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朝の増結車両に並ぶ悲哀

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わたしが利用している駅には車庫がある。

そのため有難いことに朝のラッシュ時、到着した列車に空の車両を4両ずつ増結する時間帯がある。
今でこそ並ぶ人数はかなり減ったが、コ〇ナ禍前はそれはそれは凄い大行列だった。
増結車に乗るための列は横ならび3人での長い列。
それが先発の列、次発の列、次次発の列と横に並ぶ。
3ドアで4両ということは36人が横並びである。
少なくとも列に10人は並ぶので軽く400人を超える。

さて列車が到着し、空の車両が増結されドアが開き先発の列が乗り込む。
と、すぐさま統率の取れた軍隊よろしく次発と次次発の列がきっちり真横にスライドし、空いたスペースに新たに次次発の列が形成されていく。その様はさすが日本人と拍手したくなるほどだ。
しかも増結車はホームの両サイドで到着車両の前後に交互で増結されるため、次次発に並んだ人がやっと座れるのは5分刻みと考えても最短20分。列の前方を狙うなら少なくとも30分以上は待つ計算だ。これぞサラリーマンの悲哀だが、長い通勤時間を座れるならば本当にありがたいので並んででも座りたい気持ちは切実に理解出来る。

ところがである。
ここでポッと出ならぬポッと乗りの子連れや老人が最後の方に乗って来て自分の前に立った場合だ。

ほんとゴメンなさい。もちろん乗るなと言ってるわけじゃないんです。
働いていなくたって通勤時間に電車に乗らなきゃならないことだって当然あるのはわかっています。

でも。

これは譲らねばなるまいか?なるまいな?状態に陥るわけです。
30分出待ちならぬ乗り待ちしたことが無になる瞬間。
しかも大抵の場合、譲られてさも当然という態度だったり、お礼を言われたとしてもまさか、30分も並んだ挙句の席を泣く泣く断腸の思いで譲り1時間以上立って職場に着いたら休む暇なく働くんです泣。というところまで慮ってくれるはずもなく。

もちろんサラリーマン悲哀の大行列を知るはずもない、席を譲られた方が悪いわけでは決して無い。 

わたしはシニアなのでまぁまぁ開き直れるものの、先日座ってから数分して妊婦さんのピンクの札が目に入ったので席を譲ったところ、ニコリともされずやっと気づいたの?位の態度というか表情をされて泣きたくなった。

今日も目の前で子連れに席を譲る悲哀を目撃した。
そんな風に思っちゃいけないのは重々承知、分かってはいるが、席を譲った同志にひっそりと同情を寄せてしまった。

並ぶも悲哀。譲るも悲哀である。



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