47 / 103
第3章 学術都市
47話 ルクレツィア教授からの依頼−2
しおりを挟む
今オレはダネルと二人、宿の部屋にいる。
カルロは夕食になりそうなものを買いに出かけている。
ダネルのヤツといても対して話すこともないからカルロについて行こうとしたら、オッサンが来ると余計に買いすぎるからここにいろ、と言ってカルロ一人で買い物に出かけた。
レーテはルクレツィアが話があるということで、今夜はルクレツィアと二人であの散らかった部屋で過ごすらしい。
血を飲まなくて平気なのかと聞いたら、今夜くらいなら大丈夫、とのことだ。
ダネルは今、オレを見て何度目かわからないため息を吐いている。
「何でこんなことまでやる羽目になったんだ」
「知るか。文句あるならルクレツィアのヤツに言え」
「それで人の話を聞いてくれる人なら僕が苦労なんてしない」
宿に入ってからというもの、溜め息と文句しか口から出してない。
流石にこれ以上溜め息と文句を聞き続けるのも鬱陶しいから、俺から話を切り出してやる。
「で、オレは何をすりゃいいんだ?」
正直、オレがダネルやルクレツィアを手伝う必要なんて無かった。
けどルクレツィアの話しを聞いて気持ちが変わった。
「青い鱗の君が持ってる地図、十年くらい前に発行したやつだろ。竜種の奴隷が出回り始めたのもその頃からだ。案外その地図、人攫いか奴隷商の使っていたものだったりするかもな」
オレと義兄さんを攫ったヤツとも関係あるかもしれないってことだ。
ダネルはまた溜め息を吐くと、肩にかけたカバンから黒い板とオレと闘ったときに使っていたワンドとかいう短い杖を取り出し、手に持った板の上に何か模様を描いていく。するとぼんやりと板の表面に何か模様が浮かび上がった。
「ふむ。ある程度の場所は絞ってあるな。この数なら明日一日で調べきれそうだな。明日、学院の教室や研究室を調べていく。僕が怪しいと思った人物がいたらそいつを取り押さえろ。最悪、怪我の一つや二つさせても構わない」
「そりゃ楽でいい。怪しいヤツがいたら、ぶん殴ってでも捕まえろってことだな」
「ああ。見つかった緑は相当ひどい状態だったみたいだ。僕への注意事項で、怪しいものには一切容赦するな、とまで書かれている」
板に浮かんだ模様を見ながら、ダネルは自分の口を抑える。
「しかしこれは、かなり危険じゃないのか。本当にカルロ君を連れて行くのか?」
「あいつもやる気だったからな。この街で仕事探すとか言ってたし、何かあったときは真っ先に逃して、ルクレツィアに連絡させりゃいいだろ」
オレは戦えるし、何かあったときには盾になってやればいい。ダネルも弱いわけじゃねえ。最悪の場合でも、二人でかかればどうにかなるだろう。
カルロには何かあったときのための連絡係、って仕事を与えてやればいい。やたら仕事をしたがるアイツだ、何か役割があったほうが大人しくしてくれるだろう。
「しかし教授もよくここまで怪しい場所を絞ったものだな……調べる場所にあの白の教授の研究室も入ってるな」
「白? 白って弱い白って呼んでる、あの白か?」
「ああ。学院の教授に一人、白がいる」
「へえ、どんなやつなんだよ」
「研究室を自宅代わりにしていて学院の外に出たという話を殆ど聞かない教授だ。専攻が全く関わりのない科目だからルクレツィア教授の手伝いで会った時くらいしか顔は見たことがないな」
へえ、白なんて話にしか聞いたことがなかったから本当にいるなんて思わなかった。
黒や緑とは狩り場の取り合いで小競り合いがあって、義兄さんや村の戦士が戦いに言ったのは覚えてる。けど白とは、そう言う話を一切聞いたことがなかった。
白に関しては、弱い白って呼んでたくらいしか記憶にない。
「白って本当にいたんだな」
「僕も実際会うまで白なんていないと思っていた。両親が学院の卒業生だが白の話なんて聞いたこともなかったからな」
コイツ、親もこの街に来たことあるのか。
「あの白の教授の専攻は曰く付きだからな。前任教授の失踪やら出自不明の現教授、生徒の行方不明も噂話であったりする」
「何だよ、そいつが一番怪しいんじゃねえのか?」
「だから調べる場所に入ってる」
そりゃそうだ。怪しいから調べろってことなんだろうしな。
「オッサン、ニイちゃん戻ったぞー」
部屋のドアを勢いよく開け、カルロが戻ってきた。両手にはパンやら何やら食い物をたくさん抱えてる。
「おう戻ったか、カルロ。随分買ってきたじゃねえか」
「どうせオッサンがいっぱい食うから、少しでも安いとこ探して、多めに買ってきたんだよ」
「お、わかってんじゃねえか」
カルロからパンと塩漬け肉を受け取り、そのままかじりつく。
料理した物の方が美味いが、明日のことを人に聞かれない場所で話したいってダネルが言うもんだから、今日はこれでガマンだ。
「まるで飢えた獣のような食べっぷりだな」
ウルセェ、腹減ってんだ!
