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本編(聖の旅編)
第二話 ひとり…
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聖はその日・・・・・・シヴァは波人と会った日に、
神界七大神は今どうなっているのかを聞かされた。
七大神の現状は・・・・・・聖が思っていた以上に悲惨なものだった。
神界七大神は千年前、リーダーである結城 聖夜の死をはじめとして
次々と"魔王"に殺されたり、封印されたりしたという。
"魔王"は神界の辺地、魔界の長であり多重人格者であることしかわかっておらず、
殆どは謎に包まれた人物らしい。
そもそも"封印"とはかなり高度な魔法の使い手しか施すことができず、
それを解くにはさらに高度な技術が必要だそうで、
神界七大神でも封印を"解く"ことが出来るのは結城 聖夜だけだったらしい。
他の七大神はせいぜい、自分で封印を施したり
自分で施した封印を解く程度が限界だったとか。
神界七大神の"生き残り"つまり今動ける者は・・・・
なんとシヴァと波人のふたりだけだった・・・・。
しかも波人は左腕を自由に動かすことが出来ないらしい。
最初会ったときから何となく違和感はあったが、
まさか動かないとは・・・・・・・。
しかし聖光刃の神力を持ってすれば、
封印されている七大神を復活させることは可能かもしれないと
シヴァは言っていた。
そこで聖達は、魔王討伐の前に
封印されている七大神だけでも復活させるべく、
旅に出ることを決めたのであった・・・・。
火山の火口近く、炎の神殿・・・・・・・・。
そこには神界七大神の"灯火"、神無 焼刃が眠っているという。
神無 焼刃には妻がいて、その妻はまだ生きているらしい。
シヴァや波人も時々彼女を訪れたりしていたらしいので、
聖も会ってみることにした。
炎の神殿近くの大きな館。ここに焼刃の妻、すばるが今も住んでいるらしい。
聖はドアを叩いた。
「・・・・・・・・・・・はい?」
しばらくしてから、少し低めの女性の声がした。
「・・・・霜月 聖です。神無 焼刃さ・・・・・。」
聖が説明しかけるとシヴァがずいっと前に出てきて、しゃべり出した。
「・・・・・シヴァだ。開けてくれるか?」
「・・・・・・シヴァ?」
すばるはドアを開けてくれた。
彼女は・・・・・紫色の髪をしていて、どこか寂しそうな瞳をしている女性だった。
「あなたがすばるさん・・・・?」
聖が聞くと、すばるは逆に聞き返してきた。
「貴方は?」
「俺は霜月 聖です。一昨夜、結城 聖夜の聖光刃を継ぎました。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・聖・・・?」
すばるは一層寂しそうな瞳になった。
「なぜでしょう・・・・・・・ひどく・・・・・なつかしい気がします。」
「・・・・・・?」
聖には意味がわからなかった。
「きっと金髪青目のせいでしょうね・・・・・・。」
どうやら、結城 聖夜のことらしい。
「けど性格は似ても似つかんで。」
波人が付け足した。
三人は応接間のような部屋に通された。
シヴァが頼むと、すばるは焼刃の話をしてくれた。
「彼は・・・・・・・馬鹿な男だったから・・・・・・。」
「?」
「魔王に襲撃を受けたとき、あの人は真っ先に私を護ってくれた・・・・・。
そして私だけを逃がした。
嫌がる私を突き飛ばしてまで、私を説得しようとした・・・・。
本当は暴力とかはあまり好かない潔い男だったのにね・・・。」
すばるは、まるで昨日のことのように話す。
「今でもはっきり覚えてるの。あの人が私を館から逃がした後、
扉を閉めるときに・・・・・・・・。」
すばるは言葉を途切れさせた。しばらく間をおいてから、聖は聞いた。
「どうだったんですか?」
「にっこり笑ってくれたわ・・・・私の為に。でも悲しそうだった・・・・・・。」
「・・・・・・・・・。」
すばるはいろいろ話してくれた。
・ ・・・・・・魔王の襲撃の時、館が燃えてしまったこと。
おそらくふたりは館が崩れる前にうまく抜け出して、
闘いの続きを炎の神殿で行ったということ・・・。
そのあとすばるが全く同じつくりの館を建て直したこと。
神無 焼刃が封印された後、
すばるはずっとひとりで炎の神殿を守ってきたらしい・・・・・。
聖は聞きたいことがまだまだあった。
しかしこれ以上聞くとすばるが
今よりもっと辛い気持ちになってしまうような気がしたので、
続きは聞かなかった。
そして三人は館を出る。
『焼刃の封印を解きに行きます。』
と言い残して。
すばるもついて行きたいと言ったが、
"封印を解くときに何があるかわからないので駄目だ"と
シヴァが説得した。
火口付近・・・・・・・。
「暑・・・・・・・・・・・・。」
聖はあまりの暑さに思わず顔を覆った。
「聖光刃持ってへんかったら、暑いどころじゃ済まへんで。」
波人が言った。
「え・・・・・?」
「聖光刃をはじめとする神界七大神の武器・神器は
並はずれた神力を具現化したもの・・・・・・。
それによって武器からは常に持ち主を護る力が働いている。」
聖の疑問を、シヴァが説明。
「・・・・・・・・とにかく凄いんだな・・・・聖光刃・・・イヤ神器は・・・。」
「あたりまえだ。神器はこの世界の創造主である三大神が、
わざわざ俺達のために造ってくださったものなのだからな。」
「そうか・・・・・・。」
歩いていると、廃墟・・・・・・今は廃墟となってしまった炎の神殿があった。
入り口までくると聖は、そこに大きな模様が描いてあることに気づく。
「これは・・・?」
聖が聞くと波人が答えた。
「"魔法陣"・・・・・・。この魔法陣の上は七大神が
おのおのの最大の力を発揮できる空間で、
しかも"神域"とつながってる神界でたった六つしかないワープ地点や。」
「"神域"・・・・・・三大神がいるところだな?」
「そや。・・・・・・まあ今は封鎖されてるけどな。
七大神はガタガタやし、もしも魔王やそれに近しい者が
神域に入り込んでしもたら大変やから。」
「・・・・・・・・・・・・。」
・ ・・・・・・・・・・・・神無 焼刃は・・・・この魔法陣の上で闘っても、
魔王に勝てなかったのだろうか?
