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本編(聖の旅編)
第十三話 暗闇の攻防
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聖がフレア達と別れてすぐに、夜が訪れた。
結局目指すべき方角は決まらないままである。
「・・・・・・・う~ん・・・・・。」
考えてもどうしようもないのだが、ついつい考えてしまう聖。
・・・・・・一体どうすれば皆に会えるか・・・・・・・?
・・・・・・・待てよ。
聖の頭に、イヤな状況が思い浮かぶ。
・・・リーダさんの封印を解いた紅髪の奴・・・・・。
あれで終わりって訳じゃないだろうな・・・。
封印を解いた後すぐに消えてしまったが、もしかすると尾けてきているかもしれない。
「・・・・寝込み襲われたりして?」
野宿するときは、いつも交代で火の番をして眠っていたが、
今は仲間と一緒にいる訳ではない。
聖はため息をついた。
「・・・・・・徹夜っすか。」
首をがっくりと垂れる。
このあたりに村や町の明かりはない。
「・・・・・・っていうか薪!!」
もう夜である。今から拾いに行くのも好ましくない。
「・・・・・・・・・・俺ってほんっとバカかもしんない・・・・・。」
仕方がないので、聖は近くに立っている樹の幹にもたれながら、夜を明かすことにした。
「・・・・・・・・・・・・・・。」
聖は頭をかっくんかっくんさせている。どうやら眠いようだ。
「・・・・・・おおっと・・・いけね・・・・。」
細い目をこすりながら、彼は大あくびをする。
「・・・・・・・・・。」
しかし数分後、また眠気が襲ってくる。
彼はリーダとの闘いで結構疲れているし、眠くて当然なのだが。
「・・・・・・ん~・・・・・。」
このままではマズいと思った聖は、聖光刃を出した。
「うおりゃあ素振り五千回に挑戦じゃあっ!!」
わざと大きな声を出して、勢いよく素振りを始める。
「・・・・・・・・・・・じゅうご、じゅうろく、じゅうしち・・・・・・・。」
「・・・・こんな夜中に修行か?」
・・・・・・・・・来た!!
聖はそう思った。
振り向くと、影があった。
短髪の魔族の男のシルエット。・・・・・・・・あいつだ。
「・・・・・・まぁね。」
聖は素振りをやめた。
「・・・・・・・・無駄なことを。」
影は聖に近づいてくる。
「それはどうかな?」
聖は聖光刃を構えた。
本当のところ、こいつは強いのだろうか?
あの時はリーダを復活させるだけさせて、あっさり消えてしまった奴である。
そのうえ、夜に襲ってくるときている。自信がないのか?
実は口だけで、実力はそれほどないのではないだろうか・・・・?
眠りかけの頭でそんなことを考える聖。
「・・・・残念だが俺は貴様と接近戦はしない。」
魔族の男は手をのばした。
「!?」
・・・・・・そういえば、珠を割るときに爪を伸ばしていたような・・・・・・・。
しかし、男の攻撃は聖の予想を裏切った。
「!」
指先から、炎を吹き出す男。
「やべっ!」
聖は慌ててシールドを張る。
「・・・・・・・・馬鹿め。」
シールドを張った途端に炎攻撃はやみ、 かわりに爪が伸びてくる。
「うわっ!」
聖は知らなかった。光のシールドは物理攻撃を通すということを。
少しはしゃがんでかわしたので、致命傷にはならなかったが、それでも彼は左肩に傷を負った。
左肩・・・・・もろに神絹を貫通しているのである。
「・・・・・・・・・・・!」
聖は驚いた顔。
「知らなかったか?特殊属性の系統に属する魔法のシールドは、物理攻撃を通すことを。」
「・・・・・・・・・ちっ・・・・・。」
特殊属性とは、光や闇、ようは形のないものの魔法のこと。
波人の水や、焼刃の炎は普通属性に入る。形があるものだからだ。
「特殊属性の魔法シールドは確かにかなり強力なモノだ。殆どの攻撃を防げてしまうからな。
普通属性のシールドじゃあ、特殊魔法を防ぐことは不可能だ。
だが・・・・・そんな特殊属性の魔法シールドにも“弱点”はある。
一見たいしたことなさそうだが、それは致命的でもある・・・・・・・。」
「それが・・・・・・・・。」
「“魔法で出したもの以外は防げない”、つまり物理攻撃を通してしまうって事だ。
その点は神絹も同じ。
・・・・・これだけ言えば、貴様が今どんな状況に置かれているか、わかるな?」
・・・・・・光魔法の意外な穴・・・・・。
遠距離からの物理攻撃にめっぽう弱いという弱点・・・・・・。
逆に自分が普通魔法の使い手ならば、
魔法、熱、衝撃に強い神絹の併用で全ての攻撃に対応できるはず。
「この神界で特殊属性の魔法を使う奴は一割にも満たない。なぜだかわかるか?」
・・・・・・・・・どうしてそんなに少ないのだろう?
