男子校でハーレムが作れる俺マジ勝ち組

葉鳥(はとごろTIMES)

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早乙女静香ルート

残酷な奇跡2

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※この作品は同人ゲーム「男子校でハーレムが作れる俺マジ勝ち組」からテキストを抜き出したノベル版です。
 ゲームテキスト形式なので背景やキャラ名の指定が残っています。
 原作ゲームは18禁ですが、今作は18禁シーンを削除し全年齢版として公開します。
 PCを持っていない方のために、同じく全年齢版の体験版プレイ動画もございます。
 詳しくは「はとごろTIMES」のホームページをご覧下さい。
 また、漫画も投稿しています。そちらも是非ご覧下さい。



《静香視点》
人を好きになることなんて、絶対にできないと思っていた。
好きになられたことがないから。それがどんなものなのか、見たことも触れたこともなかったから。
それを最初にくれるのはおかあさんだと、小学校で先生が言っていた。
でもその時の僕に、母親がくれたものの記憶はなかった。
あのひとは、なにかをくれたっけ? はなしてもくれないのに、なにがもらえるのかな。
幼い頭で必死に考えたけど、答えは出なかった。
だって、何も貰っていなかった。
僕が成長すると、無視は罵倒と暴力に変わった。
あの人は僕を叩く時、決まって素手ではなく近くにあったものを使う。
決まって、汚らわしい、と叫ぶ。
僕のことなんか触りたくないし、見たくもないと言っているのだと、嫌でも理解できた。
あの人が嫌うのは男であって僕個人ではないけれど、そもそもあの人に近づく男が僕しかいないのだから大差はない。
それでも……僕は、いつか心を開いてもらえると信じていた。
だって、母親なんだ。お腹を痛めてまで産んでくれた、たった一人の母。それをどうして信じないでいられるのか。
今は伝わらなくても、いつか絶対言葉が届くと信じて、暴力に耐えながら声をかけ続けた。
でも、伝わらない。
それどころか、僕が近くにいればいるほど、あの人の心も擦り減っていく。
どうしようもない現実がそこにはあった。
結局、僕は何も得ることなく家を出ることを決めた。
……いや、違う。たくさんの時間を費やして、家を出ると決められた心を得たんだ。
もうわかってる。諦めたほうがいいと知っている。あの人と僕は、どう頑張っても交わらない。
そして、どう頑張っても、忘れることなんてできない。



《廊下》《零時視点》
それは、静香が正式に退寮して数日後のことだった。
静香
「…………え?」
担任教師が何気なく告げた一言が、ずっと続くと思っていた平和を崩壊させる。
教師
「昨日の夜に連絡があったんだ、お前の親御さんから」
静香も、隣で聞いていた俺も、その言葉を理解するのにかなりの時間をかけた。
そして理解してからも、そんなことがあるわけないと思考に否定を重ねることしかできなかった。
静香
「どうして……」
教師
「寮関係の費用の振込みが突然止まったから疑問に思ったと言っていたぞ。ちゃんと許可は貰ったんだろう?」
静香
「え…………それは……父、に…………」
そこまで言われて、俺も静香も最悪の想像をしてしまっていた。
そして、それが十中八九当たりだということにも気づいてしまっていた。
静香はちゃんと父親に許可を取っている。だが、それだけだ。
母親である心さんには、そのことが知らされていない。
しかし、それは必要がない事だった。あの人は静香がどうなろうと、自分から静香に関わってくることはない。
静香の父親もそれを分かっていて伝えなかったのだろう。
静香
「……ありえ、ない」
ありえない。
そんなこと、絶対に、あるわけがない。
あるとしたら……それは紛れもなく、奇跡。
教師
「電話は母親からだったが……両親共に伝えていなかったのか」
静香
「――――――ッ!?」
静香の手から鞄が落ちる。それを拾おうともせず、視点すら定められない状態で立ち尽くしていた。
そう、これは奇跡。
誰も望まない、ただ残酷なだけの非情な奇跡。
静香
「嘘……だ…………何故、今さら……そんな…………」
教師
「早乙女……?」
担任はきっと親からの電話を少し不審に思った程度だったのだろう。
ちょっと聞いてみるだけのつもりだったのに、静香が異様な反応をし焦り始めていた。
ここは廊下で、他の生徒も多数いる。このままここにいるのはまずい。
そう思って静香を移動させようと手をとってみるが、その身体はぴくりとも動かなかった。
静香
「どうして……そんな嘘をつくんです。長期間寮を空けたことは、そこまでいけないことでしたか……?」
教師
「う、嘘なんて……」
静香
「嘘に決まってるじゃないですか!」
廊下の奥まで響くほどの声。
この場にいる殆どの人間は、静香の激昂した姿なんて初めて見ただろう。
誰もが唖然とする。止めてくれる人がいないため、静香はその感情をまくし立てた。
静香
「どうして今更あの人が僕のことなど気にかけるのか! そんなこと今まで一度もなかったんですよ、一度も!」
静香
「十年以上会話すらしなかった人が、寮を出た程度のことを気にかけるはずがない! 分かっているんですそんなことは!」
静香
「だから家を出たというのになにが……」
静香
「あ…………」
静まり返った廊下。そこにいる全員の視線に気づき、静香は我に返った。
触れている手からは震えを感じる。自分がしてしまったことに後悔……いや、恐怖を感じているようだ。
母親から電話があった。たったそれだけで激昂してしまう自分に。
教師
「わ、悪かった……でも、本当のことなんだ」
静香
「…………僕こそ、すみませんでした」
静香
「あの……電話のこと……一応詳しく聞いていいですか?」
教師
「あ、ああ」
これ以上この場にいるのは危険だと思ってくれたようで、担任は静香を生徒指導室へと連れて行った。
取り残された俺は、起こった事が信じられなくてしばらくその場から動けなかった。
零時
「……最後って、約束したのに」
もう過去のことで静香を苦しめないようにしようと思っていたのに、まさかこんなにも早く崩されるなんて。
どうして今になって連絡なんかしてくるんだよ。
ようやく、切り離そうとしてくれてたのに。
口だけで無力な自分が、とても腹立たしい。
悔しい……



《教室》
静香の母を名乗る人物からの電話は、寮費の振込みが止まったことを不審に思ったという用件だったらしい。
受け付けた人が退寮の事実を告げると、なら私の子供は今何処にいるのだと聞いてきたという。
こうして詳しく聞いてみると、ますます信じられない。
電話の主が、静香の知っている母とも俺の知っている早乙女心という人物とも重ならない。
心さんは静香の住まいが四ッ橋家と聞くと、何かを納得したかのように電話を切ったらしい。
静香はその話を聞いてからずっと、心ここに在らずといった顔をしていた。
クラスの誰もがその異変を感じ取り、触れずにいる。あの長野ですらだ。
話しかけられるのは俺だけだった。といっても、帰ってくるのは空返事だけだが。
静香
「…………誰かの悪戯だと……信じたいな」
零時
「静香……」
静香
「何故、今になって再び、手に入らないものに縋ろうと思っているのだろう……」
静香
「会いたくなんてない……お前と一緒にいたらそれでいい……そのはずなんだ」
静香
「そのはず……なんだ」
ここ最近で一気に色々ありすぎて、自分がどうしたいかすら考えられなくなっているんだ。
今静香に必要なのは、時間。
零時
「静香、そろそろ帰ろう」
静香
「……ああ」
うちならば、静香はゆっくりと身体を休められる。
心を休めるのはすぐには難しいかもしれないけど、それも絶対無理じゃない。
これから長い時間をかけて、俺が癒そう。
守り続けよう。
自分の無力さから目を背けるように、ただそれだけを考えた。



《自宅・居間》
陽子
「しょーくん……ちょっといい?」
静香が風呂に入っている時を見計らい、母さんが話しかけてきた。
その表情はとても母さんらしくない。すぐによくない話なのだと察した。
陽子
「あのね……今日お昼は買い物に出かけてたんだけど、その時にお客さんがきてたらしいの」
零時
「客?」
陽子
「うん。隣の奥さんが偶然見たんだって」
陽子
「それがね……心さんだったって、言ってたの」
零時
「な……」
昼間の担任の話と繋がり、嫌な予感が背筋を走った。
静香は隠そうとしていたが、早乙女心の存在はこの辺りではそこそこ有名だった。
夜に家から響くヒステリックな叫び。夫らしき人との喧騒。外見も、滅多に外に出ないためやせ細り真っ白で目を引く。
見間違い、という可能性はほぼないだろう。
早乙女心は学校への電話で静香の居場所を知り、ここに来たんだ。
零時
「ふざけんなよ……何しに来たんだよ……」
これでまた静香のことを散々に扱われたらと思うと怒りがこみ上げてくる。
陽子
「明日からは一日中外出しないでいてみる。もしかしたら話が聞けるかもしれないし」
陽子
「私は心さんを嫌ってないけど、それとせーちゃんを守ることは別問題よ」
陽子
「せーちゃんもあなたと同じ、私の子供だわ。心さんの目的がせーちゃんへの暴力とかだったら、絶対渡さないから」
零時
「母さん……」
陽子
「あなたも、ちゃんと守ってあげるのよ? せーちゃんはあなたの彼女なんだし」
零時
「……うん…………ありがと」
今ばかりは恥ずかしくても誤魔化さない。
これで確信した。悪戯でも誰かの嘘でもない。心さん本人が動いている。
零時
「…………」
今更どうして、という疑問は、いくら考えても答えが出ないかった。
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