それだけ魔王が強かったということなのか。
考えただけでも背筋がゾッとする。
「・・・・・・・・・・・・焼刃がいない・・・・・・・・。」
ぽつりとシヴァが言った。
「え?んなアホな・・・・・。」
波人はそう言いながら焼刃を捜すが、やはり見つからないようだ。
「・・・・・・・・・ハメられたな。」
シヴァは舌打ちした。
「犯人は・・・・・・状況から言って魔王か魔王の手下はんか?」
波人が少し軽そうに言う。
「・・・・・・・・やばくねぇ?」
聖が言うと波人はあっさり返した。
「マジヤバ・・・・・・・。」
「・・・・神無・・・・・焼刃は、どこにいたんですか?」
聖が聞いた。
「・・・・あそこだ。」
シヴァは神殿の奥の、突き当たりの壁のあたりを指さした。
「あそこに・・・・・焼刃は"硝子の棺桶"に捕らわれて眠っていた。」
聖はシヴァの指の方向をまっすぐに見た。
「硝子の棺桶・・・?」
「魔王が使った封印の一種だ。」
聖は顎に手をやった。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
目は、神殿の奥を見据えたまま。
「・・・・・・・・もしかしたら・・・!」
聖は突然走り出した。
「・・・・聖?!」
奥に着くと、聖は剣を出す。
「・・・・・・・・これでどうだ!?」
聖はそう言うと、勢いよく剣を床に突き刺した。
すると彼のまわりの床から光が吹き出すように放たれたので、彼は飛び退いた。
「・・・・・・・・・・!」
光はやがて四角い形・・・・・・直方体になる。
光が消えるとそこには、神無 焼刃が眠っている"硝子の棺桶"があった。
「・・・・・・・・焼刃・・・・・・。」
シヴァがぽつりと言った。
「なんでわかったんや?」
波人は不思議そうに聖に聞いた。
「・・・・・棺桶が無いのは、他の場所に行ったんじゃなくて
実は見えないだけなんじゃないかと思って・・・・・。
神器も持たぬ者がこんなところで長居したがるとは思えないな・・・・・・・
みたいな・・・・・。」
聖は自信なさげに答えた。
「つまり二重に封印してあるのではないか・・・・・そう考えたんだな?」
シヴァが重ねて聞いた。
「・・・・・・そんな大げさなことじゃないけど・・・・・まぁ・・・・。」
聖は再び剣を構えた。・・・・・焼刃の封印を解くために。
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
聖は大きく息を吸って、剣を高く上げる。
彼が剣を振り下ろすと、"硝子の棺桶"は煙のようになって消えた。
中にいた神無 焼刃はまだ静かに眠っていた。
「・・・・・・・・・・・・この人が・・・・神無 焼刃・・・・・・。」
聖が焼刃を担ごうとしてしゃがむとシヴァがやってきた。
彼はひょいと焼刃を持ち上げて軽そうに肩に担いだ。
聖が見とれているとシヴァは言った。
「行くぞ。」
「あ・・・・・・・ああ。」
そうだ・・・・焼刃を助けたのだから、はやくすばるに会いに行ってあげなければ。
三人は炎の神殿から出ようと思ったが立ち止まった。
・ ・・・・・・入り口のあたりに、誰かいる・・・・・・・・!
「・・・・・・・・・・客のようだ。」
シヴァが言った。
「・・・あっれ~?あんな奴呼んでへんで?」
波人はそう言いながら、鎖鎌をだした。
「・・・・・招かざる客ってことで。」
波人は鎖鎌を口に銜えると、反対側についている分銅をくるくると回しだした。
勢いがついてきたところで分銅を投げる。
入り口付近にいる"誰か"をめがけて。
"誰か"はそれを素早くかわした。
「・・・・・・・・・敵・・・・なのか?」
聖はシヴァに聞いた。
「・・・・・おそらくな。」
ふたりは剣を出した。
波人は分銅を引き戻す。それと殆ど同時に、"誰か"はこちらに向かって走り出した。
「・・・・・・・・・・散れっ!」
シヴァが言うと三人は全く別の方向へ走っていった。
"誰か"は聖を狙い剣で攻撃を仕掛けてくる。
「わっ!」
聖はなんとか攻撃を受け止める。
「お前が結城 聖夜の代わりか・・・・・思ったより弱そうだな。」
「・・・・・なんだよお前!」
相手が魔族であることだけはわかった。・・・長い耳を持っているから。
「その聖光刃を持つものを殺せと、そう命じられた者だ。
名は・・・・フィアル。フィアル=クレヴァース。一応・・・魔王の又従兄弟だ。」
「魔王の又従兄弟!?」
聖は思わず叫んでしまった。
魔王の又従兄弟・・・・・・。聖にとって、それは強すぎる相手であった。
フィアルはいったん退くと、スッと聖の前に手をかざした。
「!?」
聖は奴が何をしているのかわからなかった。
・ ・・・・・・フィアルの手のあたりでパシパシと音が鳴り始める。
それは次第に大きくなり、時折奴の手から火花が散った。
「・・・・・・喰らえ。」
フィアルがそう言うと突然、奴の手の前に光の球ができた。
「・・・・・・・・!」
聖はたちすくんでいた。それに気づいた波人は聖の腕に鎖を巻き付け、引く。
その瞬間に、光の球は放たれた。
それは聖のいたところに直撃、そして球ははじけ飛ぶ。
「・・・・・・・・・・・・。」
聖の頬を冷や汗がしたたり落ちる。
・ ・・・・・・・・・・・・波人に助けられなければ・・・・・
自分があれをもろに受けるところだった・・・・・・!
「大丈夫か?」
波人は聖の肩に手を乗せて言った。
「・・・・・・・・・・・俺・・・・・やばかったよな・・・・・・?」
聖は小刻みに震えながら言う。
「・・・・・き・・・・気にすんな。殆ど初戦やないか。
喰らわんで良かった~くらいに思とき。」
「でも・・・・・・あいつ倒さないと俺ら殺されるんだろ・・・・?」
聖が言うと、波人は明るくこう返した。
「安心しぃや。わしら七大神は百戦錬磨、特に聖夜とシヴァはメチャクチャ強かった。
そのシヴァがここにおるんやさかい、大丈夫やて。」
「・・・・・・・・・・・・・・。」
波人の言葉が、聖にはなぜか気休めに思えた。
フィアルは続けて光の球を撃ってきた。
波人とともに技をかわすうちに、球の正体は電撃であることに気づく。
「あれ・・・・・電撃やったんか・・・・・。」
波人は都合悪そうに言うと、聖に作戦変更を持ちかけた。
「・・・・・・・・・・・・聖、作戦変更な?」
「え?」
「わしが闘うから、お前はわしが合図するまでシヴァと一緒におるんや。」
聖は不思議そうな顔をした。
「・・・・・・・・・けど波人、属性"水"だってこの前言ってなかったか・・・・?
余計不利なんじゃ・・・・・・・?」
「あいつごとき、属性の有利不利なんて関係あらへんわ!
