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第3章 学術都市
44話 竜対竜
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「いいか、決闘方法は説明したとおりだ」
「ここから背中合わせに五歩歩いて、始まりの合図が出たら開始。先に膝か背中がついたほうが負け、だろ」
背中合わせに立っているダネルに言葉を返し、互いに五歩歩いて振り向く。
オレの方が体がデカいせいか、始めに立っていた場所からダネルよりも距離が開く。
周りを見渡す。俺が戦わされていた闘技場に雰囲気は似ていた。あそこは円形の壁に囲まれていて土がむき出しだったが、ここは四角い壁で囲まれて表面が平らに磨かれた石が地面に敷かれている。一階分くらい高いところに見物客が座る場所があるのは、どちらも同じだ。
「いいのか、距離が開けばこちらの方が有利なんだぞ」
杖と言うには短すぎるワンドとかいう棒を構え、ダネルが笑いを浮かべる。
「オレの方が不利なくらいが丁度いいだろうが」
「言ったな? 後で吠え面かいて恥を晒しても知らないぞ」
腰を低く落とし、いつでも飛びかかれる構えを取る。
「それじゃあ、始めてもいいのかね」
「オッサンもニイちゃんもガンバレよ」
どこか楽しげに聞こえる声で、レーテとカルロがオレたちに呼びかける。
声のした方を見ると、ここより一階分高くなった場所にレーテとダネル、そしてダネルと同じような服を着た奴らがこちらを見ていた。
ダネルの言うことには、暇なここの学生だ気にするな、とのことだ。
「二人共、始めるよ」
レーテの言葉に、体を弓のように引き絞る。一気に距離を詰め、ダネルのヤツの腹に体当たりを一発入れてやればいい。
「では、はじめ!」
開始の合図と同時に地を踏みしめ、一気に距離を詰めていく。
この距離ならあってないようなもんだ。一歩、二歩、三歩と地を踏みしめる度、距離がグングンと縮む。
四歩目を踏みしめたところでダネルが杖を小さく振ると、宙に模様のような物が浮かぶ。
「穿け氷槍!」
頭上に悪寒を感じ視線を動かすと、オレの腕ほどの長さのツララが五本、先端をオレに向け浮いていた。
素早く横に飛ぶと、オレのいた場所へ向けてツララが勢いよく落下し粉々に砕ける。
視線をすぐにダネルへ戻す。さっきと同じように杖を小さく振り、宙に模様のようなものを描いていく。
次の攻撃に備え両腕で正面を防御し、もう一度距離を詰める
「射抜け流星!」
今度はカルロの拳ほどの大きさの光弾が四つ、ダネルの前に浮かび上がりオレ向けて飛んでくる。
「っつぅ」
腕に当たり光が弾けた瞬間、当たった場所から走る衝撃と痛みに短く声が出る。
だが前に進む足は止まらない。よしっ、このまま首根っこを掴んで引き倒せばオレの勝ちだ!
「盾となれ火炎柱!」
もう少しで首に手が届く、その瞬間、足元からの熱を感じ腕を引き後方へ飛ぶ。
オレが飛ぶのとほぼ同時に、ダネルの周りを炎の柱が包んでいた。
炎がまだ収まらないうちに、その中から先程の光弾が飛び出し、肩に腹に衝撃が走る。
見ている奴らの一部から、歓声がわくのが聞こえた。
「テメェ、チマチマチマチマ! 正面からやり合う気がねえのか!」
「これが魔術士の戦い方だ。相手がどんなに力が強かろうと技を磨いていようと、触れられなければいい話だからな」
ダネルが杖を振り、宙に模様が浮かぶ。
「穿け氷槍!」
またツララが五本、ダネルの目の前、先端をオレに向け現れる。
これ以上距離をとらないよう、ダネルを中心に円を描くように走る。
今度のツララは一気に来るのでなく、一つ、二つとオレの動きに合わせて飛んで来た。
クソっ、いちいち避けてちゃラチが明かねえ!
