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第二章

開発部門の爆発と臭いポーション

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 ギルド内に爆発音が響いて3時間ほど経った

 その騒ぎの間僕たちはお昼を食べて書類を整理し関係者へ手紙を書き・・・
 ニーナの入れてくれたお茶でティータイムをしている

 何故騒ぎの元凶に行かないかって?

 だって片付けるのは開発部門の人たちで、負傷者がいれば回復部門の人が回復魔法を使う
 壊れた備品は購買部門が補充し、その目録や経費をまとめるのは秘書部門だ

 僕たちが行ったところで何の役に立つわけでもない

 しかしニーナがずっとそわそわしている
 さっき見せた書類の人物が騒ぎを起こしたのなら
 その人物を追放するかもしれないのだ
 その仕事がいつやってくるかわからないので不安なのだろう

 そして3時間という時間

「そろそろかな」

 と僕が呟いた
 ラビヤーも

「そうですねそろそろだと思います」

 と言う

「何がですかぁ?」

 一人だけわかっていないのはニーナ

 途端に追放部門の扉のノックされる音が部屋に響いた

「どうぞ~」
「やぁ、仕事だよあんたたち!」

 扉を開けながらいきなり仕事をくれたのは
 開発部門隊長の黒毛タレ耳の犬人の女性カミーラさんだった
 長身で妙齢・・・らしいのだが僕には獣人たちの年齢は分からない
 しかし黒く輝く毛で自信満々な立ち方をする彼女から目が離せなかった

 とりあえず応接用のソファに座ってもらいお茶を出す
 彼女は

「悪いねっ!」

 と言って熱々のお茶を一気に飲み干すと

「もう一杯よろしくっ!」

 と言った
 あんな熱いお茶を即飲み干すなんて、なんで平気なんだ・・・
 その光景にあっけにとられていると

「仕事頼みに来たんだよ」

 という一言で我に返る

「仕事ですか?」
「ああ、追放の仕事さ」
「もしかしてお昼ごろの爆発音です?」

 もしかしなくてもアレだろう

「あれはびっくりしたろう?ギルド中に響いただろうね!」

 からからと笑いながら話す

「いやぁ・・・あの爆発音の後にここに来られるんですから・・・」
「確かに、あれで察しなかったらあんたたちにステーレンの追放なんて無理だっただろうね」

 彼女は笑いながらまたお茶を飲み干す
 ニーナが急いでおかわりを淹れる
 何杯飲むんだ・・・

「やはり彼女ですよね?」
「ああそうさ、またやらかしてくれたよあの子は」

 両手を広げやれやれと言う
 話は10日ほど前、カミーラさんの面接の時に遡る



 カミーラさんがうんざりした顔をしている

「はぁ・・・ポーションが爆発すると」
「ああ、そうなんだ・・・」

 腕を組んでため息をつくカミーラさん

「ポーションって回復薬のはずですよね?なんで爆発なんかするんですか」
「わかんないんだよ、なんで爆発するのか」
「それは開発部門で調べたら良いのでは・・・」
「作った奴がわかるからそいつに聞いてるんだけどねぇ
 なんで爆発するかわからないんだってさ」
「でしたら、材料が違うのでは?」
「それが材料を言わないんだよ!成功品は回復効果高いんだけどねぇ」
「購買部門に卸すのを止めたらいいでしょう」
「卸すのはやめたんだけどね・・・
 そのポーションをずっと使ってた冒険者たちに
『なんで売らなくなったんだ!』
 って言われちまってさ」
「なぜそんなことに・・・」
「よく買ってたのは外部の新人冒険者たちなんだよ
 安くて効果が高いから失敗品でも、もしもの時用に持っておきたいのさ」
「なるほど・・・」

 新人冒険者たちはお金も実力も無い
 なのでいつ大怪我するかわからないし、怪我をしたとしても治す手段が無かったりする
 回復魔法をかけてもらうにも金が要る
 それをカバーするべく回復部門で回復術師を貸し出したりしているのだ

 肩をがっくりと落としたまま、カミーラさんが続ける

「あとね?」
「はい」

「臭い」

「臭い」

「ああそうさ!あの子のポーションが爆発すると臭いんだよ!!
 特にあたしら獣人は耐えきれない!!!」

 近くで聞いていたラビヤーがびくりとする
 そうか・・・獣人は人より優れた感覚を持つから大変だ・・・
 
「一度爆発したら消臭に時間がかかるし!毒じゃないから【解毒キュアー】も効かない!
浄化ピュリフィケーション】なら効いたんだけど、アレは一部の回復術師しか使えないから呼ぶのに時間がかかる!その間開発がストップする!」
「大変ですね・・・」
「大変なんてもんじゃないんだよ・・・」

 カミーラさんが頭を抱えてしまった
 仕事が止まるのはどこも大変だが開発部門は購買部門や外部の商人にポーションなどを卸している
 商売だし納期もあるので開発が止まるのは一大事だ
 
 僕は頭を抱えたまま唸っているカミーラさんに

「もう一度、その人の名前を教えてください」

 と言った

 カミーラさんが深く息を吐きながら答えた
 
「ああ、あの子は『ブロア』だよ」


 これが次に『牡牛の角』から追放する予定の人物の名前だった
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