【完結済】高校時代に書いたファンタジー小説を原文ママで投稿してみる

蒼(あお)

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本編(最終章『神界防衛』後編・ニ班編~最終決戦)

第百三十三話 特別でない者

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 余裕で立っているレンディ。

彼女に、蹴りかかっていく者がひとり。レンディは片手でそれを受け止めた。

「・・・五十嵐 楓。」

「ええ、そうよ。」

楓は答える。

「相談とやらは終わったのぉ?」

「うん、終わった。あとはカーティスがこっちに来るのを待つだけ。」

楓が言うと、レンディは鼻で笑う。

「カーティス様がこっちに来るぅ?あり得ないわぁ。」

「その割には、なんか随分焦ってるみたいだけど。」

レンディの頬からは冷や汗がしたたり落ちている。

「・・・・ここが暑苦しいだけよぉ。」

ルーシャンがここへ来たせいだった。

彼は、“決着”をつけるためにカーティスと共にいるはず。

その彼が何故、こんなところに来たのか心配でならない。

「だってぇ、こんなにいっぱい人がいるしぃ?」

死体が、動き出した。

「・・・うわぁ・・・。」

時の神殿を思い出す。

しかし・・・今度は、大地の力を持ってしてもこれが消えないことがわかっている。

「・・・・あんたを倒せば止まるわよね。」

楓はレンディを睨みつけ殴りつけた。

レンディはそれを片手で受ける。

楓は受け止められた手を回して振りほどき、そしてレンディの手首を掴んだ。

「!」

引き寄せ、蹴り上げる。

「なめないでね。あたしは・・・闘技場で勝ち抜いてきた女なのよ。」

楓は自分も跳び上がり、レンディを空中で蹴り落とした。

相手は受け身を取って着地する。

「この程度?」

レンディは唾を吐いた。

「まだまだ。」

楓がまた彼女に飛びかかったとき、死者の壁がそれを阻んだ。

「うわっ!」

彼女は慌てて止まる。

「・・・・あたしは格闘勝負しようなんて・・・一言も言ってないわよぉ?」

「死者をこんな風に弄ぶのって・・・どうかと思うわ。」

楓が言うと、死者の壁がすーっと横に動き無くなった。

「!?」

「へぇ、あたしの言うこと聞いてくれたの?」

楓は遠慮無く突っ込む。

「違・・・何よコレ!?」

レンディの意思とは関係ない動きを、死者達はしているらしい。

「よくわかんないけどラッキー。」

楓はレンディの顔に回し蹴りを喰らわせた。

「このっ・・・!」

レンディが楓を殴り返そうとすると、その腕に鎖が巻き付いた。

「・・・!!」

「悪い悪い。でも、一対一でするメリット・・・わしらには無いし。」

試合で言えば茶々。闘いで言えば・・・助け。

楓は容赦なくレンディの下顎を殴った。

「波人・・・ちょっと遅いよ。」

楓は言う。

「悪い悪い。美しいお客さんが来てたさかいにな。」

「・・・・・・・!?」

この非常時にお客。

そこに・・・緑髪の女性が立っていた。

「あなたは・・・・!」

「死の踊り子。こういう時は、私の出番よ。」

ネクロマンサー・・・ヴィルス。

時の神殿で波人を襲い、楓に退けられ・・・その後姿を消していた。

「ヴィルス・・・って貴女、血だらけじゃない!」

楓は言った。

レンディは、その女をただ見つめていた。

「あなた、誰か知らないけど。私はこういう死体の山、好きじゃないの。

でもそれの相手をするのが私の特別な“力”であって・・・しょうがないことだわ。

死んだ人くらい、ゆっくり休ませてあげたらどう?」

青々と茂る森の木々のような緑の髪。

「あんた誰ぇ?なんかすっごい、ちっちゃい存在な気がするんだけど。」

対するは新緑の・・・若葉のような黄緑の髪。

「ヴィルス。ネクロマンサーとしての能力を持って生まれた死の踊り子。

今は・・・死者を弔って回ってるただの女、かしら。」

彼女はあちこち怪我をしていた。

「ここに何かすごい力を感じたから来てみたら・・・

こんな事になってたから、死者を支配する力を絶とうとしてみたのよね。

そしたら・・・このザマ。あなた・・・何者?」

死者を支配するレンディの力を絶つのには成功したらしい。

「レンディ。カーティス様の傑作で交霊師。ま、言ってもわかんないだろうけどねぇ。」

「・・・・・・・・・・・・・?」

ヴィルスにこの事情がわかるはずがない。

「ネクロマンサーだって?

へぇ、そんなもんがどうして死者を“弔って”回ってるのかしらぁ?

死者とお遊戯するのが貴女の仕事じゃないのぉ?」

レンディはヴィルスを挑発する。

「考えが変わったの。不特定多数の死者を操るのは・・・やめちゃったわ。」

「・・・・・・・・・。」

レンディはヴィルスを睨みつける。

「あっ・・・!」

もしかしたらあの“能力”かも知れない。

楓が彼女に駆け寄ろうとすると、ヴィルスの前にひとりの男が立ちはだかった。

「!?」

その男は身体を張ってヴィルスを庇う。

そして・・・レンディを睨んだ。

「これは私の彼氏。

まぁ・・・“ちょっとしたトラブル”で死んじゃったんだけど・・・彼とは約束してるからね。」

「・・・・・小賢しい・・・!!」

男はレンディを蹴り上げた。

それを見た楓は、ここぞとばかりに跳び上がりもう一度彼女を蹴る。

「くっ・・・!」

レンディは空中で体勢を変え、楓を蹴り返した。

「わっ!」

楓は慌てて腕で受け止めたが、瓦礫の山に落ちる。

「・・・ふん、何よ。」

レンディは着地すると髪をなおした。

「痛たたたた・・・。」

楓が頭をさする。だが彼女の下には・・・波人がいた。

「え・・・ちょっ・・・。」

楓は慌てて立ち上がる。

「女性を護るんはわしの務めや!」

波人の服は瓦礫に突っ込んだせいで少し綻んでいる。

「バカなことしなくていいわよ!・・・もう!」

・・・少しだけ、ビックリした。

「楓、私・・・これでいいんだよね?」

ヴィルスは遠くから叫ぶ。

加勢してもいいのかと。

「いいわ!お願い、手伝って!」

楓は明るく叫んだ。

 

レンディはまた、ヴィルスを見つめた。

色黒の交霊師に白い肌のネクロマンサー。

七大神でもない、特別な力もない。

そのような者が何故、今更七大神の助けになると言うのだ。

レンディにはわからなかった。
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