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迷宮探検
しおりを挟む地上からどれほど深く降りたのだろうか。
外の光が一切届かない部屋の中、四方を囲う石の壁から伝わる冷気が心地いい。わずかに体を動かすだけで、静かな部屋に物音が何度も反響した。
「ね、ね! そろそろ休憩終わりにして、進もうよ!」
うずく気持ちを抑えられなくなって、同じように休んでいたアミアを急かす。
もう同じような部屋をいくつも探索している。どの部屋も真っ暗で似た形をしていたが、置いてあるアイテムだけは様々だった。それの多くは四角い形か、星の形。おそらく何らかの用途があるのだろうが、鑑定屋にでも見せなきゃ私たちには分からないものがほとんどだった。
それでも、理解不能が散らばる中を探検するのは楽しくて、癖になりそう。アミアもよくこんな場所を見つけてきたものだと思う。
「うん、そうだね。じゃ、また段々のところに戻ろっか」
アミアも先が楽しみらしい。私たちはすぐに部屋を出て、冒険を再開することにした。
今回アミアに案内されたのは、一面に広がる砂の大地の上だった。その一点で少し地面を掘るだけで、秘密の入り口がぽっかりと穴を空けたのだ。
その中は……真っ暗な闇へと続く、石でできた規則正しく並んだ段差。
ある程度下りるごとに水平方向への脇道が何度も現れて、その先がさらにいくつもの空間へと枝葉のように分かれていた。
まるで迷宮の中みたい。私は興奮する気持ちのままに、アミアと一緒に内部の探検とアイテム回収に勤しんだ。
「……あっ。ここが、最後みたい。段々がここでなくなってる」
段差を一番底まで下りた先には、今までより一際大きな空間が開けていた。何本もの柱が立っていて、ここまで進んできた中でなぜかここだけ幽かに明るい。そして、奥には何やら仰々しい巨大な門がある。
「ほ、本当だ。それにこの部屋、いかにも特別な場所って感じ。……ね、アミア、気を付けてね。何か宝物とか、罠とか、隠してあるかも」
冒険の終端となる部屋に、興奮と緊張が強くなる。いかにも何か出てきそう。
隣のアミアに呼び掛けた矢先に、前方の柱の陰から――
「――■■■■■ッ! ■、■■■ノ、■■ナ、■■ナ、■――」
何か出た。うるさいから殺した。
「ミィニ、平気だった?」
「うん。……なんだろう、この化け物。たった二本の棒で立ってたよ」
はねた水を拭いつつ、アミアに無事を伝える。
化け物は私の二倍くらいの大きさだった。動かないことを確認してから、私は部屋の探索へと戻る。
「……何もないね。見当違いかぁ」
結局、部屋にお宝らしきものは見つからず、仰々しい門の先は固まった砂で塞がれていた。おそらく地上の砂と同じものだろう。なんだか、冒険が消化不良で終わってしまった気分だ。
「……ミィニ、残念だけど、引き上げよっか。未知の化け物が棲んでたんだよ。長く留まると危険かもしれない」
アミアに呼ばれて、恨めしくもう一度門を見る。
ふと門のアーチの部分に、読めないが、何やら文字らしきものが彫ってあるのに気が付いた。
〝緑町中央マンション〟
……この迷宮の名前か、あるいはその持ち主の名前だろうか。もしかすると、この門が本来の入口で、この迷宮はもともと地上にあったのかもしれない。
「きっと、害虫駆除の業者が手を抜いたのね。文句を言って、今度は徹底的に星の掃除をお願いするわ。せっかく、新しく遊び場の星を貰ったんだから……。ミィニ、次に来たときは、もっといっぱい探検しようね」
そう話すアミアと並んで、地上まで続く段差を登り始める。平たい坂の方がずっと動きやすいのに、つくづく不思議な設計だ。
地上に出る頃にはきっと、私の足は十二本とも、すっかり疲弊しているのだろうな。
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