とにかくわしが合図したらフィアル封印せえ。ええな?」
そう言うと波人は、フィアルに向かって走っていってしまった。
「波人・・・・・・・。」
聖には波人が自分に何かを隠しているように思えた。
仮にも相手は魔王の又従兄弟だ、
どんな馬鹿でも属性の有利不利を気にしない訳がない。
しかしこの時点の聖に波人の行動の真意を知ることができるわけがなく、
今は彼の指示に従うしかなかった。
シヴァの方に寄ってから聖はあることに気づいた。
・ ・・・・・・・・・・・・俺・・・・・封印の仕方・・・・・知らないじゃんか・・・・・・・・。
そういえばこの間、シヴァが"ホウマ"とかなんとか言っていた気がするが・・・・・。
確信は無い。
「あの・・・・シヴァ・・・。」
時間が惜しい。早く封印の仕方を教えてもらわなければ。
「なんだ?」
「・・・・・・相手を封印するときって・・・・・どうすればいいんだ?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・知らないのか。」
シヴァは横を向いてため息をつく。
「・・・・・・・たったひとこと・・・・"封魔"と唱えればいい。
ただし、迷いも怯えも焦りも消し・・・・・
相手よりも強い"気"を持って唱えなければならない。
つまり、心が相手に勝っていないと、
呪文はなんの効力もないただの言葉になってしまうというわけだ。」
「・・・・・・・・心で相手に勝る・・・・・。」
聖は自分に言い聞かせるように呟く。
シヴァは聖の聖光刃を握る汗ばんだ手を掴んで言った。
「本来封印は高等魔法・・・・・・・お前のような未熟な者には使えない。
お前の神力はその聖光刃によって大きく引き上げられている・・・・・。
ひっくり返して言えば無理に高等魔法を使えるようにしているだけだ・・・・・。
お前がよほど強い意志を持って封印を行わない限り、
相手を封じることは不可能だ・・・・・。特に、今回のような相手はな。」
「わかった・・・・・・。」
聖は目をつぶって答えた。
波人は光の球を避けながら、徐々にフィアルに近づいていった。
「お前は・・・・・・七大神の"泉"、津 波人だったな・・・。水使いがなんの用だ?」
フィアルは波人を馬鹿にしたような口調で言って、また光の球を出した。
「・・・・・・・こんな用や!」
波人は一瞬にして空気中の水蒸気を水に変え、フィアルに浴びせた。
「!」
フィアルは自分の電撃で感電する。
「ざまぁみろっ!」
波人が聖に合図しかかると、フィアルは彼を蹴飛ばした。
「うわあっ!」
波人は床に落ちた。
「・・・・・・・・このクソ暑い火口であれだけの水を集めたことは驚嘆に値する・・・・・・・
だがな。」
フィアルは手を上にあげた。
「・・・・あいにく俺は自分の電撃を受けて倒れるほど、ヤワではない。」
今度の光の球は今までのものとは違い、大きかった。
「・・・・・・・・・・・!!」
「終わりだ。」
フィアルがそれを放ったとき、波人の前に焼刃を担いだままのシヴァが現れ、
光の球をはじき飛ばした。
「シヴァ・・・・・!」
波人は驚いた顔をする。
フィアルは舌打ちしてもう一発撃とうとするが、聖がそれを邪魔した。
「・・・・貴様っ!」
フィアルはうっとうしそうに聖を蹴飛ばそうとするが、聖はそれを軽くかわした。
「何!?」
聖は得意げに言った。
「・・・・俺は剣術からきしだけど、喧嘩は強いんだな~。」
蹴りを避けることなど造作もない・・・・・というわけだ。
「ならば剣術と魔法で攻めてやる!」
フィアルは少し起こり気味に言った。
「・・・・・・・・・・げ。」
フィアルは剣を出すと、鋭い太刀でどんどん攻めてきた。
聖は全てをかわしきれずに、少しずつ身体に傷が増えていく。
「ちっ・・・・・まだまだだな・・・・。」
シヴァは焼刃を波人の近くにそっと寝かせて、聖を助けに行こうとした。
「待てシヴァ!」
「・・・なんだ?」
「"なんだ?"やないわ!お前は行ったらアカン!!」
波人は怒鳴るように言った。
「・・・・・・・・仕方がないだろう。」
「・・・・・・・アカン・・・・・お前の場合は命に関わる・・・・・・・・絶対にアカン!!」
「それは水使いのお前にも言えることだ。
今はそんなことを言っている場合ではない。」
お互い聖の様子を気にしながら、しかし真剣に言い合いをしていた。
聖はフィアルの力強い一撃で後方に飛ばされる。
フィアルは、背中から地に落ちてしまった聖に起きあがる遑も与えず斬りつけた。
「・・・・・・・・・・・うわぁっ!」
聖は咄嗟に剣を自分の前に出し、フィアルの太刀を受け止める。
腕はじぃんと痺れたがその瞬間何かを掴んだ気がした。
「・・・・・・・・・・・・・!」
フィアルがほんの少し驚いたその隙に、聖はフィアルを押し返す。
「なっ!?」
聖は立ち上がった。
「いける・・・・・・いけるぞ・・・!」
聖の表情は、緊張と恐怖でこわばった顔から希望の笑みに変わっていく。
「・・・・・一体何をしたんだ?」
フィアルは初めて、聖に"問うた"。
「・・・・・わかっただけさ・・・・あんたの"隙"が!」
「・・・・・・・・まさか。そんなことがあるはずが無い。」
フィアルは少し焦りを見せていた。
「・・・・・・試してみるか?」
聖はそう言って、聖光刃を前方はるか遠くに投げ捨てた。
「・・・・・・・・・・・・・!!?」
これにはフィアルだけではなくシヴァや波人も驚いた。
「隙アリーーーっ!」
聖は弾んだ声で叫んで、フィアルの懐に入り込んだ。
「!!」
聖はフィアルの手を・・・・・剣を持つ右手を膝で蹴った。
突然の衝撃にフィアルは剣を手放してしまう。
「やりぃっ!」
そう言いながら聖は剣をはじき飛ばしたその膝を伸ばして、
そのままフィアルの顔まで蹴った。
「くっ!」
フィアルは後ろに跳んで、体勢を整える。
聖はすぐにフィアルの正面に出て、今度は殴り飛ばした。
「・・・・・・・・っ!!」
「どーぉだ思い知ったかっ!」
聖のそのひとことに、ムッとするフィアル。
「・・・・・・・・何をっ!」
聖はさらにフィアルを殴る。フィアルの方はだんだん慣れてきたらしく、
とうとう聖の鉄拳を受け止めた。
「・・・・・・ありゃ?」
「・・・・戦闘中に新しいことを学ぶのはなにもお前だけではない。」
フィアルはにやりとした。
「なーんちゃって。」
「!?」
聖はフィアルの腹を、膝で蹴った。フィアルは少しふらつく。
「それが隙なんだよっ!」
フィアルが聖の方を向こうとしたとき、首元に聖光刃の刃があった。
「・・・・・・・・・・・・・・・・なっ・・・・。」
「わざわざ殴り飛ばしたのは、コレ取るためね。」
前方に投げたのは、武器を"捨てた"のではなく"置いた"のだった・・・・。
喧嘩するときに剣は邪魔だから。
一度しまっても良かったのだろうが、
投げる方がより相手に隙を作りやすいと考えたのだろう。
「・・・・・・・・・・・・・・。」
「ゲェムセット。」
ここまで攻めれば勝ったも同然・・・・・・そう思った聖はフィアルを封印しようと思った。
「・・・・・・・・・・・・封・・・・・!」
しかしその時、フィアルはあの光の球で聖を吹っ飛ばした。
「・・・・・・あっ・・・・・・!!」
聖は防御の姿勢をとることもできずに技を受け、そのまま宙に放りだされた。
「・・・・・・・・・・・・・・聖!」
シヴァは走って、聖が地に落ちる前に受け止めてやった。
フィアルは満足そうな顔をする。
「・・・・・・・馬鹿が・・・・・俺は"剣術と魔法で"攻めてやると言っただろう?」
シヴァはフィアルを睨みつけた。そして聖に言った。
「・・・・・・大丈夫か?」
「あー・・・・痺れたー・・・・。」
「油断するからだ。」
「くっそー・・・ええとこやったのに・・・。惜しすぎるわ聖!」
焼刃と一緒にいる波人が言った。
「けど・・・こういう状況になったんやから、わしが出るしかないなぁ・・・・・・!!」
波人は立ち上がる。
「波人・・・・!」
シヴァが言った。
「・・・・・・リベンジすんでぇ!」
波人は鎖鎌の分銅を回しながら言った。
「・・・・・・やめておけ・・・・・・片腕だけで奴に太刀打ちできると思っているのか?」
「あーっ、差別用語禁止!!」
「・・・・・・・・・。」
シヴァと波人が言い合っているとフィアルが光の球を出しながら叫んだ。
「・・・・・・・・・来ないのなら、こちらから行くぞ!」
シヴァは舌打ちしてから、剣を出した。
「アカンて!!」
波人はひたすら止める。
「うるさいっ!」
シヴァが怒鳴ると、パンパンと手を叩く音がした。
「・・・・・・・・?」
音がしたほうを見ると、焼刃が立っていた。
「はーいそこ、揉めない!」
明るい声で焼刃は言った。
「・・・・・・焼刃・・・・・・・!」
シヴァと波人は同時に言った。
「・・・・・・・・神無・・・・・焼刃か・・・。」
フィアルも呟いた。
「いつから起きてたんや?」
波人が聞くと焼刃は頬を掻きながら答えた。
「・・・・さっき・・・・波人の"リベンジすんでぇ"あたりからしか聞いてないよ。」
「そか・・・・・。」
「とにかく、その会話だけで俺の出番だって事だけは充分わかったから!
