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第4章 青い竜の村
76話 アズと一緒に
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ユリウスが家に来てから十日がすぎた。
魔砲の練習をやっている部屋、今はオレの休憩でアズの剣の練習時間だ。
ルクレツィアに頼んで用意してもらった木剣を構えたアズが、オレに向かって一撃を打ち込んでくる。
オレは膝立ちの状態で手に持った木剣で受け、アズが加えてくる力と同じ程度の力でアズの木剣を押し返す。
「アズ、体が正面向きすぎだぞ。そんなに腹が狙いやすいと」
空いた手でアズの脇腹を掴む。
くすぐったいのか、アズは笑いながら体を折る。
「おじさん、くすぐるのズルい」
「ズルくなんかねえぞ。剣で戦う時は、剣を持ってない手が使えるなら殴ったっていいし、蹴れるなら蹴っ飛ばしたっていいんだ。
ほらアズ、そんな格好してたら脇がガラ空きだぞ」
アズの笑い声が響く。
姉さんからは仕事をしながら子供の面倒を見て疲れないかと言われたが、このくらいならオレにとっては丁度いい遊びだし、この静かな部屋の中、オレ以外の声が聞こえるのは気持ち的に何か助かる。
一人で魔砲を撃ち続けるのは苦じゃない。苦じゃないが、何も楽しくはない。
「ヨシ、じゃあオレは仕事の続きをやるから、アズは素振りだ。
素振りするときの約束、言ってみろ」
「おじさんより後ろでやる。何かあったらおじさんに声をかける。おじさんのしっぽにはさわらない。おじさんより前にはぜったいに行かない」
「ヨシ、よく言えた! じゃあ素振りはじめていいぞ」
アズがオレの後ろに回り、素振りを始める。
剣の振り方は、オレが義兄さんから何度も教えてもらった型を教えてる。
義兄さんの言葉で言うなら、基本ができなければ他を身につけることは出来ない、だ。
「じゃあ、オレも始めるか」
外していた宝石をはめ込んだ魔砲を構え、的へ向かって撃つ。
的にしている金属製の胸に破裂音がすると同時に、指先程度の大きさの穴が開く。
最初の頃はこの音にアズは驚いていたが、最近は慣れたのかこの音がしても平気でいる。
「おじさん、たのしい?」
「止まった的撃っててもつまらねえな。でも、仕事だからやらなきゃいけねえんだ」
「ふぅん、たいへんなんだ」
大変っていうか、本当につまらねえ。
正直、動く的でもあるなら、それで試し撃ちをしてみたい。
て言うか、弓の代わりに持って狩りなり何なりに行きたい。
「おじさん、もうおわり?」
「イヤ、まだまだだ。アズは疲れたら休んでてもいいんだぞ」
「ぼくもまだやる」
オレの後ろで素振りを続けるアズ。
さすがに、いつユリウスが来るかも知れないってのに、アズを連れて狩りに行くのは怖い。
こうやってアズと一緒にいると、義兄さんがオレを狩りに連れて行ってくれたのは、凄いことだったんだなって思う。
獲物相手に気を張って、一緒にいるオレにも注意をしてなんてこと、オレには出来そうにない。
「おじさん、今日もごはんはおにいちゃんといっしょ?」
「カルロに聞いてみるか?」
アズが聞く、と返事をしたので一度撃つのを止めて、魔砲から宝石を抜き取る。
アズを抱き上げ、壁の透明な結晶に手を触れさせる。
「こちらルクレツィア教授の研究室です」
「おにいちゃん、今日、いっしょにごはんたべる?」
「何だ、アズか。もうお腹すいたのか?」
帰ってきたカルロの声に、アズが嬉しそうに話しかける。
アズはカルロのことをおにいちゃん、と呼ぶようになっていた。
カルロが一緒に暮らしているからってのもあると思うが、姉さんが言うには、父親がいなかったから年上の男の家族が欲しかったのかも知れない、てことらしい。
今はアズにとって、カルロはおにいちゃんで、オレが父親の代わりなんじゃないかって言われた。
何だか義兄さんの場所を奪ってるみたいで苦しかったが、アズも父親がいないことが辛かったんだって姉さんには言われた。
本当だったら父親である義兄さんとしたいことがあっても、それをずっとガマンしてたんだって。だから義兄さんが目覚めるまで、オレにその代わりをして欲しいって。
「じゃあ、昼になったらそっちに行くから。それまでオッサンの言うこと聞くんだぞ」
「わかった。またね」
アズが壁から手を離し、オレに笑いかけてくる。
オレも笑いかけてやると、嬉しそうにオレの首に抱きついて額を擦り合わせようとしてくる。
だからオレは額を近づけてやって、アズが満足するまで額をこすり合わさせてやった。
