雨に薫る

はなの*ゆき

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2.Yellow star jasmine

22✳︎

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 いい加減ヤバい…と思っていたものの、それ・・を手に入れるべきかどうか、そもそもどこで買うか…薬局か、コンビニか?などと考えていた頃だったと思う。


「…お前、そーいう趣味?」

 前の席の神田ジンデが唸りながら見つめていたスマホを覗き込んで、あえて言ってみた。

「俺のじゃねえしっ!!」

 だろうなと思いながらヤツの手の平からスマートフォンを抜き取る。そこに表示されてるのは可愛らしい女子向けのアクセサリーだった。
 結構いい値段するな…と思いながらスクロールするうちに、誕生石という表示を見つけてタップした。

 6月―――真珠、ムーンストーンか。

 真珠はちょっとババいかも?…となるとムーンストーンか…

 スクロールしていくうちに、小さな花のネックレスを見付けた。このぐらいなら余り目立たないし、スミでも…と考えて笑った。
 アクセなんて着けてるの見た事ねぇのに。そう思うのに、どうしてだか贈りたくなってしまう。

「こういうの、中坊でも買えんの?」
「そりゃ、金さえあればな」

 忌々しげな口調が笑える。不本意ならやめときゃいいのに。なんだかんだと好きは好きなのか。
 神田には中2から付き合ってる彼女がいる。結構付き合い長いし、当然やるこたやってる…よな?あえて聞いた事は無いが。

「ネットでモノ買う時って、どうやって払うんだ?振り込み?」

 やった事無いけど出来るだろうか?と思いながら聴くと、コンビニで受け取れると言われた。

「代引きだと自分が受け取れない可能性あるし、手数料もかかるからな。自分が行きやすいトコ指定して、取りに行く時普通にレジで払えばいいから便利だよ。」
「へぇ…」
「買いてぇの?」

 聞かれて一瞬黙り込んだ。
 画面に映るネックレスに視線を落とす。

「…そうだな」

 その時、自分はどんな顔をしていたんだろうか。ただ神田は何故か「しょーがねぇな」と言わんばかりの顔で、スマホを取り返した。

「これでいいのかよ?8000…て、高くね?」
「貯金あるから大丈夫。」
「マジか…」

 言いながらも手元を動かす。

「あんまアクセ着けてるイメージねぇけど、家ではすんの?」
「いや、見た事ねぇな。」
「…それで買って大丈夫かよ?」

 言われて笑う。確かにな。

「着けてんのが見たいんだよな…」

 言ってしまった後で神田の顔を見て、結構ヤバいヤツ発言だったかと思ったがまぁいい。本音だし。スルーしとく。
 大丈夫、表情筋は動いてない。

 家の近場を指定して注文を確定し、予約番号を教えてもらった。クリスマスには間に合うと言われて、そう言えば…と言ったらビミョーな顔をされたのは何でだろう?

「そういや、ネットって何でも買えんの?」
「まあ、大抵はな…。何かいるもんあんの?」

 聞かれたものの、流石に止めといた。
 ただ、いくら友達ダチでもゴム頼むのはさすがにないな…と思いながらも、一体、いつまで自分の理性は持つだろうか?―――実際、もうその頃にはかなりギリだった。

 長篠はちょっと…というスミに、数学を教えると言いながら、膝の間に囲って座る。一応プリントをやりながらも、ついついちょっかい出してると、あっという間に止められなくなっていった。
 何しろ最近スミが下着をブラに替えたせいか、細やかな胸がちょっと上向きになっててそれだけでもそそられる。
 しかもスミは首元の詰まった服を着ないから、剥き出しになってる鎖骨を見ているだけでそこにキスしたくなってしまうのだ…なんて、言い訳なのはわかってる。盛ってるのは自分。けど止められない。
 後ろを摘んで引っ張れば外れると言ったのは誰だったか忘れたが、あっさり外れたそれを押し退けて、カットソーの下から入れた手の平で包み込む。
 柔らかさを堪能しているうちに立ち上がってきた先端を摘むと、スミが声を上げて振り返った。
 そんな顔で睨まれてもな…とほくそ笑みながらその口を塞ぐのはもうルーティンだ。
 微かな抵抗をモノともせずに押し倒し、首の後ろを固定して深く舌を差し込む。抉る様にスミの舌を絡め取ると、スミの鼻先から甘い声が漏れて、更に煽られた。
 必死にシャツを掴んで身を捩らせるとか、それが一層こっちを刺激するのを分かってない。
 可愛い鳴き声をもっと聞きたくて、腰を引き寄せ、さらに身体を密着させる。しなやかで華奢なスミの柔らかさを全身で堪能しながら、ショートパンツの中に手を差し込んだ。
 張りのある膨らみをするりと撫で下ろすと、スミがビクリと身体を震わせる。
 体温の低いスミのひんやりと滑らかな肌を撫でる様に手の平を滑らせて太腿を伝い、本能のままに腿の間に差し入れた。
 そこだけは嘘の様に暖かく、僅かに湿り気を帯びている。その理由を確かめたくて、薄い布地を指で押しのけた。

 スミがビクッと腰を浮かせる。
 同時に鼻を抜けた甘い声。

 初めて触れたふっくらと柔らかな場所を暴く様に指を割り入れると、スミが更に高い声を上げた。
 堪らない。こんな可愛いとか反則過ぎるだろ。
 ぬるりと指先が滑る。
 それが女の自衛本能によるものだと気が付いて、更にキスを深めた。
 指の動きに合わせてスミが声を上げる。

 もう限界だ。
 首裏を固定していた手を滑らせて、無意識にスミのカットソーの裾を掴んだ、その時。



―――ピコンッ



 メッセージアプリの着音が鳴った。


 ビクッと。
 反射的に身体が強張る。

―――ピコンッ、ピコンッ

 立て続けになる音に、遥か彼方に飛んでいた理性が戻ってきた。


 アイツ―――


 まさかどっかで見てんじゃねぇだろうな?
 思わず体を起こして、夕闇に沈むベランダの掃き出し窓を睨みつけた。
 その間にスミが起き上がってきたから、仕方なく立ち上がってスマートフォンを手に取る。
 スミの顔の前にそれを掲げてロックを外した。

『お疲れ~』
『チーズケーキ焼けたよ』
『お茶にしない?』

 いつから菓子作りが趣味になったんだよ、お前はっっ?!

 と怒鳴りつけたいのを何とか堪えた。
 実際かなりヤバかったし。

 晩飯を作るというスミと別れてベランダから家に戻ると、予想通りの顔で母親が食卓に腰掛けていた。

「チーズケーキは?」
「あると思う?」

 だよな。
 ため息をついてリビングを抜けた。

 別れ際のスミの様子を思い出す。
 微かに震えながら大きく息を吸って、吐き出す時に上向いた顎と、白く仰け反った首筋。

 明日、桂馬に消音の仕方を聞こうと心に決めた。
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