あいつ倒せばいいんだね?」
「!」
シヴァと波人は焼刃の顔を見た。
「・・・・・・魔王の又従兄弟・・・・らしい。」
シヴァがポツリと言う。
「・・・・・・・・・・そうか・・・・・。
でもここは炎の神殿、俺のテリトリーだから何とかなるさ。」
「魔法陣は使われへんで。平気か?」
波人が付け足すと焼刃はにっこりして言った。
「なんとかするよ。」
焼刃は聖の前に出た。そして軽く自己紹介する。
「・・・・俺は焼刃、君は?」
「・・・・・・霜月 聖・・・・一応・・・・聖光刃を継いだ。」
聖が答えると、焼刃は小さな声で おぉ~ と言った。
焼刃は手のひらから大きなボール・・・・バスケットボールを出した。
「バスケボール?」
聖は不思議そうな顔をした。
「これが俺の武器さ。」
焼刃はドリブルを始めた。
「!」
フィアルは光の球を放ったが、焼刃はそれにボールを衝突させて相殺した。
「ばかな・・・・・。」
「ゴムは電気を通さないからね。」
焼刃は二個目のボールを出し、ドリブルしながら一気にフィアルに近づいた。
「必殺!」
「なっ!?」
焼刃は跳び上がる。
「ファイヤァアァァァァアアァァ!!」
バスケットボールは発火し、焼刃はそれをフィアルに直撃させた。
「!!!」
フィアルは激しい炎に包まれた。
「これで終わりだっ!」
言いながら焼刃も炎の中に入った。
「・・・・・・・・・・・・封魔・・・・・・・・・。・・・・・あれ?」
炎がおさまったとき、そこには焼刃しかいなかった。
「・・・・・・・・おっ!ホンマにやりよった!!」
波人はガッツポーズをする。
「・・・・・・・・・・ゴメン。」
焼刃はまず謝った。
「どうしたんだ?」
シヴァが聞いた。
「・・・・・・・・逃がした・・・・・。」
焼刃は申し訳なさそうに言った。
「・・・・・・・・そうか・・・・。まあ無理もないだろう。お前は病み上がりだ。」
「みんなでお陀仏よりはマシやって。気にすんな!」
シヴァと波人は焼刃を慰めた。
「ありがとう・・・・。」
四人は炎の神殿を出ていった。
聖はどこか引っかかる気がした。
波人の作戦変更と、シヴァと波人の言い争いが・・・・・・・・。
なにか大切なことを、隠されているのではないかと思った。
焼刃と一緒に館に戻ると、すばるは涙をこぼした。
「・・・・・・・・・・本当に・・・・・本当に焼刃なの?」
「悪い・・・・待たせた。」
すばるは焼刃に抱きついて、離れようとしなかった。
三人はそれを優しく見守っていたが、波人はしだいに寂しそうな顔になっていって
最後は顔を背けてしまった。
「・・・・・・・・・・。」
シヴァはそれに気づいていたが、あえて知らない振りをした。
しばらく時間がたってから、四人でこれからの話し合いを始めた。
「・・・・・これからどうするか・・・・・・・だな。」
シヴァが問題提起する。
「・・・・・・・・とにかくはよ他の七大神を復活させるべきやろ・・・。」
波人が言うと、聖が聞いた。
「・・・・・・・・・・ここから一番近い神殿は?」
「・・・・・・・・・・・風の神殿・・・。風真のいるところだな。」
焼刃が答えた。
「そやな・・・・・・・・・風真か・・・・・。」
波人はなにか問題があるような言い方をした。
「・・・・・・・なにかあるのか?」
「ん~・・・ある言うたらあるし、無い言うたら無い。
・・・・・あいつは性格難しいでなぁ・・・。」
聖ははてな?という顔をした。
「同じ七大神なのに、協力してもらえないのか?」
「いや、断じてそれは無いと思うけど・・・・・・・とにかく難しいんや。」
波人の説明はいまいち要領を得ないものだった。
「だが他の神殿は遠すぎる・・・・・・やはり先に風の神殿へ行くべきだろう。」
シヴァの意見。
しばらく口論が続いたが、結局はシヴァの意見で決まりになった。
館を出るとき、聖が焼刃に言った。
「・・・・・・・・焼刃は・・・・・ここに残ったほうが・・・・・・。」
「え?」
「あなたには・・・・すばるさんがいる。」
聖はどこか寂しそうな表情で言った。
「同感だな。」
「さんせ~。」
シヴァと波人も言う。
「・・・・・けど・・・・俺も闘いたいから・・・・・・。」
焼刃が言うと聖はすぐにこう返した。
「ほんの少しの間でも・・・・・・残った方がいいと思う・・・・。」
「でも君たちだって戦力は多い方がいいだろ・・・・・・・・・・・・・・・?」
焼刃は少し苛立ってきたようだ。
「・・・・・確かにそうだが・・・まぁもう少しくらいは持つ。
それにこいつ・・・・・聖の戦闘能力をもっとあげるには、もっと多く闘わせるべきだ。
聖は後々、聖夜の代わりに魔王討伐を遂行してもらわなくてはならないからな。
弱くては困る。」
「・・・・・・・・・・・・・そうだとしても・・・・・。」
焼刃は反論しようとしたが、聖が言葉を遮った。
「・・・・あなたには・・・・愛してくれる人がいるから・・・・・・その人の為に・・・・・
残って欲しい・・・・・。俺の為にも・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・聖?」
聖はそれだけ言うと、焼刃に背を向け、歩き始めた。
焼刃はしばらく止まっていた。
・・・・・・・・・・・・・・それじゃあ・・・・・・・・・・・・・・・
それじゃあまるで、君を愛してくれる人がいないみたいじゃないか・・・・・・・・・。
焼刃には、聖の後ろ姿が小さく見えた。
「じゃあ・・・・・・俺達は行く。」
「またな。多分すぐ会うやろけど。」
シヴァと波人のふたりも行ってしまった。
「あ・・・・ああ。また後で合流するよ。」
焼刃はついて行けなかった。
逆らえなかったのだ、聖のあの寂しそうな顔に・・・・・・・・・。
焼刃は空を仰いだ。
神界七大神は今どうなっているのかを聞かされた。
七大神の現状は・・・・・・聖が思っていた以上に悲惨なものだった。
