51 / 59
第51話 戦場
「察しが良いな、我が子孫は。そうだ。この剣こそは『ノーティオの遺物』。そして元はフィリア・メンブルムだったものだ!」
高らかな魔王フィデス・パルマの声に反応したのはディエスではなく、シルワに守られて少し離れた所にいたノクスだった。
「まさか……本当に存在したのか、『ノーティオの遺物』が……!」
「ノクス! 僕の魔力が効く範囲を離れるな! 中級以上の魔物がウヨウヨしているから、お前じゃ倒せないぞ!」
ノクスの襟首を掴んで引き寄せたシルワの表情に、いつもの余裕は微塵もない。周囲の魔物の重力に干渉して、どうにか攻撃を防いでいるが、対象が多い分効力も弱い。
「殺しても殺してもキリが無い! もーっ! 何とかして! シルワ先生!」
余裕がないのはラティオも同様か。
ゆるふわをかなぐり捨てて、とにかく近寄ってきた魔物を片っ端から爆散している。
「無理。こっちも手一杯」
「キーッ!! シルワ先生は学園の生徒だった時からそう! いくら顔面が良くったって、いざという時に使えない男なんだから!」
「文句なら生き残ってから聞く」
「だったら最後まで立ってなさいよ! 爆散っ!!」
魔物の大群に対処している彼らの魔力も、無限ではない。
結界は壊れ、高位の魔物が魔界の入り口から湧き出すように地上に溢れている。
「負傷者は撤退せよ! 生きているグラキエス騎士団は我——メテオラ・クラウストラに続け! これ以上魔物の侵略を許すな! 魔石の使用も惜しむな!! この戦いに勝利せぬ限り、グラキエスの——いや、このアウローラ大陸に未来はないものと知れ!!」
グラキエス王国の王太子メテオラが、騎士団員を力強く鼓舞する。
白かったウサ耳は血で汚れ、モノクルは戦闘中に落としたのか着けていなかった。
馬上から群がる魔物たちを魔具の剣で薙ぎ倒しているが、何しろ数が多い。
メテオラ率いるグラキエス騎士団に狙いを定めたように、魔物たちが集中している。このままでは数に押されて、いずれ彼らは殺されてしまう!
———と、そこに二つの影が躍り出でた。
「ハッ!!」
「助太刀します! メテオラ殿下!」
ノッツェの鋼のような拳が魔物を宙に舞上げ、フェールの剣がメテオラに襲い掛かろうとした魔物を弾き飛ばす。
メンブルム騎士団の団長と副団長のコンビネーションは抜群だ。
「かたじけない。フェール団長、ノッツェ副団長」
「困った時はお互い様です。この場は両国の騎士団が一丸とならねば、乗り越えられません」
「ああ、そのようだ。面子より命の方が大事だ。では———お前たちグラキエス騎士団に告ぐ! これよりはアルカ王国騎士団との共同戦線だ! 第一に魔物たちを倒しつつも自分たちの命を守れ! 第二に国民の隔てなく、負傷者は率先して救護しろ! いいな、如何なる時もグラキエス騎士団の誇りを忘れるな!」
「オーッッ!!」
メテオラ王太子の言葉に、グラキエス騎士団員たちは鬨の声を上げる。
良かった。
状況は最悪だが、みんなの心はまだ折れてない。
「………他国と協力するなど、私が在位していた時代では考えられないことだな」
この血みどろの戦場にそぐわない声で、ポツリと魔王が呟く。
不遜な態度は鳴りを潜めて、今の彼を言い表すのなら、虚無だ。
ジロリと、魔王の鮮血の瞳が俺を見下ろす。
「いいだろう。フィリア、お前に見せてやろう。私と偉大なる魔法使いノーティオの真実を」
————不意に俺の視界が乱れる。
一瞬真っ暗になった後、次に現れたものはここアンゴル大峡谷ではない、ノーティオ魔法学園の中だった———
高らかな魔王フィデス・パルマの声に反応したのはディエスではなく、シルワに守られて少し離れた所にいたノクスだった。
「まさか……本当に存在したのか、『ノーティオの遺物』が……!」
「ノクス! 僕の魔力が効く範囲を離れるな! 中級以上の魔物がウヨウヨしているから、お前じゃ倒せないぞ!」