「育つ前に死ぬんだよ、殆どがな。」
「・・・・・・・・・・!」
シヴァに死ぬほど特訓させられた訳がわかった。
自分で望んで稽古をつけてもらったのだが、それにしたって厳しすぎると思ったこともあった。
理由はこれだ。そうに違いない。
・・・・・・・武術のたしなみが無い特殊魔法の使い手は、簡単に殺される。
結城 聖夜が闘いに異常に強かったと伝えられているのも
シヴァが鬼のように強いのも、自分を護るためなのだろう。
「貴様は剣での戦闘が相当うまくなったらしいな。」
男は笑った。
「だが俺の前では無意味だ。俺は貴様と接近戦をするつもりはないからな。」
「んなもん、爪さえ避けれりゃいくらでも近づいてやるさ!」
聖は走り出そうとするが、一瞬止まる。
「・・・・痛っ!」
左肩だ。普通走るときには肩を引く。聖は負傷した左肩を、無意識に動かしてしまったらしい。
「・・・・・・・・はははっ、そんなんじゃ剣も振れねぇな!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・!
この男、聖の弱点ばかりをついてきている。
普段聖本人さえも気づかないような小さな弱点まで、全て。
「・・・・・・腹たつ奴。」
聖は呟いた。そして剣を右手に持ち替える。
「けど、てめぇは俺の魔法を防げねぇ!普通魔法の使い手だからな!」
それは確実だ。奴はさっき指から火を噴いていた。
「聖閃光!」
辺りが暗いので、いつもより一層眩しい聖の光。
「・・・・・俺がいつ、普通魔法の使い手だと言った?」
男は不気味に笑った。
「!?」
黒い・・・・・闇魔法のシールドが、男を聖閃光から護る。
「・・・・・夜は闇の方が優勢だ。」
光魔法と闇魔法。
世間では光魔法が優位だとかささやかれているが、実際は違う。
どちらも差のつけられない同等の魔法。
差がつくとしたら、それは「昼」は光が強く「夜」は闇が強いということくらいだ。
人々は昼間起きていることが多いので、光が強いと錯覚するだけ。
「・・・・・・・お前は・・・・・・・?」
何者だ!?
どうして複数の系統の魔法が使えるんだ!
普通魔法はひとつの系統しか使えないはず・・・・・・・。
「・・・・・自己紹介をしてなかったからな・・・・・勘違いされてもしょうがないか。」
「はやく言えっ!」
冷たい風が吹いていく。
「・・・・・・・・・神狗 結。」
「・・・・・・・・・・・・。」
「シンクという言葉を出されてもピンと来ないか。相当な馬鹿だな。」
結はぼそっと言って、手から水をだした。
「!」
「神界には特殊魔法の使い手より、もっと少ない珍しい魔法の使い手が存在する。
それが神駈ける神駈家の“魔導士”だ。
魔導士はいい。全ての系統の全ての属性の魔法を使いこなすことができる素養を持っている。」
・・・・・・・最強の魔法戦士・・・・・魔導士。
「そしてその神駈家の者のひとりが魔族と結婚しできあがったのが俺の“神狗家”よ。
神駈の者どもは俺達を忌み嫌い、響きを同じにして神の狗“神狗”と呼んだ。
この世で魔導士が産まれるのは神駈と神狗だけだ。」
神駈家・・・・・・・神狗家・・・・・・。
「光の後継者霜月聖。貴様が俺に殺される事は決して恥ずかしいことではない。
むしろ、実力以上の強者に殺してもらえてよかったな、ってなもんだ。」
「自分の情報をペラペラと・・・・余裕のつもりか!?」
聖は へっ、と鼻を鳴らした。
「神駈と神狗のことなら魔法の使い手の常識だ。それに、俺には負ける要素がひとつもないからな。
どうせ死ぬ者にどんな情報を話そうが、関係ない。」
「うるせえっ!」
聖は光の球を飛ばす。
結はそれを片手で取って、握りつぶした。
「もうひとつ忠告する。それ以上魔法を使わない方が身のためだ。」
「訳わかんねえ!殺すんなら忠告の必要はないだろっ!」
聖は結の言葉を無視して攻撃を続けた。
・・・・・・・球じゃダメだ・・・・・。もっと・・・・もっと鋭利な何かじゃないと!
