白き時を越えて

蒼(あお)

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第3章雑談:千秋

人さらいのこと

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「私たちが最初に出会ったとき、
 言ってましたよね?

 “私が人さらいだったらどうするの”って」

「ああ~、言いましたねぇ」

「人さらいって、結局なんなんですか?」

「そのまんまの意味だよ。
 意図的に、特定の人物を
 その世界から連れ去る。
 これを人さらいと呼ばないなら
 何をそう呼ぶのかな?」

「う、うーん」

「ただねぇ、“存在”っていうのは
 人が思ってるほど
 曖昧じゃなかったみたいだよ」

「……え?」

「親を消せば、子供も消える……
 そう、思うでしょう?」

「はい」

「消えない人もいるんだな、これが。
 消えちゃう人と消えない人の違いは、
 まだわからないけど。

 だから、歴史を変えるっていうのは
 そんな簡単な事じゃないんだよ」

「そうなんですか……」

「あと、人さらいといえばもうひとつ。
 気になることがあるんですよねぇ」

「あぁ……私と綾が、
 なんだかおかしいって話ですよね?」

「それは勿論そうなんだけど、
 あの後、もう一度よーく調べてみたら
 姉さんもさらわれたっぽいんですね。

 これは何を意味するんでしょう?」

「うーん、難しいですね」

千秋さん、敬語になってる……。
本当は……気づいてるんじゃないかな。
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