ノクスの襟首を掴んで引き寄せたシルワの表情に、いつもの余裕は微塵もない。周囲の魔物の重力に干渉して、どうにか攻撃を防いでいるが、対象が多い分効力も弱い。
「殺しても殺してもキリが無い! もーっ! 何とかして! シルワ先生!」
余裕がないのはラティオも同様か。
ゆるふわをかなぐり捨てて、とにかく近寄ってきた魔物を片っ端から爆散している。
「無理。こっちも手一杯」
「キーッ!! シルワ先生は学園の生徒だった時からそう! いくら顔面が良くったって、いざという時に使えない男なんだから!」
「文句なら生き残ってから聞く」
「だったら最後まで立ってなさいよ! 爆散っ!!」
魔物の大群に対処している彼らの魔力も、無限ではない。
結界は壊れ、高位の魔物が魔界の入り口から湧き出すように地上に溢れている。
「負傷者は撤退せよ! 生きているグラキエス騎士団は我——メテオラ・クラウストラに続け! これ以上魔物の侵略を許すな! 魔石の使用も惜しむな!! この戦いに勝利せぬ限り、グラキエスの——いや、このアウローラ大陸に未来はないものと知れ!!」
グラキエス王国の王太子メテオラが、騎士団員を力強く鼓舞する。
白かったウサ耳は血で汚れ、モノクルは戦闘中に落としたのか着けていなかった。
馬上から群がる魔物たちを魔具の剣で薙ぎ倒しているが、何しろ数が多い。
メテオラ率いるグラキエス騎士団に狙いを定めたように、魔物たちが集中している。このままでは数に押されて、いずれ彼らは殺されてしまう!
———と、そこに二つの影が躍り出でた。
「ハッ!!」
「助太刀します! メテオラ殿下!」
ノッツェの鋼のような拳が魔物を宙に舞上げ、フェールの剣がメテオラに襲い掛かろうとした魔物を弾き飛ばす。
メンブルム騎士団の団長と副団長のコンビネーションは抜群だ。
「かたじけない。フェール団長、ノッツェ副団長」
「困った時はお互い様です。この場は両国の騎士団が一丸とならねば、乗り越えられません」
「ああ、そのようだ。面子より命の方が大事だ。では———お前たちグラキエス騎士団に告ぐ! これよりはアルカ王国騎士団との共同戦線だ! 第一に魔物たちを倒しつつも自分たちの命を守れ! 第二に国民の隔てなく、負傷者は率先して救護しろ! いいな、如何なる時もグラキエス騎士団の誇りを忘れるな!」
「オーッッ!!」
メテオラ王太子の言葉に、グラキエス騎士団員たちは鬨の声を上げる。
良かった。
状況は最悪だが、みんなの心はまだ折れてない。
「………他国と協力するなど、私が在位していた時代では考えられないことだな」
この血みどろの戦場にそぐわない声で、ポツリと魔王が呟く。
不遜な態度は鳴りを潜めて、今の彼を言い表すのなら、虚無だ。
ジロリと、魔王の鮮血の瞳が俺を見下ろす。
「いいだろう。フィリア、お前に見せてやろう。私と偉大なる魔法使いノーティオの真実を」
————不意に俺の視界が乱れる。
一瞬真っ暗になった後、次に現れたものはここアンゴル大峡谷ではない、ノーティオ魔法学園の中だった———
あなたにおすすめの小説
断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます
山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。
でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。
それを証明すれば断罪回避できるはず。
幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。
チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。
処刑5秒前だから、今すぐに!
