白き時を越えて

蒼(あお)

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第2章:再会

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「じゃあ、私は行くね。
 華菜ちゃん、しっかり休んむんだよ」
そう言うと、千秋さんは部屋から出て行った。

部屋は、私と綾のふたりだけになった。

嬉しい。
ああ、嬉しい。

はっきりと分かる、私は嬉しい。
綾とまた出会えて、嬉しいんだ……!

「にやにやしちゃって。
 私とまた会えて、そんなに嬉しい?」
綾がからかうように言った。
言わなくても、分かっているくせに。

「綾、落ち着きすぎ」
私は思ったままのことを言った。
2週間しかいない割には、
綾は千秋さんとも親しそうだった。

「まぁ~、馴染むのは得意だしね。
 それにここ、面白い人ばっかりだし。
 華菜が助けに来てくれるって信じてたし」

「……え?」
そんなつもりはない。
私は、何もしていないし、
まだ何も始めていなかった。

「夜、寝ようと思って部屋の明かりを
 消したらさ、なんかにスーッと引き寄せられて。
 何何、何これ!?……って思ってる間に
 ここに来てたんだよね」
ああ、綾も私とほとんど同じなんだな。

「パジャマ姿で出歩く訳にはいかないから、
 千秋さんの学生時代の制服を借りてるんだけど。
 これ、似合ってる?」

「うん、似合う。でも、なんで制服?」
私服を借りればいいのに、一体なぜ。

「ここには必要最低限の物しか無いらしいよ。
 だから、千秋さんが今着てる制服以外だと
 これが一番いい服なんだとか」
綾がなんだかおかしなことを言っているけど、
どういうことだろう。

「ていうか、なんか事情があって
 今この世界で生きてるのは、
 私と、今日来た華菜以外には4人しかいないらしいよ」
「……はぁ?」
世界に4人?
いったい何の話をしているのだ。

「さっき出会った千秋さんでしょ、
 そのお姉さんの千春さんでしょ、
 それから私を助けてくれた空山さん」

「あと、会ったこと無いけど
 柊さんって人がいるとか。……そんだけ」
私は、柊さんとは会ったことがあることになるのかな。
もし、柊先生がそうなのなら、
千春さんとも……?

「建物の中にはホントに誰もいないし、
 外は海なんだって。見てないから実感無いけど」
「……海…?」
そういえば、千秋さんは“海底自衛隊”とかなんとか
言ってたけど、そんな自衛隊、無いよね?
自衛隊の制服も、あんなのじゃないし。

「実感がないから、私も適当なことを
 喋っちゃわないか心配なんだけど……
 地表の汚染が酷すぎて、
 地上に住めなくなった人間達は……
 海底に逃げたんだってさ」

「宇宙じゃなくて?」


「無理無理。人間は宇宙に住めません。
 夢見てただけでした。……ってのが
 この世界の人たちの結論らしいよ」
「ええっと、それって……」

もしかして、タイムトリップってやつ?
しょっちゅう映画のネタになってる。
つまりここは、未来?

「それで、ここは未来世界なのかなーって
 思ったんだけど、聞いて驚け!
 なんと、今は西暦2020年らしいのだ」
綾が自信満々の表情で言った。
「……未来、だよね?」
「未来には違いない。でも考えてみなよ?
 私たちの知ってる科学技術で……
 あと数年待てば、
 人間が海底に住めるようになると思うかね?」

無理だ……。
たぶん、無理だ……。

「しかし、この世界ではつい3年前までは
 50億人もの人が暮らしていたという。
 今は4人と保護された子供2人しかいないけどね」
「あれ、少なくない……?」
世界人口って、確か……。

「少ないよ! 4人って私の家族より人数少ないよ!」
「いや、そうじゃなくて……全人口が」
「うぇ? 50億人って、多いでしょ?」
「いやいやいや。地球には70億人の人が住んでるんだよ」
綾はきょとんとしている。
……これだから体育会系は。

「70億!? そんなに!?」
「中学の社会で習うよ!!
 高校生の発言じゃないからね今の!」
「授業なんか、真面目に受けてる人の方が少ないって」
たははと笑う綾。
……笑い事じゃないんだけど…。

「とにかく。私たちのいた“時代”と一緒に
 考えると、なんだか色んな計算がズレて
 ここが“未来”だとは思えないのです。
 こういう“世界”のことを、私たちはこう呼びます」
「パラレルワールド?」

「締めの台詞取らないでよ!
 カッコつけてたのに!!」
綾は残念そうにしてるけど、
全然カッコついてなかったよ?

「ま、言ってる私も
 実感がぜーんぜん無いんだけどね。
 そういうことらしいよ」

……家族と離ればなれになって
半月も経った人の発言とは思えない……。
明るすぎる……。

「あの、おばさん……心配してたよ?」
綾があまりにも明るい表情をするので、
つい言ってしまった。

すると、彼女は少しだけ暗い顔をした後、

すぐに元の笑顔に戻った。

「だぁいじょぶだって!
 死んだわけじゃなし。
 華菜がいたら、私も帰れるらしいし。
 娘がちょっとだけ家出したー、
 くらいに思って貰うつもり。
 失踪よりマシでしょ」

なにか、様子がおかしい気がする。

「ま、とにかく
 私たちは今、並行世界の海の下という
 とんでもない場所にいる訳なのです。
 滅多に出来ない経験だし、楽しもう!」

楽しんでる場合じゃ無いと思うけど……。

「そ、そうだね」
私は、同意するしかなかった。

「そうそう!
 どうせ巻き込まれるなら、楽しまなきゃ損損!」
綾は明るい笑顔で、何かを隠そうとしていると直感した。
それが何なのか、分からないけれど――。

でも綾は、時が来たら教えてくれるだろう。
綾は……そういう人だ。



その日は、綾と手を繋いで眠った。
まるで子供のようだけど、お互いよく眠れたと思う。

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