神界七大神は千年前、リーダーである結城 聖夜の死をはじめとして
次々と"魔王"に殺されたり、封印されたりしたという。
"魔王"は神界の辺地、魔界の長であり多重人格者であることしかわかっておらず、
殆どは謎に包まれた人物らしい。
そもそも"封印"とはかなり高度な魔法の使い手しか施すことができず、
それを解くにはさらに高度な技術が必要だそうで、
神界七大神でも封印を"解く"ことが出来るのは結城 聖夜だけだったらしい。
他の七大神はせいぜい、自分で封印を施したり
自分で施した封印を解く程度が限界だったとか。
神界七大神の"生き残り"つまり今動ける者は・・・・
なんとシヴァと波人のふたりだけだった・・・・。
しかも波人は左腕を自由に動かすことが出来ないらしい。
最初会ったときから何となく違和感はあったが、
まさか動かないとは・・・・・・・。
しかし聖光刃の神力を持ってすれば、
封印されている七大神を復活させることは可能かもしれないと
シヴァは言っていた。
そこで聖達は、魔王討伐の前に
封印されている七大神だけでも復活させるべく、
旅に出ることを決めたのであった・・・・。
火山の火口近く、炎の神殿・・・・・・・・。
そこには神界七大神の"灯火"、神無 焼刃が眠っているという。
神無 焼刃には妻がいて、その妻はまだ生きているらしい。
シヴァや波人も時々彼女を訪れたりしていたらしいので、
聖も会ってみることにした。
炎の神殿近くの大きな館。ここに焼刃の妻、すばるが今も住んでいるらしい。
聖はドアを叩いた。
「・・・・・・・・・・・はい?」
しばらくしてから、少し低めの女性の声がした。
「・・・・霜月 聖です。神無 焼刃さ・・・・・。」
聖が説明しかけるとシヴァがずいっと前に出てきて、しゃべり出した。
「・・・・・シヴァだ。開けてくれるか?」
「・・・・・・シヴァ?」
すばるはドアを開けてくれた。
彼女は・・・・・紫色の髪をしていて、どこか寂しそうな瞳をしている女性だった。
「あなたがすばるさん・・・・?」
聖が聞くと、すばるは逆に聞き返してきた。
「貴方は?」
「俺は霜月 聖です。一昨夜、結城 聖夜の聖光刃を継ぎました。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・聖・・・?」
すばるは一層寂しそうな瞳になった。
「なぜでしょう・・・・・・・ひどく・・・・・なつかしい気がします。」
「・・・・・・?」
聖には意味がわからなかった。
「きっと金髪青目のせいでしょうね・・・・・・。」
どうやら、結城 聖夜のことらしい。
「けど性格は似ても似つかんで。」
波人が付け足した。
三人は応接間のような部屋に通された。
シヴァが頼むと、すばるは焼刃の話をしてくれた。
「彼は・・・・・・・馬鹿な男だったから・・・・・・。」
「?」
「魔王に襲撃を受けたとき、あの人は真っ先に私を護ってくれた・・・・・。
そして私だけを逃がした。
嫌がる私を突き飛ばしてまで、私を説得しようとした・・・・。
本当は暴力とかはあまり好かない潔い男だったのにね・・・。」
すばるは、まるで昨日のことのように話す。
「今でもはっきり覚えてるの。あの人が私を館から逃がした後、
扉を閉めるときに・・・・・・・・。」
すばるは言葉を途切れさせた。しばらく間をおいてから、聖は聞いた。
「どうだったんですか?」
「にっこり笑ってくれたわ・・・・私の為に。でも悲しそうだった・・・・・・。」
「・・・・・・・・・。」
すばるはいろいろ話してくれた。
・ ・・・・・・魔王の襲撃の時、館が燃えてしまったこと。
おそらくふたりは館が崩れる前にうまく抜け出して、
闘いの続きを炎の神殿で行ったということ・・・。
そのあとすばるが全く同じつくりの館を建て直したこと。
神無 焼刃が封印された後、
すばるはずっとひとりで炎の神殿を守ってきたらしい・・・・・。
聖は聞きたいことがまだまだあった。
しかしこれ以上聞くとすばるが
今よりもっと辛い気持ちになってしまうような気がしたので、
続きは聞かなかった。
そして三人は館を出る。
『焼刃の封印を解きに行きます。』
と言い残して。
すばるもついて行きたいと言ったが、
"封印を解くときに何があるかわからないので駄目だ"と
シヴァが説得した。
火口付近・・・・・・・。
「暑・・・・・・・・・・・・。」
聖はあまりの暑さに思わず顔を覆った。
「聖光刃持ってへんかったら、暑いどころじゃ済まへんで。」
波人が言った。
「え・・・・・?」
「聖光刃をはじめとする神界七大神の武器・神器は
並はずれた神力を具現化したもの・・・・・・。
それによって武器からは常に持ち主を護る力が働いている。」
聖の疑問を、シヴァが説明。
「・・・・・・・・とにかく凄いんだな・・・・聖光刃・・・イヤ神器は・・・。」
「あたりまえだ。神器はこの世界の創造主である三大神が、
わざわざ俺達のために造ってくださったものなのだからな。」
「そうか・・・・・・。」
歩いていると、廃墟・・・・・・今は廃墟となってしまった炎の神殿があった。
入り口までくると聖は、そこに大きな模様が描いてあることに気づく。
「これは・・・?」
聖が聞くと波人が答えた。
「"魔法陣"・・・・・・。この魔法陣の上は七大神が
おのおのの最大の力を発揮できる空間で、
しかも"神域"とつながってる神界でたった六つしかないワープ地点や。」
「"神域"・・・・・・三大神がいるところだな?」
「そや。・・・・・・まあ今は封鎖されてるけどな。
七大神はガタガタやし、もしも魔王やそれに近しい者が
神域に入り込んでしもたら大変やから。」
「・・・・・・・・・・・・。」
・ ・・・・・・・・・・・・神無 焼刃は・・・・この魔法陣の上で闘っても、
魔王に勝てなかったのだろうか?
