【完結済】高校時代に書いたファンタジー小説を原文ママで投稿してみる

蒼(あお)

文字の大きさ
73 / 177
本編(神界大戦編)

第六十一話 理解の及ばぬ域

しおりを挟む
兵士の中をひとり歩いてくる男。

それは、彼らのよく知っている男だった。

「・・・・シヴァ!?」

聖夜はあっけにとられた。

「もう少し早く来たかったんだが。」

「どういう事だ・・・?」

シヴァは宗の素性についての簡単な説明と、“封戦”の試作品の話をした。

シヴァの手の中の“封戦”は、青白く輝いている。

「風真と時雨がいないようだが?」

シヴァは辺りを見回して聞いた。

「風真は時雨の亜空間の中で、この兵士達の部隊長の“傀儡”と闘っている・・・。

正直、相手の部隊長が傀儡だと知ったときには絶望を覚えたよ。

・・・大丈夫だろうか。」

聖夜は乱れた髪を揃える。

「そういう訳だったの。」

楓は足を軽く叩きながら、立ち上がった。

「ごめんなさい聖夜様。あたし、なんにもできなかったわ。」

楓の言葉に、皆俯く。

この闘いで死者が出なかったのは、聖夜の神力と判断力の良かった波人、

韻唄の機転のお陰だけである。

実際に動いたのは、彼らだけなのだ。

「君のせいじゃない。私もどうすればいいかなんて殆どわからなかったよ。」

感覚の違いすぎる魔界の考え方。

神界政府軍の敗因は、機関銃などではなく、奇襲だったかも知れない。

「さて。こいつらまとめて魔界に送り返してやりたいが、

転移の使える時雨はここにいない。」

シヴァが言った。             

「とりあえず拘束しといて、

何人かをここに残して残りはリーンを助けに行ってやった方がいいんじゃないか?」

羅唯は提案する。

「そうだな・・・。」

 

 風真は“呪”と書いてある札を出すと、それを勢いよく地に叩きつけた。

そして札を刀で貫く。

「破!」

すると風真の足許に、光の線で描かれた魔法陣現れる。

「な、魔法陣?」

例の金髪は少しだけ驚いて見せた。

土人形の遠隔操作はかなりの力を消費するため、

普通無駄な動きはしないものだが。

「・・・貴様はこの中で一番マシな能力者って事だよなぁ?」

風真は笑う。

「だからそうやって、無駄なお喋り役を引き受けている訳だろ。」

他の者達は、おそらく“指示”以外の時は口を開かないに違いない。

風真は金髪の男に左手を向けた。

「お疲れさん。」

彼のその言葉と共に、金髪の男の傀儡は消し飛んだ。

他の者達に特に動きはないが、術者の方は少しは動揺していることだろう。

「さぁて。ご存じの通り俺達神界七大神は、

魔法陣の中で最大限の力を引き出すことが出来る。

俺のがなんでここに現れたか・・・

気になってる奴もいるだろうがそんな事はどうでもいい。

傀儡はすぐには作り直せねぇ。全員ここで消えてもらうぜ。」

風真が両手を合わせて何か呪文を唱えると、

五十体はあったであろう傀儡は音もなく全て消え去った。

「終わった・・・。」

時雨は呟いた。

「・・・・外が気になるな・・・。」

風真が言うと、時雨は亜空間を崩した。

空間が消えるとすぐに、倒れている魔界政府軍の兵士達と仲間が見えた。

「あ、シヴァ・・・。」

いつの間にか現れている彼が、一番最初に目に入ったのだろう。風真は言った。

「悪いな、遅くなった。」

「別にどうでもいいがな。」

風真はそっぽを向いた。

一方では、聖夜と時雨が話している。

「時雨、疲れているところ悪いがこの者達を魔界に送ってやってくれ。

ここに居られても困る。」

「うん、任せて。」

時雨は青色の長い杖を軽く振る。

するとまるで手品のようにあれだけたくさんいた兵士達が消えた。

 

「ち、せっかく来てやったのに俺の出番は無しかよ・・・。ふざけてやがる。」

フィアルは神の書の祭壇に座って、ひとり呟いていた。

 

闘いは、終わったかに見えた。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

チート無しっ!?黒髪の少女の異世界冒険記

ノン・タロー
ファンタジー
 ごく普通の女子高生である「武久 佳奈」は、通学途中に突然異世界へと飛ばされてしまう。  これは何の特殊な能力もチートなスキルも持たない、ただごく普通の女子高生が、自力で会得した魔法やスキルを駆使し、元の世界へと帰る方法を探すべく見ず知らずの異世界で様々な人々や、様々な仲間たちとの出会いと別れを繰り返し、成長していく記録である……。 設定 この世界は人間、エルフ、妖怪、獣人、ドワーフ、魔物等が共存する世界となっています。 その為か男性だけでなく、女性も性に対する抵抗がわりと低くなっております。

酒好きおじさんの異世界酒造スローライフ

天野 恵
ファンタジー
酒井健一(51歳)は大の酒好きで、酒類マスターの称号を持ち世界各国を飛び回っていたほどの実力だった。 ある日、深酒して帰宅途中に事故に遭い、気がついたら異世界に転生していた。転移した際に一つの“スキル”を授かった。 そのスキルというのは【酒聖(しゅせい)】という名のスキル。 よくわからないスキルのせいで見捨てられてしまう。 そんな時、修道院シスターのアリアと出会う。 こうして、2人は異世界で仲間と出会い、お酒作りや飲み歩きスローライフが始まる。

【改訂版アップ】10日間の異世界旅行~帰れなくなった二人の異世界冒険譚~

ばいむ
ファンタジー
10日間の異世界旅行~帰れなくなった二人の異世界冒険譚~ 大筋は変わっていませんが、内容を見直したバージョンを追加でアップしています。単なる自己満足の書き直しですのでオリジナルを読んでいる人は見直さなくてもよいかと思います。主な変更点は以下の通りです。 話数を半分以下に統合。このため1話辺りの文字数が倍増しています。 説明口調から対話形式を増加。 伏線を考えていたが使用しなかった内容について削除。(龍、人種など) 別視点内容の追加。 剣と魔法の世界であるライハンドリア・・・。魔獣と言われるモンスターがおり、剣と魔法でそれを倒す冒険者と言われる人達がいる世界。 高校の休み時間に突然その世界に行くことになってしまった。この世界での生活は10日間と言われ、混乱しながらも楽しむことにしたが、なぜか戻ることができなかった。 特殊な能力を授かるわけでもなく、生きるための力をつけるには自ら鍛錬しなければならなかった。魔獣を狩り、いろいろな遺跡を訪ね、いろいろな人と出会った。何度か死にそうになったこともあったが、多くの人に助けられながらも少しずつ成長し、なんとか生き抜いた。 冒険をともにするのは同じく異世界に転移してきた女性・ジェニファー。彼女と出会い、ともに生き抜き、そして別れることとなった。 2021/06/27 無事に完結しました。 2021/09/10 後日談の追加を開始 2022/02/18 後日談完結しました。 2025/03/23 自己満足の改訂版をアップしました。

異世界ハズレモノ英雄譚〜無能ステータスと言われた俺が、ざまぁ見せつけながらのし上がっていくってよ!〜

mitsuzoエンターテインメンツ
ファンタジー
【週三日(月・水・金)投稿 基本12:00〜14:00】 異世界にクラスメートと共に召喚された瑛二。 『ハズレモノ』という聞いたこともない称号を得るが、その低スペックなステータスを見て、皆からハズレ称号とバカにされ、それどころか邪魔者扱いされ殺されそうに⋯⋯。 しかし、実は『超チートな称号』であることがわかった瑛二は、そこから自分をバカにした者や殺そうとした者に対して、圧倒的な力を隠しつつ、ざまぁを展開していく。 そして、そのざまぁは図らずも人類の命運を握るまでのものへと発展していくことに⋯⋯。

『辺境伯一家の領地繁栄記』序章:【動物スキル?】を持った辺境伯長男の場合

鈴白理人
ファンタジー
北の辺境で雨漏りと格闘中のアーサーは、貧乏領主の長男にして未来の次期辺境伯。 国民には【スキルツリー】という加護があるけれど、鑑定料は銀貨五枚。そんな贅沢、うちには無理。 でも最近──猫が雨漏りポイントを教えてくれたり、鳥やミミズとも会話が成立してる気がする。 これってもしかして【動物スキル?】 笑って働く貧乏大家族と一緒に、雨漏り屋敷から始まる、のんびりほのぼの領地改革物語!

処理中です...