「これでどうだっ!!」
聖のイメージがはっきりしたとき、魔法は完成する。
「!」
放たれたのは光の球ではなく、光の刃だった。
刃は結の横髪を少し短くする。
「今だっ!」
奴がひるんだ今なら、聖閃光で捕らえられるはず・・・・!
聖は聖光刃を地に突き刺す。
「・・・・・・・・・・・・!?」
聖閃光が、発動しない。
「・・・・・言っただろう?」
「・・・・・・・・・・・・しまった!」
昼間自分の神力と邪気を混ぜたせいだ・・・・・・・・・!
ディアン戦での楓を覚えているだろうか?
彼女は自分の神力に邪気を混ぜられ、行動不能になった。
聖は自分の神力を和らげるため、わざと神力と邪気を混ぜたのだ。リーダを殺さぬように。
自分でやったのだから、楓ほど身動きが取れなくなることはないにしても、
魔法はもう使えないだろう。
・・・・・・少なくとも夜明けまでは。
「・・・・・・・てめぇ・・・・・・。」
リーダを復活させたのは、リーダに自分を殺させるためではなく・・・・・・。
「俺に負ける要素はひとつもない。」
冷たく笑う結。
周到すぎる計画。
やべぇよ・・・・・・・マジでやべぇ・・・・・。
聖は心の中で小さく笑った。
「負けねぇよ。むかつく奴には。」
聖は右手で剣を回す。
「・・・・・・・達者な口だ。」
結は指を鳴らした。
風がびゅうと吹いて、木が激しく揺れる。
「!」
何かが飛んでくる。
暗いので近くにくるまでわからなかった。
「木の葉!?」
刃となった木の葉は、聖の服、肌までも切り裂く。
「・・・・・木の葉は“魔法で出したもの”じゃないからな!」
もう一度風が吹く。
聖は目をつぶった。
・・・・・・・焦るな・・・・・。木の葉の気配、感じられるはずだ・・・・・。
魔力によって操られている木の葉には、少し魔力の気配があるはず。
「!」
聖は飛んでくる葉全てを剣で斬った。
「小さいモノはダメか・・・・。」
目をつぶったままの聖は、大きな気配を感じた。
「・・・・・・・え?」
聖は目を開けてみてたまげた。
「うわっ、そんなのアリかぁ!?」
木が浮いている・・・・・。結の魔力で引っこ抜かれたのか・・・・・。
全系統全属性の魔法を使いこなす魔導士。相当強い魔力を持っているに違いない。
木を切り裂くのは、いくら何でも不可能だ。ここは逃げるしかない。
聖は結のほうに走り出した。
「・・・・・?」
結は爪を伸ばして聖の接近を防ぐ。聖は爪を避け、そのまま結を無視して走り続けた。
「なっ!?」
結は最初から接近戦をするつもりが無い。だから近づいてくれば当然遠ざけようとする。
だが聖は最初から結に接近するつもりはなく、接近すると見せかけて逃げるのだった。
普通自分より強そうな敵に無闇に近づこうとは思わない。
近づくとしたら、攻撃か、自滅覚悟のどちらかだ。
その“先入観”を逆利用されたわけだ。
「・・・・・・・あいつに“一般的”な感情は無いのか・・・・?」
結は驚きを通り越して呆れた。
そして聖を追いかける。
「・・・・・俺って・・・・本当についてないんだな・・・・・。」
聖は愕然とした。目の前は、崖だ。
彼はこの辺りに詳しくないので、
適当に逃げ回っていたのだがそれがこんなことになるとは・・・・・・。
「とうとう追いつめられたな。」
半分怒り気味に笑う結。聖にかなり走らされたようだ。息が上がっている。
結の合図で、今度は石が飛んでくる。
聖は剣の側面でそれを弾いて防ぐ。側面で弾くのは刃こぼれを少しでも防ぐためだ。
いくら“神器”聖光刃とはいえ、剣であるには変わりない。
・・・・・・違う・・・・・奴が狙ってるのはこんなしょぼい攻撃じゃない・・・・。
おそらくは炎と爪の攻撃の切り替えのような、反応が一瞬遅れれば殺されかねない
“ハメ”的な攻撃だ・・・・・・・・・。
聖は石を弾きながら待った。
いつ、でかいのが来る!?
背中は崖だ。助かるには、相手の攻撃を聖光刃でたたき割るしかない。
「・・・・・・・。」
結が掌を返した。
「来るか!」
聖のまわりに、いくつもの雷が落ちた。
それに気を取られていると、正面から巨大な気配。
「!!!!」
たたき割るのもはね返すのも到底不可能なくらい大きな光の球。
・・・・・・・・・・どうすれば・・・・・・どうすれば!!
聖は音もなく崖っぷちから落ちていった。
結局目指すべき方角は決まらないままである。
「・・・・・・・う~ん・・・・・。」
考えてもどうしようもないのだが、ついつい考えてしまう聖。
・・・・・・一体どうすれば皆に会えるか・・・・・・・?
・・・・・・・待てよ。
聖の頭に、イヤな状況が思い浮かぶ。
・・・リーダさんの封印を解いた紅髪の奴・・・・・。
あれで終わりって訳じゃないだろうな・・・。
封印を解いた後すぐに消えてしまったが、もしかすると尾けてきているかもしれない。
「・・・・寝込み襲われたりして?」
野宿するときは、いつも交代で火の番をして眠っていたが、
今は仲間と一緒にいる訳ではない。
聖はため息をついた。
「・・・・・・徹夜っすか。」
首をがっくりと垂れる。
このあたりに村や町の明かりはない。
「・・・・・・っていうか薪!!」
もう夜である。今から拾いに行くのも好ましくない。
「・・・・・・・・・・俺ってほんっとバカかもしんない・・・・・。」
仕方がないので、聖は近くに立っている樹の幹にもたれながら、夜を明かすことにした。
「・・・・・・・・・・・・・・。」
聖は頭をかっくんかっくんさせている。どうやら眠いようだ。
「・・・・・・おおっと・・・いけね・・・・。」
細い目をこすりながら、彼は大あくびをする。
「・・・・・・・・・。」
しかし数分後、また眠気が襲ってくる。
彼はリーダとの闘いで結構疲れているし、眠くて当然なのだが。
「・・・・・・ん~・・・・・。」
このままではマズいと思った聖は、聖光刃を出した。
「うおりゃあ素振り五千回に挑戦じゃあっ!!」
わざと大きな声を出して、勢いよく素振りを始める。
「・・・・・・・・・・・じゅうご、じゅうろく、じゅうしち・・・・・・・。」
「・・・・こんな夜中に修行か?」
・・・・・・・・・来た!!
聖はそう思った。
振り向くと、影があった。
短髪の魔族の男のシルエット。・・・・・・・・あいつだ。
「・・・・・・まぁね。」
聖は素振りをやめた。
「・・・・・・・・無駄なことを。」
影は聖に近づいてくる。
「それはどうかな?」
聖は聖光刃を構えた。
本当のところ、こいつは強いのだろうか?
あの時はリーダを復活させるだけさせて、あっさり消えてしまった奴である。
そのうえ、夜に襲ってくるときている。自信がないのか?
実は口だけで、実力はそれほどないのではないだろうか・・・・?
眠りかけの頭でそんなことを考える聖。
「・・・・残念だが俺は貴様と接近戦はしない。」
魔族の男は手をのばした。
「!?」
・・・・・・そういえば、珠を割るときに爪を伸ばしていたような・・・・・・・。
しかし、男の攻撃は聖の予想を裏切った。
「!」
指先から、炎を吹き出す男。
「やべっ!」
聖は慌ててシールドを張る。
「・・・・・・・・馬鹿め。」
シールドを張った途端に炎攻撃はやみ、 かわりに爪が伸びてくる。
「うわっ!」
聖は知らなかった。光のシールドは物理攻撃を通すということを。
少しはしゃがんでかわしたので、致命傷にはならなかったが、それでも彼は左肩に傷を負った。
左肩・・・・・もろに神絹を貫通しているのである。
「・・・・・・・・・・・!」
聖は驚いた顔。
「知らなかったか?特殊属性の系統に属する魔法のシールドは、物理攻撃を通すことを。」
「・・・・・・・・・ちっ・・・・・。」
特殊属性とは、光や闇、ようは形のないものの魔法のこと。
波人の水や、焼刃の炎は普通属性に入る。形があるものだからだ。
「特殊属性の魔法シールドは確かにかなり強力なモノだ。殆どの攻撃を防げてしまうからな。
普通属性のシールドじゃあ、特殊魔法を防ぐことは不可能だ。
だが・・・・・そんな特殊属性の魔法シールドにも“弱点”はある。
一見たいしたことなさそうだが、それは致命的でもある・・・・・・・。」
「それが・・・・・・・・。」
「“魔法で出したもの以外は防げない”、つまり物理攻撃を通してしまうって事だ。
その点は神絹も同じ。
・・・・・これだけ言えば、貴様が今どんな状況に置かれているか、わかるな?」
・・・・・・光魔法の意外な穴・・・・・。
遠距離からの物理攻撃にめっぽう弱いという弱点・・・・・・。
逆に自分が普通魔法の使い手ならば、
魔法、熱、衝撃に強い神絹の併用で全ての攻撃に対応できるはず。
「この神界で特殊属性の魔法を使う奴は一割にも満たない。なぜだかわかるか?」
・・・・・・・・・どうしてそんなに少ないのだろう?
「育つ前に死ぬんだよ、殆どがな。」
「・・・・・・・・・・!」
シヴァに死ぬほど特訓させられた訳がわかった。
自分で望んで稽古をつけてもらったのだが、それにしたって厳しすぎると思ったこともあった。
理由はこれだ。そうに違いない。
・・・・・・・武術のたしなみが無い特殊魔法の使い手は、簡単に殺される。
結城 聖夜が闘いに異常に強かったと伝えられているのも
シヴァが鬼のように強いのも、自分を護るためなのだろう。
「貴様は剣での戦闘が相当うまくなったらしいな。」
男は笑った。
「だが俺の前では無意味だ。俺は貴様と接近戦をするつもりはないからな。」
「んなもん、爪さえ避けれりゃいくらでも近づいてやるさ!」
聖は走り出そうとするが、一瞬止まる。
「・・・・痛っ!」
左肩だ。普通走るときには肩を引く。聖は負傷した左肩を、無意識に動かしてしまったらしい。
「・・・・・・・・はははっ、そんなんじゃ剣も振れねぇな!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・!
この男、聖の弱点ばかりをついてきている。
普段聖本人さえも気づかないような小さな弱点まで、全て。
「・・・・・・腹たつ奴。」
聖は呟いた。そして剣を右手に持ち替える。
「けど、てめぇは俺の魔法を防げねぇ!普通魔法の使い手だからな!」
それは確実だ。奴はさっき指から火を噴いていた。
「聖閃光!」
辺りが暗いので、いつもより一層眩しい聖の光。
「・・・・・俺がいつ、普通魔法の使い手だと言った?」
男は不気味に笑った。
「!?」
黒い・・・・・闇魔法のシールドが、男を聖閃光から護る。
「・・・・・夜は闇の方が優勢だ。」
光魔法と闇魔法。
世間では光魔法が優位だとかささやかれているが、実際は違う。
どちらも差のつけられない同等の魔法。
差がつくとしたら、それは「昼」は光が強く「夜」は闇が強いということくらいだ。
人々は昼間起きていることが多いので、光が強いと錯覚するだけ。
「・・・・・・・お前は・・・・・・・?」
何者だ!?
どうして複数の系統の魔法が使えるんだ!