それだけ魔王が強かったということなのか。
考えただけでも背筋がゾッとする。
「・・・・・・・・・・・・焼刃がいない・・・・・・・・。」
ぽつりとシヴァが言った。
「え?んなアホな・・・・・。」
波人はそう言いながら焼刃を捜すが、やはり見つからないようだ。
「・・・・・・・・・ハメられたな。」
シヴァは舌打ちした。
「犯人は・・・・・・状況から言って魔王か魔王の手下はんか?」
波人が少し軽そうに言う。
「・・・・・・・・やばくねぇ?」
聖が言うと波人はあっさり返した。
「マジヤバ・・・・・・・。」
「・・・・神無・・・・・焼刃は、どこにいたんですか?」
聖が聞いた。
「・・・・あそこだ。」
シヴァは神殿の奥の、突き当たりの壁のあたりを指さした。
「あそこに・・・・・焼刃は"硝子の棺桶"に捕らわれて眠っていた。」
聖はシヴァの指の方向をまっすぐに見た。
「硝子の棺桶・・・?」
「魔王が使った封印の一種だ。」
聖は顎に手をやった。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
目は、神殿の奥を見据えたまま。
「・・・・・・・・もしかしたら・・・!」
聖は突然走り出した。
「・・・・聖?!」
奥に着くと、聖は剣を出す。
「・・・・・・・・これでどうだ!?」
聖はそう言うと、勢いよく剣を床に突き刺した。
すると彼のまわりの床から光が吹き出すように放たれたので、彼は飛び退いた。
「・・・・・・・・・・!」
光はやがて四角い形・・・・・・直方体になる。
光が消えるとそこには、神無 焼刃が眠っている"硝子の棺桶"があった。
「・・・・・・・・焼刃・・・・・・。」
シヴァがぽつりと言った。
「なんでわかったんや?」
波人は不思議そうに聖に聞いた。
「・・・・・棺桶が無いのは、他の場所に行ったんじゃなくて
実は見えないだけなんじゃないかと思って・・・・・。
神器も持たぬ者がこんなところで長居したがるとは思えないな・・・・・・・
みたいな・・・・・。」
聖は自信なさげに答えた。
「つまり二重に封印してあるのではないか・・・・・そう考えたんだな?」
シヴァが重ねて聞いた。
「・・・・・・そんな大げさなことじゃないけど・・・・・まぁ・・・・。」
聖は再び剣を構えた。・・・・・焼刃の封印を解くために。
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
聖は大きく息を吸って、剣を高く上げる。
彼が剣を振り下ろすと、"硝子の棺桶"は煙のようになって消えた。
中にいた神無 焼刃はまだ静かに眠っていた。
「・・・・・・・・・・・・この人が・・・・神無 焼刃・・・・・・。」
聖が焼刃を担ごうとしてしゃがむとシヴァがやってきた。
彼はひょいと焼刃を持ち上げて軽そうに肩に担いだ。
聖が見とれているとシヴァは言った。
「行くぞ。」
「あ・・・・・・・ああ。」
そうだ・・・・焼刃を助けたのだから、はやくすばるに会いに行ってあげなければ。
三人は炎の神殿から出ようと思ったが立ち止まった。
・ ・・・・・・入り口のあたりに、誰かいる・・・・・・・・!
「・・・・・・・・・・客のようだ。」
シヴァが言った。
「・・・あっれ~?あんな奴呼んでへんで?」
波人はそう言いながら、鎖鎌をだした。
「・・・・・招かざる客ってことで。」
波人は鎖鎌を口に銜えると、反対側についている分銅をくるくると回しだした。
勢いがついてきたところで分銅を投げる。
入り口付近にいる"誰か"をめがけて。
"誰か"はそれを素早くかわした。
「・・・・・・・・・敵・・・・なのか?」
聖はシヴァに聞いた。
「・・・・・おそらくな。」
ふたりは剣を出した。
波人は分銅を引き戻す。それと殆ど同時に、"誰か"はこちらに向かって走り出した。
「・・・・・・・・・・散れっ!」
シヴァが言うと三人は全く別の方向へ走っていった。
"誰か"は聖を狙い剣で攻撃を仕掛けてくる。
「わっ!」
聖はなんとか攻撃を受け止める。
「お前が結城 聖夜の代わりか・・・・・思ったより弱そうだな。」
「・・・・・なんだよお前!」
相手が魔族であることだけはわかった。・・・長い耳を持っているから。
「その聖光刃を持つものを殺せと、そう命じられた者だ。
名は・・・・フィアル。フィアル=クレヴァース。一応・・・魔王の又従兄弟だ。」
「魔王の又従兄弟!?」
聖は思わず叫んでしまった。
魔王の又従兄弟・・・・・・。聖にとって、それは強すぎる相手であった。
フィアルはいったん退くと、スッと聖の前に手をかざした。
「!?」
聖は奴が何をしているのかわからなかった。
・ ・・・・・・フィアルの手のあたりでパシパシと音が鳴り始める。
それは次第に大きくなり、時折奴の手から火花が散った。
「・・・・・・喰らえ。」
フィアルがそう言うと突然、奴の手の前に光の球ができた。
「・・・・・・・・!」
聖はたちすくんでいた。それに気づいた波人は聖の腕に鎖を巻き付け、引く。
その瞬間に、光の球は放たれた。
それは聖のいたところに直撃、そして球ははじけ飛ぶ。
「・・・・・・・・・・・・。」
聖の頬を冷や汗がしたたり落ちる。
・ ・・・・・・・・・・・・波人に助けられなければ・・・・・
自分があれをもろに受けるところだった・・・・・・!
「大丈夫か?」
波人は聖の肩に手を乗せて言った。
「・・・・・・・・・・・俺・・・・・やばかったよな・・・・・・?」
聖は小刻みに震えながら言う。
「・・・・・き・・・・気にすんな。殆ど初戦やないか。
喰らわんで良かった~くらいに思とき。」
「でも・・・・・・あいつ倒さないと俺ら殺されるんだろ・・・・?」
聖が言うと、波人は明るくこう返した。
「安心しぃや。わしら七大神は百戦錬磨、特に聖夜とシヴァはメチャクチャ強かった。
そのシヴァがここにおるんやさかい、大丈夫やて。」
「・・・・・・・・・・・・・・。」
波人の言葉が、聖にはなぜか気休めに思えた。
フィアルは続けて光の球を撃ってきた。
波人とともに技をかわすうちに、球の正体は電撃であることに気づく。
「あれ・・・・・電撃やったんか・・・・・。」
波人は都合悪そうに言うと、聖に作戦変更を持ちかけた。
「・・・・・・・・・・・・聖、作戦変更な?」
「え?」
「わしが闘うから、お前はわしが合図するまでシヴァと一緒におるんや。」
聖は不思議そうな顔をした。
「・・・・・・・・・けど波人、属性"水"だってこの前言ってなかったか・・・・?
余計不利なんじゃ・・・・・・・?」
「あいつごとき、属性の有利不利なんて関係あらへんわ!
とにかくわしが合図したらフィアル封印せえ。ええな?」
そう言うと波人は、フィアルに向かって走っていってしまった。
「波人・・・・・・・。」
聖には波人が自分に何かを隠しているように思えた。
仮にも相手は魔王の又従兄弟だ、
どんな馬鹿でも属性の有利不利を気にしない訳がない。
しかしこの時点の聖に波人の行動の真意を知ることができるわけがなく、
今は彼の指示に従うしかなかった。
シヴァの方に寄ってから聖はあることに気づいた。
・ ・・・・・・・・・・・・俺・・・・・封印の仕方・・・・・知らないじゃんか・・・・・・・・。
そういえばこの間、シヴァが"ホウマ"とかなんとか言っていた気がするが・・・・・。
確信は無い。
「あの・・・・シヴァ・・・。」
時間が惜しい。早く封印の仕方を教えてもらわなければ。
「なんだ?」
「・・・・・・相手を封印するときって・・・・・どうすればいいんだ?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・知らないのか。」
シヴァは横を向いてため息をつく。
「・・・・・・・たったひとこと・・・・"封魔"と唱えればいい。
ただし、迷いも怯えも焦りも消し・・・・・
相手よりも強い"気"を持って唱えなければならない。
つまり、心が相手に勝っていないと、
呪文はなんの効力もないただの言葉になってしまうというわけだ。」
「・・・・・・・・心で相手に勝る・・・・・。」
聖は自分に言い聞かせるように呟く。
シヴァは聖の聖光刃を握る汗ばんだ手を掴んで言った。
「本来封印は高等魔法・・・・・・・お前のような未熟な者には使えない。
お前の神力はその聖光刃によって大きく引き上げられている・・・・・。
ひっくり返して言えば無理に高等魔法を使えるようにしているだけだ・・・・・。
お前がよほど強い意志を持って封印を行わない限り、
相手を封じることは不可能だ・・・・・。特に、今回のような相手はな。」
「わかった・・・・・・。」
聖は目をつぶって答えた。
波人は光の球を避けながら、徐々にフィアルに近づいていった。
「お前は・・・・・・七大神の"泉"、津 波人だったな・・・。水使いがなんの用だ?」
フィアルは波人を馬鹿にしたような口調で言って、また光の球を出した。
「・・・・・・・こんな用や!」
波人は一瞬にして空気中の水蒸気を水に変え、フィアルに浴びせた。
「!」
フィアルは自分の電撃で感電する。
「ざまぁみろっ!」
波人が聖に合図しかかると、フィアルは彼を蹴飛ばした。
「うわあっ!」
波人は床に落ちた。
「・・・・・・・・このクソ暑い火口であれだけの水を集めたことは驚嘆に値する・・・・・・・
だがな。」
フィアルは手を上にあげた。
「・・・・あいにく俺は自分の電撃を受けて倒れるほど、ヤワではない。」
今度の光の球は今までのものとは違い、大きかった。
「・・・・・・・・・・・!!」
「終わりだ。」
フィアルがそれを放ったとき、波人の前に焼刃を担いだままのシヴァが現れ、
光の球をはじき飛ばした。
「シヴァ・・・・・!」
波人は驚いた顔をする。
フィアルは舌打ちしてもう一発撃とうとするが、聖がそれを邪魔した。
「・・・・貴様っ!」
フィアルはうっとうしそうに聖を蹴飛ばそうとするが、聖はそれを軽くかわした。
「何!?」
聖は得意げに言った。
「・・・・俺は剣術からきしだけど、喧嘩は強いんだな~。」
蹴りを避けることなど造作もない・・・・・というわけだ。
「ならば剣術と魔法で攻めてやる!」
フィアルは少し起こり気味に言った。
「・・・・・・・・・・げ。」
フィアルは剣を出すと、鋭い太刀でどんどん攻めてきた。
聖は全てをかわしきれずに、少しずつ身体に傷が増えていく。
「ちっ・・・・・まだまだだな・・・・。」
シヴァは焼刃を波人の近くにそっと寝かせて、聖を助けに行こうとした。
「待てシヴァ!」
「・・・なんだ?」
「"なんだ?"やないわ!お前は行ったらアカン!!」
波人は怒鳴るように言った。
「・・・・・・・・仕方がないだろう。」
「・・・・・・・アカン・・・・・お前の場合は命に関わる・・・・・・・・絶対にアカン!!」
「それは水使いのお前にも言えることだ。
今はそんなことを言っている場合ではない。」
お互い聖の様子を気にしながら、しかし真剣に言い合いをしていた。
聖はフィアルの力強い一撃で後方に飛ばされる。
フィアルは、背中から地に落ちてしまった聖に起きあがる遑も与えず斬りつけた。
「・・・・・・・・・・・うわぁっ!」
聖は咄嗟に剣を自分の前に出し、フィアルの太刀を受け止める。
腕はじぃんと痺れたがその瞬間何かを掴んだ気がした。
「・・・・・・・・・・・・・!」
フィアルがほんの少し驚いたその隙に、聖はフィアルを押し返す。
「なっ!?」
聖は立ち上がった。
「いける・・・・・・いけるぞ・・・!」
聖の表情は、緊張と恐怖でこわばった顔から希望の笑みに変わっていく。
「・・・・・一体何をしたんだ?」
フィアルは初めて、聖に"問うた"。
「・・・・・わかっただけさ・・・・あんたの"隙"が!」
「・・・・・・・・まさか。そんなことがあるはずが無い。」
フィアルは少し焦りを見せていた。
「・・・・・・試してみるか?」
聖はそう言って、聖光刃を前方はるか遠くに投げ捨てた。
「・・・・・・・・・・・・・!!?」
これにはフィアルだけではなくシヴァや波人も驚いた。
「隙アリーーーっ!」
聖は弾んだ声で叫んで、フィアルの懐に入り込んだ。
「!!」
聖はフィアルの手を・・・・・剣を持つ右手を膝で蹴った。
突然の衝撃にフィアルは剣を手放してしまう。
「やりぃっ!」
そう言いながら聖は剣をはじき飛ばしたその膝を伸ばして、
そのままフィアルの顔まで蹴った。
「くっ!」
フィアルは後ろに跳んで、体勢を整える。
聖はすぐにフィアルの正面に出て、今度は殴り飛ばした。
「・・・・・・・・っ!!」
「どーぉだ思い知ったかっ!」
聖のそのひとことに、ムッとするフィアル。
「・・・・・・・・何をっ!」
聖はさらにフィアルを殴る。フィアルの方はだんだん慣れてきたらしく、
とうとう聖の鉄拳を受け止めた。
「・・・・・・ありゃ?」
「・・・・戦闘中に新しいことを学ぶのはなにもお前だけではない。」
フィアルはにやりとした。
「なーんちゃって。」
「!?」
聖はフィアルの腹を、膝で蹴った。フィアルは少しふらつく。
「それが隙なんだよっ!」
フィアルが聖の方を向こうとしたとき、首元に聖光刃の刃があった。
「・・・・・・・・・・・・・・・・なっ・・・・。」
「わざわざ殴り飛ばしたのは、コレ取るためね。」
前方に投げたのは、武器を"捨てた"のではなく"置いた"のだった・・・・。
喧嘩するときに剣は邪魔だから。
一度しまっても良かったのだろうが、
投げる方がより相手に隙を作りやすいと考えたのだろう。
「・・・・・・・・・・・・・・。」
「ゲェムセット。」
ここまで攻めれば勝ったも同然・・・・・・そう思った聖はフィアルを封印しようと思った。
「・・・・・・・・・・・・封・・・・・!」
しかしその時、フィアルはあの光の球で聖を吹っ飛ばした。
「・・・・・・あっ・・・・・・!!」
聖は防御の姿勢をとることもできずに技を受け、そのまま宙に放りだされた。
「・・・・・・・・・・・・・・聖!」
シヴァは走って、聖が地に落ちる前に受け止めてやった。
フィアルは満足そうな顔をする。
「・・・・・・・馬鹿が・・・・・俺は"剣術と魔法で"攻めてやると言っただろう?」
シヴァはフィアルを睨みつけた。そして聖に言った。
「・・・・・・大丈夫か?」
「あー・・・・痺れたー・・・・。」
「油断するからだ。」
「くっそー・・・ええとこやったのに・・・。惜しすぎるわ聖!」
焼刃と一緒にいる波人が言った。
「けど・・・こういう状況になったんやから、わしが出るしかないなぁ・・・・・・!!」
波人は立ち上がる。
「波人・・・・!」
シヴァが言った。
「・・・・・・リベンジすんでぇ!」
波人は鎖鎌の分銅を回しながら言った。
「・・・・・・やめておけ・・・・・・片腕だけで奴に太刀打ちできると思っているのか?」
「あーっ、差別用語禁止!!」
「・・・・・・・・・。」
シヴァと波人が言い合っているとフィアルが光の球を出しながら叫んだ。
「・・・・・・・・・来ないのなら、こちらから行くぞ!」
シヴァは舌打ちしてから、剣を出した。
「アカンて!!」
波人はひたすら止める。
「うるさいっ!」
シヴァが怒鳴ると、パンパンと手を叩く音がした。
「・・・・・・・・?」
音がしたほうを見ると、焼刃が立っていた。
「はーいそこ、揉めない!」
明るい声で焼刃は言った。
「・・・・・・焼刃・・・・・・・!」
シヴァと波人は同時に言った。
「・・・・・・・・神無・・・・・焼刃か・・・。」
フィアルも呟いた。
「いつから起きてたんや?」
波人が聞くと焼刃は頬を掻きながら答えた。
「・・・・さっき・・・・波人の"リベンジすんでぇ"あたりからしか聞いてないよ。」
「そか・・・・・。」
「とにかく、その会話だけで俺の出番だって事だけは充分わかったから!
