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本編(最後の封印編)
第四十六話 魔王イーヴル=セイヴァーン
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何もない真っ白な空間の奥に、聖は人影を見た。
それが黄緑の髪の少年であることに気付いたのは、かなり近づいてからだった。
黄緑の髪の少年。それは話に聞いていた七大神“時雨”の特徴だ。
正直聖は驚いた。
“中州”どころか最奥の目的地に来てしまっていたようだ。
「ここの空間の歪みは、“封印の森”の“迷宮化”と同じ原理・・・なのか?」
聖は何度か、抜けられないはずの結界を無視して
いきなり目的地についてしまったりしたことがある。
それは聖の神力の強さが半端でないのが原因だ。
「ここまで来ると結城聖夜様々だなぁ・・・・。」
“時雨”は立っていた。青い杖を床に突き立て、しゃんと立っていた。
「あんたが時雨だな?助けに来た。」
彼が眠っているようには、とても見えなかった。
「おーい・・・?」
聖は時雨のすぐ横まで来て、彼の顔をのぞき込む。
するとその眼は閉じられていて、
そこで初めて時雨が眠っているということを認識した。
封印を解こうと、聖は時雨に触れようとした。
「やはり一番に来るのは君でしたか・・・・・。」
聖の手が止まった。ゆっくりと、振り向く。
「・・・・・・・・あんたは・・・・・。」
聖の目に映ったのは、深緑の髪をした優男。
「初めまして。僕はイーヴル=セイヴァーン。
君を殺そうと・・・いえ、成長してもらおうと刺客を送り続けてきた“魔王”です。」
イーヴルは落ち着いた口調で話す。
彼は魔族の象徴の長い耳を持っているが、爪は丁寧に切られていた。
「成長?」
聖は特に警戒した様子もなく、手をだらんと下げたまま聞いた。
「友情が芽生えてから殺す方が、七大神は傷つくでしょう。
・・・・僕は君に興味はない。君の中の結城聖夜には興味があるけれど。」
イーヴルの姿は、とても“魔王”という感じではなかった。
波人やリーダのような優しい感じも漂っているし、凶悪そうにも見えない。
「“魔王”って割にはちまっこい事考えてるんだな。
もっと豪快で破壊が趣味、みたいな奴だと思ってたよ。
ちょっと前まではね。あんたの親戚のフィアルの方がよっぽど魔王っぽいな。」
聖は戦闘準備もせず、気楽な口調で言う。
「フィアルはずっと僕の首を狙ってますね。」
イーヴルは微笑した。
「・・・・・・・なんで魔王やってるんだ?」
「七大神に復讐したいからです。殺したい訳じゃない。
死んだって、僕の痛みはわかって貰えませんから。」
聖とイーヴルの距離は十歩の距離。
その距離が縮むことも広がることも無かった。今のところは・・・。
「あんたは俺達以外に興味無いよな。“神”さえ巻き込もうとはしてない。
最初は森の近く・・・神殿、山の中、砂漠に海・・・・
俺達以外の者が居そうにないところでしか襲ってこなかった。
初っぱなからフィアルが来たときはビビったけど、
あとは割と順調だった。適当に、な。
全部作戦だった訳だ?」
「ええ、そうです。七大神は政策の犠牲は払うくせに、
自分の仲間の犠牲は堪えられないような、勝手な者の集団。
そんな者達が神界を治めているなんておかしな話ですね。」
「ああ、おかしな話だなぁ・・・。」
聖はあっさり同意した。
・・・・韻唄に聞かされていたからだ。
“魔王”が現れたのは七大神の“神界・魔界統一政策”の後だと。
「・・・・でもいい奴らだ。」
聖は呟く。
「いい奴ら?それはお友達になれた者だけの話でしょう。」
「“聖夜”ひとりがいなくなっただけで
落ち込んでバラバラになるほど弱い奴らかもしれない。
でもそんな奴らが、魔族の犠牲をなんとも思わなかったとは俺には思えないね。」
聖はニヤリと笑って言った。
「どうでしょう?実際、君の前世の結城 聖夜は、
僕の討伐をあっさり受けたという話じゃないですか。
都合が悪くなったら殺して終わり、結局はそういう事でしょう。」
イーヴルの表情は変わらない。しかし、声は次第に冷たい感じになっていく。
「さぁ?それは本人に聞いてみれば?
俺は“光に喰い殺される”んだろ?・・・・・・・・・シャレア!」
“光”は結城 聖夜。
「・・・・最後のコンタクトは余分でしたね・・・・・。」
イーヴルは笑った。
「シャレアはまだ生きてるのか?」
「ええ。騒いでます。君を殺すなと。」
「そうか。そりゃ良かった。」
聖が自分の運命を・・・・死んで結城聖夜の器になるという
運命を確信させた占い師・シャレア。
それは魔王の人格のひとりだったということだ。
「妙にあっさりしてますね。
自分の運命に気付きながら隠し通してきた仲間に腹が立ちませんか?
死ぬのは怖くありませんか?」
「怖いさ。俺はまだ“血の海”も泳いでないし“闇の中”を彷徨ってもいない。
これから起こる数分の出来事で、俺はそのふたつを経験するんだろ?
その恐ろしい予言が真実になる・・・そゆ事だろ。」
聖は初めて、聖光刃を出した。
「数分?勝つ気は無いのですか?いつものように。
あなたの傍にいる佐久 時雨の封印を解けば、
少しはマシに闘えるかもしれませんよ?」
イーヴルも細身の剣を出す。
「こう、今まで闘ってきて、そしたら相手のレベルが何となく本能でわかるようになる。
勘みたいなのでさ。わかるんだ。・・・・・・・・俺はここで死ぬってね。
時雨は封印したままなら無駄に怪我させずに済む。封印は聖夜が解けばいいさ。」
「諦めるんですか。どこまで根性がついても、やっぱり君は腑抜けですね。」
聖は剣を担いで微笑する。
「世の中には色んな奴がいんだよ。
・・・・確かに死ぬのは怖いけど・・・・俺の場合、
死んで初めて価値のある身体な訳だ。
そう考えれば後悔はない。好きになれる奴らと旅が出来て、もうけもんさ。」
「気分が悪くなるほどあっさりしてますね・・・・。」
イーヴルは剣を舐めて見せる。
「そう見える?」
聖とイーヴルは同時に一歩目を踏み出した。
金属音と共に剣が交差する。
“運命の”闘いが始まった・・・・・。
それが黄緑の髪の少年であることに気付いたのは、かなり近づいてからだった。
黄緑の髪の少年。それは話に聞いていた七大神“時雨”の特徴だ。
正直聖は驚いた。
“中州”どころか最奥の目的地に来てしまっていたようだ。
「ここの空間の歪みは、“封印の森”の“迷宮化”と同じ原理・・・なのか?」
聖は何度か、抜けられないはずの結界を無視して
いきなり目的地についてしまったりしたことがある。
それは聖の神力の強さが半端でないのが原因だ。
「ここまで来ると結城聖夜様々だなぁ・・・・。」
“時雨”は立っていた。青い杖を床に突き立て、しゃんと立っていた。
「あんたが時雨だな?助けに来た。」
彼が眠っているようには、とても見えなかった。
「おーい・・・?」
聖は時雨のすぐ横まで来て、彼の顔をのぞき込む。
するとその眼は閉じられていて、
そこで初めて時雨が眠っているということを認識した。
封印を解こうと、聖は時雨に触れようとした。
「やはり一番に来るのは君でしたか・・・・・。」
聖の手が止まった。ゆっくりと、振り向く。
「・・・・・・・・あんたは・・・・・。」
聖の目に映ったのは、深緑の髪をした優男。
「初めまして。僕はイーヴル=セイヴァーン。
君を殺そうと・・・いえ、成長してもらおうと刺客を送り続けてきた“魔王”です。」
イーヴルは落ち着いた口調で話す。
彼は魔族の象徴の長い耳を持っているが、爪は丁寧に切られていた。
「成長?」
聖は特に警戒した様子もなく、手をだらんと下げたまま聞いた。
「友情が芽生えてから殺す方が、七大神は傷つくでしょう。
・・・・僕は君に興味はない。君の中の結城聖夜には興味があるけれど。」
イーヴルの姿は、とても“魔王”という感じではなかった。
波人やリーダのような優しい感じも漂っているし、凶悪そうにも見えない。
「“魔王”って割にはちまっこい事考えてるんだな。
もっと豪快で破壊が趣味、みたいな奴だと思ってたよ。
ちょっと前まではね。あんたの親戚のフィアルの方がよっぽど魔王っぽいな。」
聖は戦闘準備もせず、気楽な口調で言う。
「フィアルはずっと僕の首を狙ってますね。」
イーヴルは微笑した。
「・・・・・・・なんで魔王やってるんだ?」
「七大神に復讐したいからです。殺したい訳じゃない。
死んだって、僕の痛みはわかって貰えませんから。」
聖とイーヴルの距離は十歩の距離。
その距離が縮むことも広がることも無かった。今のところは・・・。
「あんたは俺達以外に興味無いよな。“神”さえ巻き込もうとはしてない。
最初は森の近く・・・神殿、山の中、砂漠に海・・・・
俺達以外の者が居そうにないところでしか襲ってこなかった。
初っぱなからフィアルが来たときはビビったけど、
あとは割と順調だった。適当に、な。
全部作戦だった訳だ?」
「ええ、そうです。七大神は政策の犠牲は払うくせに、
自分の仲間の犠牲は堪えられないような、勝手な者の集団。
そんな者達が神界を治めているなんておかしな話ですね。」
「ああ、おかしな話だなぁ・・・。」
聖はあっさり同意した。
・・・・韻唄に聞かされていたからだ。
“魔王”が現れたのは七大神の“神界・魔界統一政策”の後だと。
「・・・・でもいい奴らだ。」
聖は呟く。
「いい奴ら?それはお友達になれた者だけの話でしょう。」
「“聖夜”ひとりがいなくなっただけで
落ち込んでバラバラになるほど弱い奴らかもしれない。
でもそんな奴らが、魔族の犠牲をなんとも思わなかったとは俺には思えないね。」
聖はニヤリと笑って言った。
「どうでしょう?実際、君の前世の結城 聖夜は、
僕の討伐をあっさり受けたという話じゃないですか。
都合が悪くなったら殺して終わり、結局はそういう事でしょう。」
イーヴルの表情は変わらない。しかし、声は次第に冷たい感じになっていく。
「さぁ?それは本人に聞いてみれば?
俺は“光に喰い殺される”んだろ?・・・・・・・・・シャレア!」
“光”は結城 聖夜。
「・・・・最後のコンタクトは余分でしたね・・・・・。」
イーヴルは笑った。
「シャレアはまだ生きてるのか?」
「ええ。騒いでます。君を殺すなと。」
「そうか。そりゃ良かった。」
聖が自分の運命を・・・・死んで結城聖夜の器になるという
運命を確信させた占い師・シャレア。
それは魔王の人格のひとりだったということだ。
「妙にあっさりしてますね。
自分の運命に気付きながら隠し通してきた仲間に腹が立ちませんか?
死ぬのは怖くありませんか?」
「怖いさ。俺はまだ“血の海”も泳いでないし“闇の中”を彷徨ってもいない。
これから起こる数分の出来事で、俺はそのふたつを経験するんだろ?
その恐ろしい予言が真実になる・・・そゆ事だろ。」
聖は初めて、聖光刃を出した。
「数分?勝つ気は無いのですか?いつものように。
あなたの傍にいる佐久 時雨の封印を解けば、
少しはマシに闘えるかもしれませんよ?」
イーヴルも細身の剣を出す。
「こう、今まで闘ってきて、そしたら相手のレベルが何となく本能でわかるようになる。
勘みたいなのでさ。わかるんだ。・・・・・・・・俺はここで死ぬってね。
時雨は封印したままなら無駄に怪我させずに済む。封印は聖夜が解けばいいさ。」
「諦めるんですか。どこまで根性がついても、やっぱり君は腑抜けですね。」
聖は剣を担いで微笑する。
「世の中には色んな奴がいんだよ。
・・・・確かに死ぬのは怖いけど・・・・俺の場合、
死んで初めて価値のある身体な訳だ。
そう考えれば後悔はない。好きになれる奴らと旅が出来て、もうけもんさ。」
「気分が悪くなるほどあっさりしてますね・・・・。」
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