白き時を越えて

蒼(あお)

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第2章:ひとつの未来

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「柊が姿を消したのは、全てが分かった
 1ヶ月後だった。
 折角おさまってた無茶する癖も、
 自棄を起こして再発してたし、
 死んだんじゃないかと思ってた時期もあった」
千春さんが続ける。

「でも突然、匿名の通報が入った。
 失踪の前兆を知らせる文面と
 それが起こる位置。世界。年代」

「それが柊のやったことだと、
 私らはすぐに分かった」

「……死んだ華菜ちゃんのいた世界と
 限りなく似た並行世界からだったから。
 そりゃー、そうだろうなと予想するぜ」
空山さんは天井を見ている。

「俺たちは仮説を立てた。
 柊は、その世界に留まっているんじゃないかと。
 そこから、通報してきたのではないかと。
 その仮説が正しいと確信するのに
 時間は掛からなかったぜ」

「……同じ世界、年代の失踪者の事ばかり
 匿名で通報されてくるんだもの。
 気づかない方がおかしいわよ」
千秋さんがため息をつく。

「全く、水くさい。
 もちろん、自分が一遍戻ってる間に
 並行世界が増えて、同じ悲劇が繰り返される
 可能性を考えての行動とは分かってるけど
 別に匿名じゃなくてもいいじゃん、って
 みんな思ってた」
千春さんも少し怒っている。

「……すまん」
心配していた仲間達への謝罪は、一言だった。

「いや、いいんだけどさ。
 それで、こういう道を選ぶことにしたんだし」
空山さんが、暗い表情をやめる。

「同時期に、この国の大統領が変わった。
 政策は一変。
 他国も日本の大胆な主張に賛同。
 それで、さっき言ってた
 人類総移住計画が始まるわけでね」
千春さんが言い、

「自分が犠牲になるのが嫌で、
 役目を押しつけあってる
 現状を見て、思いついたんだ。
 そうだ、この貧乏くじを引いて
 柊くんを全面バックアップするなんて
 どうだろう……?
 それって凄く夢のある生き方じゃない?
 ……ってね」
千秋さんが締めた。


「何故、連絡のひとつも
 寄越さない俺にそこまで……」
柊さんが言いかけると、空山さんが柊さんにまた近寄る。

「羨ましかったんだよ、お前が。
 その気になったら、役目に縛られず
 特定の誰かを守ろうとする自由なお前が。
 だから真似してみるのも面白いんじゃないかなって、
 そしたら俺たちも変われるのかな、って思ったんだ」

「…………」
理解できなかったのだろう。
柊さんは、ただ、空山さんを見つめていた。

「ま、お前のそれが恋かどうかは
 置いておくにしてもだな、
 俺たちもお前のように……
 何かに熱心になってみたかったんだよ。
 誰かに執着してみたかった。
 そういうことで、納得しろ」

……あれ?
今、空山さん……変なこと言わなかった?

「わかったか!?」
「あ、ああ……」
空山さんの勢いに押されて、
柊さんは返事をした。

「そうなると、注目すべき点は
 綾ちゃんの失踪と、
 それを捜し彷徨う華菜ちゃんの失踪になるの」
千秋さんが言う。

「だから、年頃の女の子に
 申し訳ないことしてるなー、とは思いつつも……
 ずっと見てた。アンタらふたりを」
千春さんが頭を下げる。

「でも、私たちが死なないように
 特別に注意を払ってくれてたってことですよね?」
綾が明るい声で言った。

「そう……なるよ。うん。
 好意的に取ってくれて助かる」
されていたことに怒らず、
そのまま受け入れる綾に、
千春さんは少し驚いたようだ。

私も驚いている。
ずっと見られていたなんて、
なんだか受け入れがたい。

「特定の人物の監視なんて
 よほどの有名人でもない限り
 勿論、厳罰もんだけど……
 柊の件で調べまくってた俺たちが
 今更怖くなるはずもないし、
 見捨てる人間のことなんか
 相手もどうでも良かったらしくて、
 この3年は自由にやれたよな?」
空山さんが言うと、他のふたりは頷いた。

「それで……一応、
 綾ちゃんの失踪は、こんな形に
 なっちゃったけど食い止められたし、
 華菜ちゃんも死なせずに受け止められたから
 とりあえず一安心かな、って話なの」
千秋さんが言った。

「……で。
 まぁ、ノープランもええとこというか
 そこまでしか考えてなかったといえば
 それまでなんだけども……
 このままふたりを元の時代に帰したら
 どうなるか分からなくて。
 どうしようかー、って悩んでるところなんだ」
千春さんが、はぁ~と大きなため息をつく。

「いい歳して何やってんだよ、って俺も
 思うんだけど、
 ほんと、助けるところまでしか考えて無くて……
 タイムリミットの1年後までには
 どうにかなるよう答えを出すから
 それまでちょっと待っててくれると
 嬉しいな、って話。
 巻き込んだだけなのに、申し訳ないけど」
空山さんもため息をついている。

「嫌だ、帰りたいって言われたらそれまで。
 素直に、元の時代に貴女達を帰すわ。
 私たちの都合でやったことなのだから。
 でも、私たちは貴女達を助けたかった。
 必死だった。それだけは本当なのよ」
千秋さんが言った。

仲間の計画に知らずに巻き込まれていた
柊さんは、ある意味では
私たちと同じくらい混乱しているらしく
一言も話さなかった。


私、これからどうすればいいのかな……。
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