【完結済】高校時代に書いたファンタジー小説を原文ママで投稿してみる

蒼(あお)

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本編(聖の旅編)

第十九話 大量発生

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月の見えない夜。

気がつくと、大柄な男が剣をふりかぶっている。

「!」

サキは素早く防御の体勢を取るが、相手の力は自分の何倍も強かった。

「あ・・・・っ!」

飛んでいった剣先はカツンと落ちる。

「剣が・・・・・・。」

折られた・・・・・!!

サキは死んだ仲間の剣を取ろうと、敵の脇をとおって抜ける。

運が悪かった。

そこらじゅうに出来ている血だまり。それに足をとられ、転んでしまう。

「・・・・・・・・・・・・・・っ!」

今から立ち上がっても、間に合わない。

 

・・・・・・・・・・・ここまでか・・・・・・・・・・・・・。

 

目をつぶる。

しかし、痛みは来なかった。

その代わりに聞こえた、那智の断末魔の叫び・・・・・・・。

「・・・・・・那智!!!」

 

 サキは飛び起きた。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・那・・・・・智。」

夢だったか。まずそう思った。

サキは頭を抱える。

最近この夢は見ていなかったのに・・・・・・。

自分がまだ、人間界にいた頃の話だ。

子供のくせに、ある王国の親衛隊に所属していてその任務中のこと。

那智は親衛隊の副隊長にして、無二の親友だった。

ちょっと年上の彼は、その月誕生日だったのを覚えている。

だが、自分の誕生日を迎える前に、還らぬ人となってしまった・・・・。

 

はじめは、どうして那智が自分を庇ったのかとか、

那智の命と引き替えになった自分の命を大切にしなければとか、

普通の奴が思いそうなことをいろいろ考えていた。

しかし、考えたところで残るのは空虚だけだとわかってきたときサキは思った。

 

強くなりたい、自分が強いという証明が欲しい・・・・・・・・・・・・。

 

どうせ他にやりたいことなんて何もない。

王国を守って一生を終えるのもつまらない。

そう思ううちに、自分の足は神界を探し歩いていた。

今は平和では無いという、神々の地神界を・・・・・・・・・。

話によると、神界の平和は魔族の長“魔王”に壊されたようだ。

魔王が神界の統治者を・・・・倒したらしい。

ならば、自分が魔王を倒せば、強さを証明できるだろう・・・・そんな理由で。

そんなとき、砂漠の下で“あいつ”に会った。

結城 聖夜とかなんとかいう魔王の討伐を任された神の後継者だとか。

そいつと・・・・聖と会ってから、俺は自分がわからなくなってきた・・・・・・・。

魔王を倒すことをあきらめた訳じゃない。

強さの証明がしたい。

それなのに、迷いのような感情が自分の中を渦巻く。

神界に来てから、迷った事なんて一度も無かったのに・・・・・・・・・。

「・・・・・・らしくねぇ・・・・・。」

サキは呟いた。

 

 

 窓から朝日が差し込んでくる。

「・・・・・・・・・・と。朝か。」

まぶしさで目を覚ました聖は、大きく伸びをした。

聖が起きた気配で、シヴァも波人も目を覚ます。

「・・・おはよ。」

「おっす。」

三人がベッドの布団をたたんでいると、楓も目を覚ました。

「・・・・・あ・・・・。」

「おはよー楓。」

聖が楓に顔を近づけて言った。

「・・・・・・・え?あ、おはよう。」

楓はまだ周りの状況を把握していない。

「波人さま?あたし結局どうなったの?あのままずっと寝てたみたい・・・・・・。」

「気にしな気にしぃな。怪我さしてごめんな。」

「・・・・・・え・・・そんな・・・・・。」

楓もベッドから下りて布団をたたむ。

「・・・・・・・・・スティーラはもう空間の狭間や。

大丈夫大丈夫、お前はなんも気にせんとローザの代わりしてくれたら、それでええ。」

「・・・・・・・・・・・・・・・・うん・・・・・。」

楓はまだ戸惑っている顔だが、波人は『すぐ慣れるて』と励ました。

「それより楓、海渡るんだって、海!すげーよな海って!!」

聖ははしゃぎながら楓に言う。

「・・・・・・・・聖、もしかして海初めて?」

「おうっ!本でしか見たことがねぇ!!」

いつの時代の者も、初めての海でははしゃぎまくるという。

聖のあまりの無邪気さに楓は少し笑った。

「聖の強い要望で、出来る限りはやく海に行きたいそうだが。」

シヴァが半分からかいながら言う。

「・・・・・・・・・いいよ、あたしは。」

 

レタリアは港に近い。

数分歩けばそこはもう港だ。

聖がスキップしながらどんどん先へ行く。

その様子がおかしくておかしくて、波人と楓はひたすら笑っていた。

「おおー!!あれが海!?」

聖がガキ臭い声を上げる。

「あれが海だ。」

呆れながら、シヴァが答えた。

「じゃああれが船!?」

「おう、あれが船やで。」

船を指さし叫ぶ聖に、波人は笑いながら言う。

「すっげー!でけぇーーー!!」

聖は興奮しっぱなしだ。

「・・・・・・・全く。こっちは船での移動中に狙われんかと心配しているときに

あいつは・・・・・・。」

シヴァはさらに呆れる。

「まぁええんちゃう?あの海の下にはわしの神殿も沈んでることやし、

あのくらい明るい奴がおるほうが楽してええて。」

「・・・・・・・・・・・どいつもこいつも・・・・。」

シヴァはため息をついた。

「なにもないといいね。」

楓が言う。

「・・・・・・・・・まぁ・・・・その可能性は殆ど無いがな。」

「ま、その時はその時でこっちには最強の水使いもいることだし、

シヴァさまも心配ばっかりするのやめなよ。」

・・・・・・・・・・・・・・そんな会話をしているうちに、とうとう港についてしまった。

 

「おおおおおおおおお!!すっげーーーーーーー!!」

聖は甲板で、水平線に向かって思い切り叫んだ。

「・・・・・あいつは・・・・。」

シヴァは頭を抱える。

「まぁええやん。この船貸し切りなんやし。」

“もしも”の時に備え、船を借りた。

客船に乗ったら他の船客を闘いに巻き込んでしまう可能性大だ。

「・・・・・・・・・おーいみんなっ、こっち来て見ろよ~!!」

聖は手招きする。

「・・・・・だから・・・海見てそんなに楽しいのはお前だけだろうが・・・・・・。」

「はいはい、今行きますよ。」

聖は子供のような笑顔を崩さない。

三人が近くに来たとき、

「ほら、あの鳥すげぇ!」

とカモメを指さして海の方を向いた。

「・・・・・・あれはカモメや。」

「へーぇ、あれはカモメっつうのか。変な名前。」

「・・・・・・・・・・・。」

カモメを目で追う聖の横顔は、警戒の顔に変わった。

「・・・・・・・・・ところでさ、もうみんな気づいてると思うけど。」

聖が言い出す。

「・・・ただはしゃいでるだけじゃなかったんだな?」

シヴァはにやっとした。

「ってかこんだけ殺気出す奴に気づかない方がおかしいだろ?」

「潜んでるわね。ざっと数十人。」

楓は腕を組んだ。

「どうする?ほっといても害無いと思うけど。」

波人は聖の肩に腕をかけた。

「んー俺的にも多分ザコ。

でもさぁ、ほっとくのも失礼でない?気づいて欲しくてたまんないみたいだし。」

聖はニカっと白い歯を見せた。

「はははっ、違いねぇ!」

 

四人は何も気づかないフリを続けながら、殺気を感じる方に歩いた。

「・・・・・・・・・あー疲れた。ちょっとはしゃぎすぎたかなー?」

聖はわざとらしくそう言って、置いてある樽にもたれかかる。

樽は倒れ、転がって、後ろに積んである木箱の山に直撃した。

木箱の山が崩れると、隠れていた魔族達が一気に姿を現す。

「!」

魔族達は一瞬驚いたが、すぐに攻撃の態勢になった。

「ありゃりゃ?こんなところに魔族がいたぞ?」

聖の口調はさらにわざとらしくなった。

「え?大変だわ!だれか~!!」

悪のりした楓が、船の中に入る扉をあける。

そこからも魔族が湧いてきた。

「きゃー!」

この悲鳴も、もちろんオフザケである。

ふたりの様子を見ていたシヴァは帆柱の所まで歩いていくと、上を見た。

「・・・・・・・・・ゴミがたくさんついてるな。」

シヴァはニヤリとすると、ポケットに手を突っ込んだまま片足で帆柱を蹴る。

「ギャァァァアアァアア!!!」

情けない声を上げながらポロポロと落ちてきたのは、やはり魔族だった。

「うっわースゴい数!」

波人は笑いながら言った。

そして四人は完璧に魔族に包囲される。

「・・・・・・・・・これだけの数に囲まれて、まだ余裕を装うか?」

ボス気取りの男が言った。

「・・・ここは海上。逃げられまい。」

「・・・・・・んーそやなぁー逃げられへんなー。困ったなーどうしよかなー。」

波人の口調はかなり嘘くさい。

勿論、嘘なのだが。

「・・・・・・ふふふ・・・・。」

「・・・じゃあ・・・・・。」

波人はボス気取りの男に近寄る。

「わしの踊りで許してちょうだい♪」

「何!?」

波人はくるりと回って男を尻ではじき飛ばす。

「どわっ!」

男はそれなりに吹っ飛んだ。

あまりにも綺麗に決まったので、聖と楓は腹を抱えて大笑いした。

シヴァも下を向いて震えている。笑いを堪えているという感じだ。

「・・・・・・・っ・・・・貴様らぁっ・・・・!!」

魔族達は一斉に飛びかかってくる。

「せーのっ!」

聖と楓は並んで構えた。

そしてふたり同時に手を突き出す。気功術だ。

「ギャァアアァァァアアア!!!」

ふたりの気功でかなりの数の魔族が飛んでいった。

「いちにぃさんし、ごーろくしちはちくーじゅうじゅういちじゅうにじゅうさんじゅうし、

じゅうごじゅうろく・・・・・・・・。」

聖は飛んでいった魔族の数を指さし数えている。

「なめるなぁぁぁぁっ!」

背後からナイフを持った男が飛びかかってきた。

「さんじゅうはちーっ!!」

聖は振り返ってまた気功を放つ。

ナイフの男も空の星に。

「たんたんたたたんら、たらららんたたんた、たんったらた~んた・・・。」

波人の踊りも絶好調のようである。

足を上げるフリをして相手を蹴り上げ、

こけるフリをしながら逆に相手を引っかけている。

「おいっ、あいつは全然動いてねぇぞ!」

バカな男のひとりがシヴァを指さした。

すると聖に飛びかかろうとしていた者も楓の背後を取ろうとしていた者も

波人に抱きつかれていた者もシヴァの方に走っていく。

「あ~あ。」

三人は同時に言った。

シヴァは目をつぶる。

「悪いが、俺に持ち芸は無いぞ。」

そう言うとシヴァは、襲いかかってくる魔族を目をつぶったままの状態で

次々殴り倒し、蹴り倒していった。

当然ながら一発KOで、最後のひとりは肘鉄をもろに受けて倒れた。

「一番強いのは、シヴァなのにねぇ・・・・。」

聖は口笛を口笛を吹きながら言う。

「なぁ、こっちにロープあんで~。」

自分たちを捕まえたら拘束しようと思っていたのだろうか。

「こいつらはそれで縛るか。」

「封印するのも殺すのもなんだしねー。」

魔族達の“量で圧倒し倒す作戦”とやらは、大失敗に終わった。
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