その口吻(くちづけ)は毒より甘く

門音日月

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第1章 売身都市

19話 星あかりの元の旅立ち

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「本当に良かったのかね?」
「ウルセェ、自分でもわかんねえんだ」
 街道を足早に歩くゴーヴァンを小走りで後を追う。歩幅が違うんだから、多少はこちらに合わせて欲しいものだね。
 あの後私がしたこと、いやゴーヴァンから言われたことを思い出す。
 町の外へ今すぐ連れて行くよう指示すること、そして奴隷商の元締めから自分たちのことを忘れさせること。
 誰も殺さなくていいのかと何度か聞いたが、返事はただ一言「黙ってろ」だけだった。
「で、どこに行きゃあいいんだ」
「どこ、とは?」
「オレのコレを消してくれんだろ」
 ゴーヴァンが自分の胸を指で叩く。ああ、そういう約束だものね。
「まずは港湾都市にいる私の友人に会いにいく。今回、何をどうしたか報告に戻れと言われているのでね」
 少し歩調を落としたゴーヴァンに並んで歩く。
「その友人に学術都市にいる魔術師に紹介状を書いてもらう、予定さね」
「予定かよ。アテになんのか、そのお友達は」
「顔は広いから、何かしらの伝手はあるはずさね。それより」
 少し力を入れて、ゴーヴァンの腕を掴む。
「しばらくは一緒にいることになったんだ、名前くらい呼んでくれても良いじゃないのかね?」
「ハッ、テメエの名前なんざ知らねえよ」
 いやいや、もう名乗ったろうさね。本気で言ってるのかい、まさか。
「レーテ。私の名前はレーテさね」
「ああ、はいはい。レーテなレーテレーテ」
 背負った荷物を背負い直し、面倒くさそうに頭をかく。
 その言い方、ちょっと投げやりじゃないかい?
「じゃあレーテ、その手、離せ。力入れ過ぎだ、痛えんだよ」
「おっと、これは失礼」
 手を話すとゴーヴァンは片手を振りかぶって、何かを投げ飛ばす。
 角にはもう所有者を示すタグは、付いていない。
「しっかし夜か、途中で野盗やら魔獣やらに襲われなきゃいいんだがな」
「なに、そうなったら私が助けてあげるさね」
「ハッ、助けてもらわなくても一人でどうにか出来らあ。面倒くせえだけだ」
 空を見上げる。
 星のきれいな夜だった。
「こんな星空の日に旅立つのも悪くないさね」
 私はゴーヴァンの横に立ち、歩みを進めた。
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