「っしゃらぁあぁっ!」
最後の一本、五発目のツララを上から拳を叩きつけブチ壊す。
「嘘だろ!」
ダネルのヤツ、あのツラぁこうするとは考えてもいなかったな。
よし、これで一気に叩き倒しやる。
目を見開いているダネルの顔めがけ、拳を握りしめ、腰を落とす。
面倒かけさせてくれお礼だ、鼻っ面に一発くれてやる!
「走れ雷電!」
「いぎっ!」
全身にシビレに似た痛みが走る。
体中の肉という肉が一瞬で縮められるような感覚。
腰が沈んでいくのがわかる。
「っそがああぁあぁぁっ!」
腹の奥から声を絞り出し、尾を叩きつけ、倒れかける体を支える。
「なっ?!」
拳に力を入れる。大丈夫だ、力は入る。
まだシビレはあるが殴るには十分だ。
拳を引き絞り、一気に突き出す。
「おご……っ!」
腹に拳が食い込む感触。
よし、このままもう一発くれてやればオレの勝ちだ!
体を折ったダネルがオレに倒れ込んでくる。
あれ、こいつこんな重いのか?
肩に掛かる重さを支えきれず、オレのヒザが力を無くしたかのように折れる。
オレがヒザをつくと同時に、ドッと歓声が上がるのがわかった。
「クソっ、納得行かねえ! ダネル、もう一回やり直しだ!」
「ふざけるな……こっちは昼食べた物を戻しそうなんだぞ……やるなら一人で壁でも殴ってろ」
腹を押さえながら、うーうー唸るダネル。
腹一発殴られた程度でこんななるか?
「同時にヒザついただなんて、納得できるか! もう一回だ!」
「ダダなんてこねてどうするのさね」
「オッサン、そういうのオージョーギワが悪いって言うんだぞ」
カルロに言われると、オレがガキみたいじゃねえか。
「これでどっちが上か下は、しばらく言わないことだね。第一、私から見たら二人共まだまださね」
満面の笑顔を浮かべたレーテがオレの額に指を当て、軽く突く。
「二人共まだまだ強くなれる、そう言うことさね」
チクショー! なんか色々納得行かねー!
「ここから背中合わせに五歩歩いて、始まりの合図が出たら開始。先に膝か背中がついたほうが負け、だろ」
背中合わせに立っているダネルに言葉を返し、互いに五歩歩いて振り向く。
オレの方が体がデカいせいか、始めに立っていた場所からダネルよりも距離が開く。
周りを見渡す。俺が戦わされていた闘技場に雰囲気は似ていた。あそこは円形の壁に囲まれていて土がむき出しだったが、ここは四角い壁で囲まれて表面が平らに磨かれた石が地面に敷かれている。一階分くらい高いところに見物客が座る場所があるのは、どちらも同じだ。
「いいのか、距離が開けばこちらの方が有利なんだぞ」
杖と言うには短すぎるワンドとかいう棒を構え、ダネルが笑いを浮かべる。
「オレの方が不利なくらいが丁度いいだろうが」
「言ったな? 後で吠え面かいて恥を晒しても知らないぞ」
腰を低く落とし、いつでも飛びかかれる構えを取る。
「それじゃあ、始めてもいいのかね」
「オッサンもニイちゃんもガンバレよ」
どこか楽しげに聞こえる声で、レーテとカルロがオレたちに呼びかける。
声のした方を見ると、ここより一階分高くなった場所にレーテとダネル、そしてダネルと同じような服を着た奴らがこちらを見ていた。
ダネルの言うことには、暇なここの学生だ気にするな、とのことだ。
「二人共、始めるよ」
レーテの言葉に、体を弓のように引き絞る。一気に距離を詰め、ダネルのヤツの腹に体当たりを一発入れてやればいい。
「では、はじめ!」
開始の合図と同時に地を踏みしめ、一気に距離を詰めていく。
この距離ならあってないようなもんだ。一歩、二歩、三歩と地を踏みしめる度、距離がグングンと縮む。
四歩目を踏みしめたところでダネルが杖を小さく振ると、宙に模様のような物が浮かぶ。
「穿け氷槍!」
頭上に悪寒を感じ視線を動かすと、オレの腕ほどの長さのツララが五本、先端をオレに向け浮いていた。
素早く横に飛ぶと、オレのいた場所へ向けてツララが勢いよく落下し粉々に砕ける。
視線をすぐにダネルへ戻す。さっきと同じように杖を小さく振り、宙に模様のようなものを描いていく。
次の攻撃に備え両腕で正面を防御し、もう一度距離を詰める
「射抜け流星!」
今度はカルロの拳ほどの大きさの光弾が四つ、ダネルの前に浮かび上がりオレ向けて飛んでくる。
「っつぅ」
腕に当たり光が弾けた瞬間、当たった場所から走る衝撃と痛みに短く声が出る。
だが前に進む足は止まらない。よしっ、このまま首根っこを掴んで引き倒せばオレの勝ちだ!
