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冒険者編

第38話 狂い

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 こんな感じで上手く街に入ってから俺らは今、冒険者協会を目指して歩いている。街は定番の中世ヨーロッパ風で、思わずのテンプレ感にワクワクしてる自分。

 復讐のついでに世も見て回ろうかなぁ。

「ねぇ、ノアさっきあの女騎士に何をしたの?」
「……ん?何をした?」
「そこでとぼけるかな?途中で態度が急変したじゃん。それ、ノアがやったでしょ」
「あぁ、それね。まず俺があの女騎士と話し始めてから、口調や間、あとはアイコンタクトで若干含みのある話し方をしてただろ」
「えっ?あぁ、言われてみればそうだったけど……」

 話が見えないとばかりに困惑するジオ。

「そこなんだ。ジオと俺の服装を見てみろ。スタイルは地味で庶民的だけど、よくみれば素材は一等級。それにジオが見せた身分証は貴族用のものだろ。だったらジオと一緒にいる俺は”お忍び貴族”に見えるわけで、それだと身分証を見せたがらないことにも説明がつくってことだ。そしてこの街で冒険者カード、つまり”庶民の身分証”を入手しようとしてることも理解がいく」
「なら相手は仮にも貴族、無礼を働いてはいけない……ってことか。なかなかえげつないね。…………ん?でも、僕はノアにそこまでのことをまだ説明してないよ。どこで社会の仕組みについてそこまで知ったの?……いや、まさか!?」
「そ。そのまさかだ。全部賭け。俺はこの世界の社会の仕組みについては、ほとんど知らない。まぁ、俺が元いた世界にも似たような物語もたくさんあったから、それを参考にしたところもあるけど」
「命の恩人に言うのもなんだけど……気が狂ってるんじゃないか!失敗したらどうするつもりだったんだよ!連行される可能性だってあったんだよ!」
「確かにそうだけど……これが俺の生き方だ。俺が俺である限り、俺は危険な賭けを続けるし、自分の命をかけて傲慢でいる。小さい頃からそうだ。余裕がなくても余裕ぶって、分からななくとも分かってるように見せる。行動原理は、偏見と都合のいい情報ばかり。我ながら狂ってるよ」
「よくそんな調子で生きてこれたね。それとも、ノアのもといた世界は全員そうだったの?」
「いや、そんなことはないよ。向こうの世界でも俺が異常なだけだったな。……でもな、それでいいんだ。なぜなら、俺には力があったから。それは暴力じゃなくて、言葉。言葉で他人を思い込ませ、騙し、欲しい物が手に入る。これが得意だったから俺は今まで俺の生き方を続けられたんだ」
「そうか、ノアだけ狂ってたのか……」
「おまっ!言い方を考えろ、言い方!」
「はははっ、それよりもう、冒険者協会に着くぞ」

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