悪役令嬢、休職致します
碧井 汐桜香
ファンタジー
そのキツい目つきと高飛車な言動から悪役令嬢として中傷されるサーシャ・ツンドール公爵令嬢。王太子殿下の婚約者候補として、他の婚約者候補の妨害をするように父に言われて、実行しているのも一因だろう。
しかし、ある日突然身体が動かなくなり、母のいる領地で療養することに。
作中、主人公が精神を病む描写があります。ご注意ください。
作品内に登場する医療行為や病気、治療などは創作です。作者は医療従事者ではありません。実際の症状や治療に関する判断は、必ず医師など専門家にご相談ください。
悪役令嬢の独壇場
あくび。
ファンタジー
子爵令嬢のララリーは、学園の卒業パーティーの中心部を遠巻きに見ていた。
彼女は転生者で、この世界が乙女ゲームの舞台だということを知っている。
自分はモブ令嬢という位置づけではあるけれど、入学してからは、ゲームの記憶を掘り起こして各イベントだって散々覗き見してきた。
正直に言えば、登場人物の性格やイベントの内容がゲームと違う気がするけれど、大筋はゲームの通りに進んでいると思う。
ということは、今日はクライマックスの婚約破棄が行われるはずなのだ。
そう思って卒業パーティーの様子を傍から眺めていたのだけど。
あら?これは、何かがおかしいですね。
悪役令嬢エリザベート物語
kirara
ファンタジー
私の名前はエリザベート・ノイズ
公爵令嬢である。
前世の名前は横川禮子。大学を卒業して入った企業でOLをしていたが、ある日の帰宅時に赤信号を無視してスクランブル交差点に飛び込んできた大型トラックとぶつかりそうになって。それからどうなったのだろう。気が付いた時には私は別の世界に転生していた。
ここは乙女ゲームの世界だ。そして私は悪役令嬢に生まれかわった。そのことを5歳の誕生パーティーの夜に知るのだった。
父はアフレイド・ノイズ公爵。
ノイズ公爵家の家長であり王国の重鎮。
魔法騎士団の総団長でもある。
母はマーガレット。
隣国アミルダ王国の第2王女。隣国の聖女の娘でもある。
兄の名前はリアム。
前世の記憶にある「乙女ゲーム」の中のエリザベート・ノイズは、王都学園の卒業パーティで、ウィリアム王太子殿下に真実の愛を見つけたと婚約を破棄され、身に覚えのない罪をきせられて国外に追放される。
そして、国境の手前で何者かに事故にみせかけて殺害されてしまうのだ。
王太子と婚約なんてするものか。
国外追放になどなるものか。
乙女ゲームの中では一人ぼっちだったエリザベート。
私は人生をあきらめない。
エリザベート・ノイズの二回目の人生が始まった。
⭐️第16回 ファンタジー小説大賞参加中です。応援してくれると嬉しいです
【長編版】悪役令嬢は乙女ゲームの強制力から逃れたい
椰子ふみの
恋愛
ヴィオラは『聖女は愛に囚われる』という乙女ゲームの世界に転生した。よりによって悪役令嬢だ。断罪を避けるため、色々、頑張ってきたけど、とうとうゲームの舞台、ハーモニー学園に入学することになった。
ヒロインや攻略対象者には近づかないぞ!
そう思うヴィオラだったが、ヒロインは見当たらない。攻略対象者との距離はどんどん近くなる。
ゲームの強制力?
何だか、変な方向に進んでいる気がするんだけど。
完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい
咲桜りおな
恋愛
オルプルート王国第一王子アルスト殿下の婚約者である公爵令嬢のティアナ・ローゼンは、自分の事を何故か初対面から溺愛してくる殿下が苦手。
見た目は完璧な美少年王子様なのに匂いをクンカクンカ嗅がれたり、ティアナの使用済み食器を欲しがったりと何だか変態ちっく!
殿下を好きだというピンク髪の男爵令嬢から恋のキューピッド役を頼まれてしまい、自分も殿下をお慕いしていたと気付くが時既に遅し。不本意ながらも婚約破棄を目指す事となってしまう。
※糖度甘め。イチャコラしております。
第一章は完結しております。只今第二章を更新中。
本作のスピンオフ作品「モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~」も公開しています。宜しければご一緒にどうぞ。
本作とスピンオフ作品の番外編集も別にUPしてます。
「小説家になろう」でも公開しています。
良くある事でしょう。
r_1373
恋愛
テンプレートの様に良くある悪役令嬢に生まれ変っていた。
若い頃に死んだ記憶があれば早々に次の道を探したのか流行りのざまぁをしたのかもしれない。
けれど酸いも甘いも苦いも経験して産まれ変わっていた私に出来る事は・・。