口の中のものを飲み込み、カルロを見る。カルロもパンに食いついてるところだった。
「カルロ、お前明日オレたちについてくるんだろ?」
「え、そうだけど。何だよ急に」
な、オレの言ったとおりだろ?
ダネルのヤツは驚いた顔をしているが、オレはついて来るだろうなと思ってたから特に驚きはない。
「お前のやることだけどな、オレが指示したら全部無視してルクレツィアのところに行け。何があったかの説明くらい出来るだろ」
「え、そんなことでいいのかよ」
「怪しいやつがいたらオレが取っ捕まえるから、お前はどこでどんなヤツが何してたのかを知らせに行け。腕っぷしに自信あるわけじゃねえんだろ、報告役も大事な仕事だ」
義兄さんと二人で狩りに行くとき、よく言われたことだ。自分に何かあったらすぐに村まで戻って何があったか知らせろ、お前にしか出来ない大事な仕事だぞ、ってな。
「わかった。明日仕事してる間、ネエちゃんはどうするのさ」
レーテか。そういやアイツ、何してるんだ?
カルロは夕食になりそうなものを買いに出かけている。
ダネルのヤツといても対して話すこともないからカルロについて行こうとしたら、オッサンが来ると余計に買いすぎるからここにいろ、と言ってカルロ一人で買い物に出かけた。
レーテはルクレツィアが話があるということで、今夜はルクレツィアと二人であの散らかった部屋で過ごすらしい。
血を飲まなくて平気なのかと聞いたら、今夜くらいなら大丈夫、とのことだ。
ダネルは今、オレを見て何度目かわからないため息を吐いている。
「何でこんなことまでやる羽目になったんだ」
「知るか。文句あるならルクレツィアのヤツに言え」
「それで人の話を聞いてくれる人なら僕が苦労なんてしない」
宿に入ってからというもの、溜め息と文句しか口から出してない。
流石にこれ以上溜め息と文句を聞き続けるのも鬱陶しいから、俺から話を切り出してやる。
「で、オレは何をすりゃいいんだ?」
正直、オレがダネルやルクレツィアを手伝う必要なんて無かった。
けどルクレツィアの話しを聞いて気持ちが変わった。
「青い鱗の君が持ってる地図、十年くらい前に発行したやつだろ。竜種の奴隷が出回り始めたのもその頃からだ。案外その地図、人攫いか奴隷商の使っていたものだったりするかもな」
オレと義兄さんを攫ったヤツとも関係あるかもしれないってことだ。
ダネルはまた溜め息を吐くと、肩にかけたカバンから黒い板とオレと闘ったときに使っていたワンドとかいう短い杖を取り出し、手に持った板の上に何か模様を描いていく。するとぼんやりと板の表面に何か模様が浮かび上がった。
「ふむ。ある程度の場所は絞ってあるな。この数なら明日一日で調べきれそうだな。明日、学院の教室や研究室を調べていく。僕が怪しいと思った人物がいたらそいつを取り押さえろ。最悪、怪我の一つや二つさせても構わない」
「そりゃ楽でいい。怪しいヤツがいたら、ぶん殴ってでも捕まえろってことだな」
「ああ。見つかった緑は相当ひどい状態だったみたいだ。僕への注意事項で、怪しいものには一切容赦するな、とまで書かれている」
板に浮かんだ模様を見ながら、ダネルは自分の口を抑える。
「しかしこれは、かなり危険じゃないのか。本当にカルロ君を連れて行くのか?」
「あいつもやる気だったからな。この街で仕事探すとか言ってたし、何かあったときは真っ先に逃して、ルクレツィアに連絡させりゃいいだろ」
オレは戦えるし、何かあったときには盾になってやればいい。ダネルも弱いわけじゃねえ。最悪の場合でも、二人でかかればどうにかなるだろう。
カルロには何かあったときのための連絡係、って仕事を与えてやればいい。やたら仕事をしたがるアイツだ、何か役割があったほうが大人しくしてくれるだろう。
「しかし教授もよくここまで怪しい場所を絞ったものだな……調べる場所にあの白の教授の研究室も入ってるな」
「白? 白って弱い白って呼んでる、あの白か?」
「ああ。学院の教授に一人、白がいる」
「へえ、どんなやつなんだよ」
「研究室を自宅代わりにしていて学院の外に出たという話を殆ど聞かない教授だ。専攻が全く関わりのない科目だからルクレツィア教授の手伝いで会った時くらいしか顔は見たことがないな」
へえ、白なんて話にしか聞いたことがなかったから本当にいるなんて思わなかった。
黒や緑とは狩り場の取り合いで小競り合いがあって、義兄さんや村の戦士が戦いに言ったのは覚えてる。けど白とは、そう言う話を一切聞いたことがなかった。
白に関しては、弱い白って呼んでたくらいしか記憶にない。
「白って本当にいたんだな」
「僕も実際会うまで白なんていないと思っていた。両親が学院の卒業生だが白の話なんて聞いたこともなかったからな」
コイツ、親もこの街に来たことあるのか。
「あの白の教授の専攻は曰く付きだからな。前任教授の失踪やら出自不明の現教授、生徒の行方不明も噂話であったりする」
