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第三章
温泉工事監督官の王子様
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「すみません、もう一度言って頂けますか?」
「はい、王子様は、とても、めんどくさいお方です」
聞き間違いじゃなかった
さっきユキに不敬と言っておきながら、自分は良いのか?
それとも、余程の人物だったのだろうか・・・
「お父さん、さっきの私に不敬とか言ってたじゃない!
そんな事言っちゃっていいの?」
ユキも参戦してきた
どうやらロウリュさんの説明が終わったようで、彼女と二人でこちらの会話に加わる
ユキの言う通り、王宮の関係者の誰かに聞かれてしまったら不敬罪とかになりかねないだろう
サンスケさんは味方がいなさそうな空気を感じ取ったのか、ロウリュさんに声を掛ける
「だって・・・なぁ?ロウリュさん」
「お父さん、私に振らないでくださいな」
ロウリュさんはにっこりと笑って、サンスケさんを見捨てた
彼は「そんなぁ・・・」と言って肩を落とす
ロウリュさんはそんな夫の姿を見て、ため息をついた
「夫がここまで言う人物だった、と思って頂けたら・・・」
「何かあったんですか?」
「ええ、実は・・・」
ロウリュさんはもう一度ため息をついた後、僕とジェーンに話し始めた
温泉工事着手前、村の有力者たちを集めた会議にて
「私は、君たちの雇い主の息子だ」
会議が始まると同時に、監督官と呼ばれていた、すらりとした金髪の男性が立ち上がり、高らかに宣言した
集まった一同にざわめきが起きる
「つまり、この国の王子だよ」
皆動揺して、事態を飲み込めない
さぁ温泉をどう変えていこうか、という会議だったはずなのに、王子宣言をされてしまって、彼に気を使って言いたいことも言えなくなってしまうのではないだろうか?
集められた一同の頭の中は、不敬罪になるようなことをどうにか回避することでいっぱいになる
誰も何も発言できなくなったところで、王子が口を開く
「私が王子だということは、他の誰にも内緒だぞ?」
と・・・
「いや、いきなり無茶ぶりだろ・・・」
ジェーンがロウリュさんの話を遮って発言する
確かに・・・
地方の村の有力者たちだからといって、平民である
王子は王子なりの扱いをして欲しかったのだろうか?
それに、秘密にしていた方が仕事も進めやすかったはずだろう
なぜそんなことを宣言したのだろうか
途中で止まってしまった話を、ロウリュさんは続ける
「王子だからといって、私に気を使って思いついた案を発言しない、ということは無いように頼む」
王子はそこまで発言した後、椅子にどっかりと座る
一同は顔を見合わせる
王子は何がしたかったのだろうか?誰も分からないまま、座ってしまったのだ
彼が座ってしまったのだから、これ以上この話を続けることは許されないのでは?となる
結局、一同にもやもやした気持ちが残り、誰も発言することも無く、王子の部下の文官らしき女性が会議の再開始を宣言した
温泉工事の会議はスムーズに進んでゆく
この会議が始まる前に村人たちは話し合い、反対する者には納得してもらっていたからだ
建物の形状、温泉の種類、建物内に新たに増やす施設について、それらについてどういう工事を行うか、それらをどうやって営業するかの指導の仕方や従業員の教育予定など・・・
文官たちも事前にどういう工事予定にするかなどをこの会議前までに決めてきていたのだろう
彼らの話す工事予定の完成度は、かなり高い物であった
建物の形状について、サンスケさんが意見を言ったのだが、王様の趣味だと言われてしまった
元の風情ある建物のようにしたかったのだが、会議前の村人たちの話し合いで、出資者の意見はなるべく通すことになっていたのだ
落ち込んでしまったサンスケさんの代わりに、村長が王宮側が譲れないものは他に無いかと聞いた
そのおかげで建物、サウナ、エステなど
必須となるものについて聞き出すことが出来た
それ以外の部分で、村の特色などが出せるように話し合いが行われたのだった
ロウリュさんの話はまだ続く・・・
「はい、王子様は、とても、めんどくさいお方です」
聞き間違いじゃなかった
さっきユキに不敬と言っておきながら、自分は良いのか?
それとも、余程の人物だったのだろうか・・・
「お父さん、さっきの私に不敬とか言ってたじゃない!
そんな事言っちゃっていいの?」
ユキも参戦してきた
どうやらロウリュさんの説明が終わったようで、彼女と二人でこちらの会話に加わる
ユキの言う通り、王宮の関係者の誰かに聞かれてしまったら不敬罪とかになりかねないだろう
サンスケさんは味方がいなさそうな空気を感じ取ったのか、ロウリュさんに声を掛ける
「だって・・・なぁ?ロウリュさん」
「お父さん、私に振らないでくださいな」
ロウリュさんはにっこりと笑って、サンスケさんを見捨てた
彼は「そんなぁ・・・」と言って肩を落とす
ロウリュさんはそんな夫の姿を見て、ため息をついた
「夫がここまで言う人物だった、と思って頂けたら・・・」
「何かあったんですか?」
「ええ、実は・・・」
ロウリュさんはもう一度ため息をついた後、僕とジェーンに話し始めた
温泉工事着手前、村の有力者たちを集めた会議にて
「私は、君たちの雇い主の息子だ」
会議が始まると同時に、監督官と呼ばれていた、すらりとした金髪の男性が立ち上がり、高らかに宣言した
集まった一同にざわめきが起きる
「つまり、この国の王子だよ」
皆動揺して、事態を飲み込めない
さぁ温泉をどう変えていこうか、という会議だったはずなのに、王子宣言をされてしまって、彼に気を使って言いたいことも言えなくなってしまうのではないだろうか?
集められた一同の頭の中は、不敬罪になるようなことをどうにか回避することでいっぱいになる
誰も何も発言できなくなったところで、王子が口を開く
「私が王子だということは、他の誰にも内緒だぞ?」
と・・・
「いや、いきなり無茶ぶりだろ・・・」
ジェーンがロウリュさんの話を遮って発言する
確かに・・・
地方の村の有力者たちだからといって、平民である
王子は王子なりの扱いをして欲しかったのだろうか?
それに、秘密にしていた方が仕事も進めやすかったはずだろう
なぜそんなことを宣言したのだろうか
途中で止まってしまった話を、ロウリュさんは続ける
「王子だからといって、私に気を使って思いついた案を発言しない、ということは無いように頼む」
王子はそこまで発言した後、椅子にどっかりと座る
一同は顔を見合わせる
王子は何がしたかったのだろうか?誰も分からないまま、座ってしまったのだ
彼が座ってしまったのだから、これ以上この話を続けることは許されないのでは?となる
結局、一同にもやもやした気持ちが残り、誰も発言することも無く、王子の部下の文官らしき女性が会議の再開始を宣言した
温泉工事の会議はスムーズに進んでゆく
この会議が始まる前に村人たちは話し合い、反対する者には納得してもらっていたからだ
建物の形状、温泉の種類、建物内に新たに増やす施設について、それらについてどういう工事を行うか、それらをどうやって営業するかの指導の仕方や従業員の教育予定など・・・
文官たちも事前にどういう工事予定にするかなどをこの会議前までに決めてきていたのだろう
彼らの話す工事予定の完成度は、かなり高い物であった
建物の形状について、サンスケさんが意見を言ったのだが、王様の趣味だと言われてしまった
元の風情ある建物のようにしたかったのだが、会議前の村人たちの話し合いで、出資者の意見はなるべく通すことになっていたのだ
落ち込んでしまったサンスケさんの代わりに、村長が王宮側が譲れないものは他に無いかと聞いた
そのおかげで建物、サウナ、エステなど
必須となるものについて聞き出すことが出来た
それ以外の部分で、村の特色などが出せるように話し合いが行われたのだった
ロウリュさんの話はまだ続く・・・
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