「よかったな、アズ。カルロ、一緒に飯食ってくれるぞ」
本当に嬉しそうな顔してるな、アズ。
魔砲の練習をやっている部屋、今はオレの休憩でアズの剣の練習時間だ。
ルクレツィアに頼んで用意してもらった木剣を構えたアズが、オレに向かって一撃を打ち込んでくる。
オレは膝立ちの状態で手に持った木剣で受け、アズが加えてくる力と同じ程度の力でアズの木剣を押し返す。
「アズ、体が正面向きすぎだぞ。そんなに腹が狙いやすいと」
空いた手でアズの脇腹を掴む。
くすぐったいのか、アズは笑いながら体を折る。
「おじさん、くすぐるのズルい」
「ズルくなんかねえぞ。剣で戦う時は、剣を持ってない手が使えるなら殴ったっていいし、蹴れるなら蹴っ飛ばしたっていいんだ。
ほらアズ、そんな格好してたら脇がガラ空きだぞ」
アズの笑い声が響く。
姉さんからは仕事をしながら子供の面倒を見て疲れないかと言われたが、このくらいならオレにとっては丁度いい遊びだし、この静かな部屋の中、オレ以外の声が聞こえるのは気持ち的に何か助かる。
一人で魔砲を撃ち続けるのは苦じゃない。苦じゃないが、何も楽しくはない。
「ヨシ、じゃあオレは仕事の続きをやるから、アズは素振りだ。
素振りするときの約束、言ってみろ」
「おじさんより後ろでやる。何かあったらおじさんに声をかける。おじさんのしっぽにはさわらない。おじさんより前にはぜったいに行かない」
「ヨシ、よく言えた! じゃあ素振りはじめていいぞ」
アズがオレの後ろに回り、素振りを始める。
剣の振り方は、オレが義兄さんから何度も教えてもらった型を教えてる。
義兄さんの言葉で言うなら、基本ができなければ他を身につけることは出来ない、だ。
「じゃあ、オレも始めるか」
外していた宝石をはめ込んだ魔砲を構え、的へ向かって撃つ。
的にしている金属製の胸に破裂音がすると同時に、指先程度の大きさの穴が開く。
最初の頃はこの音にアズは驚いていたが、最近は慣れたのかこの音がしても平気でいる。
「おじさん、たのしい?」
「止まった的撃っててもつまらねえな。でも、仕事だからやらなきゃいけねえんだ」
「ふぅん、たいへんなんだ」
大変っていうか、本当につまらねえ。
正直、動く的でもあるなら、それで試し撃ちをしてみたい。
て言うか、弓の代わりに持って狩りなり何なりに行きたい。
「おじさん、もうおわり?」
「イヤ、まだまだだ。アズは疲れたら休んでてもいいんだぞ」
「ぼくもまだやる」
オレの後ろで素振りを続けるアズ。
さすがに、いつユリウスが来るかも知れないってのに、アズを連れて狩りに行くのは怖い。
こうやってアズと一緒にいると、義兄さんがオレを狩りに連れて行ってくれたのは、凄いことだったんだなって思う。
獲物相手に気を張って、一緒にいるオレにも注意をしてなんてこと、オレには出来そうにない。
「おじさん、今日もごはんはおにいちゃんといっしょ?」
「カルロに聞いてみるか?」
アズが聞く、と返事をしたので一度撃つのを止めて、魔砲から宝石を抜き取る。
アズを抱き上げ、壁の透明な結晶に手を触れさせる。
「こちらルクレツィア教授の研究室です」
「おにいちゃん、今日、いっしょにごはんたべる?」
「何だ、アズか。もうお腹すいたのか?」
帰ってきたカルロの声に、アズが嬉しそうに話しかける。
アズはカルロのことをおにいちゃん、と呼ぶようになっていた。
カルロが一緒に暮らしているからってのもあると思うが、姉さんが言うには、父親がいなかったから年上の男の家族が欲しかったのかも知れない、てことらしい。
今はアズにとって、カルロはおにいちゃんで、オレが父親の代わりなんじゃないかって言われた。
何だか義兄さんの場所を奪ってるみたいで苦しかったが、アズも父親がいないことが辛かったんだって姉さんには言われた。
本当だったら父親である義兄さんとしたいことがあっても、それをずっとガマンしてたんだって。だから義兄さんが目覚めるまで、オレにその代わりをして欲しいって。
「じゃあ、昼になったらそっちに行くから。それまでオッサンの言うこと聞くんだぞ」
「わかった。またね」
アズが壁から手を離し、オレに笑いかけてくる。
オレも笑いかけてやると、嬉しそうにオレの首に抱きついて額を擦り合わせようとしてくる。
だからオレは額を近づけてやって、アズが満足するまで額をこすり合わさせてやった。
「よかったな、アズ。カルロ、一緒に飯食ってくれるぞ」
本当に嬉しそうな顔してるな、アズ。
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