【完結済】高校時代に書いたファンタジー小説を原文ママで投稿してみる

蒼(あお)

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外伝(連載初期に「読んでも読まなくてもいい」扱いでサイトの片隅に置いていた)

2ー4

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時雨はにっこりして言った。
「今、僕はこの空間と時間を切り離しました。
ここは亜空間です。ここの支配人は・・・・もちろん僕。」
時雨は魔法陣を持っていない。
・・・持っていないと言うよりは、持ち歩いているという方が正解である。
つまり、時雨が作った空間内では、時雨に逆らうことも危害を加えることも出来ない。
ただしその最強時間は制限付きで、制限時間はたったの10分・・・・。
「時間稼ぎ・・・・・。」
覇累は呟く。時雨は杖を降ろした。
「僕とシヴァのことです。風真の風に気付いたとき、僕たちはたまたま同じところにいたんですよ。」
覇累の周りにあった水がおさまった。
「・・・お前達はいくつものミスをおかしている。
風真を狙ったこと、波人がひとりで来たのを不自然に思わなかったこと・・・・・。
まぁ、本気で俺たちを殺す気が無いんだからしょうがないだろうがな。」
「・・・・何を・・・。」
シヴァは剣を出した。
「言ったとおりだ。」

地平線まで続きそうな砂の海。
負傷した羅唯を背負った聖夜の足取りはしだいに重くなっていく。
意識があるのか無いのかわからないような気分だ。陽は沈みつつある。
もうすぐ、この灼熱地獄は極寒の地に姿を変えるだろう。
「・・・・東に町があったはずだ・・・・・。」
月が出てくれれば東がわかる。しかし今日は新月だ。
太陽の位置から東を目測するしかない。
今は夕暮れだから太陽の正反対に進んでいけばいいはずなのだが・・・・・・。
砂漠では方向感覚が失われるため、
まっすぐ歩いているつもりでも利き足でない方に少しずつずれて進んでしまう。
つまり東と言っても、自分が東向きに歩いているかさえわからない状態なのだ。
「マズいな・・・・。」
陽が沈んでしまえば、方角を知るための目印は一切無くなる。
聖夜は星の読み方を知らないからだ。こんなことに詳しいのは、時雨か、波人か・・・・。
そんなことを思っているうちに、陽は沈んでしまった。聖夜は仕方なく、その場に腰を下ろした。
 羅唯の怪我は、知らない間に塞がってしまっていた。
異様なまでのこの回復力は、邪龍の呪いによる一種の"症状"だ。それも"末期"の・・・・。
「・・・・・頼むから目を覚まさないでくれ・・・・。」
聖夜は独り言を言った。聖夜は羅唯を桜に預ける気だった。
強引なのはわかっているが・・・・・。そうでもしなければ、羅唯は呪い殺される。

シヴァと時雨が来たのを見た波人は、
「あと、頼むわ。」
とだけ言うとその場にへたり込んだ。
「ああぁ波人!!」
時雨は急いで彼の方へ行った。その横ではシヴァと覇累が難しそうな話を進めている。
「・・・・・お前達は七大神を殺す気が無い。今はな。」
シヴァが言う。
「・・・・・・。」
覇累は何も言わない。
「あのとき・・・1ヶ月前のあの空気が、今はどこにもない。」
「・・・・そんなでたらめ・・・・。」
「聖夜は今頃羅唯と闘っているんだろう?」
「・・・そうだ。」
「奴だけはまだ七大神を殺す気らしいな。」
「おれ達も・・・。」
「いいや違う。」
シヴァは剣を素振りした。そして刃をチェックしながら言う。
「お前は兄を気遣っている。桜様に頼めば奴の命が助かることも知ってる。
あれから1ヶ月・・・・あのときの様子から考えてお前達には時間がないはずだ。
一瞬一瞬が惜しいほどに・・・・。」
覇累は空を仰いだ。
「ごめん・・・・兄貴・・・姉貴。」
そしてそのまま座り込む。
「・・・・・・。」
シヴァはその様子を黙って見ていた。そこに時雨が耳打ちする。
「・・・・ごめん・・・・急いで・・・・。」
「・・・・・わかっている。」
そんなことはわかっている。しかし下手なタイミングで言葉をかけたら・・・・。
なんだかんだ言って覇累をもうここまで落とせているのだ。焦ってはいけない。

上では風真と韻唄が会話を交わしていた。
「時雨の空間内では俺たちが圧倒的に有利。・・・・答えて貰おう。さっきの質問に。」
韻唄はハープをピィンと鳴らした。それだけで風真の身体は韻唄に引き寄せられた。
「!?」
韻唄は内緒事を話すような小さな声で、風真に言った。
「・・・・・ここでの会話は魔王に聞こえないわね?」
「・・・・・!」
やはり・・・・・・。
「ああ、聞こえない。三大神にも聞こえない。
今この空間内にいる者以外は誰もこの中で起こっていることはわからない。」
「・・・そう。」
やはり韻唄は魔王に背いていた・・・・・。それは自分を狙ったという時点から気付いていたことだが・・・。
「じゃあ、降りましょうか。」
韻唄はそう言って、またハープを鳴らす。
彼女はゆっくりと降りていった。
風真も自分を浮かせていた風を止めて、急降下した。着地のときもう一度風を起こしショックを和らげる。
「風真・・・・!」
シヴァが言う。風真は倒れたが、意識はあった。
「おい!」
「・・・・・・大丈夫だ。シヴァ、話進めろ。」
横たわったままの彼のセリフ。シヴァは目配せだけして、本題に移った。
「・・・・・上でも話はまとまったようだな。」
韻唄は頷く。覇累はそれに少し驚いた。
「・・・まとまったって・・・・・?」
「覇累・・・・騙してごめんなさいね。」
「・・・・・・。」
シヴァは腰に手をやって、こういった。
「この"演技"の提案者は韻唄か?」
「ええ、そうよ。覇累にはもっともらしい説明をして、七大神はこれで殺せると言ったわ。
・・・・魔王にバレたくなかったから。」
覇累はさらに驚いたような顔になる。
「・・・・・姉貴?」
「・・・羅唯は・・・弟はあと1週間しないうちに死ぬわ。」
誰もが韻唄を見る。
「ほぉ?それで?」
「・・・・・1ヶ月前の大失態のせいで・・・・弟は魔王に呪いを抑えてもらえなくなった・・・。
今は自分の神力だけで抑えているけど・・・。」
「それで俺達に泣きつくのか。」
韻唄は少し焦ったが、すぐに自分を落ち着かせてこう言った。
「・・・私は・・・・・どうしても羅唯に生きて欲しいから・・・・。」
「・・・・?」
「理由なんて何もない・・・・。あるとしたら、あのときあの子に庇われたからかな。」
どうやら邪龍に呪われかけたのは韻唄だったらしい。
「・・・・本来なら反抗勢力をこちらの側に簡単にいれることは出来ない。」
「・・・・・。」
「だが・・・・・。」
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