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本編(最後の封印編)
第四十五話 開戦前
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ローブの少年が転移してきてから、すでに四日が経っていた。
時の神殿ではどのくらいの時間が経っているのかは定かではないが、
こちらの時間は確実に過ぎていく。
少年は昨日気が付き、七大神がそこに居ないことを知った。
少年はしばらく放心していたが、仕方なくリーダとフレアと共に彼らを待った。
七大神は必ず帰ってくると、そう聞いたから。
「ねぇ、どうしても名前は教えてくれないの?」
フレアがベッドに座る少年の顔をのぞき込む。
「神界政府軍伝令係ってとこまでは口が滑ったから仕方ない。
でも俺は魔族に自分の事を言うわけにはいかない。
たとえ貴女がいい人でも。」
「・・・・・・・・。」
フレアはつきっきりで少年の介抱をしていた。
転移してきたときには少年はフレア達を警戒していたが、今はさほどしていない。
自分が神界政府軍の“何か”だと知っても殺さなかったからだ。
本当に敵なら、気が付く前に始末しただろう。
「どうしてここに七大神がいるってわかったの?」
フレアは話題を変える。
「そんなこと、政府が雇っている占い師とか、霊力の強い者に調べて貰えばわかる。」
「そう・・・・。」
少年の緑のローブは神絹の、しかも丈夫なものだった。
普通の神官や占い師の用いている物よりもずっとずっと丈夫そうな。
聖に譲って貰った神絹よりも、分厚かった。
神絹は一般的に薄い絹のような布なのだが・・・。
「このローブは制服か何かなの?」
聞くことはもう思いつかない。それでも話を続けたかった。
少年は強がっているが、とても不安そうに見えたから。
「これは兵士の甲冑と同じだ。
魔導兵やその見習いは魔力は強くても力はそんなに強くないから、
甲冑のかわりにこのローブを着用する。これは戦闘服だ。」
「戦闘服・・・・。」
また沈黙が続く。
少年は自分から何も話さない。
何かを聞いても話の続け方の見つからない答えが返ってくるだけ。
残る道は・・・自分の話をするしか無かった。
「君の事はいっぱい聞いたし・・・今度は私の話をしてもいい?」
フレアは呟くように言った。
少年は不思議そうな顔をする。
「お前が話したいなら・・・・。」
その時、部屋の戸が少々乱暴に開いた。
「!?」
ふたりは同時にドアの方に視線をやる。そこにはリーダがいた。
「お兄さま・・・?どうしたの!?」
リーダの服は所々綻んでいて、血も付いていた。
リーダが怪我をしている様子は無い。・・・・血は・・・誰かの返り血だ。
「・・・・・・・!」
少年はリーダの姿を見て、目の色を変え立ち上がった。
「貴様っ・・・・何を・・・・!」
「待て。話を聞いてくれ。」
フレアが少年の肩を掴む。
「何をする!」
少年は振りほどこうとするがフレアは彼を放さなかった。
「お兄さまを信じて!お願い!!」
「何を・・・何を信じろと!」
少年は狂ったように言う。
ただ暴れて、フレアの手を振りほどこうとするだけだ。
「・・・・私が剣を向けた相手は・・・死に至らしめた相手は神じゃない!
魔族だ。聞こえてるか?」
毅然とした態度のリーダの言葉に、少年は抵抗をやめた。
「・・・・バカな・・・・信じられるか・・・。」
「私が行ったのはレタリアだ。買い出しのために飛んでいった。」
リーダは腰の剣を外し、ベッドの上に放った。
自分に戦意の無いことを示す兵士のように、
自分の手の届かぬところに武器を置いたのだ。
「そこで私はとんでもないことを知った。話してもいいか?」
「・・・・・・な・・・・。」
少年の返事を待たずに、リーダは話を始める。
「レタリアは魔界政府軍に占領されていた。
私も魔族の格好をしているから、
上手く紛れ込めば噂のひとつでも聞けるかと思ったが・・・。
数日前“七大神の魔界脱出”を手伝った者として私もフレアも指名手配されていたよ。
だから事実はひとつしかわからない。
“戦争が始まっていた”。それだけしか・・・・。」
「・・・・・・・・・指名手配?」
少年は眉をひそめる。
「そう、指名手配だ。私もフレアも魔界ではもう罪人なんだよ。
でも後悔はしてない。・・・・・神に生まれたかったと思う日はあっても。」
「・・・・・・・・・・・・。」
リーダはポケットから紙切れを出す。
「魔族の兵に話しかけてみた。そうしたらこの紙と私の顔を見比べて・・・・
いきなり斬りかかってくるものだから、
つい剣を抜いたら、弾みで相手を斬ってしまってね。」
それは彼が斬り倒した魔族の持っていた手配書だった。
少年は手配書の顔とリーダの顔を交互に見る。
「魔界政府軍が神界の大きな都市・・・しかも経済の要所を占領した。
神界政府軍ももう動いてるんじゃないのかい?
現に、君も軍人だ。」
少年は唇をかみしめ、それからリーダを睨むような、
しかしすがるような複雑な表情で見つめた。
「・・・・神界政府軍は将軍代理の指揮のもとレタリアに行軍中だ。
俺が三日眠ってたのなら、一週間後には神界政府軍と魔界政府軍はぶつかる。
向こうも光都・ポーリアに攻めてきているだろうから、
実際はもっとはやくぶつかる筈だ。
時間がない・・・。
三大神様とコンタクトが取れるのは七大神だけだし、
七大神は政府軍の将軍と六つの部隊の部隊長だから・・・・。
・・・・・・・・神界政府軍が動くのなんて・・・・俺だって初めて見た。
ここ何千年も、大きな戦争は起きなかったんだから!」
少年の後ろで、フレアはバタリと倒れた。
七大神が早く帰ってくることを祈るしかない。それだけしか出来ない。
神界の空は、地上で何が起ころうとしているのか知らないのかと思うほど、
美しく蒼かった。
時の神殿ではどのくらいの時間が経っているのかは定かではないが、
こちらの時間は確実に過ぎていく。
少年は昨日気が付き、七大神がそこに居ないことを知った。
少年はしばらく放心していたが、仕方なくリーダとフレアと共に彼らを待った。
七大神は必ず帰ってくると、そう聞いたから。
「ねぇ、どうしても名前は教えてくれないの?」
フレアがベッドに座る少年の顔をのぞき込む。
「神界政府軍伝令係ってとこまでは口が滑ったから仕方ない。
でも俺は魔族に自分の事を言うわけにはいかない。
たとえ貴女がいい人でも。」
「・・・・・・・・。」
フレアはつきっきりで少年の介抱をしていた。
転移してきたときには少年はフレア達を警戒していたが、今はさほどしていない。
自分が神界政府軍の“何か”だと知っても殺さなかったからだ。
本当に敵なら、気が付く前に始末しただろう。
「どうしてここに七大神がいるってわかったの?」
フレアは話題を変える。
「そんなこと、政府が雇っている占い師とか、霊力の強い者に調べて貰えばわかる。」
「そう・・・・。」
少年の緑のローブは神絹の、しかも丈夫なものだった。
普通の神官や占い師の用いている物よりもずっとずっと丈夫そうな。
聖に譲って貰った神絹よりも、分厚かった。
神絹は一般的に薄い絹のような布なのだが・・・。
「このローブは制服か何かなの?」
聞くことはもう思いつかない。それでも話を続けたかった。
少年は強がっているが、とても不安そうに見えたから。
「これは兵士の甲冑と同じだ。
魔導兵やその見習いは魔力は強くても力はそんなに強くないから、
甲冑のかわりにこのローブを着用する。これは戦闘服だ。」
「戦闘服・・・・。」
また沈黙が続く。
少年は自分から何も話さない。
何かを聞いても話の続け方の見つからない答えが返ってくるだけ。
残る道は・・・自分の話をするしか無かった。
「君の事はいっぱい聞いたし・・・今度は私の話をしてもいい?」
フレアは呟くように言った。
少年は不思議そうな顔をする。
「お前が話したいなら・・・・。」
その時、部屋の戸が少々乱暴に開いた。
「!?」
ふたりは同時にドアの方に視線をやる。そこにはリーダがいた。
「お兄さま・・・?どうしたの!?」
リーダの服は所々綻んでいて、血も付いていた。
リーダが怪我をしている様子は無い。・・・・血は・・・誰かの返り血だ。
「・・・・・・・!」
少年はリーダの姿を見て、目の色を変え立ち上がった。
「貴様っ・・・・何を・・・・!」
「待て。話を聞いてくれ。」
フレアが少年の肩を掴む。
「何をする!」
少年は振りほどこうとするがフレアは彼を放さなかった。
「お兄さまを信じて!お願い!!」
「何を・・・何を信じろと!」
少年は狂ったように言う。
ただ暴れて、フレアの手を振りほどこうとするだけだ。
「・・・・私が剣を向けた相手は・・・死に至らしめた相手は神じゃない!
魔族だ。聞こえてるか?」
毅然とした態度のリーダの言葉に、少年は抵抗をやめた。
「・・・・バカな・・・・信じられるか・・・。」
「私が行ったのはレタリアだ。買い出しのために飛んでいった。」
リーダは腰の剣を外し、ベッドの上に放った。
自分に戦意の無いことを示す兵士のように、
自分の手の届かぬところに武器を置いたのだ。
「そこで私はとんでもないことを知った。話してもいいか?」
「・・・・・・な・・・・。」
少年の返事を待たずに、リーダは話を始める。
「レタリアは魔界政府軍に占領されていた。
私も魔族の格好をしているから、
上手く紛れ込めば噂のひとつでも聞けるかと思ったが・・・。
数日前“七大神の魔界脱出”を手伝った者として私もフレアも指名手配されていたよ。
だから事実はひとつしかわからない。
“戦争が始まっていた”。それだけしか・・・・。」
「・・・・・・・・・指名手配?」
少年は眉をひそめる。
「そう、指名手配だ。私もフレアも魔界ではもう罪人なんだよ。
でも後悔はしてない。・・・・・神に生まれたかったと思う日はあっても。」
「・・・・・・・・・・・・。」
リーダはポケットから紙切れを出す。
「魔族の兵に話しかけてみた。そうしたらこの紙と私の顔を見比べて・・・・
いきなり斬りかかってくるものだから、
つい剣を抜いたら、弾みで相手を斬ってしまってね。」
それは彼が斬り倒した魔族の持っていた手配書だった。
少年は手配書の顔とリーダの顔を交互に見る。
「魔界政府軍が神界の大きな都市・・・しかも経済の要所を占領した。
神界政府軍ももう動いてるんじゃないのかい?
現に、君も軍人だ。」
少年は唇をかみしめ、それからリーダを睨むような、
しかしすがるような複雑な表情で見つめた。
「・・・・神界政府軍は将軍代理の指揮のもとレタリアに行軍中だ。
俺が三日眠ってたのなら、一週間後には神界政府軍と魔界政府軍はぶつかる。
向こうも光都・ポーリアに攻めてきているだろうから、
実際はもっとはやくぶつかる筈だ。
時間がない・・・。
三大神様とコンタクトが取れるのは七大神だけだし、
七大神は政府軍の将軍と六つの部隊の部隊長だから・・・・。
・・・・・・・・神界政府軍が動くのなんて・・・・俺だって初めて見た。
ここ何千年も、大きな戦争は起きなかったんだから!」
少年の後ろで、フレアはバタリと倒れた。
七大神が早く帰ってくることを祈るしかない。それだけしか出来ない。
神界の空は、地上で何が起ころうとしているのか知らないのかと思うほど、
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