「何だよ、そいつが一番怪しいんじゃねえのか?」
「だから調べる場所に入ってる」
そりゃそうだ。怪しいから調べろってことなんだろうしな。
「オッサン、ニイちゃん戻ったぞー」
部屋のドアを勢いよく開け、カルロが戻ってきた。両手にはパンやら何やら食い物をたくさん抱えてる。
「おう戻ったか、カルロ。随分買ってきたじゃねえか」
「どうせオッサンがいっぱい食うから、少しでも安いとこ探して、多めに買ってきたんだよ」
「お、わかってんじゃねえか」
カルロからパンと塩漬け肉を受け取り、そのままかじりつく。
料理した物の方が美味いが、明日のことを人に聞かれない場所で話したいってダネルが言うもんだから、今日はこれでガマンだ。
「まるで飢えた獣のような食べっぷりだな」
ウルセェ、腹減ってんだ!
口の中のものを飲み込み、カルロを見る。カルロもパンに食いついてるところだった。
「カルロ、お前明日オレたちについてくるんだろ?」
「え、そうだけど。何だよ急に」
な、オレの言ったとおりだろ?
ダネルのヤツは驚いた顔をしているが、オレはついて来るだろうなと思ってたから特に驚きはない。
「お前のやることだけどな、オレが指示したら全部無視してルクレツィアのところに行け。何があったかの説明くらい出来るだろ」
「え、そんなことでいいのかよ」
「怪しいやつがいたらオレが取っ捕まえるから、お前はどこでどんなヤツが何してたのかを知らせに行け。腕っぷしに自信あるわけじゃねえんだろ、報告役も大事な仕事だ」
義兄さんと二人で狩りに行くとき、よく言われたことだ。自分に何かあったらすぐに村まで戻って何があったか知らせろ、お前にしか出来ない大事な仕事だぞ、ってな。
「わかった。明日仕事してる間、ネエちゃんはどうするのさ」
レーテか。そういやアイツ、何してるんだ?
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある
柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった
王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。
リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。
「わかりました。あなたには、がっかりです」
微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。
[完結]7回も人生やってたら無双になるって
紅月
恋愛
「またですか」
アリッサは望まないのに7回目の人生の巻き戻りにため息を吐いた。
驚く事に今までの人生で身に付けた技術、知識はそのままだから有能だけど、いつ巻き戻るか分からないから結婚とかはすっかり諦めていた。
だけど今回は違う。
強力な仲間が居る。
アリッサは今度こそ自分の人生をまっとうしようと前を向く事にした。
復讐のための五つの方法
炭田おと
恋愛
皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。
それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。
グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。
72話で完結です。
【完結】ずっと、ずっとあなたを愛していました 〜後悔も、懺悔も今更いりません〜
高瀬船
恋愛
リスティアナ・メイブルムには二歳年上の婚約者が居る。
婚約者は、国の王太子で穏やかで優しく、婚約は王命ではあったが仲睦まじく関係を築けていた。
それなのに、突然ある日婚約者である王太子からは土下座をされ、婚約を解消して欲しいと願われる。
何故、そんな事に。
優しく微笑むその笑顔を向ける先は確かに自分に向けられていたのに。
婚約者として確かに大切にされていたのに何故こうなってしまったのか。
リスティアナの思いとは裏腹に、ある時期からリスティアナに悪い噂が立ち始める。
悪い噂が立つ事など何もしていないのにも関わらず、リスティアナは次第に学園で、夜会で、孤立していく。
幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~
二階堂吉乃
恋愛
同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。
1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。
一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる