【完結済】高校時代に書いたファンタジー小説を原文ママで投稿してみる

蒼(あお)

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本編(神界大戦編)

第六十話 魔界政府軍の秘密

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 決戦の時が来た。

七大神と羅唯の姉弟は、目を閉じ精神を落ちつける。

フィアルだけはただ腕を組んでニヤニヤ笑っているだけだった。

―――戦士達の咆吼が聞こえる。

彼らは聖夜の言葉を思い出していた。

「この闘いの勝敗は最初の十分で決まる。」

聖夜は、時雨の亜空間を使う戦術を使うことにしたのだ。

時雨は、少しなら時を操ることもできるし、亜空間を創り出すこともできる。

時雨の亜空間はディアンが使用した闇の亜空間よりさらに強力な空間である。

敵の戦意や精神力に関係なく、時雨が最強となってしまう空間だからだ。

時雨の空間に巻き込まれた時点で、勝敗は決してしまうというわけだ。

・・・・・相手がひとりの場合は。

時雨の亜空間は、時雨の神力消費の関係でたったの十分しか保たない。

今回の聖夜の作戦は、敵の部隊長、副隊長クラスだけを時雨の空間に呼び込み、

十分で倒せるだけ倒すというもの。

空間が消えた時点で一度全員で結界を張り、“機関銃”とやらの攻撃を防ぐ。

そこからが勝負だ。

 

「まだ来ないな、シヴァ・・・。」

焼刃は呟く。

「ちょっと心配やけど・・・大丈夫やろ。

わしはいっそシヴァがこの空間の闘いの終わった後に

来てくれたらええなぁ思うくらいや。

あいつは強いけど、持久戦には向かんでな。」

波人は言った。

確かにその通りである。

だがこの闘い、戦闘要員を欠いた状態で始めるのは、少し心細かった。

「おしゃべりはその辺にしとけ。時間切れだ。」

床が揺れている気がする。敵兵の声が、轟音となってそこに届く。

フィアルは指先に電撃を走らせた。

「時雨っ!」

聖夜の声と共に、時雨は亜空間を創り出し、“能力者”だけを呼び込んだ。

「・・・・・・・・・・・!」

そこでまた、計算違いが起きた。

「この数・・・!」

羅唯は舌打ちする。十人だけで相手しきれる数ではない。

「四十・・・・いや五十か。」

風真は気配の数を数えた。

神界政府軍で“能力者”はごくごく一部。七大神と、十人未満の戦士だけだ。

だが、魔界政府軍は違うらしい。

「我々だけを、この空間に隔離したか。」

相手方の金髪の男が言った。

「ちっ・・・。みんなしゃがめっ!」

焼刃は相手の言葉を無視し、業火を放った。

時間がないのだ。

「頭を潰して兵どもを叩く作戦のようだが・・・・残念だったな。」

能力者達は、焼刃の炎をあっさりかき消す。

「なにを!」

焼刃はもう一度火を放った。

「頭は不死身だ。」

能力者達は、またも炎をかき消す。

その消された炎の煙の中から、楓が飛び出した。

「あたしらは笑えない冗談に付き合ってる暇ないの!!」

彼女はひとりぺらぺら喋っている金髪の男の脳天に、強烈な蹴りを一発当てる。

金髪の男はあっさり蹴飛ばされた。

その勢いにのって、皆が近くの者を攻撃し始める。

しかし全員がすぐに動きを止めた。

「・・・・ばかな・・・。」

聖夜は言った。

「不死身だろう?」

攻撃した部位はもろく崩れ去る。そしてすぐに人の形を取り戻す。

「・・・傀儡の術法・・・!」

傀儡とは歌や調べに合わせて舞う“人形”の事である。

そう、“操り人形”・・・・。

風真はフィアルを睨みつけたが、どうやらフィアルもこのことは知らなかったらしい。

肩をすくめる。

「ここにいるのは強力な能力者ではない。

“傀儡の術法”に長けた普通の能力者の土人形と、兵士どもだけだ。

頭は死なない。だから魔界政府軍の統率が乱れることなど、無い!!」

金髪の男がまた言った。

「このままじゃ時間切れを起こして撃ち殺されておしまいだな。」

フィアルは縁起でもないことを言う。

「いや・・・。」

「ん?」

風真は懐から札を出す。

「“術”の類を封じる専門家がここにいるだろ。」

「ほぉ?」

フィアルはニヤリと笑った。

「聖夜、時雨。せっかくの作戦、台無しにして悪いが皆をこの空間から出してくれ。

この数を封じるのに、対象を選んで発動させる余裕がねぇ。」

空間を出れば銃の猛攻。そうわかっていて風真が言うのだ。

「時雨は空間作ってなきゃいけねえからな。俺から離れないでくれ。」

「わかった。」

このことをバラバラの位置にいる全員に伝えるのは不可能。

聖夜は覚悟を決めると、時雨に言った。

「皆を空間外へ!」

能力者達を呼び込んだときと同じ光が七大神達を包み、亜空間から締め出した。

「え!?」

皆が驚いている間に場所は神の書の通路に戻り、

人の姿が見えた兵士達は一斉に攻撃を始めた。

「!!!!」

何が起こったのか認識する間もない。

ただ目を閉じるしかなかった。

「・・・・・・・?」

「何してる、早く立て!」

聖夜の声が聞こえる。

聖夜は、たったひとりで銃弾の雨を遮る結界を張っていたのだ。

「・・・・・・・!!」

状況をいちはやく飲み込んだ波人は、

聖夜の足許に滑り込んで兵士達の足許に水を放った。

「凍っとけぇぇえぇえぇ!!」

波人の水は一気に凍り付き、兵士達は足を固定された。

しかしそれでも攻撃は収まらない。

韻唄はハープを鳴らす。

「どこまで聞こえてくれるかしら!?」

それは眠りを誘う調べ。

手前の者達はばたばたと倒れていった。

それとほぼ同時に、銃撃も止む。

「・・・・・・・・・・・。」

本当に、これで終わったのだろうか。

聖夜は結界を解けずにいた。

どこか、あっけなすぎる。

 

人の波の中を、堂々と歩いてくる者がひとりいた。

「・・・・誰だ!?」
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