【完結済】高校時代に書いたファンタジー小説を原文ママで投稿してみる

蒼(あお)

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本編(聖の旅編)

第三十七話 推測

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結局語り明かしてしまった聖と韻唄。

もう窓の外は明るかった。

「楽しかったよ、ありがとう。」

聖はそう言って部屋を出ていく。

その後ろ姿を韻唄はどこかで見たことがある気がした。

「彼と全く同じ事を言って出ていくのね・・・・。」

聖夜と被る後ろ姿は、何故か悲しい感じがする。

「初衣様・・・・私はどうすれば・・・・・。」

韻唄はハープを鳴らす。迷いを紛らわすために・・・。

 

外は明るくなったんだし、

暇だからまた何もない街をふらつこうかとドアに手を掛ける。

「あ。」

開けたドアの向こうには、袴の男が立っていた。

「久しぶりだな。まだくたばってなかったのか。」

風真はにやりとして言う。

「おう。まだ生きてるね、おかげさんで。」

聖と風真はすれ違いざまに手をたたき合うと振り向きもせずに

それぞれ行きたい方に向かった。

「なんかやる気出てきたぞ~!!」

ドアが閉まってから聖は言う。

今まで全く行動を共にしようとしなかった風真が、自分から加わりに来た。

それはただならぬ闘いの時が近づいてきている証拠である。

聖は聖光刃を出して、また素振りを始めた。

「あら、真面目ね。元気そうで何より。」

ふと後ろから、聞き覚えのある女性の声。

「あれ・・・・・あなたは・・・・・。」

「ふふふ。久しぶりね、本当。」

微笑む女性はすばる。彼女の傍には焼刃、それにリーダとフレアもまでいた。

「なんであなた達まで!」

聖はあからさまに驚いて聞いた。

「いろいろとあってね。それはいいんだけど私たち、怪我してるの。波人はいる?」

すばるの問いに聖は自分の後ろの建物を指さす。

「そこです。さっき風真も来ましたよ。」

「ありがとう。じゃあ、フレアの相手してあげて?きっと暇だから。」

さらっと問題発言をしてすばるはすたすたと歩いて行ってしまった。

焼刃とリーダもそれに続く。

ためらう様子さえない。

聖はかなり焦った。

「え?え?何?・・・・・・・・・何で俺!?」

変わらぬ様子の聖を見て、フレアはくすくす笑う。聖は赤面した。

「あ、えー・・・・。じゃあ街歩こうか!何にも無いけどっ!!」

ふたりのささやかな一日が始まる・・・。

 

一方、建物に入った者達は深刻な会話を進めていた。

そんな中、焼刃だけはリーダに聖とフレアの話を聞いていて、

かなりたるんでいたが・・・。

「そうか・・・・魔界はそんなに変わっていたか。」

起きたばかりのシヴァが、頭を押さえながら言った。

「大きいのはやっぱり・・・“神の入国禁止”だろうな。」

風真も無論話に参加している。

「・・・・・・・・・・俺も話があるんだが・・・・。」

場の空気を気にしつつ、風真は切り出した。

皆の視線は一斉に彼に向く。

「俺達は“魔族”の事を何も知らない・・・・。何ひとつ、だ。

いくら神界と魔界が別れているとは言っても、魔界だって神界の一部。

どうして何も知らないんだと思う?」

「・・・・・・・・・・。」

「神界と魔界を隔離したのは、神でも魔族でも無い・・・・俺はそんな気がしてきた。」

風真は、部屋を見渡す。

「・・・・あの女は・・・。楓とやらはいないんだな?」

「隣やけど?」

波人は親指で壁を指した。

楓の存在を気にする・・・・つまり聖夜やローザに関する発言。

焼刃も彼の鋭い雰囲気を感じて、さりげなくリーダを部屋から連れ出した。

「・・・・三大神は・・・・意図的に、聖や楓の身体に聖夜、

それにローザの魂を閉じこめた。

つまり強引に生まれ変わらせた。

そんな手間のかかることをするくらいなら、

聖夜やローザをそのまま生き返らせればいい。

邪道だがそっちのほうが確実でしかも合理的だ。

そこに俺達が復活しだしてからの第一の問題が生じていた。」

「それで?」

シヴァは試すような目で風真を見る。風真も負けずに挑戦的な口調で自分の考えを話した。

「だから俺は調べた。俺の居なかった間に何が起こったのか。

だが驚くことに魔界が広がったこと以外は殆ど何も無かった。」

「・・・・・・・。」

「三大神の魔王討伐命令・・・・。それを黙って受けた結城。

そこに何があったのか今の俺達に知る術はない。

わかっているのは結城がそんな命令を例え勅令であったとしても

黙って聞く様な奴じゃないということ、

あいつが何か隠していそうだったということくらいだ。

そもそも、三大神が“殺し”を命じたのはあれが最初で最後・・・。

しかも政策失敗の結果出てきた反抗勢力に対してだ。」

風真は“破魔”の札を懐から出す。

「三大神には欲しいものがあるんだ・・・・。」

彼は札を壁に投げつけた。それは壁に綺麗に張り付く。

「ひとつは歴史。ただの歴史じゃない。“完璧な歴史”だ。

いずれあのお方達は最高神という地位を封印しようとしているんだと思う。」

「!」

シヴァの表情が変わった。それを見た風真の表情もまた、

少しゆるんだものに変わった。

「政策失敗の結果出てきた魔王。それが邪魔になったから、

“神界七大神”は奴を消しにかかった。

だが負けかけた。そんな時突如として現れた若い神が、

次々に七大神を復活させて魔王を倒した。

・・・・・・・“三大神”無しでも充分辻褄のあう話じゃないか。

その実態はその若い神をただの器にして結城 聖夜が復活し、

魔王を倒すというものだったにしても、

事実上討伐はあいつ・・・・聖だって事になるんだからな。」

「三大神は・・・・何の為に・・・・?」

すばるは口元に手を当てる。

「俺が知るかよ。ただな、ご丁寧に“人間界”なんてものが用意されてるあたり、

俺達神も最終的には存在しなくなるのかもな。」

風真は自嘲的に笑う。ばかばかしい、そんな感じで。

「それで・・・・魔界と神界を隔離したんは三大神やと?」

波人が最初の話題を・・・今の本題を聞く。

「恐らく。魔界の文化と神界の文化が混ざり合えば、

間違いなく神界の文化は魔界化する。

あそこの文化は異文化なんかじゃない。

“進んで”るんだ、神界だっていずれああなるかも知れねぇ。

三大神は、それを避けようとしたんだ・・・・。

いや、壊した筈の前文明、生き残りが居たってのが全ての始まりかも知れん。

この長い長い悪夢のな。」

「なんかさぁ・・・・風真の話聞いてると、やる気失せるわ。

まるでわしらは道具って感じで・・・・ホンマ、何がしたいんやろ・・・。」

波人は気の抜けた声で言った。

「そいつぁ無理だな。俺達は三大神に常に行動を見張られてる。

みんなでストライキなんか始めた日には、記憶操作喰らって終わりだろうよ。」

シヴァが冗談口調で言う。

「・・・・もう始まっちまってる・・・。

逃げようもねぇさ。ただ、向こうのシナリオ通りにやっていくしかない。

・・・・・・・・・・・・・今はな。」

風真はため息混じりで言った。彼が壁に貼った札は、光って消えた。

「・・・・そっちの話が終わったところで、こっちも“いい報告”があるんだが。」

今度はシヴァが、挑戦的な目で風真を見た。
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