「盾となれ火炎柱!」
もう少しで首に手が届く、その瞬間、足元からの熱を感じ腕を引き後方へ飛ぶ。
オレが飛ぶのとほぼ同時に、ダネルの周りを炎の柱が包んでいた。
炎がまだ収まらないうちに、その中から先程の光弾が飛び出し、肩に腹に衝撃が走る。
見ている奴らの一部から、歓声がわくのが聞こえた。
「テメェ、チマチマチマチマ! 正面からやり合う気がねえのか!」
「これが魔術士の戦い方だ。相手がどんなに力が強かろうと技を磨いていようと、触れられなければいい話だからな」
ダネルが杖を振り、宙に模様が浮かぶ。
「穿け氷槍!」
またツララが五本、ダネルの目の前、先端をオレに向け現れる。
これ以上距離をとらないよう、ダネルを中心に円を描くように走る。
今度のツララは一気に来るのでなく、一つ、二つとオレの動きに合わせて飛んで来た。
クソっ、いちいち避けてちゃラチが明かねえ!
「っしゃらぁあぁっ!」
最後の一本、五発目のツララを上から拳を叩きつけブチ壊す。
「嘘だろ!」
ダネルのヤツ、あのツラぁこうするとは考えてもいなかったな。
よし、これで一気に叩き倒しやる。
目を見開いているダネルの顔めがけ、拳を握りしめ、腰を落とす。
面倒かけさせてくれお礼だ、鼻っ面に一発くれてやる!
「走れ雷電!」
「いぎっ!」
全身にシビレに似た痛みが走る。
体中の肉という肉が一瞬で縮められるような感覚。
腰が沈んでいくのがわかる。
「っそがああぁあぁぁっ!」
腹の奥から声を絞り出し、尾を叩きつけ、倒れかける体を支える。
「なっ?!」
拳に力を入れる。大丈夫だ、力は入る。
まだシビレはあるが殴るには十分だ。
拳を引き絞り、一気に突き出す。
「おご……っ!」
腹に拳が食い込む感触。
よし、このままもう一発くれてやればオレの勝ちだ!
体を折ったダネルがオレに倒れ込んでくる。
あれ、こいつこんな重いのか?
肩に掛かる重さを支えきれず、オレのヒザが力を無くしたかのように折れる。
オレがヒザをつくと同時に、ドッと歓声が上がるのがわかった。
「クソっ、納得行かねえ! ダネル、もう一回やり直しだ!」
「ふざけるな……こっちは昼食べた物を戻しそうなんだぞ……やるなら一人で壁でも殴ってろ」
腹を押さえながら、うーうー唸るダネル。
腹一発殴られた程度でこんななるか?
「同時にヒザついただなんて、納得できるか! もう一回だ!」
「ダダなんてこねてどうするのさね」
「オッサン、そういうのオージョーギワが悪いって言うんだぞ」
カルロに言われると、オレがガキみたいじゃねえか。
「これでどっちが上か下は、しばらく言わないことだね。第一、私から見たら二人共まだまださね」
満面の笑顔を浮かべたレーテがオレの額に指を当て、軽く突く。
「二人共まだまだ強くなれる、そう言うことさね」
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