あいつ倒せばいいんだね?」
「!」
シヴァと波人は焼刃の顔を見た。
「・・・・・・魔王の又従兄弟・・・・らしい。」
シヴァがポツリと言う。
「・・・・・・・・・・そうか・・・・・。
でもここは炎の神殿、俺のテリトリーだから何とかなるさ。」
「魔法陣は使われへんで。平気か?」
波人が付け足すと焼刃はにっこりして言った。
「なんとかするよ。」
焼刃は聖の前に出た。そして軽く自己紹介する。
「・・・・俺は焼刃、君は?」
「・・・・・・霜月 聖・・・・一応・・・・聖光刃を継いだ。」
聖が答えると、焼刃は小さな声で おぉ~ と言った。
焼刃は手のひらから大きなボール・・・・バスケットボールを出した。
「バスケボール?」
聖は不思議そうな顔をした。
「これが俺の武器さ。」
焼刃はドリブルを始めた。
「!」
フィアルは光の球を放ったが、焼刃はそれにボールを衝突させて相殺した。
「ばかな・・・・・。」
「ゴムは電気を通さないからね。」
焼刃は二個目のボールを出し、ドリブルしながら一気にフィアルに近づいた。
「必殺!」
「なっ!?」
焼刃は跳び上がる。
「ファイヤァアァァァァアアァァ!!」
バスケットボールは発火し、焼刃はそれをフィアルに直撃させた。
「!!!」
フィアルは激しい炎に包まれた。
「これで終わりだっ!」
言いながら焼刃も炎の中に入った。
「・・・・・・・・・・・・封魔・・・・・・・・・。・・・・・あれ?」
炎がおさまったとき、そこには焼刃しかいなかった。
「・・・・・・・・おっ!ホンマにやりよった!!」
波人はガッツポーズをする。
「・・・・・・・・・・ゴメン。」
焼刃はまず謝った。
「どうしたんだ?」
シヴァが聞いた。
「・・・・・・・・逃がした・・・・・。」
焼刃は申し訳なさそうに言った。
「・・・・・・・・そうか・・・・。まあ無理もないだろう。お前は病み上がりだ。」
「みんなでお陀仏よりはマシやって。気にすんな!」
シヴァと波人は焼刃を慰めた。
「ありがとう・・・・。」
四人は炎の神殿を出ていった。
聖はどこか引っかかる気がした。
波人の作戦変更と、シヴァと波人の言い争いが・・・・・・・・。
なにか大切なことを、隠されているのではないかと思った。
焼刃と一緒に館に戻ると、すばるは涙をこぼした。
「・・・・・・・・・・本当に・・・・・本当に焼刃なの?」
「悪い・・・・待たせた。」
すばるは焼刃に抱きついて、離れようとしなかった。
三人はそれを優しく見守っていたが、波人はしだいに寂しそうな顔になっていって
最後は顔を背けてしまった。
「・・・・・・・・・・。」
シヴァはそれに気づいていたが、あえて知らない振りをした。
しばらく時間がたってから、四人でこれからの話し合いを始めた。
「・・・・・これからどうするか・・・・・・・だな。」
シヴァが問題提起する。
「・・・・・・・・とにかくはよ他の七大神を復活させるべきやろ・・・。」
波人が言うと、聖が聞いた。
「・・・・・・・・・・ここから一番近い神殿は?」
「・・・・・・・・・・・風の神殿・・・。風真のいるところだな。」
焼刃が答えた。
「そやな・・・・・・・・・風真か・・・・・。」
波人はなにか問題があるような言い方をした。
「・・・・・・・なにかあるのか?」
「ん~・・・ある言うたらあるし、無い言うたら無い。
・・・・・あいつは性格難しいでなぁ・・・。」
聖ははてな?という顔をした。
「同じ七大神なのに、協力してもらえないのか?」
「いや、断じてそれは無いと思うけど・・・・・・・とにかく難しいんや。」
波人の説明はいまいち要領を得ないものだった。
「だが他の神殿は遠すぎる・・・・・・やはり先に風の神殿へ行くべきだろう。」
シヴァの意見。
しばらく口論が続いたが、結局はシヴァの意見で決まりになった。
館を出るとき、聖が焼刃に言った。
「・・・・・・・・焼刃は・・・・・ここに残ったほうが・・・・・・。」
「え?」
「あなたには・・・・すばるさんがいる。」
聖はどこか寂しそうな表情で言った。
「同感だな。」
「さんせ~。」
シヴァと波人も言う。
「・・・・・けど・・・・俺も闘いたいから・・・・・・。」
焼刃が言うと聖はすぐにこう返した。
「ほんの少しの間でも・・・・・・残った方がいいと思う・・・・。」
「でも君たちだって戦力は多い方がいいだろ・・・・・・・・・・・・・・・?」
焼刃は少し苛立ってきたようだ。
「・・・・・確かにそうだが・・・まぁもう少しくらいは持つ。
それにこいつ・・・・・聖の戦闘能力をもっとあげるには、もっと多く闘わせるべきだ。
聖は後々、聖夜の代わりに魔王討伐を遂行してもらわなくてはならないからな。
弱くては困る。」
「・・・・・・・・・・・・・そうだとしても・・・・・。」
焼刃は反論しようとしたが、聖が言葉を遮った。
「・・・・あなたには・・・・愛してくれる人がいるから・・・・・・その人の為に・・・・・
残って欲しい・・・・・。俺の為にも・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・聖?」
聖はそれだけ言うと、焼刃に背を向け、歩き始めた。
焼刃はしばらく止まっていた。
・・・・・・・・・・・・・・それじゃあ・・・・・・・・・・・・・・・
それじゃあまるで、君を愛してくれる人がいないみたいじゃないか・・・・・・・・・。
焼刃には、聖の後ろ姿が小さく見えた。
「じゃあ・・・・・・俺達は行く。」
「またな。多分すぐ会うやろけど。」
シヴァと波人のふたりも行ってしまった。
「あ・・・・ああ。また後で合流するよ。」
焼刃はついて行けなかった。
逆らえなかったのだ、聖のあの寂しそうな顔に・・・・・・・・・。
焼刃は空を仰いだ。
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『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』
不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。
そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。
その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。
前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。
但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。
転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。
これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな?
何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが?
俺は農家の4男だぞ?
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