白き時を越えて

蒼(あお)

文字の大きさ
12 / 179
第2章:再会

しおりを挟む
星川さんは話し始めた。
少し、目を逸らしながら。
「あ、そ、そうなの。
 えぇと……うん。
 綾ちゃんの言ってることは正しいよ。
 時の歪んだ存在は、
 ぶれない存在によって安定する。
 ぶれない存在がいなかったら、
 また時にさらわれてしまう」

「さらわれ……る?」
私は呟いた。
まだ、涙は止まらないけれども。

「うん、さらわれる。
 綾ちゃん達の暮らしてる世界では
 今、神隠し事件で大騒ぎになってるよね?
 それはね、時が人をさらっているから。
 私たちのチームは、
 時にさらわれた人が時に飲まれる前に
 その人の元の世界とか、
 時代に戻す仕事をしてるんだけど……。
 ま、詳しい話は後かなぁ」
星川さんの言うことは、
嘘のよう話で信じたくはなかった。
しかし、学校で聞いたときと違い……
真実を聞かされている気がした。

話を聞いていると身体の奥が熱い。
そう、相手の言葉から
現実味のようなものを感じるのだ。

私も、被害に遭ったからだろうか?

「私たちって運が良いんだよ。
 一斉にさらわれる人を助けるのは、難しいんだって。
 私はたまたま、ひとりの時だったから
 レーダーに反応して、空山さんに助けてもらったの」
綾が微笑む。

「ソラヤマさん?」
「うん、イケメン!!」
そういう事を聞いたつもりはないのだが、
即答するあたりが綾らしくて、懐かしい。

「華菜もひとりだったから、助かったんでしょう?」

……そういえば、あの時、
家には誰もいなかったなぁ。
うちは親が共働きで、
両親が帰ってくるのが遅い日もある。
あの時もそうだった。

「あ、華菜ちゃんは……ちょっと違うんだなー」
そこで、星川さんが話に入り込んできた。
「え、違うんですか?」
「違うんですよ~。
 その辺、ややこしいから
 柊くんと姉さんが帰ってきたら……と
 思ってるんだけど」

「要点だけ言うと、華菜ちゃんが助かったのは
 柊くんのおかげかな?
 時にさらわれそうな人がいる、っていう
 匿名の通報があったんだけどね、
 そんなことをあの時間軸からするのは
 柊くんしかいないんだなー。
 匿名の意味が無いっていうか。
 まぁきっと、本人も分かっててやってるんだろね。
 男って時々、変なことするよねえ」

やっぱり、よく分からない話だ。

「あの」
私は、一番気になることを聞いてみることにした。

「貴女は、星川 千春さんですよね?
 クラスメートの」
そう言うと、星川さんは少し困った顔をした後、笑った。

「ぶっぶー、違いまーす。
 星川 千春は私の姉で、自衛官です。
 私の名前は星川 千秋、
 千春より3つ下の妹ですぅ」
物の言い方が、似ている気もする。
しかし言い回しが違う。

「確かに、中井 綾さんと同じクラス、
 そして歳は17歳の星川 千春という人も
 どこかの世界には存在しているはずだけど
 今、どこにいるかは分からないんだなー。
 あの馬鹿姉が、時にさらわれたから~」
段々、星川さんの笑顔がひきつってきた。
……怒っているようだ。

「やっぱり柊くんが、匿名で姉さんの位置情報を
 教えてくれたんだけど
 その時、動ける人がいなかったんだなー。
 それを悟ってくれたのか、
 柊くんが回収してくれたみたい」

あ、それって……。

「柊! おっそい!! この馬鹿!」
「……誰だ、お前は」
「あんたの捜し人だっちゅーに!!
 わからない!? ほんっとーに分からない!?」

もしかして、あの会話と何か関係があるのかな。


「だから、きっと姉さんと柊くんは
 同時に帰ってくると思うのよ。
 姉さんはひとりじゃ飛べないし、
 華菜ちゃんもここにいることだし、ね」
「私……ですか」
私と柊先生って、
ほとんど何も話したことがないけれど
何か関係があるのかな。

「まぁ、その話は私がすることじゃないから。
 とにかく、私は千秋。
 親しく呼んでくれていいよ~」
星川さんがにっこりしている。

「え、でも……なんだか
 年上に見えてきた、ような……」
学校で会った星川(千春)さんは
子供っぽく見えたけど、
こっちの星川さんは落ち着きがあって、
お姉さんっぽいような気がする。

「老けてるー!?
 やっぱり私、老けてますかー!?
 綾ちゃんも、姉さんは千春さんって呼ぶのに
 私のことは星川さんって呼ぶんだよねー。
 やっぱり老けてるんだー。
 私なんかオバサンだわぁぁぁ」
星川さんが、泣きながら部屋の隅にしゃがみこんで
床にのの字を描いている。

「ああっ、そういうのじゃなくて
 単に区別の問題っていうか……!」

「って、そんなに気にしてたんですか!?
 だったら今から、千秋さんって呼びます私!」
綾が星川(千秋)さんに駆け寄った。
「ちあちゃんでもいいよ~」
「……いえ、千秋さんで」
綾が困っている。
……そう、綾のこういうところに惹かれたんだ。
綾はきっちりしていて、頼りになる。
一緒にいると、安心する。

……私も、千春さん、千秋さんと
呼び分けた方がいいかな。


状況は全く飲み込めないけれど
心はなんだか落ち着いてきた。
きっと、綾と千秋さんのお陰だ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

処理中です...