普通魔法はひとつの系統しか使えないはず・・・・・・・。
「・・・・・自己紹介をしてなかったからな・・・・・勘違いされてもしょうがないか。」
「はやく言えっ!」
冷たい風が吹いていく。
「・・・・・・・・・神狗 結。」
「・・・・・・・・・・・・。」
「シンクという言葉を出されてもピンと来ないか。相当な馬鹿だな。」
結はぼそっと言って、手から水をだした。
「!」
「神界には特殊魔法の使い手より、もっと少ない珍しい魔法の使い手が存在する。
それが神駈ける神駈家の“魔導士”だ。
魔導士はいい。全ての系統の全ての属性の魔法を使いこなすことができる素養を持っている。」
・・・・・・・最強の魔法戦士・・・・・魔導士。
「そしてその神駈家の者のひとりが魔族と結婚しできあがったのが俺の“神狗家”よ。
神駈の者どもは俺達を忌み嫌い、響きを同じにして神の狗“神狗”と呼んだ。
この世で魔導士が産まれるのは神駈と神狗だけだ。」
神駈家・・・・・・・神狗家・・・・・・。
「光の後継者霜月聖。貴様が俺に殺される事は決して恥ずかしいことではない。
むしろ、実力以上の強者に殺してもらえてよかったな、ってなもんだ。」
「自分の情報をペラペラと・・・・余裕のつもりか!?」
聖は へっ、と鼻を鳴らした。
「神駈と神狗のことなら魔法の使い手の常識だ。それに、俺には負ける要素がひとつもないからな。
どうせ死ぬ者にどんな情報を話そうが、関係ない。」
「うるせえっ!」
聖は光の球を飛ばす。
結はそれを片手で取って、握りつぶした。
「もうひとつ忠告する。それ以上魔法を使わない方が身のためだ。」
「訳わかんねえ!殺すんなら忠告の必要はないだろっ!」
聖は結の言葉を無視して攻撃を続けた。
・・・・・・・球じゃダメだ・・・・・。もっと・・・・もっと鋭利な何かじゃないと!
「これでどうだっ!!」
聖のイメージがはっきりしたとき、魔法は完成する。
「!」
放たれたのは光の球ではなく、光の刃だった。
刃は結の横髪を少し短くする。
「今だっ!」
奴がひるんだ今なら、聖閃光で捕らえられるはず・・・・!
聖は聖光刃を地に突き刺す。
「・・・・・・・・・・・・!?」
聖閃光が、発動しない。
「・・・・・言っただろう?」
「・・・・・・・・・・・・しまった!」
昼間自分の神力と邪気を混ぜたせいだ・・・・・・・・・!
ディアン戦での楓を覚えているだろうか?
彼女は自分の神力に邪気を混ぜられ、行動不能になった。
聖は自分の神力を和らげるため、わざと神力と邪気を混ぜたのだ。リーダを殺さぬように。
自分でやったのだから、楓ほど身動きが取れなくなることはないにしても、
魔法はもう使えないだろう。
・・・・・・少なくとも夜明けまでは。
「・・・・・・・てめぇ・・・・・・。」
リーダを復活させたのは、リーダに自分を殺させるためではなく・・・・・・。
「俺に負ける要素はひとつもない。」
冷たく笑う結。
周到すぎる計画。
やべぇよ・・・・・・・マジでやべぇ・・・・・。
聖は心の中で小さく笑った。
「負けねぇよ。むかつく奴には。」
聖は右手で剣を回す。
「・・・・・・・達者な口だ。」
結は指を鳴らした。
風がびゅうと吹いて、木が激しく揺れる。
「!」
何かが飛んでくる。
暗いので近くにくるまでわからなかった。
「木の葉!?」
刃となった木の葉は、聖の服、肌までも切り裂く。
「・・・・・木の葉は“魔法で出したもの”じゃないからな!」
もう一度風が吹く。
聖は目をつぶった。
・・・・・・・焦るな・・・・・。木の葉の気配、感じられるはずだ・・・・・。
魔力によって操られている木の葉には、少し魔力の気配があるはず。
「!」
聖は飛んでくる葉全てを剣で斬った。
「小さいモノはダメか・・・・。」
目をつぶったままの聖は、大きな気配を感じた。
「・・・・・・・え?」
聖は目を開けてみてたまげた。
「うわっ、そんなのアリかぁ!?」
木が浮いている・・・・・。結の魔力で引っこ抜かれたのか・・・・・。
全系統全属性の魔法を使いこなす魔導士。相当強い魔力を持っているに違いない。
木を切り裂くのは、いくら何でも不可能だ。ここは逃げるしかない。
聖は結のほうに走り出した。
「・・・・・?」
結は爪を伸ばして聖の接近を防ぐ。聖は爪を避け、そのまま結を無視して走り続けた。
「なっ!?」
結は最初から接近戦をするつもりが無い。だから近づいてくれば当然遠ざけようとする。
だが聖は最初から結に接近するつもりはなく、接近すると見せかけて逃げるのだった。
普通自分より強そうな敵に無闇に近づこうとは思わない。
近づくとしたら、攻撃か、自滅覚悟のどちらかだ。
その“先入観”を逆利用されたわけだ。
「・・・・・・・あいつに“一般的”な感情は無いのか・・・・?」
結は驚きを通り越して呆れた。
そして聖を追いかける。
「・・・・・俺って・・・・本当についてないんだな・・・・・。」
聖は愕然とした。目の前は、崖だ。
彼はこの辺りに詳しくないので、
適当に逃げ回っていたのだがそれがこんなことになるとは・・・・・・。
「とうとう追いつめられたな。」
半分怒り気味に笑う結。聖にかなり走らされたようだ。息が上がっている。
結の合図で、今度は石が飛んでくる。
聖は剣の側面でそれを弾いて防ぐ。側面で弾くのは刃こぼれを少しでも防ぐためだ。
いくら“神器”聖光刃とはいえ、剣であるには変わりない。
・・・・・・違う・・・・・奴が狙ってるのはこんなしょぼい攻撃じゃない・・・・。
おそらくは炎と爪の攻撃の切り替えのような、反応が一瞬遅れれば殺されかねない
“ハメ”的な攻撃だ・・・・・・・・・。
聖は石を弾きながら待った。
いつ、でかいのが来る!?
背中は崖だ。助かるには、相手の攻撃を聖光刃でたたき割るしかない。
「・・・・・・・。」
結が掌を返した。
「来るか!」
聖のまわりに、いくつもの雷が落ちた。
それに気を取られていると、正面から巨大な気配。
「!!!!」
たたき割るのもはね返すのも到底不可能なくらい大きな光の球。
・・・・・・・・・・どうすれば・・・・・・どうすれば!!
聖は音もなく崖っぷちから落ちていった。
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冒険をともにするのは同じく異世界に転移してきた女性・ジェニファー。彼女と出会い、ともに生き抜き、そして別れることとなった。
2021/06/27 無事に完結しました。
2021/09/10 後日談の追加を開始
2022/02/18 後日談完結しました。
2025/03/23 自己満足の改訂版をアップしました。
異世界ハズレモノ英雄譚〜無能ステータスと言われた俺が、ざまぁ見せつけながらのし上がっていくってよ!〜
mitsuzoエンターテインメンツ
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【週三日(月・水・金)投稿 基本12:00〜14:00】
異世界にクラスメートと共に召喚された瑛二。
『ハズレモノ』という聞いたこともない称号を得るが、その低スペックなステータスを見て、皆からハズレ称号とバカにされ、それどころか邪魔者扱いされ殺されそうに⋯⋯。
しかし、実は『超チートな称号』であることがわかった瑛二は、そこから自分をバカにした者や殺そうとした者に対して、圧倒的な力を隠しつつ、ざまぁを展開していく。
そして、そのざまぁは図らずも人類の命運を握るまでのものへと発展していくことに⋯⋯。
『辺境伯一家の領地繁栄記』序章:【動物スキル?】を持った辺境伯長男の場合
鈴白理人
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北の辺境で雨漏りと格闘中のアーサーは、貧乏領主の長男にして未来の次期辺境伯。
国民には【スキルツリー】という加護があるけれど、鑑定料は銀貨五枚。そんな贅沢、うちには無理。
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これってもしかして【動物スキル?】
笑って働く貧乏大家族と一緒に、雨漏り屋敷から始まる、のんびりほのぼの領地改革物語!
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