、粉が舞い続ける女の手の甲に触れる。指先に白灰色の粉が付く。
「灰、か?」
「そのとおりさね」
女は窓の布を元に戻す。
「私は陽の光に当たると体が灰になってしまってね。すぐに治るとは言え、体を焼かれるように辛いんだよ。まあ、マントとフードは日除けなのさね」
「はぁ? なんだそりゃ、ヤバい病とじゃねえだろうな」
せっかく自由になれるかもしれないのに、病でポックリとか冗談じゃねえぞ。
「安心おしね。病だとしても、簡単に伝染るモノじゃないさね」
女から距離を取る。と言っても一部屋だけの狭い家、外に出る扉の方へ体を寄せていく以外出来はしないが。
故郷で病で死んだやつはいた。奴隷として捉えられたやつが、病で死ぬところも見た。だが少なくとも、体が灰になるなんて病を聞いたことも見たこともなけりゃ、聞いたこともない。
「まあ、あれを見れば警戒はするだろうね……吸血鬼、という伝承は聞いたことがあるかね?」
頷く。
以前、同じ牢に入れられた奴隷から故郷のお伽話だと聞いたことがある。
「私はその吸血鬼、でね。ゴーヴァンを買った理由は、食事の確保のため、血を飲むためなのさね」
オレが食事、だ?
買ったばかりの剣を腰に下げるオレを見て、女は不思議そうに聞いてくる。
今度はどこかへ連れて行かれないよう、オレがマントの首元を掴んで歩いている。
「当然だろ、素手と武器持ちとじゃ全然違えんだ。そんなことより」
今までとは違う小ざっぱり年経服に着替えた女を見て、疑問を口にする。
「腹、刺されたんだよな?」
「刺されたね、この辺りを」
「なんで何ともねえんだよ。血も出ねえとか、ありえねえだろ。あれか、やっぱり魔術師か何かか?」
「いやいや、魔術の心得なんてないさね。そうだね、私の体のことを少し話しておこうかね。一度家へ戻ろうか」
そう言うと女はオレが目を覚ました家の方へ向かって、足を進めていく。
歩きながら特に会話はなく、時折マントのフードに手をかけ、深くかぶり直す以外に女は特別何もしていなかった。
女の家に戻って中に入る頃は日も傾きかけて来ていたからか、布をかけられ窓が閉じられた家の中はすでに暗くなっていた。
「ちょっと待っておくれさね」
女はテーブルの上に置かれたランプに日を灯すと、部屋に一つしか無い明り取り用の窓のそばに立つ。
窓は分厚い布をかけられているせいで、夕暮れの明かりすら入ってこない。
「じゃあ、よく見ていて欲しい」
女は片手の手袋を外し、わずかに窓にかかった布をずらす。
女の手が夕日に照らされた瞬間、日に照らされた手の甲からふわりと粉のようなものが舞い、女は苦痛の表情を浮かべる。
「な、何だその粉?」
「触って、見るといいよ。別に毒ではないからね」
恐る恐る、粉が舞い続ける女の手の甲に触れる。指先に白灰色の粉が付く。
「灰、か?」
「そのとおりさね」
女は窓の布を元に戻す。
「私は陽の光に当たると体が灰になってしまってね。すぐに治るとは言え、体を焼かれるように辛いんだよ。まあ、マントとフードは日除けなのさね」
「はぁ? なんだそりゃ、ヤバい病とじゃねえだろうな」
せっかく自由になれるかもしれないのに、病でポックリとか冗談じゃねえぞ。
「安心おしね。病だとしても、簡単に伝染るモノじゃないさね」
女から距離を取る。と言っても一部屋だけの狭い家、外に出る扉の方へ体を寄せていく以外出来はしないが。
故郷で病で死んだやつはいた。奴隷として捉えられたやつが、病で死ぬところも見た。だが少なくとも、体が灰になるなんて病を聞いたことも見たこともなけりゃ、聞いたこともない。
「まあ、あれを見れば警戒はするだろうね……吸血鬼、という伝承は聞いたことがあるかね?」
頷く。
以前、同じ牢に入れられた奴隷から故郷のお伽話だと聞いたことがある。
「私はその吸血鬼、でね。ゴーヴァンを買った理由は、食事の確保のため、血を飲むためなのさね」
オレが食事、だ?
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある
柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった
王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。
リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。
「わかりました。あなたには、がっかりです」
微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。
[完結]7回も人生やってたら無双になるって
紅月
恋愛
「またですか」
アリッサは望まないのに7回目の人生の巻き戻りにため息を吐いた。
驚く事に今までの人生で身に付けた技術、知識はそのままだから有能だけど、いつ巻き戻るか分からないから結婚とかはすっかり諦めていた。
だけど今回は違う。
強力な仲間が居る。
アリッサは今度こそ自分の人生をまっとうしようと前を向く事にした。
復讐のための五つの方法
炭田おと
恋愛
皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。
それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。
グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。
72話で完結です。
【完結】ずっと、ずっとあなたを愛していました 〜後悔も、懺悔も今更いりません〜
高瀬船
恋愛
リスティアナ・メイブルムには二歳年上の婚約者が居る。
婚約者は、国の王太子で穏やかで優しく、婚約は王命ではあったが仲睦まじく関係を築けていた。
それなのに、突然ある日婚約者である王太子からは土下座をされ、婚約を解消して欲しいと願われる。
何故、そんな事に。
優しく微笑むその笑顔を向ける先は確かに自分に向けられていたのに。
婚約者として確かに大切にされていたのに何故こうなってしまったのか。
リスティアナの思いとは裏腹に、ある時期からリスティアナに悪い噂が立ち始める。
悪い噂が立つ事など何もしていないのにも関わらず、リスティアナは次第に学園で、夜会で、孤立していく。
幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~
二階堂吉乃
恋愛
同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。
1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。
一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる