33 / 38
早乙女静香ルート
残酷な奇跡3
しおりを挟む
※この作品は同人ゲーム「男子校でハーレムが作れる俺マジ勝ち組」からテキストを抜き出したノベル版です。
ゲームテキスト形式なので背景やキャラ名の指定が残っています。
原作ゲームは18禁ですが、今作は18禁シーンを削除し全年齢版として公開します。
PCを持っていない方のために、同じく全年齢版の体験版プレイ動画もございます。
詳しくは「はとごろTIMES」のホームページをご覧下さい。
また、漫画も投稿しています。そちらも是非ご覧下さい。
《教室》
騒
「最近しずかちゃん先輩元気ないですねぇ」
羅斗
「そだね……見てて怖いくらいだよ。何かあったの?」
零時
「ええ……かなり色々あって」
母親の話をされてからの静香は目に見えて調子が悪くなった。
表情は暗く、細かいことで失敗をする。今日も授業中教科書すら出さずにぼーっとしていた。
やはりどうしても母親のことを気にせずにはいられないんだろう。
静香の人生のほとんどは早乙女心に奪われてしまっている。まるで呪われているかのようだ。
こんな風に苦しめることが親のすることなのだろうか。
あの人は一体いつまで静香を苦しめ続けるのだろうか。
騒
「あたしたち、そろそろこの教室に顔出すのやめたほうがいいかもです」
騒
「あたしはしずかちゃん先輩に優しくしてあげられないし……ビッチはビッチだし」
羅斗
「その言い方はアレだけど、まー何かに悩んでる時に私みたいなの見てると苛々するかもね」
零時
「そ、そんなことないですよ。騒も、そんな気にすんなって」
こんなことは言えないが、どうせ今の静香にとってこの二人の存在に意味はない。
他人を気にしている余裕すらないんだ。最近は伏嶋ですら会話が続かないと言っていた。
俺も……ここ数日は静香とまともに会話をしてない気がする。
でも、今は仕方ない。時間が解決することだってある。
静香
「零時、僕は帰るが……」
零時
「あ、俺も行く。じゃあ騒、先輩、また明日」
騒
「はい、明日です……」
羅斗
「ばいばい」
《住宅街》
静香
「………………」
二人での帰り道。やはり会話はない。
こんなに近くにいるのに、どうしてだか距離は開いていく一方だ。
いつの間にか季節は冬に移り変わろうとしていた。外の寒さと、俺達の関係が比例しているようで嫌だった。
零時
「最近母さん家にいないといけないみたいでさ、後で晩飯の材料買いに行こうと思ってるんだけど」
静香
「そうか……」
零時
「ああ……静香は……なにか食べたいものとかあるか?」
静香
「…………食べられればなんでもいい」
零時
「そっか……じゃ、俺の好きに買ってくるよ」
静香
「…………」
聞いている余裕もないのか、静香の反応は薄い。
こんな状態じゃ、約束のデートすら行けそうにない。
静香
「…………あ」
突然、静香が足を止めた。
目が見開かれ、口が開いたまま動かなくなる。
俺は静香の見ている先に視線を移し……そこで思考が止まった。
時間が解決してくれるなんて甘えだった。
後悔や怒りがごちゃ混ぜになった感情が一気に頭まで上り、何も考えられなくなる。
静香の目の前に、一人の女性が立っていた。
やせ細った白い肌。手入れのされていない髪。味気のない黒の服。
静香
「…………母、さん……?」
静香が一番会いたくなかった……静香に一番合わせたくなかった人物。
早乙女、心。
しかし、どうしてだかその人物が頭の中の早乙女心と一致しなかった。
すごく優しそうな顔をしていたから。
静香のことを、まるで娘でも見るかのように見つめていたから。
心
「よかった……やっと会えた……」
静香
「え……」
心
「あなたが寮を出たって聞いて、ずっと探してたのよ……」
心さんは長く会っていなかった子供と再会し感涙する。
その様子がこんなにもおぞましく、気持ちが悪いなんて思わなかった。
静香
「なんで……僕を、探して……?」
心
「だって、退寮してるのに家に戻ってこないから……心配したわ」
静香
「しん、ぱい…………?」
どの口がそういうのか。そんな悪態をついてやりたかったが、目の前の異様さに推し負け出てこない。
心
「そうよ。寮を出るならうちに戻っておいで。また一緒に暮らしましょうよ」
静香
「な、にを……言ってるんですか……一緒に、なんて……」
確かに小さい頃は同じ屋根の下で生活していたかもしれないが、それは一緒に住んでいたのとは違う。
静香は母親と一緒に暮らした覚えなんかない。
それなのに、早乙女心はさも当然のように言う。
心
「あなたは私の娘なんだから、一緒に住んでて当然じゃない」
心
「そうでしょう……しずか」
静香
「――――――ッ!?」
もう、何も言葉がでなかった。
意味が分からないとか、理解ができないとか、そんな生易しいものじゃない。
なんだこれは。
目の前の女性の笑顔。一緒に住んでいたという過去。そして「しずか」という言葉。
なにもかもがおかしい。ありえない。狂ってる。
……まさか、これも魔法のせいなのか。
俺が、ここまで世界を狂わせてしまったとでもいうのか。
零時
「ま、待って……待ってくださいっ!」
咄嗟に静香と心さんの間に割り込み、静香をかばうように立つ。
心さんは俺を見るなり、さっきまでの笑顔が嘘のように睨みつけてきた。
そうだ、これが俺の知っている早乙女心だ。いつも敵意むき出しで、決して優しい顔なんてしない。
後ろで静香がびくついたのが伝わってくる。静香にとっても、やはりこの姿が見慣れた母のものだった。
視線だけで人が殺せるなら、きっと俺はすでに死んでいただろう。
でも、例えそうでも、ここで死んでいるわけにはいかない。
零時
「静香はいまうちで生活してるんです。そんなすぐ戻れるわけないじゃないですか!」
心
「しずかの家は早乙女家よ……?」
零時
「自分の家だからって、そこで生きなきゃいけない理由にはならないと思います」
静香
「零時……」
心
「意味がわからないわ……人の話を聞かないで強引。これだから男は嫌いなのよ」
心
「あの人の子でも、やっぱり男は男なのね。汚らわしい」
静香
「……ッ」
息を呑む音がした。自分に向けられたわけでもないのに、静香の顔は真っ青だった。
心
「しずかを返して。私の大切な娘よ」
静香
「…………い……せつ……」
零時
「大切だなんてどの口で……」
静香
「し、零時! 待って!」
怒りに任せて暴言を吐きかけたのを静香が静止する。
静香はふるえながら、迷いながら、それでも母の顔と向き合う。
静香
「少し……時間を下さい……。考える時間がほしい……」
零時
「な……」
心
「……そうね。いきなりだったもの、その通りだわ」
心
「私は家にいるから、いつでも帰ってきてね。やっぱり一人は寂しいの」
心
「それから……そんなよそよそしい喋り方はやめてほしいわ。家族なんだから」
静香
「かぞ、く……」
心
「今日はあなたの顔が見れてよかった。それだけで嬉しい」
心
「じゃあまたね、しずか」
最後まで静香を愛しているような態度のまま、心さんは去っていった。
その姿が見えなくなって、静香は壊れたように地面にへたり込んだ。
そんな静香にむかって、俺はつい不満をぶちまけてしまう。
零時
「何で帰らないって言わなかったんだよ!」
悲しかった。静香が俺を選んでくれなかったことが。
まるで子供のような独占欲だけの発言に自分で驚く。でも、それだけこいつが好きなんだ。
静香
「…………って、いるんだ」
零時
「え……」
静香
「あの人の中では、僕とずっと仲良く暮らしていたことになっている……今までの辛かったこと全部、消えているんだ」
これが俺の魔法の影響だと、静香も気づいていたようだった。
認識妨害のせいで、周りの人間は静香のことを元々女だと思っている。
俺はそれでも昔の出来事についての記憶までは変わっていないと勝手に思い込んでいたが、そうじゃなかった。
あの人が静香を嫌う理由は、静香が男だったから。
元々女だったことになってしまえば、嫌っていたという記憶すら消えてしまう。
だから心さんの中では、虐待なんかない当たり前の家庭が広がっているんだ。
静香
「だから優しくて、笑顔までくれる……」
優しい母。笑ってくれる母。
それは静香が求め続けていた、絶対に手に入らないはずのもの。
静香
「ここで帰ったら手に入るかもしれないと思うと……嫌だって、言えなかった」
静香
「僕には、この機会を手放すことは……」
そう言われてしまえしば、もう自分の感情なんか出せなかった。
ずっと求め続けていたものがすぐそこにある。今でなければ、一生とどかない。
手を伸ばさなかったら、ずっと後悔するかもしれない。
静香
「どうすれば……僕はどうすればいい……? もう何も……分からない……」
静香
「もう、悩むのも……辛い…………」
零時
「…………っ」
零時
「帰ったほうが……いいんじゃないか?」
静香
「え……」
零時
「さっきはああ怒鳴っちまったけど……静香の言う通り、だし」
帰ってほしくないなんて、俺の我侭でしかない。
あの人はもう静香を苛めたりしないだろう。
それどころか、溢れんばかりの愛情を注いでくれるに違いない。
本当の家族がくれる幸せ。
それを与えることは、やはりあの人にしかできない。
零時
「別れるわけじゃねーし、俺とは学校でも一緒だ」
静香
「そう、だが……」
草田先輩にだけ認識妨害がきいてなかったことを思い出す。
それを考えると、心さんの記憶がいつまでもこのままとは限らない。
零時
「いつか心さんの記憶が戻るかもしれない。そしたら、もう二度と一緒になんて暮らせないもんな」
行かせたくないという気持ちをぐっと抑える。
静香のためを思うなら、ここで自分の我侭を通してはいけない。
静香
「…………そう、だな……」
静香
「帰ってみる……ことにする」
静香
「ここで帰らなかったら、きっと僕はそのことを一生引きずってしまうだろう」
静香
「今までの僕が、あの人のことをずっと引きずり続けていたように」
静香
「ごめんな、零時。あれだけ離れられないと勝手に言っておいてこの様だ」
零時
「いいよ。俺はお前が幸せになってくれるのが一番嬉しいんだからさ」
静香
「うん……ありがとう」
こうして、静香は実家へと帰ることになった。
静香の荷物なんてかなり少なかったはずなのに、それがなくなるだけでとても寂しく感じた。
伏嶋も、一人で住むのは違和感があると言っていた。
家にいるだけで、言い表せない喪失感に襲われる。
全てが手から落ちてしまったようで、ただただ悲しかった。
ゲームテキスト形式なので背景やキャラ名の指定が残っています。
原作ゲームは18禁ですが、今作は18禁シーンを削除し全年齢版として公開します。
PCを持っていない方のために、同じく全年齢版の体験版プレイ動画もございます。
詳しくは「はとごろTIMES」のホームページをご覧下さい。
また、漫画も投稿しています。そちらも是非ご覧下さい。
《教室》
騒
「最近しずかちゃん先輩元気ないですねぇ」
羅斗
「そだね……見てて怖いくらいだよ。何かあったの?」
零時
「ええ……かなり色々あって」
母親の話をされてからの静香は目に見えて調子が悪くなった。
表情は暗く、細かいことで失敗をする。今日も授業中教科書すら出さずにぼーっとしていた。
やはりどうしても母親のことを気にせずにはいられないんだろう。
静香の人生のほとんどは早乙女心に奪われてしまっている。まるで呪われているかのようだ。
こんな風に苦しめることが親のすることなのだろうか。
あの人は一体いつまで静香を苦しめ続けるのだろうか。
騒
「あたしたち、そろそろこの教室に顔出すのやめたほうがいいかもです」
騒
「あたしはしずかちゃん先輩に優しくしてあげられないし……ビッチはビッチだし」
羅斗
「その言い方はアレだけど、まー何かに悩んでる時に私みたいなの見てると苛々するかもね」
零時
「そ、そんなことないですよ。騒も、そんな気にすんなって」
こんなことは言えないが、どうせ今の静香にとってこの二人の存在に意味はない。
他人を気にしている余裕すらないんだ。最近は伏嶋ですら会話が続かないと言っていた。
俺も……ここ数日は静香とまともに会話をしてない気がする。
でも、今は仕方ない。時間が解決することだってある。
静香
「零時、僕は帰るが……」
零時
「あ、俺も行く。じゃあ騒、先輩、また明日」
騒
「はい、明日です……」
羅斗
「ばいばい」
《住宅街》
静香
「………………」
二人での帰り道。やはり会話はない。
こんなに近くにいるのに、どうしてだか距離は開いていく一方だ。
いつの間にか季節は冬に移り変わろうとしていた。外の寒さと、俺達の関係が比例しているようで嫌だった。
零時
「最近母さん家にいないといけないみたいでさ、後で晩飯の材料買いに行こうと思ってるんだけど」
静香
「そうか……」
零時
「ああ……静香は……なにか食べたいものとかあるか?」
静香
「…………食べられればなんでもいい」
零時
「そっか……じゃ、俺の好きに買ってくるよ」
静香
「…………」
聞いている余裕もないのか、静香の反応は薄い。
こんな状態じゃ、約束のデートすら行けそうにない。
静香
「…………あ」
突然、静香が足を止めた。
目が見開かれ、口が開いたまま動かなくなる。
俺は静香の見ている先に視線を移し……そこで思考が止まった。
時間が解決してくれるなんて甘えだった。
後悔や怒りがごちゃ混ぜになった感情が一気に頭まで上り、何も考えられなくなる。
静香の目の前に、一人の女性が立っていた。
やせ細った白い肌。手入れのされていない髪。味気のない黒の服。
静香
「…………母、さん……?」
静香が一番会いたくなかった……静香に一番合わせたくなかった人物。
早乙女、心。
しかし、どうしてだかその人物が頭の中の早乙女心と一致しなかった。
すごく優しそうな顔をしていたから。
静香のことを、まるで娘でも見るかのように見つめていたから。
心
「よかった……やっと会えた……」
静香
「え……」
心
「あなたが寮を出たって聞いて、ずっと探してたのよ……」
心さんは長く会っていなかった子供と再会し感涙する。
その様子がこんなにもおぞましく、気持ちが悪いなんて思わなかった。
静香
「なんで……僕を、探して……?」
心
「だって、退寮してるのに家に戻ってこないから……心配したわ」
静香
「しん、ぱい…………?」
どの口がそういうのか。そんな悪態をついてやりたかったが、目の前の異様さに推し負け出てこない。
心
「そうよ。寮を出るならうちに戻っておいで。また一緒に暮らしましょうよ」
静香
「な、にを……言ってるんですか……一緒に、なんて……」
確かに小さい頃は同じ屋根の下で生活していたかもしれないが、それは一緒に住んでいたのとは違う。
静香は母親と一緒に暮らした覚えなんかない。
それなのに、早乙女心はさも当然のように言う。
心
「あなたは私の娘なんだから、一緒に住んでて当然じゃない」
心
「そうでしょう……しずか」
静香
「――――――ッ!?」
もう、何も言葉がでなかった。
意味が分からないとか、理解ができないとか、そんな生易しいものじゃない。
なんだこれは。
目の前の女性の笑顔。一緒に住んでいたという過去。そして「しずか」という言葉。
なにもかもがおかしい。ありえない。狂ってる。
……まさか、これも魔法のせいなのか。
俺が、ここまで世界を狂わせてしまったとでもいうのか。
零時
「ま、待って……待ってくださいっ!」
咄嗟に静香と心さんの間に割り込み、静香をかばうように立つ。
心さんは俺を見るなり、さっきまでの笑顔が嘘のように睨みつけてきた。
そうだ、これが俺の知っている早乙女心だ。いつも敵意むき出しで、決して優しい顔なんてしない。
後ろで静香がびくついたのが伝わってくる。静香にとっても、やはりこの姿が見慣れた母のものだった。
視線だけで人が殺せるなら、きっと俺はすでに死んでいただろう。
でも、例えそうでも、ここで死んでいるわけにはいかない。
零時
「静香はいまうちで生活してるんです。そんなすぐ戻れるわけないじゃないですか!」
心
「しずかの家は早乙女家よ……?」
零時
「自分の家だからって、そこで生きなきゃいけない理由にはならないと思います」
静香
「零時……」
心
「意味がわからないわ……人の話を聞かないで強引。これだから男は嫌いなのよ」
心
「あの人の子でも、やっぱり男は男なのね。汚らわしい」
静香
「……ッ」
息を呑む音がした。自分に向けられたわけでもないのに、静香の顔は真っ青だった。
心
「しずかを返して。私の大切な娘よ」
静香
「…………い……せつ……」
零時
「大切だなんてどの口で……」
静香
「し、零時! 待って!」
怒りに任せて暴言を吐きかけたのを静香が静止する。
静香はふるえながら、迷いながら、それでも母の顔と向き合う。
静香
「少し……時間を下さい……。考える時間がほしい……」
零時
「な……」
心
「……そうね。いきなりだったもの、その通りだわ」
心
「私は家にいるから、いつでも帰ってきてね。やっぱり一人は寂しいの」
心
「それから……そんなよそよそしい喋り方はやめてほしいわ。家族なんだから」
静香
「かぞ、く……」
心
「今日はあなたの顔が見れてよかった。それだけで嬉しい」
心
「じゃあまたね、しずか」
最後まで静香を愛しているような態度のまま、心さんは去っていった。
その姿が見えなくなって、静香は壊れたように地面にへたり込んだ。
そんな静香にむかって、俺はつい不満をぶちまけてしまう。
零時
「何で帰らないって言わなかったんだよ!」
悲しかった。静香が俺を選んでくれなかったことが。
まるで子供のような独占欲だけの発言に自分で驚く。でも、それだけこいつが好きなんだ。
静香
「…………って、いるんだ」
零時
「え……」
静香
「あの人の中では、僕とずっと仲良く暮らしていたことになっている……今までの辛かったこと全部、消えているんだ」
これが俺の魔法の影響だと、静香も気づいていたようだった。
認識妨害のせいで、周りの人間は静香のことを元々女だと思っている。
俺はそれでも昔の出来事についての記憶までは変わっていないと勝手に思い込んでいたが、そうじゃなかった。
あの人が静香を嫌う理由は、静香が男だったから。
元々女だったことになってしまえば、嫌っていたという記憶すら消えてしまう。
だから心さんの中では、虐待なんかない当たり前の家庭が広がっているんだ。
静香
「だから優しくて、笑顔までくれる……」
優しい母。笑ってくれる母。
それは静香が求め続けていた、絶対に手に入らないはずのもの。
静香
「ここで帰ったら手に入るかもしれないと思うと……嫌だって、言えなかった」
静香
「僕には、この機会を手放すことは……」
そう言われてしまえしば、もう自分の感情なんか出せなかった。
ずっと求め続けていたものがすぐそこにある。今でなければ、一生とどかない。
手を伸ばさなかったら、ずっと後悔するかもしれない。
静香
「どうすれば……僕はどうすればいい……? もう何も……分からない……」
静香
「もう、悩むのも……辛い…………」
零時
「…………っ」
零時
「帰ったほうが……いいんじゃないか?」
静香
「え……」
零時
「さっきはああ怒鳴っちまったけど……静香の言う通り、だし」
帰ってほしくないなんて、俺の我侭でしかない。
あの人はもう静香を苛めたりしないだろう。
それどころか、溢れんばかりの愛情を注いでくれるに違いない。
本当の家族がくれる幸せ。
それを与えることは、やはりあの人にしかできない。
零時
「別れるわけじゃねーし、俺とは学校でも一緒だ」
静香
「そう、だが……」
草田先輩にだけ認識妨害がきいてなかったことを思い出す。
それを考えると、心さんの記憶がいつまでもこのままとは限らない。
零時
「いつか心さんの記憶が戻るかもしれない。そしたら、もう二度と一緒になんて暮らせないもんな」
行かせたくないという気持ちをぐっと抑える。
静香のためを思うなら、ここで自分の我侭を通してはいけない。
静香
「…………そう、だな……」
静香
「帰ってみる……ことにする」
静香
「ここで帰らなかったら、きっと僕はそのことを一生引きずってしまうだろう」
静香
「今までの僕が、あの人のことをずっと引きずり続けていたように」
静香
「ごめんな、零時。あれだけ離れられないと勝手に言っておいてこの様だ」
零時
「いいよ。俺はお前が幸せになってくれるのが一番嬉しいんだからさ」
静香
「うん……ありがとう」
こうして、静香は実家へと帰ることになった。
静香の荷物なんてかなり少なかったはずなのに、それがなくなるだけでとても寂しく感じた。
伏嶋も、一人で住むのは違和感があると言っていた。
家にいるだけで、言い表せない喪失感に襲われる。
全てが手から落ちてしまったようで、ただただ悲しかった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
イケボすぎる兄が、『義妹の中の人』をやったらバズった件について
のびすけ。
恋愛
春から一人暮らしを始めた大学一年生、天城コウは――ただの一般人だった。
だが、再会した義妹・ひよりのひと言で、そんな日常は吹き飛ぶ。
「お兄ちゃんにしか頼めないの、私の“中の人”になって!」
ひよりはフォロワー20万人超えの人気Vtuber《ひよこまる♪》。
だが突然の喉の不調で、配信ができなくなったらしい。
その代役に選ばれたのが、イケボだけが取り柄のコウ――つまり俺!?
仕方なく始めた“妹の中の人”としての活動だったが、
「え、ひよこまるの声、なんか色っぽくない!?」
「中の人、彼氏か?」
視聴者の反応は想定外。まさかのバズり現象が発生!?
しかも、ひよりはそのまま「兄妹ユニット結成♡」を言い出して――
同居、配信、秘密の関係……って、これほぼ恋人同棲じゃん!?
「お兄ちゃんの声、独り占めしたいのに……他の女と絡まないでよっ!」
代役から始まる、妹と秘密の“中の人”Vライフ×甘々ハーレムラブコメ、ここに開幕!
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について
沢田美
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。
かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。
しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。
現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。
その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。
「今日から私、あなたのメイドになります!」
なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!?
謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける!
カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!
クラスで一番人気者の女子が構ってくるのだが、そろそろ僕がコミュ障だとわかってもらいたい
みずがめ
恋愛
学生にとって、席替えはいつだって大イベントである。
それはカースト最下位のぼっちである鈴本克巳も同じことであった。せめて穏やかな学生生活をを求める克巳は陽キャグループに囲まれないようにと願っていた。
願いが届いたのか、克巳は窓際の後ろから二番目の席を獲得する。しかし喜んでいたのも束の間、彼の後ろの席にはクラスで一番の人気者の女子、篠原渚が座っていた。
スクールカーストでの格差がありすぎる二人。席が近いとはいえ、関わることはあまりないのだろうと思われていたのだが、渚の方から克巳にしょっちゅう話しかけてくるのであった。
ぼっち男子×のほほん女子のほのぼのラブコメです。
※あっきコタロウさんのフリーイラストを使用しています。
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
罰ゲームから始まった、五人のヒロインと僕の隣の物語
ノン・タロー
恋愛
高校2年の夏……友達同士で行った小テストの点を競う勝負に負けた僕、御堂 彼方(みどう かなた)は、罰ゲームとしてクラスで人気のある女子・風原 亜希(かざはら あき)に告白する。
だが亜希は、彼方が特に好みでもなく、それをあっさりと振る。
それで終わるはずだった――なのに。
ひょんな事情で、彼方は亜希と共に"同居”することに。
さらに新しく出来た、甘えん坊な義妹・由奈(ゆな)。
そして教室では静かに恋を仕掛けてくる寡黙なクラス委員長の柊 澪(ひいらぎ みお)、特に接点の無かった早乙女 瀬玲奈(さおとめ せれな)、おまけに生徒会長の如月(きさらぎ)先輩まで現れて、彼方の周囲は急速に騒がしくなっていく。
由奈は「お兄ちゃん!」と懐き、澪は「一緒に帰らない……?」と静かに距離を詰める。
一方の瀬玲奈は友達感覚で、如月先輩は不器用ながらも接してくる。
そんな中、亜希は「別に好きじゃないし」と言いながら、彼方が誰かと仲良くするたびに心がざわついていく。
罰ゲームから始まった関係は、日常の中で少しずつ形を変えていく。
ツンデレな同居人、甘えたがりな義妹、寡黙な同クラ女子、恋愛に不器用な生徒会長、ギャル気質な同クラ女子……。
そして、無自覚に優しい彼方が、彼女たちの心を少しずつほどいていく。
これは、恋と居場所と感情の距離をめぐる、ちょっと不器用で、でも確かな青春の物語。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる